07.30
2018年7月30日 トラブル
今日は中ぐらいの騒ぎが2つあった。それをご報告する。
一つ目はこのショートメールである。
「登録料金の未納が発生しております。本日ご連絡なき場合、法的手続きに移行します。アマゾンカスタマーセンター 03-6914-2869」
着信は午後0時2分。何事ならんとiPhoneを開くと、こんなメッセージが目に飛び込んできたのである。発信元はAmazonとある。
今時、Amazonと無縁で暮らしている方は少なかろう。どこをたずねても、Amazonの段ボール箱の一つや二つは転がっているのが現代である。我が家もAmazonを多用する家庭の一つであることは間違いない。
そのAmazonからのショートメール。へーっ、普通は通常のメールで来るのに、Amazonも方針を変えたのかな? と思いつつ文面を読んでギョッとした。料金未納? 法的手続き?
冷静になって考えれば、あのAmazonがこんなショートメールを送りつけてくるはずはない。Amazonでの決済はすべてカードでやっているし、講座にはまだ金が残っている。未払いが起きているはずはなく、もし何らかの機械的トラブルがあったとしても、すぐに法的手続きを宣告するはずもない。
しかし、私にはその冷静さを凌駕するAmazonへの信頼があるらしい。えっ、Amazonで金銭トラブル? 今日中に電話しろ?!
どういう訳か、私はすぐに表示されている番号に電話をかけてしまったのである。
「はい、Amazonカスタマーセンターです」
電話に出た兄ちゃんはまずそう答えた。電話番号も普通だし、やっぱりこれ、Amazonなのかいな?
「料金未納というメールを貰ったんだけど、何の料金が未納なの?」
「えー、お客様のお名前は」
個人情報は出来るだけ秘すに越したことはないが、この際はやむを得ない。
「少々お待ちください」
10秒ほどあと、その兄ちゃんはいった。
「プライムビデオの料金が昨年6月から未納になっています。総額で10万円少々です」
プライムビデオ? そんなもの見たことないぞ! もちろん、契約した覚えもない。私は律儀にWOWOWで録画し、ブルーレイで映画を楽しむ暮らしを続けている。
それにだ。プライムビデオって、Amazonのプライム会員になっていれば視聴できるはずである。会費は確か、月額数百円だったはずだ。それが1年少々で10万円? 月額8000円というのは法外ではないか。
「あなた、困ったことをいうねえ。そんなもの、契約した覚えはないし、視聴した覚えもない。なんだったら、そちらで私の視聴履歴を出してみなさい。そんなものを私が見た記録は一切ないはずだ」
「とおっしゃっても、契約されています」
「君ねえ、私はAmazonへの支払いはすべてカードで済ませている。100歩譲って私が契約していたとしても、カードで支払われているはずではないか。引き落とし口座にはまだ金が残っている。なんで未払いになるんだ?」
「いえ、契約ではコンビニ払いになっております」
このあたりまで来て、私はやっと
「ははーん」
と感づいた。
俺をはめようってか!
「そうですか。お支払いいただけないのなら法的手続きを始めますが」
これは最後の脅し文句であろう。
「そうかい。やってみなさい」
電話が切れた。
私はすぐに長男に電話をした。ネット社会については、ヤツの方が私よりはるかに詳しい。
「というショートメールが来て、電話をかけたんだけど」
「大丈夫だよ。何にもないって。最近、そういうの、多いんだよね」
電話をしながら、ショートメールにあった電話番号で検索した。すぐに、「サギ検」というサイトが引っかかってきた。ふむ、やっぱり詐欺らしい。そういえば、先日はアップルを名乗る詐欺メールも来た。Amazonにしてもアップルにしても、我々から見れば信頼できる先である。その信頼を利用して詐欺を働こうとする。詐欺犯どもも、ない知恵を絞っているらしい。
今日の騒ぎはそれだけかと思っていたら、2時頃になってキヤノンのプリンターが動かなくなった。電源を落としても、電源コードを繋ぎ直してもエラーメッセージが出て、プリントできない。
これでは仕事が出来ない。すぐにキヤノンの相談窓口に電話をした。今度のお相手は姉ちゃんである。
「というエラーメッセージが出るんですけど」
という問い合わせに、彼女はプリンターの電源を落とし、インクが見える状態にするよう指示した。
「お客様、右の方に何か落ちているものはございませんでしょうか?」
見てみた。ん? 何か落ちてる。プラスチック製のギヤのようである。
「ああ落ちてましたか。この機種で時々起きる障害でして、無料修理の対象となりますのでどちらの担当におつなぎします」
こういうとき、私の反応は早い。無料修理? それは結構である。相談窓口の姉ちゃんが間違わずに故障箇所に私を導いたということは、この障害はあちこちで数え切れないほど起きているはずで、それは設計か製造の不具合から起きているに決まっている。だから、無料修理は当然である。本来ならリコールすべき問題ではないか。
それは置くとして、修理するにはこのプリンターをキヤノンまで送らねばならない。キヤノンが引き起こしたことだから輸送費はキヤノンが持つのだろうが、その間、我が家にはプリンターがなくなる。仕事も趣味も一時休止になってしまう。それは困る。
「ねえちゃん、そりゃあないんじゃないかい? この故障はあんたんとこの不手際で起きたんだろうが。あんたねえ、プリンターって、使うから買うんだぜ。使うために買ったはずが、メーカーの不手際で使えなくなったんじゃあねえか。金を出した俺がプリンターが使えない不便さをどうして我慢しなきゃならんのだ? 菓子折り持って謝罪に来いとまではいわねえが、俺が不便にならないように手を尽くすのが責任の取り方だろうが。そんなことも分からねえのか、手前! 代替機ぐらい用意しやがれ!」
程度のことはいいたかった。しかし、常識が勝った私は丁寧に、修理期間中に代替機をお貸し願えないと仕事が進まずに困る、メーカーのはその程度の製造物責任はあるのではなかろうかと、実に筋の通った主張を繰り返しただけであった。
それなのに、である。そのような主張をするユーザーはあまりいないらしい。
「代替機でございますか……。それは私の一存では……」
同じ目にあっても、素直にキヤノンのいうことを受け入れるユーザーが数え切れないほどいるらしい。私と同じような筋を通して代替機を獲得する人が多ければ、同じ故障は数多く起きているだから窓口の姉ちゃんは最初から、代替機を出すといっていたに違いない。
押し問答が続いた。自分では対処できないと思ったのか、姉ちゃんは
「検討しまして、後ほどこちらからお電話を差し上げます」
といって電話を切った。
これで両手が自由になった。私は落ちていたギヤをピンセットで拾った。これが外れたからプリンターが動かなくなったのか。であれば、このギヤをはめてやれば良かろう。そう、自力での修理を始めたのである。
多分、ここにはまっていたのだろうという箇所はすぐに見つかった。ギヤをここに差し込んでもう一つのギヤとかみ合わせればよい。
だが、力任せは御法度である。無理に押し込んでギヤを壊してしまったのでは事態をさらに悪化させる。慎重に、余り力を入れずに……。数回方向を変えながら差し込んでいたら、スポットいう感じではまった。おお、修理が出来た!
プリントしてみた。よし、ちゃんと動くではないか!
そういえば最近、テキストをプリントすると、文字が微妙にずれることがあった。ここがこのプリンターの弱点だとすれば、ギヤが外れかけていたのでインクを吹き出す焦点が美微妙にずれていたのだろう。
キヤノンから電話が来たのは30分ほどたってからだ。
「お客様、ご迷惑をおかけしております」
で始まった話は、代替機を送るので修理させて欲しい、というものだった。
「でも、自力で修理しちゃったんだけど。正常にプリントするようになりましたよ。おかげで手はインクで真っ黒になっちゃったけど」
「えっ。ご自分でギヤをはめ込まれた……」
「それでも、また外れるようなことがあったら困るので修理して貰います。できれば、代替機と一緒に、インクがよく落ちる石けんを同梱して貰えると助かりますが」
後段は、私風のジョークである。
代替機は明日届くそうだ。
いつもは何事も起きず、昨日と同じような今日を過ごす日が続くのに、異変が一つ起きるとすぐに重なるように第2の異変が起きるのは何故なのだろう?
3つ目が起きないように願う私であった。
そうそう、故障したキヤノンのプリンターはTS8030という。同機種をお遣いの方で同じ障害が出たら、私と同じように代替機を獲得されるよう、念のため書き加えておく。