2018
12.14

2018年12月14日 怪情報

らかす日誌

今日は忠臣蔵の日である。大石内蔵助をリーダーとする赤穂浪士47人が憎っくき吉良上野介の屋敷に討ち入って首級を上げたのは元禄15年(1703年)12月14日、雪の降りしきる日であった。

と書いても、いまの若い人たちにはピンと来ないかなぁ。私が子どものころは、年末になると必ずといっていいほど、東映の時代劇「忠臣蔵」が公開された。浅野内匠頭は大川橋蔵、大石内蔵助は片岡知恵蔵、哱部安兵衛は……、などと俳優の名前までスラスラと出てくるのが、何だか自分でも恐ろしい。

というわけで、桐生は今日、結構寒い。いや、何が「というわけ」なのかはよく分からないが。

それはそれとして、今日の夕刻、電話で怪情報が飛び込んできた。

「大道さん、えっと思う情報が飛び込んできたんだけど」

電話の主は、現役時代によく付き合ったおじいちゃんである。選挙にしか趣味がなく、選挙になると

「いやあ、俺も86だからさあ、今度の選挙が最後だと思ってるのよ。そんな年だろ」

と前回の統一地方選挙の時もいいながら、でも目が生き生きしていた。すでに、確か90歳である。
私は現役を終え、仕方なくやっていた、嫌いな選挙の取材からは解放されている。だから、選挙だといっても何の関心もなく、積極的に情報を集めるなんてやるはずがない。そんな私が、多少は政治に絡む情報をいまでも持っているのは、このおじいちゃんが頻繁に電話をしてくるからである。他の趣味はない人だから、話はいつも選挙である。

「あなた、亀ちゃんの息子を、挨拶回りに連れ回してるんだって? いや、さっきそんな話が飛び込んできてさ」

亀ちゃんとは、いまの市長、亀山豊史氏である。亀山氏は来春の市長選には立たず、その長男が県議選に出る。私が、その県議選に出る長男を挨拶に連れ回している、というのだ。ホントか?

「なにそれ。そんなことはあり得ないよ」

身に覚えのないことである。そう答えるしかない。

「そうだろ? 私が知ってる大道さんはそんなことをする人じゃない。私もそう思ったんだが、とにかくあなたに伝えておこうと思って。流しているのは○○の陣営らしい」

○○とは元市議で、来春の県議選に立候補すると表明している。

「だって、俺みたいなよそ者、県議候補を連れ回すと言ったって、連れて行くところがあるはずがないでしょ。地縁、血縁がものをいう地方選挙に私の出番はないし、たとえあったとしても、政治嫌いの私がそんなことをやるはずがない。もちろん、○○じゃなくて、亀ちゃんの息子が通った方がいいとは思ってるけどね。でも、多分投票にも身行かないんじゃないかな」

「そうだよなあ。私もそうでしかないと思ったよ」

それだけの話である。

しかし、だ。○○氏が私を嫌っていることは分かる。現役時代には、記者会見でかなり辛辣な質問もした。だから彼は、私が彼を嫌っていると思っているのだろう。そんないきさつから、彼なのか、彼の取り巻きなのかは分からないが、彼を落とすために亀ちゃんの息子を通すべく私が一肌脱いでいる、と憶測に憶測を重ねたのに違いない。やばい、あいつの影響力で亀ちゃんの息子に票が流れると、○○さんが県議になれない……。
ま、どういういきさつかは知らないが、そこまで影響力があると見られて恐れられているとしたら、もって名誉としなければなるまい。

しかし、だ。前述したように桐生には私の地縁も血縁もない。親しくしているのは10数人、付き合いがあるという程度の方々を数え上げても100人内外だろう。しかも、いくら親しいとはいえ、それぞれの方々とは明瞭に意見の違いがある人が多い。私が何かを言えば、だまって賛同するような方はお付き合いしてもつまらないのである。だから、選挙に関して私の影響力はほぼゼロである。どういう見方をしたら、私が亀ちゃんの息子の選挙運動をやっているなどと言う結論が導き出せるのか?

「そうだよなあ。大道さんがあの子を連れて戸別訪問しているところ、なんて想像出来ないもんな」

とおじいちゃんはいった。そう、それが正しい見方である。

それなのに、そこを読み間違うか。
それとも、そんなつまらないことに神経を尖らせなければならないほど、不利な選挙戦であるとの危機感を持っているのか。

いずれにしても、そんな初歩的な間違い方をする方が県議なんぞになってほしくはない。彼には民意を代表する資格はないと断じざるを得ないではないか。

というつまらない噂が流れ始めると言うことは、そろそろ桐生は、地方選挙で染まるらしい。
ったく、何が楽しくて政治家なんかを目指すのかねえ? 何が楽しくて、候補者のために走り回るのかねえ。

あ、そういえばおじいちゃんがこんな話をしたことがあった。

「ほら、今度あの陣営を応援している鰻屋ね、あいつは札付きなんだ。選挙の応援をするような顔をして、何かと言えば宴会を持ちかける。もちろん、会場は自分の鰻屋さ。そこに候補者の選挙資金を取り込めるかに血道を上げるんだ」

そうか、選挙って、欲と欲のぶつかり合いなのかな?