2020
04.17

桐生でもとうとう感染者が出た。警戒レベルを引き上げなかければ。

らかす日誌

これまで感染者ゼロ。

「市外に出さえしなければ大丈夫」

と安心しきり、

「パリもニューヨークも桐生になっちゃった(シャッター街になった)」

と世の中のコロナ騒ぎを対岸の火事視していた桐生に、とうとうコロナウイルス感染者第1号が出た。昨日県が発表した。あれまあ、95%は俺には関係ない騒ぎと思っていたのに、そうもいかなくなったか。

発症したのは、隣の伊勢崎市でクラスターが発生している老人ホームに勤めている60歳の男性だそうである。
と、ここまでが県の発表である。

「えっ、それだけしか知らせてくれないの?」

とは、コロナウイルス感染者がすぐ近くで出て初めて感じたことだ。だって、たったこれだけの情報で我が身を守れるか?

その感染者は市内のどこに居住しているのか。現在は自宅で療養しているのか、それとも病院に収容されているのか。自宅の消毒は済んだのか。通勤手段は、経路は。濃厚接触者の洗い出しは済んでいるのか。
知りたいことは山ほどある。だが、今の行政は応えてくれない。プライバシーが大事だとはいえ、時に応じて守るべき個人情報の水準を変えてもいいのではないか。

と思い、探ってみた。

「ああ、M町に住んでいるだってよ」

と教えてくれたのは看板屋兼からくり人形師のSさんである。

「何で知ってるの?」

と質すと、

「ほら、娘の旦那が施設で働いてるでしょう。老人施設で起きた感染だから、あいつらの間では情報がすぐ流れるのね」

「名前は?」

「そこまでは分からない」

だが、とりあえずはこれで十分である。M町は私が桐生に来たてのころ済んでいた町である。山の手で、桐生の高級住宅街ともいわれていた。今の住まいからは直線距離で2、3kmか。とりあえずは、それほど心配することもないか。

「それでね」

とSさんは言葉を継いだ。

「その発症した60歳の男だけど、アルバイトで桐生市内の老人施設の運転手をやってたんだって」

ということは、お年寄りを送り迎えする車の運転手?

「そうそう。やばいよねえ、うん、年寄りばっかりでしょ、やばいよ、ほんと」

いや、確かに。送り迎えの車の中で濃厚接触するとは思えないし、運転手がくしゃみをしても飛沫はフロントガラスに向かって飛んでいくので同乗者にかかる確率は低い。それでも密閉空間である。

「うん、それはやばいよね」

私も思わず同意していた。
やばい。桐生にもクラスターが発生するか?

と、ここまでは夕方書いたのだが、夕食時に読んだ地元紙によるとやや事実関係が異なっている。
桐生の感染第1号は伊勢崎の老人ホームで働いていた60歳男性だが、すでに第2号が出た。市内の病院で働く60歳台の男性看護師である。この男性が伊勢崎の老人ホームでも働いているというのが県が発表した事実である。Sさんの話は、この2件が混同したものと見られる。パニックとは、このような不確かな情報で起きるのだろうなあ、と実感した次第である。
アップする前に知ったので、ここで修正しておく。

そういえば、政府が470億円かけて全世帯に配布するというマスク、まだ来ない。あなたのお宅には届きましたか?

というわけで(どういうわけか、あまりよく分からないが)、あのO氏に、

「マスク、手に入る?」

と聞いてみた。O氏が経営する商店は、普段はマスクも売っているが、コロナ騒ぎでとうの昔に売り切れた。

「1人あたりの枚数は制限したんだけど、あっという間だった」

そうだ。
だから、マスクを仕入れる手続きはした。5月の連休明けには入荷する見通しだという。

ところが、である。仕入れ値も暴騰しているらしい。騒ぎの前は1枚10数円で並べても買う人はいなかったのに、いまじゃ仕入れ値が3倍から5倍に暴騰、

「売値は1枚60円ぐらいになるのかなあ」

製造原価なんて半年前も今もほとんど変わらないはずだ。それが暴騰するということは、メーカーが

「この際」

とばかりに蔵出し価格を上げたのか、それとも間に立つ流通業者が利益の上乗せを図っているのか。

需要と供給のバランスで価格が決まるというのは資本主義経済の仕組みの原点である。だから、今回も生産が需要に追い付かないのだから、原理言論からいえば当然のことが起きているわけだ。

だけどなあ。こんな騒ぎの最中に値上げするなんて、なんか寂しくないか?
人の弱みにつけ込む商売はいつの世にもある。そういえば桐生でも、ある洋服メーカーが、1枚3980円のマスクを売り出したと、しばらく前の地元紙に掲載されていた。
たった1枚のマスクが3980円。抗菌性のある銅繊維を使ったと書いてあったが、銅繊維はそれほど高価なものではない。1枚あたりのコストアップ分はせいぜい数円ではないかと想像する。

災害は人の美しさも際立たせるが、人の醜さも露出させる。こんな話を、コロナ関連の美談として掲載した地元紙の見識を疑ったことを思い出した。

現在時点で、世界の死者数14万8729人。アメリカが3万4705人と群を抜いている。
そのアメリカ、統計で見る限り、新規感染者数はピークを打ったのかも知れない、と思えるパターンを描いている。1日あたりの死者数も14日に6185人と急増したあと、2000人台前半に下がって落ち着き(2000人も亡くなって、落ち着き、はなだろうと思うが、ここはグラフの話なので)始めたとも見える。

この状態でトランプは、経済活動の再開を唱え始めた。秋に迫った大統領選挙向けの言動だと思えるが、この人、America Firstではなく、Me Firstのエゴイストであることが益々露呈されている。

そういえば東京都知事のおばさん、民放のCMに登場してコロナ対策を訴え始めた。

「あんたが出てこなくても、テレビ局が自分の金でコロナは十分すぎるほど報道してるぞ。それは公費を使った選挙運動だよな」

と書こうと思ったら、今日発売の週刊誌が早くも取り上げていた。うん、さすがである。

混乱に乗じたように人間の醜さが次々に現れる。嫌な世の中である。