2020
05.31

トランプは、いわゆる「民主主義」の基本構造を目に見えるようにした功績があるのでは?

らかす日誌

トランプ大統領の言動から目を離せない。面白い。面白すぎる。考えていること、つまり裏に隠していると思い込んでいることが手に取るように分かってしまう。実にあけすけな、わかりやすい大統領である。

まず、ツイッター社を標的にしたとしか思えない大統領令に署名した。何でも、SNS企業に認められている免責条項を狭くするらしい。実現すれば、ツイッター社は数多くの訴訟を抱えることになりかねず、いわばツイッター社をはじめとしたSNS企業虐めである。
きっかけはご存知のように、ツイッター社がトランプ大統領の投稿に、

「これは事実かどうか疑わしいよ」

というファクトチェックを促す警告マークをつけたことである。激怒したトランプが報復行為に出たのだが、ツイッター社も負けてはいない。ミネソタ州で白人警官が黒人を殺した事件についてのトランプの投稿に

「暴力を美化するものだ」

と注意喚起の警告をつけた。がっぷり四つの相撲が展開中である。
しかし、だ。大統領と民間企業ががっぷり四つの相撲? 不思議な構図である。

目を外に転じると、WHO(世界保健機関)からの脱退を表明した。アメリカが一番沢山金を出しているのに、中国寄りの姿勢が過ぎる、という理由である。

香港問題では、中国政権が「国家安全法」の導入を決めたことを

「一国二制度を一国一制度に置き換えた」

と非難し、これまで香港を優遇してきた取り扱いを止めると言明した。

そして、新型コロナウイルスの発生源問題。八面六臂の喧嘩三昧。まあ、よくぞこれまで数々の話題を提供してくれるものだ、と感心するほどである。

沢山のメディアが指摘しているように、トランプの焦りの表れだろう。大統領選挙は秋に迫っているのに、コロナウイルスへの初動対策に失敗、いまや感染者数180万人超、死者数10万5000人超の「コロナ大国」である。Great Americaの実現。支持率が落ち、いまや民主党のバイデン候補の後塵を拝している。つまり、大統領2期目が危うくなった。何しろ、権力が大好きな人である。焦りもしようというものだ。

では、どうやってコロナのマイナスを回復するのか。基本戦略は、国民、有権者の目を、己の失敗からそらすことである。
まずは発生源問題を採り上げた。コロナウイルスがアメリカで猛威を奮っている責任は中国にある。俺のせいじゃないもんね、という責任逃れ。

WHO、香港問題はその流れだろう。外に敵を作る。メディアを使って外敵への敵意を煽り、国民の目をその敵に向ける。自分の失敗を覆い隠す。

トランプにとって幸いなことは、中国が嫌いなアメリカ人がたくさんいることである。何しろ、共産党が支配する国である。加えて、よせばいいのに経済力でも台頭し、いまや第2の経済大国になった。軍事力の拡充にも力を入れ、アメリカにとっては目の上のたんこぶが大きくなるばかりだ。「外敵」に祭り上げるには絶好の対象である。それに、世界的にも中国に疑いの目を向ける人の数は増えているはずだ。これ、使っちゃお!

WHOに関しては、たいした拠出金も出していない中国が、中進国、低開発国を開発援助でがんじがらめにし、影響力を及ぼすことができる多数の力で人事を我が物にしているという批判はしばらく前からある。いまのテドロス・アダノム事務局長の中国寄りの姿勢も知る人ぞ知るところだ。それがコロナウイルスの拡散につながったのではないか?

国民も、有権者も、俺が中国と闘う姿勢を見せれば見せるほど、俺の失敗なんか忘れてくれるさ。

ツイッター社も同じ構図だ。トランプの支持層である中低所得者層には、新興成金への抜きがたい反発がある。

「あんなことで巨万の富を手にした連中は、きっと何かおかしなことをやっているはずだ!」

それに、知識層や金持ち層の一部にだって、ソーシャルメディアがいまの世の中で果たしている役割に疑いの目を向け、批判的に語る人だって少なくない。
「敵」として祭り上げて国民、有権者の目を己の失政からそらすには格好の標的である。

と、まあ、全体的な構図はそんなものだと思う。

そんなことを考えていたら、ふと不安になった。

「大丈夫か、民主主義?」

民主主義とは、民が主であり、政治とは民の意向を実現するものだ、というのが立て前である。だが、トランプの振る舞いを見ていると、民の思いを実現するのが政治ではなく、民に、政治家に都合の良い「思い」を抱かせるように仕向けるのが「民主主義」と呼ばれているものの実態ではないか、と思えてきたのである。民主主義社会における民とは、政治の主役では決してなく、政治家に操られて、政治家が振りまく、己に都合のいい「幻想」を、自分の「思い」だと信じ込まされている存在に過ぎないのではないか?

政治家にとって民とは、己の野望を実現するための道具に過ぎない。ナチスは民主主義の手続きに沿って政権を手にし、あとは

「大きな嘘を頻繁に繰り返せば、人々は最後にはその嘘を信じるだろう」

という、天才的な宣伝担当、ゲッペルスの大衆操作でとんでもない国を作り上げた。
無論、その愚を繰り返してはならないと、民主主義の欠陥にバンドエイドを張る作業は延々と続けてこられたと思う。だが、トランプにような男が有権者の支持を集めて世界の超大国、アメリカの頂点に上り詰める図を見ていると、

「バンドエイドは、どう使ってもバンドエイドに過ぎない。やっぱり、民主主義と呼ばれる政治システムの基本は変わっていないのではないか?」

という疑いが抜けないのである。
翻って日本は、バンドエイドがうまく使われている国なのかどうか。

ほう、暗い話になった。
個人生活に戻れば、順列・組み合わせと格闘中である。

〇と✖️を10個並べる210個の順列のうち、✖️が連続しないようなものは、全部でいくつあるか。

「そんなもん計算して、何の役に立つの?」

と思いながら、腕組みして考え込んでいる私である。
ちなみ、答は144通り。これ、奇跡的に自力で解けた!