11.26
また電通かね。オリンピックにからむ不正。
かねがね、オリンピック廃止を唱えている私に、またまた我が主張を繰り返したくなる事実が明らかになりつつある。東京五輪のテスト大会を前に、電通からの出向者が中心になって業務請負の談合があった疑いがあると報じられた。電通専務だった高橋某が巨額の収賄容疑で逮捕されたのに続く、五輪不正、電通不正である。
巨額の金が動くところには闇の紳士たちが横行するというのは、残念ながら古今東西を通じる真実であるようだ。金に飽かして育て上げられたアスリートたちが、金銭まみれのオリンピックに出場して技を競い合う。闇の紳士たちがその陰で暗躍する。そんなもの、続ける意味は何処にある? 一刻も早く廃止するか、どうしても続けるのなら、アマチュアスポーツの祭典という原点に立ち戻り、国威発揚、金儲け、などの雑音を取り除いた静かな大会にするが良い。
それはそれとして、気になるのは電通である。
新聞記者として電通と付き合ったことはないが、デジタルキャスト・インターナショナルに出向していた際には何人もの電通マンと会い、議論し、酒を飲んだ。
「なるほど、業界ナンバー1とはこのような人材が集まる会社か」
と頷かされた。頭の回転が速く、仕事を隅々まで知り、積極的な提案を出してその場をリードする頼りになる連中だったからである。比べてみれば、ほかの広告会社の社員に比べて、頭1つも2つも抜けた能力を持っている連中だと見えた。
その優れた人材たちが次々と手を汚す。私の目には、収賄にしろ談合にしろ、エリートが犯した犯罪だと映る。
エリート犯罪には2通りある。エリートでも犯罪を犯してしまったのか。それとも、エリートだから犯罪に手を染めたのか。
朝日新聞記者として札幌に赴任していたとき、
「あ、これはエリートだからやっちゃったんだな」
という犯罪に遭遇したことがある。県庁職員の収賄である。民間の調査会社に仕事を発注した際に手数料を取ったのである。さて、その金額がどれほどであったかは記憶にない。それでも事件が忘れられないのは、彼らが北海道庁の中でのエリート職員だったからだ。エリートには情報が集まる。情報乞食といってもいいのが新聞記者。だから彼らと何度か酒席をともにしたことがある。
エリートとは、仕事で優れた実績を残した人々をいう。そうした実績が積み重なって地位が上がり、それに伴って権限も増す。何処の組織でも若くして高い地位に昇ってエリートといわれる人はいるから、皆様もおなじみのことだろう。
実るほど頭を垂れる稲穂かな
という。エリートと言われ始めたら、心に刻まなければならない言葉である。地位や権限にかかわらず、部下とも同じ目線で話ができるエリートは、頼りにされることはあっても憎まれることは希だ。エリートと呼ばれる人の多くは、この言葉を墨守していると思いたい。
だが、収賄事件を起こした2人は、エリートではあってもこの言葉を知らなかったとしか思えない。己の地位に慢心し、押し寄せてくる甘い汁にたかった。県庁内で肩で風を切る姿を見たことはないが、一緒に酒を飲んだとき、
「あ、金はいいですよ。こちらで処理しておきます」
ということがあった。不思議な連中である。新聞記者と飲んだ金を道庁の金から出せるわけがない。いや、例え出せたとしても、新聞記者たるもの、そんな金で酒を飲んではならない。
「それは困る」
と何度言っても聞き入れない。同席していた道庁担当の記者に聞くと、
「この2人、酒代を自民党に着け回ししているらしい」
という。朝日の記者が自民党の金で酒を飲むなど、言語道断である。こちらで計算した割り勘分を押しつけるようにして渡した。
彼らが逮捕されたのは、それから間もなくのことだった。
「あいつら、そんなに悪人だった?」
と最初はいぶかった。まあ、図々しいヤツはいる。悪乗りする連中も希ではない。しかし、手錠をかけれれう様なことをする人間はそれほど多くない。あいつら、根っからのワワルだったのか?
あの飲み会の顛末を思い出したのは間もなくである。
「あいつら、エリートだから何をしても許されると思い上がっていたのじゃなかろうか?」
彼らが自民党に着け回ししていたかどうかには確証はない。しかし、火のないところに煙は立たないという。似たようなことを2人がしていたかも知れないとは、十分に想像できる。
そして、そのようなルール破りに手を染めるには
「俺たちほど頭のいいやつは周りににはいない。少しばかり悪さをしたって周りに気が付くヤツなんていないさ。みんなボンクラだもん」
という思い上がりがあったのではないか、と思いついたのである。彼ら2人は実るほど頭をますます高く上げ、周囲を馬鹿にしていたのでは? 酒席をともにした私も馬鹿にされた1人であったのかも知れない。
その構図が、電通がらみの犯罪に重なる。高橋某はエリートの集まる電通で専務まで務めた。エリート中のエリートである。加えて、スポーツ界での、高橋抜きでは何も進まないと言われたほどの君臨ぶり。周りが馬鹿に見え、やりたい放題も見のがされると誤解しても不思議ではない。
談合を仕切った電通社員は、恐らく名刺の肩書きで仕切ったのだろう。広告業界で実績、人材ともに飛び抜けた力を持つ電通の名刺には、業界内ではそれだけの力があるはずだ。
「電通からおいでになったあなたに仕切って頂かないとまとまりません」
などとおだて上げられていい気になったのではないかと想像する。
いま、世はサッカーワールドカップ一色である。横浜の次女一家では、瑛汰とパパが、ドイツを打ち破った日本の試合に狂喜乱舞したとか。
でも、思うのである。オリンピックがあのざまなら、ワールドカップだって似たようなものではないか? どこかの司法当局が狙いを付けている疑惑があるのではないか?
と思いながら考える。こんな嫌な世の中に誰がした?