03.22
明日からカソデックス錠の服用を始めます。
先日、群馬大学付属病院で託された手紙を持って桐生市内の泌尿器科に行った。私の前立腺がんを見つけたところである。そして、重粒子線治療に先立つホルモン療法は、この泌尿器科に任されている。
「ああ、いよいよ今日から、男性ホルモンを抑える注射が始まるのか」
がんを退治するにはこの注射は是非ものらしい。しかし、男らしさの根源である男性ホルモンを抑えなければならないとは……。何だか割り切れぬ思いで泌尿器科の門をくぐった。
群大からの手紙を読み終えた医者はいった。
「はい、それではホルモン注射は私の方でやれということなので、こちらでやって頂きます。4週間に1回で、ええ、PSA値の変化を見ながら続けることになります」
ということは、PSA値がある数値以下に下がったところで重粒子線の照射を受けるということになるのですか?
「いや、そういうことではなくて、重粒子線照射の日程は群馬大学の方で決めます。それまで当院でホルモン注射をするということです」
はあ、そうすると、重粒子線照射を受ける頃には、私のPSA値はどれぐらいに下がる見通しなんでしょ? いま11.1だから、8? 6?
「いえいえ、1以下に下がります」
えっ、ホルモンの注射でPSA値が1以下になる? ということは、前立腺がんが疑われるかどうかの分水嶺が4.0だから、重粒子線なんか浴びなくても、ホルモン注射だけで私は前立腺がんから開放されるということになりませんか?
「いや、男性ホルモンを抑えるだけではあまりいい予後が期待できません。ホルモン注射でがんをできるだけ小さくして重粒子線を照射する方がいいのです」
ということは、ホルモン注射はしばらく続けていると効果が薄れるわけ?
「ま、そんなもんです」
なるほど。ではさっそく注射してもらいましょうか。
「いや、その前に1週間、薬を服用して頂きます。だから、注射は来週の水曜日、29日からですね。その日は来院できますか?」
というわけで、注射を覚悟して行ったら、1週間先延ばしされた。処方されたのはカソデックス錠80mgである。これを明日の朝から1日1回飲む。
ところで、カソデックス錠80mgとはどんな薬? と薬局で渡された説明文を見た。
「多くの疾患に用いられます。詳細は医師にお尋ね下さい」
何それ。早く行ってくれなくちゃ、もう「医師」にはついさっきバイバイしてきたんだから、今さら聞きには行けないでしょう。
というわけで、ネットで調べた。すると
「前立腺細胞においてアンドロゲン(男性ホルモン)のアンドロゲン受容体への結合を阻害し、抗腫瘍効果をあらわす薬」
とあった。何だ、来週からの注射と基本的な効能は一緒じゃないか。なんで先に薬を飲むんだろう?
気になる副作用は?
「乳房腫脹 、 乳房圧痛 、 ほてり 、 勃起力低下 、 性欲減退 、 腎機能障害 、 クレアチニン上昇 、 BUN上昇 、 皮膚そう痒 、 発疹 、 傾眠」
ほほう、男性ホルモンを抑えるから、やっぱり幾分かは女性化するわけだ。
さらに「重大な副作用」として
「白血球減少 、 血小板減少 、 劇症肝炎 、 肝機能障害 、 黄疸 、 AST上昇 、 ALT上昇 、 Al−P上昇 、 γ−GTP上昇 、 LDH上昇 、 間質性肺炎 、 心不全 、 心筋梗塞」
と書いてある。何のことか解らないものも多いが、ふむ、多少の女性化は我慢するとしても、こんな副作用が出たらことだぞ!
その薬はいま、我が机上にある。白い、ちっちゃな錠剤である。明朝から服用を始める私である。さて、どうなることやら……。