2023
12.08

私と朝日新聞 2度目の名古屋経済部の2 朝食は作りダメルことにした

らかす日誌

確か、ちょうどその頃だった。書店を散策していた私は1冊の本に出会う。「丸元淑生のシステム料理学」という文庫本である。
宮沢りえちゃんの写真集「サンタフェ」が書店に並んだ日だった。いや、そのヌード写真集を買おうと思って書店に行ったのではない。そもそもこの写真集は出る前から評判が高く、予約が殺到しているとメディアは伝えていた。なるほど、100年に一度でるか出ないかの美しい少女の写真集である。

「欲しがるやつがそんなにいるのかよ」

という程度の関心は持っていたが、買おうという気は全くなかった。だから、予約など入れていない。時間があれば書店をうろつくことが多い私はその日も書店を散策していて「システム料理学」という本を目にし、

「料理をシステム化するのか。この本を読んだら、俺にも料理が出来るかもしれない」

と思ってその本を手にし、カウンターに向かったのである。カウンターには「サンタフェ」が山積みしてあった。

「へえ、これが『サンタフェ』っていう写真集なの。これ、全部予約済みなんだよね」

単なる世間話のつもりだった。ところが予想外の返事が戻ってきた。

「いや、これ、お買い上げいただけますよ」

ん? 予約が殺到して印刷、製本が間に合わないといわれていたのに、いま、ここで買える?
こうなると、人の心なんてコロリと変わるものだ。少なくとも私の心は変わった。

「じゃあ、これも1冊もらおうか」

こうして私は、料理のタネ本と、宮沢りえちゃんの美しいヌード写真集の双方を買った。

で、写真集の方は1度目を通した。その後行方が分からなくなった。後に、長男が自分の部屋に持ち去っていたことが分かった。ふむ、長男も男である。健康に育った男子は、やっぱり宮沢りえちゃんのヌードを拝みたいものだろう。その後、この写真集はいまでも長男の手元にあるはずである。

で、名古屋での単身生活に大きな影響を持ったのが「丸元淑生のシステム料理学」だった。料理なんてチョチョイノチョイで出来ちゃうよ、というノウハウ本だと思って買った本が、じつは栄養学の本だった。いま振り返れば当時の栄養学の水準は低く、明らかな間違いも含んでいるが、当時の私には栄養学なんていうものは全く蓄積されていない。読めば読むほど

「なるほど。健康であり続けるための食事とはこうあるべきなのか!」

という驚きの連続だった。この本が、長い間私の食生活の基本になったのだった。
ところがこの丸元淑生さん、2008年に食道がんで亡くなってしまう。74歳だった。平均寿命が80歳を越している今、早死にである。

「えっ、あんなに健康食を取っていたはずなのに、なんでこんなに早く死んじゃうの?」

意外の感に打たれた。丸本さんが守ったのは、古くて間違った栄養学だったのかな?

前置きが長くなった。この本を読んだ私は、どんな食生活を構築したのかが、今回のテーマである。

まずは、毎日の朝食を用意しなければならない。朝目覚めて仕事に出るまでの時間は何かとせわしい。じっくり料理するなど無理である。考えつく限りの手抜きをしなければならない。

まず電気釜を調達した。日曜日、これで3合の米を炊く。炊き上がったら、0.5合ずつに小分けする。サランラップでくるみ、冷蔵庫に保管する。食べる時は電子レンジでチンすれば済む。

米の飯だけでは朝食は成立しない。まず、みそ汁がいる。みそ汁は出しと味噌、それに具で成立する。時間がかかるのは出汁を取ることである。よし、これは日曜日に1週間分の出汁を取っておこう。それを2リットルのペットボトルに入れ、冷蔵庫で保管する。毎朝、1杯分の出汁を鍋に移して加熱する。それに具を入れ、味噌を溶けばみそ汁になる。
折角自炊するのである。出来れば美味い方がいい。だから出汁にこだわった。削り節は使わず、かつ節削りを買って鰹節を削った。それだけではなく、昆布だしも取った。鰹と昆布で採った出汁。これが私のみそ汁の基本である。外食することに比べればその程度の贅沢は、金銭的にも許されるだろう。

具の基本は油揚げにした。これを短冊に切り、こプラスチックのケースに入れて冷凍庫で保管する。
そして、その他の具は、毎日用意する。ダイコンを短冊に切る。沸騰し始めた出しの中でそれを煮る。熱が通ったら火を止めて味噌を溶き、沸騰しない程度に再加熱して、最後に冷凍庫から出した油揚げを数片、この中に入れる。極上のみそ汁が出来上がる。
今日はダイコンだったら、明日はネギにするか、翌日はさいの目に切った豆腐がいいな。

ご飯とみそ汁だけというのは貧相だ。やっぱり焼き魚が欲しい。アジの開き、イワシの丸干し、カレイの干物、そんなものを焼く。

漬物は必需品だ。これも冷蔵庫に保管である。

以上で一汁二菜である。もう少し何か欲しい。ホウレンソウを湯がいた。根の方を長く、葉の方は短く湯につける。湯がき上がったら小分けにしてラッピングし、冷凍庫に保管。食べる時は電子レンジでチンし、鰹節を振りかけて醤油を注ぐ。後に、折角大量に取ってある出汁の活用を思いついた。ホウレンソウのおひたしである。春菊もお名s時用に処理した。
これで一汁三菜。立派で健康的な朝食である。しかも、用意を始めて5分もあれば完成する。言うことなしだ。

食事における私の自立が始まった。