2024
09.25

私はまだ、認知症を心配しなくていいらしい

らかす日誌

今日は足利日赤の受診日だった。主要な目的はMRIで脳の断層画像を撮ることである。

といっても、

「最近、物忘れがひどくて。人の名前なんてすぐに忘れるし、昨日何を食べたかも思い出せない。やっぱりもう認知症ですか?」

というのではない。耳の検査である。
喉に違和感を持ち、足利日赤を受診するに至った経緯は前に書いた。最終診断は「低異形度異形成」が声帯にあるというものだった、いってみれば、声帯の細胞が分裂する際、一部コピーミスが起きているということである。それが「異形成」で、その最も軽い症状というのが「低異度」である。
薄くなった私の知識では、人間の身体は37兆個の細胞からできており、脳細胞を除けば常に分裂を繰り返している。老朽化した細胞を新しい細胞と入れ換えるためである。この分裂は、全く同じ細胞ができてくれなければ困る。心臓の細胞が分裂して肝臓の細胞を生み出したのでは身体はヒッチャカメッチャカになる。だからほとんどの場合、細胞は自分と全く同じ細胞を作るのだが、そのメカニズムが狂って少し違った細胞を産み出してしまう、それが「異形成」である。
考えてみれば、がん細胞もやはり「異形成」の結果として生まれ、増殖を始める。だから、「異形成」はがんに近い病である。私の病名である「低異形度異形成」では、「低異形度」だからがん化するリスクはほとんどないとはいうものの、念のために経過観察が必要なのだそうだ。そんな懸念から月1回の通院を医師に指示され、素直に従っている。

前回の受診時、ふと思いついた。声帯の病だから、受診するのは耳鼻咽喉科である。ということは喉だけではなく、耳の専門医でもある。

「だったら、折角通院しているのだから」

と思いついたのが、右耳の難聴である。
右耳が高域性難聴だと指摘されたのは30代の半ばだった。やがて耳鳴りがするようになり、2度目に名古屋勤務した際に大学病院(名古屋大学だったか、名古屋市大だったか)でCTの検査までしたことがある。だが原因は分からず、従って治療法もない。一時、

「耳の障害には脳血流を改善するジンゴビロバエキストラクト(確か、イチョウの葉のエキス)が効く」

と聞いて半年ほど服用したが全く改善せず、その後は放っておいた。いま原稿を書いている私の右耳は、

「キーン」

という音が鳴り響いている。

という私だから、

「名古屋で検査してかrずいぶん時間がたつ。医学も進んでいるはずだ。折角耳鼻咽喉科を受診しているのだから、ここで詳しく調べれば原因が特定でき、治療法もあるのではないか?」

と考えて、担当の医師にその旨を告げたのである。

「そうですか。CTの検査もされたとおっしゃいますが、実は詳しいことはMRIでなければ分かりません。難聴だけなら心配することはないのですが、その原因が聴覚神経系に腫瘍などができていることだったりすれば心配です。安心するために、MRIの検査をしてみませんか?」

といわれて今日に至った。

MRIで断層画像を撮るのは、これで何回目だろう。腰痛で取ったし、前立腺がんでは確か2,3回撮った。ギンギン、ガンガンいう音に耐えながら、ジッと検査終了を待つ。痛くもかゆくもないが、あの音は不快である。
MRI検査を終えて診断室に呼び込まれた。

「まず、MRI検査の結果からお知らせしましょう」

と医師は口を開いた。目の前のディスプレーに、私の脳の断層写真がある。

「断層写真を見る限り、右と左に優位な差は見つかりません。左耳は正常に聞こえているのですから、右耳だけが難聴になっている原因は分かりませんねえ。ただ、懸念してた聴覚神経系に腫瘍ができていることはありません。そこは安心していただいて結構です」

はあ、MRIでも分からないのか。それじゃあ仕方がない。

「ということは、治療薬も治療法もないということですか?」

「そういうことになります」

おいおい、それじゃあ、MRIでの検査は全く無駄だったってことか?

ふと思いついた。せっかく脳の断層画像を撮ったのである。これを聞いておかねば、本当に無駄になる。

「ところで先生、私の脳は萎縮していますかね? 認知症になりそうですか?」

そろそろ私も、そんなことを気にしなければならない年代なのである。

「いや、年齢による人並みの萎縮はないことはないし、一部で血管が細くなっていることもありますが、そんな心配をされる必要はないと思いますよ」

そうか、最近物忘れが増えたが、誰もが経験する経年繁華に過ぎず、認知症という病を心配しなければならない領域には達していないのか。一安心である。これで、しばらくは原稿を書き続けることができるだろう。

以上の検査と診断で、1万1920円取られた。

私の難聴には何の役にも立たず、だが、とりあえず認知症の恐れだけは取り除いてくれた検査の代金として、これは高いのか,安いのか?

ついでに書けば、私の声帯の修復は順調だそうである。それにしてはまだ違和感が残っているのだが、後は自然修復を待つしかないらしい。だから投薬もない。さて、1ヵ月で元に戻るのか、3ヵ月、半年かかるのか。
気長に違和感が取れるのを待つしかないらしい。