12.03
前立腺の薬を変えたら
私が前立腺がんを重粒子線で治療したのはご報告済みである。おかげで、前立腺がんのマーカーであるPSAは1を切り、7月に計った数値は0.2、9月は0.3だった。がんが疑われるのは4以上だから、ひとまず治療は功を奏したようである。
だが、あれから2年以上たつのに、後遺症が残っていた。夕方から翌朝にかけて尿の出が悪いのだ。昼間は正常なのに、午後6時を過ぎた頃からおかしくなる。重粒子線は癌細胞を破壊してくれたが、勢い余って正常な細胞も破壊したかもしれないし、がん細胞が占拠していたところは隙間ができているだろう。そこを新しい正常な細胞で修復し終えるまではそんな状態が続くらしい。チャットGTPに聞いたら、通常、治療終了から3年ないし5年はそんな後遺症が残るのだそうだ。
そのため医者は前立腺肥大による排尿障害を改善する薬を処方する。私が服用し続けていた薬はナフトビジル50mgである。前立腺や膀胱の出口付近の筋肉を緩めて、尿の通りをよくするのだそうだ。毎日1回、夕食後に服用する。
ところが、これが効かない。上にかいたような後遺症がずっと続いているのだ。就寝前にトイレに行っても、おそらく尿が出きっていないのだろう、夜中に1、2回は必ず起こされる。ま、そんなもんさ、早く3年、5年が経ってくれ、と願い続けたが、とうとうしびれが切れた。ほかに薬はないのか?
これもチャットGTPにお伺いをたてた。
「就寝後にトイレで起こされるのは通常1回、多くて2回。昼間は正常なのに、 後6時を過ぎると、尿が出にくくなる。ナフトピジルを飲み始めてすでに3年以上」
と書き送ると、こんな回答をよこした。
■ 今の症状に対して「現実的に効果が期待できる」薬
あなたの状況に最も当てはまりやすいのは以下です。
★ 第1候補:シロドシン(ユリーフ)への変更
ナフトピジルより「尿道を開く力」が強い薬です。
排尿開始困難
尿線の細さ
出始めに時間がかかる
こうした症状に特に強い効果があります。
夕方に悪くなる“締まり癖”に合いやすい薬です。
★ 第2候補:デュタステリド(アボルブ)の追加
前立腺そのものを小さくしていく薬です。
効果は2〜6か月で徐々に
長期的に排尿障害を改善
ナフトピジルともユリーフとも併用可能
重粒子線治療後の慢性むくみに対しても有効な場合があります。
★ 第3候補:タムスロシン(ハルナール)への変更
副作用が比較的軽く、バランスの良い薬。
ただし
尿道を開く力はユリーフ>ハルナール>ナフトピジル
の順なので、症状から見るとユリーフのほうが適合しやすいです。
■ あなたのケースで一番適している可能性が高いのは?
症状の出方から推測すると、
① ユリーフに変更
→ 最も合う可能性が高い
→ 数日〜1週間で効果が出る
次点で
② ユリーフ+デュタステリドの併用
→ 中長期的に根本改善が期待できる
→ 組み合わせとしてよく使われる
昨日、かかりつけの泌尿器科に行った。ナフトビジルが切れたためである。そこで医者の診察を受け、ついでに
「チャットGTPに効いたら、私の症状にはユリーフがいいというのです。チャットGTPはしばしば間違った回答をよこすので100%信頼している訳ではありませんが、どうでしょう、薬を変えるという選択肢はないものでしょうか?」
と聞いた。医者は辞典のようなものを開いたから、おそらく、あまり知らない薬だったらしい。その辞典で、ユリーフが処方薬の中にあることを知ったのだろう。
「じゃあ、変えてみますか?」
と打診してきた。ただし、処方は2週間分にしたいという。
「効果を見なければなりませんから」
何だか、処方薬の人体実験が始まるような雲行きである。つまり、この医者はユリーフを処方したことがなかったようなのだ。
が、2週間でまた通院するのは面倒である。しかも、処方薬である以上、安全性はかなりのレベルで確認されているはずだ。
「いや、2週間では…。せめて1ヶ月とかにしてもらいたいですね」
「しかし、1ヶ月だと、次は正月休みにかかってしまいます。分かりました。じゃあ6周分ということで」
こうして私はユリーフを手に入れた。と思っていたが、現実に入手した薬はシロドシンOD錠2mgと書いてあるからジェネリックなのか。
こいつを飲み始めたのは昨夕からである。朝夕に服用する薬だから、これまで3度飲んだことになる。
チャットGTPは
「数日〜1週間で効果が出る」
といっていた。だから、即効性はそれほど期待していなかった。
ところが、である。この薬、驚いたことに直ちに効果を発揮し始めたのだ。飲んで1時間ほどでトイレに立った。これまでなら尿が出渋っていた時間帯である。ところが昨日は実にスムーズに出てくれたのである。そればかりか、夜中に起こされることも、多分なかった(このあたりは、記憶が不鮮明)。そして今日も、尿が出にくいことはない。いやはや、服用が1日2回になったのを除けば、実に快適なのである。
いってみれば医者とは、施術を除けば知識で勝負をする仕事である。知識には大学で学んだこと、積み重ねた経験知、新たな医学論文を読みこなすことなどで身に付く。それをもとに診断し、処方せんを書く。しかし、人間の努力や記憶力には限りがある。医者も人間である以上、知らないこと、忘れたこと、気がつかないことは山ほどあるはずだ。
ところがAIは違う。知識はいくらでも蓄えることができる。蓄えにない知識はWebを検索して身に付ける。総合的な知識量は人間をはるかに上回るのである。
AIが進化を続けると、士商売はなくなるといわれている。医士(本当は師だが)、弁護士、公認会計士などがその代表らしい。
なるほど、そんな時代が来るかもしれないな。勢いよく出てくれる尿を見ながら、そんな思いを持った私であった。


