2019
10.01

健全なる精神は健全なる身体に宿る、のだそうだ。

らかす日誌

見出しの言葉を正確に引用したくてネットで調べた。だからこれで間違いないはずだが、ついでに

「へーっ」

ということを知った。
この言葉、もとは古代ローマの詩人、ユヴェナリウスが言ったのだそうだ。もっともユヴェナリウスといわれても、私は名前さえ知らない人だが。
そして、この日本語訳は不健全なのだそうだ。そもそもユヴェナリウスが言ったのは

「健全なる肉体の中に、健全なる心」

で、健全な身体と健全な精神さえあれば、他には何もいらないではないか、という意味だとか。なるほど、不健全に翻訳されたが故に、いたずらにスポーツマンを崇め奉る故事成句になっているわけだ。
一流のスポーツマンが最高の精神を持っている? 国際大会で好成績をあげたいが故に禁止薬物を使う選手はあとを絶たないし、ライバル選手に意図的に禁止薬物を服用させた疑惑が持たれたチームも確かあったよな。筋肉モリモリマンにはおかしな人もたくさん混じってるのが現実である。

てなことを改めて書きたいわけではない。書こうと思ったのは

「ああ、やっぱりちゃんとした頭脳の働きは、健康あってこそだよな」

という1点である。そう、頭脳が涼やかに働くには身体の健康が必須であるということである。そんなことを考えていたら

健全なる精神は健全なる身体に宿る

とうう言葉が浮かんだのである。

さて、健康でないと頭脳の働きが鈍ることを先日来実感し続けている私である。
9月20日の日誌にあるように、先月後半の私は働き過ぎでヘロヘロの状態であった。一日中身体が重い。頭が鈍い。9月23日に何とか日誌を1本まとめたものの、

「今月は原稿が少ないな」

とは感じつつ、でも原稿を書く気になれなかった。ために、9月に書いた日誌はわずか6本。5日に1本の割合である。いかにも少ない。疲れがなかなか抜けない年代に入ってしまったのである。決してサボりたくてサボっていたのではない。お許しを。

それにしても、である。今日から消費税率が上がった。
それはそれで、ある意味仕方がないと思うのだが、テレビや新聞を見ていると

「おいおい、日本、大丈夫かよ?」

と思ってしまう。

まず、霞ヶ関のレベルが下がった。
8%を10%に引き上げることの是非は、この際おく。あれまあと嘆きたくなるのは、複数の消費税率を採用してしまったことである。食品を店内で食べると10%、持ち帰れば8%という分かりにくさはまだ可愛い方である。驚いたのは、持ち帰る食品にしても、食品は8%だが、食品を箱に入れると箱代には10%の税率が適用されるのだという。それって……、面倒くさすぎないか?

積み上がり続ける赤字国債に肝を冷やした官僚諸氏が、8%の税率を10%にして少しでも国の赤字を減らさねば大変なことになると考えたのは理解できないことではない。2%ポイント程度の引き上げで何とかなる赤字ではないと思うが、それは横に置く。
その官僚諸氏のプランに不思議なデコレーションをしてしまい、現場の混乱を引き起こしたのは政治家たちの仕業である。選挙という洗礼を受けねばならない彼らは、

「生活困窮者のため」

という、実は自分の選挙のための口実を振りかざし、生活必需品は8%に据え置こうと税率引き上げ案をいじりまくった。その挙げ句の混乱である。バカというしかない。

そもそも消費税というのは所得の多寡にかかわらず同じ税率が適用される税である。まあ、金持ちはたくさんお金を使うはずだから、総納税額では貧困者より多いだろう。しかし、可処分所得のほとんどを生活必需品に投じざるを得ない貧困者にも同じ税率が適用されるから、彼らが暮らしにくくなることは当然である。貧乏人泣かせの税制と言われるのはそのためだ。
だから、

「生活困窮者のため」

というのなら、消費税をなくすのが正しいアプローチである。生活必需品だけ2%ポイント低い税率にしてもらっても、恩恵はない。
あるいは、生活困窮者を公的に認定し、その認定証を持った消費者だけは消費税をかけないようにする。もっとも、これは買い物のたびに認定証を示さねばならないことで生活困窮者のプライドを傷つける制度である。また認定証を不正に入手し、闇市場で高値で売る恥知らず連中を生み出すことにもなりかねない。
やっぱり、税制を根本から見直し、所得に応じてどのように税金を集めるのがいいのかを考えるしかないのではないか。

消費税率が上がったことを報じるテレビや新聞は、いったい何を国民に伝えたいのか。
新聞は自慢げに

「新聞は8%のままですから購読料は据え置きです」

と自慢げに書いていた。消費税率引き上げって新聞の購読料の問題か?

10%と8%の混在で手間が増える商店をインタビューも多用された。だが、そんなこと、今回の引き上げが決まったときから分かりきっていることである。決まる前に

「こんな引き上げ方をしては、物流の現場が混乱する。何ということをするのか!」

と政府を攻撃し続けていたのならまだしも、それもせずにおいて

「混乱してます」

とレポートして何の役に立つというのか。
私の目には

「混乱は私たちの飯の種です」

と言っているようにしか見えない。

私は消費税にはいまだに違和感を持ち続けている。税率引き上げも心地よくない。だが今回の動きを見ていると

「税制はシンプルに」

という原則に戻った方がいいと思う。
考えてみれば、たかが2%ポイントの引き上げである。1万円の買い物で、上がる分の消費税は200円に過ぎない。だったら、どんな商品であるかを問わず、必需品であるかどうかは無視して、一律10%にしたほうがすっきりしていたのに、と考えている。そちらの方が消費税という徴税手法の本質が明らかになって、より根本的な議論の出発点になったのではないか。

テレビで、2つの税率に戸惑う商店主、

「皆さんが消費税率行きあげ前だというのでたくさん買われているのをみて、私もティッシュペーパーを買っちゃいました」

とにこやかに語る主婦。
そんな画面を見ながら、苦々しい思いをする私であった。

うん、身体はだいぶ元に戻って健全な肉体に戻りつつあるらしい。