文芸春秋を読んで、『なるほどね」と思った。

前々回書いた「習近平が脅えた?」という原稿をご記憶だろうか。イランのハメネイがピンポイントでアメリカに殺された。これを知った習近平が

「監視カメラがハッキングされて居所を知られた。ということは、俺もやられる恐れがある」

と脅え、北京のコンビニに備え付けられている監視カメラの稼働を止めた、という話である。「選択」4月号の記事で知った。

それと同じ事実を、文芸春秋5月号が取り上げていた。「暴れ獅子トランプと女豹高市の生きるか死ぬか」という記事である、今や日本を代表する知性を持つとの評価が高い池上彰氏と佐藤優氏の対談である。そして、「選択」の記事をばっさりと切り捨てている。該当箇所を引き写す。

池上:イスラエルがテヘランの交通監視カメラを全てハッキングしていたという報道もありました。本来なら極秘事項なのに、それが表に出てきたことが不思議です。イスラエルにとって、弱体化したイランはすでに危険な存在ではなくなったのでしょうか。

佐藤:どれもあると思いますが、真実の情報源を隠すため、という見方もできます、

池上:そうか。

佐藤:実際は監視カメラではなく、ヒューミント(人的情報収集)で情報を得ているからこそ、それを電子戦で取ったのもものだと喧伝している可能性は十分あります、ネタニヤフの場合は,失敗はすなわち失脚です。残りの人生を首相官邸で送るか、サラ夫人ともども刑務所で送るか、その二択の瀬戸際を歩いている人物ですから,あれほどの攻撃は高確度のヒューミント情報に基づかないと怖くて実行できません。

池上:空爆の場合はすぐに誰を殺したかはわからないのに。今回は的確に、ハメネイ師への攻撃以外でも,国家安全保障最高評議会の事務局長やイラン革命防衛隊の報道官が死亡したことを発表できています。これは相当数のヒューミントによる情報網が構築されているということかもしれません。

「選択」を読み終えてまもなくこの記事を読んだからだろう、

「なるほどな」

と感じ入った。確かに,交通監視カメラがハッキングされていたという報道があったとすれば、それは政府関係者がリークしたわけだ。複雑な世の中である。

「国民は事実を知らねばならない」

などという青臭い理由でリークが行われることは稀である。私も記者時代、いくつものリークを受けたことは「私と朝日新聞」に書いたが、リークする側にはリークする「理由」があるのがほとんどある。それを考えれば、「選択」の記事より、佐藤優氏の分析の方が筋が通っていると思える。

だとすれば、だ。「選択」の記事のこの部分はどう読めばいいのか?

3月中旬、北京市中心部のあるコンビニエンスストアの経営者に区の担当者から1通の通知が届いた。店内に設置された防犯カメラの使用を当面停止するように求める内容だった、理由は明記されていない。
店舗には複数のカメラがあり市が主導する監視ネットワークに接続されていた、。人工知能(AI)を駆使した監視システム「天網工程」。
高速カメラ、地理情報システム(GIS)、顔認識AIを組み合わせ、主要道路や重要施設をリアルタイムで見張る。北京は世界でも類を見ない高密度監視都市となっている。
その末端のコンビニのカメラが理由もなく止められた。関係者の間では「当局は米国の情報機関から覗かれるのを恐れているのではないか」と囁かれる。

文春の記事を読んだ私は、こう思う。

「こんなこと、北京で本当にあったのかね? 中国の情報機関だってバカではないはずで、西側のメディアに監視カメラのハッキングという記事が出たら、なぜこんな情報がリークされたのかを疑うはずではないのか?」

だから、習近平が脅えたのかどうかはわからなくなった。ただ、あのような地位にいる人である。おそらく周りは阿諛追従しながら、ほんとは何を考えているか分からない連中に取り囲まれているはずだ。だとすれば、本当に脅えるべきはヒューミントなのではないか? できれば習近平の寝首を掻きたいとスパイを働く側近がいないかどうかではないか?

ま、私が心配しても仕方がないことではあるが。 いま習近平はどう考えているのだろう?

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