今日は妻女殿の定期検診の日であった。朝9時過ぎに桐生をたち、前橋日赤に向かった。定例行動である。
今日、妻女殿は車いすに頼らず、自分で動くといった。だから私は妻女殿を車から降ろすと、けやきウォークに向かった。ここで時間を潰す。
時間を潰すついでに買い物をした。
「無印良品のハンガーが使いやすいわ」
という妻女殿の指揮に従い、けやきウォークに入っている無印良品に向かったのだ。目的はハンガーである。
店に入った。周りを見回すが、ハンガーらしきものが目に付かない。そんな時、商品の陳列を直している店員が目に留まった。見たところ。50歳前後の女性である。声をかけた。
「すみません。『えもんかけ』はどこにありますか?」
実はこの時、「ハンガー」という単語が出てこなかった。この歳になると時折起きる瞬時の忘却である。固有名詞がしばらく出てこない。「ハンガー」が出てこず、出てきた言葉が「衣紋掛け」だったのだ。
「それではこちらに」
私は案内された。
「こちらがえもんかけです」
といわれて、彼女が指し示す「えもんかけ」を見た。
「これ,エプロンと違います?」
「はい。衣紋掛けって、エプロンですよね」
……………
私は外国人と話しているのだろうか? ま、それも今の日本ではありうることである。しかし、彼女を見ると。日本人としか思えない。
「いや、衣紋掛けとエプロンは違うでしょう。衣紋掛けって、シャツやジャケットをかけて吊るすものだと思うのだが」
といいながら、ここまで断言されると私の確信も薄らいできた。衣紋掛けって、エプロンのことなか? 私に認識が間違っているのか?
「いや、私が欲しいのはエプロンではない。ほら、シャツとかジャケットとかを吊るすものがあるじゃないですか」
彼女は、ここまできてやっと私が求めているものが分かったようだ。その視線を追うと、ハンガー群があった、こうなれば、もう彼女は不要である。
「あ、あそこだね」
そういって私は、ハンガー6本を買ったのであった。
しかし、「えもんかけ=衣紋掛け」が通じなかった。ショックを受けた私jは自宅に戻ると「衣紋掛け」を検索した。
「俺は間違った単語を使ってしまったのか?」
という思いに捕らわれたのである。
Googleはこんな答えを出した。
「えもんかけ(衣紋掛け)とは、主に着物を干したり収納したりするための専用ハンガーのことです。直線的な和服の袖を通して、しわを伸ばしながら陰干しできるように幅が広いのが特徴です。現代では洋服用のハンガーを指すことも多い言葉です」
「ハンガー」といいう単語を瞬時思い出せなくなった私が,その代わりとして表示した「衣紋掛け」に間違いはなかった。では、あの女店員は
「衣紋掛け」
という言葉を、なぜエプロンと結びつけたのか?
謎である。彼女の教養が低かったのか、衣紋掛けという言葉が死滅しつつあるのか。私と同じ語彙を持つ世代は死につつあるのか?
あなたは「えもんかけ」と耳にしたら、直ちに「ハンガー」を思い浮かべることができる世代ですか?

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