しばらくぶりで歯医者に行った。一昨日から左下の奥歯が痛み出し、ついに音を上げたのである。
始まりは10日ほど前だった。ある料理にコショウを振りかけようとペッパーミルを使ったのがいけなかった。何かの弾みでねじが緩んでいたらしく、ペッパーをすり潰すグラインダーがぽろりと外れ、まだすり潰れていないホールが料理の上に降りかかった。あれまあ、失敗したわいとは思ったが、すでに料理の一部になったペッパーを取り除くのも面倒である。かみつぶせばいいではないか、と料理を口に運び、奥歯でかみ砕こうとしたときのことだ。
ガリッという音がした。それだけなら意図通りなのだが、同時に強烈な歯痛に襲われたのである。思わず,
「痛てっ!」
と声が出るほどの痛みだった。ありゃあ、これはいかんぞ。何が起きたんだ? 口の中に指を突っ込み、痛んでいる歯に触ってみた。すると、グラグラしているではないか。
「あ、「ひょっとしてこの歯、歯槽膿漏? その歯で固いものを噛んだのが痛みの原因か?」
食事を終え、AIのジェミニに症状を伝え、対策を聞いた。すると歯医者に行け、という。いや、それほどたいしたことではあるまい。自分で治療できないか? 再度質問すると、いろいろな薬剤を紹介した。それを見て
「私、歯磨き粉は歯槽膿漏にいいというハレスを使い、歯肉炎の治療薬である塗り薬のハレスも持っているのだが」
とい打ち込むと、
「それはいい! それを使いなさい」
と答えてきた。それで毎日ハレスで歯を磨き、塗り薬を患部に塗布し続けた。歯がぐらぐら揺れるのはなかなか改善しなかったが、痛みはほとんどなく、左の奥歯でも食べ物を噛むことができる。つまり小康を保っていた。
事態が急変したのは25日土曜日である。朝から歯が痛い。左の歯でものを噛むなんてできない。やむなく、右の歯で食物をすり潰す。それでも左下の奥歯が痛む。勢い、あまり噛まずに飲み込ことになる。
それでも事態を楽観視していた。
「痛みが激しくなったのは直りかけだからではないか?」
ただ、痛みだけは抑えなければならない。私はロキソニンの服用を始めた。
そして日曜日。相変わらず歯痛は続く。ロキソニンをほぼ7時間おきに1日3回飲む。痛みは引かない。口に入れたものは右の歯で噛むしかない。右の歯で噛んでも、左の歯からは痛みが出ある。ああ、これはいかん,潮時だ。
今朝、妻女殿行きつけの歯科医に予約をとり、今日の夕刻でかけた。
「あら、大道さん、お久しぶりですね。どうされました?」
そういう医師に、事態の推移を時間軸を追って説明した。
「そうですか。では見せていただきましょう」
精いっぱい開いた私の口をのぞき込んだ医者がいった。
「あれ、大道さん、これ、歯が割れています。うん、これなら痛いはずだ」
歯が割れてる? ホールのペッパーを噛んだだけで私の歯が割れた? そんな…。
「これ、割れた方を取り除きます。そうすれば痛みは治まるはずです。ねえ、君、麻酔の用意を」
割れた歯は奥から3番目の歯だった。ちくりとした痛みとともに患部の感覚がなくなり、やがて「割れた歯」が取り出された。
「ほら、これが割れた方の歯ですよ」
鏡で残った歯を見せられた。なんだこれ、残っている歯はほとんどないじゃないか。残った歯の一番上が歯茎と同じ高さだもんな。
「はい、今日はここまでにします」
ちょっと待ってください。これじゃあものを噛めません。これ、この歯、何とかなるんですか?
「はい、次回から治療をします。噛めるようにしますから、しばらく通ってください」
ふむ、この残った歯にどんな細工をすれば、噛める歯になるのだろう? 私の想像力ではどうしてもその実像が浮かばないのであった。
次の診療は5月8日である。
とだけ事実をレポートして、今日の日誌を閉じてもいいのだが、やっぱりトランプに暗殺者が出てきたことは触れておきたい。
もう皆様、事件の概要はご存知だろう。トランプが無事だったことも世界中が知っている。
だが、これがトランプが暗殺されかかった2回目であることに私は関心を持った。私がすぐに思い出したのは帝政期のローマ帝国である。
帝政期のローマ帝国で暗殺された皇帝は10数人に上る。なぜこれほど暗殺が「流行」したのか?
ローマ帝国の皇帝の地位は終身だった。だから、その施政がローマの利益からかけ離れた場合、皇帝を殺すしか政治を変える方法がなかった。だから著名なところではカリグラ、カラカラ、ドミティアヌスなどが近衛兵、新鋭隊長などによって殺された。殺した人物が皇帝の位を狙ったという話はない、だとすれば、彼らは
「これが国のため、民のため」
と信じて時の最高権力者を刃にかけたのではないか。とにかく、皇帝を取り換えなければローマ帝国はどこまでも落ちると思い込んだのではないか。
トランプはあと2年半もすれば大統領の地位を失う男である。それでも、2度にわたって命を狙われた。暗殺を賛美するわけではないが、それを招いたのは、世界中を混乱に陥れるトランプの奇矯な振るまいではないのだろうか? トランプに銃を向けた2人は、あと2年半も待ったら、アメリカも世界もおかしくなると思い込んだのではなかったか。
そんなことを、ニュースを見て考えたわ私であった。

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