2008
01.23

2008年1月23日 初雪

らかす日誌

東京を豪雪が襲った夜だった。同僚と2人、六本木までタクシーで出かけた。食事の約束があったのである。

「運転手さん、そこを右に入って。…………。うん、ここでいいよ」

料金を支払って車を降りようとした。

「あのー、申し訳ないんですが……」

運転手さんの情けなさそうな声がした。

「悪いんですが、坂の上まで車を押してもらえませんかね。このままじゃ動けなくなっちゃうんで」

確かに、後輪が空転している。

「動かそうとしたんですけど、タイヤがスリップしちゃってねえ」

そうなのだ。東京のタクシーは雪に弱い。車輪の半分ぐらいが雪に埋まっただけで身動きが取れなくなる。冬の札幌に研修に行ってきなさいよ、と言いたくもなる。

確かに、我々が降りたのは、上り坂の途中だった。その近くに目的の店があったからで、運転手さんに嫌がらせをする気などなかったのはいうまでもない。しかし、東京のタクシー運転手の技量を読み誤ったのは我々の落ち度である。責任は取らねばならない。

「分かった」

同僚と2人、降りしきる雪の中でタクシーを押した。押して、坂の頂上まで押し上げた。汗がにじんだ。

「どうもありがとうございました」

タクシーは去った。我々は残った。残りながら思った。

おいおい、押し賃ぐらい払って行けよ。あんたの技量を読み誤ったのは俺たちの落ち度だが、あんただって、自分の技量を無視して上り坂に突っ込んだんじゃないか。それに、俺たちは客だぞ。どうして客が汗をかいて車を押さなきゃいけないわけ? せめて、タクシー代と同額の押し賃を――。

すでにタクシーは走り去っていた。

今日、横浜で初雪。東京では初めての本格的な雪。積もりはしなかったので、

初雪や 二の字二の字の下駄の跡

状態にはならなかったが、いずれにしても冬本番である。

冬来たりなば春遠からじ

いましばらくの間、皆さんのご自愛をお願いする。