01.16
2010年1月16日 小沢バッシング
いやはや、日本も怖い国になってしまった。単なる帳簿記載のミスで逮捕されてしまうんだもんなあ。
私だって時折、経理に実費精算の書類で指摘されることがある。
「大道さん、これ、経費じゃ落ちないんですけど」
「領収書と経費精算所の日付が違っているんですけど」
まあ、人間、ミスはする。が、こんな指摘を受けて気分がいいはずがない。いやな気分にならないために、気を付けて書類仕事をする。だが、やっぱり間違いは起きてしまう。
「えっ、ああ、ごめん。こちらでやり直す? それとも、そっちでやってくれる?」
通常は、その程度で済む。ところが、そんな話も聞いてくれず、問答無用で牙をむき出す組織が日本にある。それを検察庁と呼ぶらしい。
小沢疑惑に絡んで逮捕された元秘書の石川知裕議員の容疑は、小沢氏の資金管理団体の収支報告書でミスをした、というだけだ。この団体が3億4000万円で土地を購入した。ところが、購入原資がその年の収支報告書に書いてなかった。支出も記載されていなかった。
だけのこと、と書いたのには理由がある。今朝の朝日新聞には、意図的かどうかは別にして、触れていない事実がある。今週出た週刊朝日の「小沢vs. 検察 最終戦争」というおどろおどろしいタイトルの記事によると、この土地は、登記された翌年1月の政治資金報告書には計上されているのである。
週刊朝日の表現は曖昧ではある。
「陸山会が04年10月に3億4000万円で購入した宅地(476平方メートル)について、政治資金収支報告書では、登記された05年1月に計上したことが虚偽記載に当たる—としている」
これだと、何が計上されたのかははっきりしない。が、文脈から判断する限り、土地購入資金の収入も、代金を支払った支出も計上されていると判断するしかない。以下、それを前提に書く。
ということは、である。報告書のミス、と大々的に喧伝されていることの実態は、計上した時期のずれ、なのだ。売買と登記の時期がずれた。計上は登記の時期に合わせた、と説明すればすんでしまうことである。
これって、逮捕しなくちゃいけないほどの重大犯罪なのか?
いやいや、土地購入資金が複数の口座に分散入金されてるのが怪しい。
陸山会に金があったのに、土地代金は銀行から融資を受けている。怪しい。
土地購入直前に、5000万円の裏金を渡したといっている土建屋のオヤジがいる。怪しい。
様々な疑惑が紙面で踊っている。でも、本当に怪しいか?
著名な政治家の資金管理団体である。政治家は八方美人になる必要もある。口座をひとつの銀行だけにまとめれば、ほかの銀行から恨みを買うことになる。いくつもの口座を持つ。いくつもの口座に分散入金する。それは、政治家の身過ぎ世過ぎではないのか?
同じ週刊朝日に、こんなコメントがあった。
「問題の土地代は一時的に小沢さんの奥さん、和子さんから借りて支払い、あとで小沢さんの定期預金を担保に銀行から借金して和子さんに返したと聞いています」
裏付けがあるかどうかはともかく、筋としては納得できる。
裏金疑惑も、ホントかね?
いまのところ、裏金があったといっているのは、この土建屋のオヤジさんだけである。このオヤジさんの話が本当だという証拠は、私が知る限り出ていない。
仮に裏金が渡っていたとしても、単に受け渡しの時期が近いというだけで、この5000万円が土地購入に使われたといえるのか? お金には本籍地は書いてないのである。
いや、それがわからないから逮捕という強硬手段を執って事実関係を明らかにするのだ、というのが検察の主張だろう。
だが、ちょっと待ってくれ。逮捕とは、あんたらにとっては日常茶飯事のことかもしれないが、一個人にとっては青天の霹靂である。それに、逮捕で自由を制限されるのは、逮捕するあんたらではなく、逮捕された市民なのだ。
だから、市民の自由を制限する逮捕には、疑惑の存在を疑わせる相当な事実が必要である。言い換えれば、そこまで疑わしいんだったら、強硬手段を執るのも仕方がない、と大多数の人たちが納得しなければならない。
ねえ、新聞に出てきた事実から、あなたは逮捕は当然だと思います?
私は思わない。いまの検察のやり方は、十分な事実を示すのではなく、マスコミに意図的に断片的な情報を漏らし、馬鹿騒ぎが大好きなマスコミを踊らせて「大多数」を作ろうとしている、としか見えない。
あれだけテレビ、新聞、週刊誌をあげて、検察が意図的にリークした情報だけで土地購入疑惑を騒ぎ回れば、
「税務署は1円の記載ミスでも厳しく指摘するのに、有力政治家になると何でもありなのか?」
なんていうお馬鹿さんがいっぱい出そうだもんね。しかも、小沢氏にはマスコミが作り上げた悪のイメージがつきまとい、金額も4億円と巨額。やっかみも手伝って、小沢バッシングが盛り上がる土壌は十分だもんな。
だが、あらゆることは一方的な情報だけで決めつけてはいけない。夫婦げんかだって、いつも夫が加害者とは限らないのである……?
にしても、だ。いったい、検察はどこに行こうとしているのか?
週刊朝日は、検事総長人事に民主党が手を突っ込んでくるのを阻止することが検察の狙いだと書いている。そういえば、去年は、取り調べの透明化を阻止するため民主党政権実現を阻止するのが検察の狙い、という記事もあった。あれも週刊朝日だったかな?
だとすれば、検察は公益ではなく、私益に駆られているということになる。
強権力を持った集団が狂うほど恐ろしいことはない。皆さん、検察の動きに注目しましょう! 何しろあそこは、自分たちの裏金疑惑を告発しようとした元検察官を逮捕して口封じした実績のある組織ですからね!