11.10
2014年11月10日 礼の国
我らが首相、安倍っちが今日、北京で習近平と会った。わずか25分の会談だったと、国営放送NHKが報じた。
さてこのニュース、ご覧になっただろうか? 私は晩酌をしながら見た。ほほう、政治とは、国際政治とはこのようなものか、という見事な解説になっていた。
硬い表情ながら、一生懸命笑みを浮かべようと努力しつつ習近平に歩み寄る我らが安倍っち。まあ、日本という国を代表して、何かときな臭い仲になってしまった隣国、中国のトップと、就任以来初めて会うのだ。その程度の礼はわきまえていると見える。
ところがだ。相手の習近平、まあ、これが絵に描いただるまさんのように笑わない。そればかりか、我らが安倍っちと目を合わせようともしない。終始硬い表情で、イヤイヤながらこの場に来てしまった、というボディランゲージを全身から発散していた。
背は習近平の方がやや高い。横幅は習近平の方が遥かにある。安倍っち、焦ったろうな。だって、目を見ようと思えば上を向かざるを得ず、どうしても臣従の形になる。それを拒否すべく、
「何だと! 表に出ろ!」
といいたくなっても、どうやら表に出ても体格からして勝ち目がなさそうである。ひょっとしたら、
「何でこんな奴と会う羽目になっちまったんだろう?」
と、時代を呪ったのではないか?
安倍っち嫌いでは人後に落ちない私でも、思わず安倍っちに同情したくなる図であった。
思えば、中国は儒教の国、礼の国である。そこから流れてきた学問で、韓国も日本も礼の国になった。その本家本元のトップが、この礼に欠けた振る舞い。尋常のことではない。何故だろう?
習近平は沢山の問題に取り囲まれている。
経済が失速しそうである。これまでは景気がおかしくなると財政資金を使って公共事業を増やし、何とか高度成長を維持してきた。が、もう金が続かない。そればかりか、国の政策に従ってきた地方政府の半数は、返済できないほどの借金を抱え、青息吐息だという。
あれもこれも、腐敗官僚が金を中抜きし、私財を蓄えたからである(習近平もその一人であるはずだが)と、これまではタブーだった高官までも摘発した。それで庶民の支持を高めようと思ったのだろうが、
「こりゃあたまらん」
と、甘い汁を吸ってきた財閥、トップを摘発された軍がアンチ習近平の姿勢を強めた。今春、習近平がウイグル自治区を視察中に、彼からわずか3㎞ほど離れた場所で起きた爆破事件は、当初ウイグル族の反抗といわれていたが、最近になって、財閥、あるいは軍が関与したのではないか、という疑惑が出ている。
中国の経済改革は確かに一定の成果を上げ、、富裕層が増えた。しかし、富裕層が増えるということは、国内で貧富の格差が際立つことでもある。経済が順調に拡大すれば、いまは貧しい層もやがては中間富裕層に上ることもできるだろうが、それが実現する前に経済の失速が目の前々に来た。であれば、少なくとも貧困層の不満を取り除かねばならぬ。ここは「我らの指導よろしきを得て」豊かになった層への課税を増やし、その金を貧困そうに回して時間を稼がねばならぬ。
が、だ。一度豊かになった連中は、己の富を何とかして守ろうとする。ん? 貧しい人たちがいる? はい、それは知ってます。だけど、あいつらは怠け者。私はヤツらの5倍も10倍も努力した。その成果を、どうして怠け者に分けてやらねばならぬ?
新興富裕層は、いまの共産党政権に反発する。
そこへ香港の問題が起きた。
難題ばかりである。おいおい、いったいどうすりゃいいんだ? と、習近平でなくとも頭を抱えたくなるだろう。
そもそも、日本に強腰であたってきたのも、本来の不平分子である貧困層の不満をそらすためである。とにかく日本が悪い。あれもこれも日本が悪いからだ。そう誘導をし続けなければ、貧困層の不満が、真っ直ぐ中国共産党に向いてしまう。それだけは避けねばならない。
だから。いま習近平は、安倍っちに笑みを見せてはならないのである。笑みを見せたら。本来の革命分子である貧困層の不満のはけ口が真っ直ぐに中国共産党に向いてしまい、蟻の一穴となって共産党支配に就園をもたらしかねないのである。
というのは、おおむね、雑誌で仕入れた知識である。ま、今の中国を見ていれば、
「そうだろうなあ」
と思えるので書いてみた。
しかし、いま中国の13億の民のトップに立つとは、誠にストレスが募ることであろうと同情すら覚える。それでも一番上まで駆け上がりたかったかね、習近平さん? ご苦労様。
朝一で、なじみの修理工場に車を持ち込んだ。オイルパンからほんの少しだけオイルが漏れており、先週見てもらったら、
「パッキンがダメになってますね」
で、部品を取り寄せてもらうことにし、先週半ばに
「部品が来ました。今週は作業が立て込んでいるので週明け、月曜日に来て下さい」
との連絡を受けた。いや、受けたはずだった。そして、今日。
「あれっ、今日でした?」
呆然とする私の前でスケジュール帳をめくりながら、事務の女性が言った。
「予定は明日なんですけど、私、月曜日っていいました?」
いや、いまになっては水掛け論になる。そして、いくら水掛け論を続けたところで、今日は他の作業が予定されているのだから、私の車に手が回るわけもない。
「わかった。じゃあ、明日出直すわ」
その帰りに皮膚科に寄り、左手にできた湿疹の薬を受け取ってきた今日の私である。