2016
07.02

2016年7月2日 またしても

らかす日誌

EUなのですが。もう飽きた?

今朝の日本経済新聞に、まあ、私が待っていたような記事がやっと出た。1面で始まった

「震える世界 英EU離脱を聞く」

である。
新聞記者の方々は何かどでかいことが起きると、自分で調べて考えるより、肩書きのある方に解説していただくことをお好みになるようである。まあ、確かに仕事としては手軽で、たいした勉強をせずとも仕事をしたふりは出来る。それに、素人同然の記者諸公が独自の、でもホントかよ、と突っ込みたくなる解説をお書きになるより、ましではあろう。
でも、それでいいのかねえ。記者の知性の衰えがますます進んだりしないか?

それはそれとして。
日経のインタビュー企画の第1回は、国際政治学者のイアン・ブレマー氏が登場された。と、あたかも既知の方のごとく書いているが、何のことはない。こんな方がいらっしゃるのはこの記事で初めて知った私である。

質問は

——欧州問題を今年のトップリスクのひとつに予想し、的中しました。

から始まる。ちょっと不安定な日本語だが、まあ大目に見よう。この質問への返答の中に、私が知りたかったことが少しだけ頭を出している。それは、この部分だ。

「英国民が離脱を選んだ背景には移民や主権の問題もあるが、それ以上に国から大切に扱われず『社会契約』が途絶えたと感じる人々の抗議という側面が大きい。投票結果はEUへの拒絶と同時に、支配階級層に対する拒絶も意味している」

ほうほう、やっぱりそうなのか。エリートだけがいい思いをし、自分たちが高級な食事を楽しんだ後にふと目を落としたテーブルに落ちていたパン屑程度しか庶民には与えないことへの不満が爆発したわけだ。

そりゃあそうだろうなあ。EUを離脱するか、留まるか、何て問いかけられたって、EUの一員であることのメリット、デメリットをきちんと整理し、自分の判断でどちらかに票を投じる人なんて究めて少数でしかないはずだ。私はその問いに答えるだけの準備はいまだにないし、あなたなら自信を持って

「こちらだ!」

といえます?
そして、その事実に関しては残留派も離脱派もたいした違いはないはずで、いまの暮らしに満足か不満かが投票判断を決めた、ということではないか。

ひるがえってみれば、世界に冠たる平等社会を誇っていた日本でも、20世紀の終わり頃から格差が広がり始めている。
かつて、日本とドイツの大企業経営者の所得は驚くほど低かった。私の記憶だと、あのメルセデス・ベンツの会長さんが、日本円にして年収4000万円程度、トヨタ自動車の社長さんが6000万円程度であった(記憶=不確か。だからそのまま信用しないように)。
それなのに、いまではつぶれかけた会社の社長、会長が平気で億単位の年収を引っさらっていく国に日本はなった。それが米国型の資本主義、会社経営だそうで、思い起こせば日本の経営者どもはバブルがつぶれた1990年頃から、

Japan as No.1

と自信で全身を膨らむだけ膨らませていた昨日を忘れ果て、

「米国負けちゃった。もういちど米国を勉強しなくっちゃ」

とひたすら米国型経営の導入を図ってきた。彼らは

「日本経済の立て直しに努力した」

というのかも知れないが、何のことはない、単なる猿まねでしかなかった。歴史も文化も制度も違う国で行われている経営を、歴史も文化も制度も違う国でそのまま実行しようというのだから、猿並みの知能でしか行えないはかりごとでしかないと私はバカにしていたが、やはり力は私より奴らの方が強いからすっかり定着した。
年収200万円に満たず、結婚も出来ない若者が増えているのは、企業経営者がが旗を振り、自民党政権が舵を取って進めた木に竹を接ぐ作業の結果である。こうして格差社会が生まれた。

ということは、イギリスで起きたことは、いずれ形を変えて他国でも日本でも起きる、と考えるのが知性というものだ。であれば、この国際政治学者には分断社会をテーマに、世界が抱え込んでしまったリスクについてもっと突っ込んで見通しを聞きたい。日本はどうなるでしょう? と私は考える。ところが、日経の記者さんは考えなかったようだ。次の質問を見て、私はずっこけた。

——英国のEU離脱が世界の金融市場に与える影響をどう見ますか。

おいおい、またしてもゼニ金の話かよ。何があっても財布のことしか考えないのか? ほかに心配事はないのか? しかも、この方、国際政治学者だぞ。国際金融論なんて専門でも何でもなかろうが!

一読して頷き、二読してずっこける。やってくれるわ、日経さん。