2020
10.03

トランプ×コロナ=?

らかす日誌

いやはや、鬼の霍乱というべきか、ブラック・ジョークならぬホワイト・ジョーク(明るい冗談?)というべきか。それとも、因果応報? 思い知ったか? 私には適当な言葉が思いつかない。

あのトランプが新型コロナウイルスに感染した。側近の感染が分かり、念のための検査で妻とともに陽性に。当初はホワイトハウス内での隔離となったが、しばらくすると病院に運び込まれた。症状が悪化したのだろう。

74歳の高齢(私もあと3年するとそうなる。人ごとではないのだが……)、肥満気味の身体、高コレステロール、心臓病、と症状が悪化する要因を備えているトランプだけに、さてどうなるのか。恐れ多くも世界最強国家の大統領なのだから、考えうる最高の治療を受けるのに違いないが、病とは医者が治すものではなく本人が克服するものである以上、帰趨は予断を許さない。

あちらにお行きになるとしても、西方浄土に向かうといわれる我々と違ってトランプはキリスト教徒(プレスビテリアン)だから、さて行き先はHeavenか、Heaven’s DoorをKnockしても開かず、やむなくHellへの道を辿るのか。

病に打ち勝ってこちらに止まり続けても、戻るところはホワイトハウスか、それとも選挙結果が出ていてご自宅にスゴスゴと引き上げられるのか。

刻々と変わっているに違いない症状を知りたいところである。

さて、このような「想定外」の展開は誰しも予想しなかったに違いない。が、「想定外」が起きた以上、関心は1ヶ月後に迫った大統領選挙への影響に向くのは当然のことだろう。新型コロナを取るに足りない病と言い続けたトランプがコロナにコロリと取り付かれてしまったことが、選挙にどう響くのか。
それでなくても、バイデン候補に世論調査で引き離されているトランプである。常識的にはトランプ・マジックのはかない夢から覚める人が多いと思うのだが、なにしろトランプを大統領にしちゃった有権者のことだから、私には予想もつかぬ。

今月号の「選択」には、大統領選挙に触れた記事が数本あった。おおむねトランプの敗北を臭わせるものだが、1本だけ

「?!」

という記事があった。中国ではトランプ優性との見方が多いというのである。
それはこういう論理である。

中国は、アメリカ大統領選挙グッズ——Tシャツ、マスク、帽子など——の大半を製造、供給している。いわれてみれば、大統領選挙ではおそろいの帽子やtシャツ姿の支持者が動き回る映像が毎回流れる。アメリカにとって、大統領選挙は一種のお祭りのようなものなのだろう。その多くが中国製であるとは、この記事を読むまで考えたこともなかった。
それはいいのだが、1990年以降、候補者ごとの受注高が、みごとなほどに選挙結果と連動しているというのである。つまり、より沢山のグッズを発注した候補者が選挙に勝つ。
今回、トランプ・グッズがバイデン・グッズを圧倒しているのだそうだ。つまり、トランプが選挙で勝つ、というのである。

いやいや、あれほど中国を敵に回し、国民は中国製品のボイコットを呼びかけかねない勢いのトランプが、選挙グッズは中国製? あんた、America FirstでMade in Americaを愛好するのではないのか?
あの男のいい加減さを象徴するような話ではないか。

それは横に置くとして、もし中国でそんな見方があるとしたら、典型的な統計の誤謬である。本来何の関係もない2つの事象が並行して起き、それが数回連続すると、

「この2つには関係がある」

と勝手に思い込むことである。日本は外部勢力との闘いに一度も負けたことがない神国である。元との闘いでは神風が吹いたではないか。英米を敵に回した闘いでも、最後は神風が吹くのだ、と思い込んだかつての日本人と似通っている。

誰しも経験則には縛られがちだが、経験則に筋の通った道筋が見いだせて始めて、それは知的資産になるのではないか。朝食に目玉焼きを食べた日にいいことが2買い続けて起きた。だから3回目に目玉焼きを食べた日にもいいことが起きるとは限らないのである。
選挙グッズの発注量が多い方が選挙に勝つ。残念ながら、ここには筋道が見いだせない。

さて、トランプ+コロナが起きるまではトランプ有利とみていた中国の見方は、この「想定外」で変わったのか、変わらないのか。
「選択」の次の号は大統領選前の11月1日に届く。続報が読みたいものである。