2004
06.01

とことん合理主義 – 桝谷英哉さんと私  番外編 I :プリアンプの製作 3

音らかす

前回までの作業で、全体の8割程度は出来上がった。頂上はもうすぐである。

あなたは、もうすぐ、至高の音で、あなたの好きな音楽を楽しめるようになる!

作業に疲れても、音楽に酔いしれる自分の姿を励みにあとひと踏ん張りしましょう!

作業工程22:側板の取り付け

ここまでの作業が終わったら、正面から向かって左側の側板をリアパネルに取り付ける。取り付けは、黒いビスを使う。つまり、外箱が黒だから、外に出るビスはすべて黒を使う。

「黒い箱から、白いビスの頭が出ている方が美しい」

という美感をお持ちの方は、それでもいっこうに差し支えない。

ビスを力一杯ねじ込むと、ネジ山をつぶしてしまうので(ときどき、バカ力を発揮して、ビスが空回りするようになる人がいる)、注意すること。腹八分目に医者要らず。

同時に、アッテネータ基板が乗っている仕切り板も、黒いビスとナットで、この側板にしっかりと取り付ける。

忘れてはいけないのは、この段階で電源部と音楽信号部を隔てる仕切り板とリアパネルを結びつけているビスとナットをしっかり締めることだ。

リアパネルにこのアルミ板を取り付けたとき、あまりきつく締め付けなかったのは、側板を取り付ける前にきつく締め付けると、ネジ穴に少しばかりの遊びがあるため、側板との取り付けに狂いが生まれる恐れがあったため。ここまで来れば、側板の位置もきっちり決まったのだから狂う心配はない。

作業工程23:フロントパネルの取り付け

次にフロントパネルを、いま付けたばかりの側板に取り付ける。黒いビスを使う。ここまで来ると、完成品の姿が、おぼろげながら見えてくる。

フロントパネルを取り付けたら、入力切り替えロータリースイッチ・テープモニタ用プッシュスイッチとアッテネータ基板を配線する。10ピンターミナルを介して行う。

写真と、前に出てきた実体配線図をよく見て、間違いのないように配線していく。どことどこがつながるのか、くどいほど確認して欲しい。

ここも、手前からハンダ付けしていくと他のコードを焦がしてしまう事故が起きにくい。ロータリースイッチからたくさんのコードが出ているので、これも焦がさないように注意する。

写真で判るように、10ピンターミナルには、同じ色のコードが2本ずつ並ぶ。右チャンネル用と左チャンネル用だ。左右を間違えないように気を付ける。間違えると、間違えたところだけ右の音が左から、左の音が右から出るようになってしまう。

この工程の最後は、テープモニタ出力用の配線だ。

テープモニタ用プッシュスイッチから出てきているコードを、5ピンターミナルを介して、テープモニタ出力用のピンジャックまで伸ばす。

テープ1とテープ2、右と左を間違えないよう気を付ける。間違えてもあとで直せばいいのだが、かなり面倒くさい作業になってしまう。

作業工程24:信号基板

まず、信号基板を完成させよう。右用、左用それぞれに、コードを6本ずつ植え込む。基板の裏面で、銅箔にハンダ付けするのはいうまでもない。

 いまハンダ付けしたコードは、フロントパネルのローブースト用プッシュスイッチにつなぐので、それぞれのコードの長さは、実物に当たって欲しい。

 実物に当たってみれば判るが、仕切り板の上に来る左チャンネル用基板の方が、ロー・ブースト用スイッチからやや遠いところに位置する。従って、左用の基板に植え込むコードが、当然のことながらやや長くなる。

 次は、このフラット基板を本体に取り付ける準備だ。

 フラット基板が位置する場所には、右用4個、左用4個、合計8個のビス用の穴が開けてある。ここに20ミリのビスを、ナットを使って植えておく。

 この写真でいうと、上に突き出しているのが左用の基板を受けるためのビス、頭の部分しか見えていないのが下段に行く右用基板を固定するためのビスだ。このビスに10ミリのスペーサーを通し、その上から基板を置く。基板から出たビスにナットをねじ込んで固定する。これで、基板の本体への取り付けが終了した。

 

 

この工程の最後は、ローブースト回路の配線だ。これも実体回路図を何度も見て、どこから出たコードがどこに行くのかをしつこいほど確認して欲しい。

作業自体はそれほど難しくないが、ここを間違えると、実際に音楽を再生しようとしたときにかなり大きな雑音が出ることがある。こうした不愉快な体験をしないために、慎重に配線して欲しい。

(雑談)
私は1度だけ間違えてしまった。

 配線が終わったら、写真のようにコードを3本ずつまとめて縛っておくと美しい。私は、釣り糸の5号を使っている。

 釣り糸は特殊な結び方をしないとすぐに緩んでしまう。釣りが好きで、糸の結び方を飲み込んでいる人でないと取扱が難しいかもしれない。

 もちろん、木綿糸で縛っても、いっさい縛らなくても、音にはまったく関係はない。

 作業工程25:電源部

 残ったのは電源部である。

まず、電源部と音楽信号部を区切っている仕切り板に、電源トランスを乗せるアルミ板を、短いビスとナットで取り付ける。それほど面倒な作業でもない。

電源基板も完成させなければならない。

一個だけ残った部品があるはずだ。両側から2本ずつ足が出ている黒い固まり、4端子のダイオードである。基板に合わせて足を折り曲げ、+-に注意しながら、基板に取り付けて裏側からハンダ付けする。基板の裏に出ている4本の足は、それぞれ根本からカットする。

あとは、電源トランスとつなぐコードを37.4V ACと書いてあるところのラグ端子に、信号基板に電気を供給するコード2本を36Vと書いてるラグ端子に、それにアースコード2本をGNDと書いてあるラグ端子に、それぞれハンダ付けする。

例によって、それぞれのコードの長さは、実際にあたって欲しい。

電気供給用のコード、アースコードは、先にゴムブッシュを押し込んだ穴を通して、2枚の信号基板につなぐので、そのつもりで長さを決める。

 出来上がった電源基板を、垂直になっている仕切り板にビスとナット、それに10mmのスペーサーを使って取り付ける。

  ちょっと面倒な作業である。手伝ってくれる人がいれば幸いだが、それが期待できない場合、写真でいうと、電源基板の下の方にある2つのビス穴に基板の上からビスを通し、裏側にスペーサーを咬ませ、ビスの頭を2本の指で押さえながら、基板を垂直にして仕切り板にあるビス穴にビスを何とか通してしまう。
通ったらこちらのもので、仕切り板の反対側からナットをちょっとだけねじ込む。ちょっとだけにしておかないと、残り2本のビスの処理に困る。

 その残り2本も同じように作業を進め、4本が揃ったところでナットを締め付けて完全に固定する。

 電気供給用のコード、アースコードは、ゴムブッシュを押し込んだ穴を通して、信号部に出しておく。

 ここで、やっと化粧パネルを取り付ける。

 まず、フロントパネルに固定していた入力切り替え用ロータリースイッチ、バランス、ボリュームのナットをはずし、2枚の化粧パネルにあいている穴を通して再びナットを締める。同時に。パイロットランプも2枚の化粧パネル、フロントパネルにあいている穴を通し、裏側からナットで締め付ける。

 この作業が終わると、左の写真のようになる。

 電源部の配線でもっとも面倒なのが、電源スイッチへの配線である。ACアウトレットに行くコード、パイロットランプ、それにスイッチングノイズを防ぐ黄色いコンデンサを電源スイッチの前寄りにある2本の端子にハンダ付けしなければならないからだ。

だから、この作業は、フロントパネルを本体に取り付ける前に済ませておいた方が楽だ。ただ、化粧パネルも取り付けないとパイロットランプへの配線ができないので、それ以降の作業は化粧パネルがついたまま行うことになる。化粧パネルはアルミ製だから、ちょっとしたはずみで傷ついてしまう恐れがある。一度傷がつくと修復は不可能だ。

今回は、このリスクを取りたくなかったので、この段階で配線を行った。
リスクをミニマイズし、かつ作業をやりやすくするには、フロントパネルを本体に取り付ける前に化粧パネルを取り付けてしまうことも考えられる。こうすれば、電源スイッチへの配線は楽になるし、化粧パネルを傷つける恐れも極めて小さい。
どれを採用するかはあなたの勝手である。

この作業が終わったら、電源コードをリアパネルにあいている電源コード用の穴から通し、コードの先を2つに割って一度だけ縛る。縛ってできたこぶで、電源コードが本体から抜けなくなる。

電源コードの先の皮をむき、ACアウトレットの「Unswitched」から出ている2本の端子にハンダ付けする。この2本の足の1本からは、ヒューズホルダーの背中から出ている端子と結ぶコード、他の1本からは電源スイッチと結ぶコードが出て行くので、これも同時にハンダ付けしておく。

ヒューズホルダーのお尻から出ている端子からは、電源スイッチに行くコードが出る。これもハンダ付けし、ACアウトレットの足から出ているコードと撚っておく。

この2本のコードは、電源スイッチから出ている端子の後の2本にそれぞれハンダ付けする。どちらがどちらになってもまったくかまわない。

ここまでの作業が済んだら、4本の短いビスを使って電源トランスをアルミ板に取り付ける。このビスは力一杯締め付けておかないと、トランスからうなりが出る恐れがある。

電源スイッチから、ACアウトレットに行く2本の長いコードが出ている。この2本を撚り、ACアウトレット(Switched)の端子に、この端子からトランスに行くコードと一緒にハンダ付けする。

このコードは、トランスの100Vと書いてある2枚の端子にハンダ付けし、37.5Vと書いてある側の端子2枚には、電源基板に植えておいた短いコードをハンダ付けする。

これで電源部の作業が終わった。

作業工程26:最後の配線

残った配線は、ここでまとめてやってしまおう。

音楽信号入力用のピンジャックからたどってくると、音楽信号は、ボリュームまでは到達できるように配線が済んでいる。しかし、ボリュームの裏に付いた3つずつ2列の端子の真ん中にハンダ付けされたコードは、まだ宙ぶらりんのままで、これでは音楽信号はどこにも行きようがない。

そこで、これを5ピンターミナルを介して、信号基板の「IN」と書いてある端子にハンダ付けする。

間違えないで欲しいのは、ボリュームのフロントパネル寄りの端子から出てきているのは左チャンネルだから、上部の信号基板に、フロントパネルから離れた端子から出たコードは下部の信号基板につなぐこと。逆にすると、音が左右逆になって出てくる。

一番電源部に近い端子から出ているのは、アースコードで、これも左右を間違えないようにして、5ピンターミナルを介して信号基板の「IN」端子の隣にある「GND」端子につなぐ。ここまでは、2枚の信号基板とも同じである。

もう一つ、アッテネータ基板にも、まだ何もハンダ付けされていない「GND」端子がある。この端子にコードを2本埋め込み、1本ずつ、左右の信号基板の「GND」端子につなぐ。写真と実体回路図を見ながら、間違えないように配線する。

次に、音楽信号の出口を作ってあげる。信号基板の「OUT」端子と、出力用のピンジャックのホットピンを、左右それぞれ配線する。これで、音楽信号用の配線は、すべて終了した。

が、電気を供給してもらわないことには、完成したパーツも動かない。最後に電源基板と信号基板を配線しなければならない。

仕切り板の穴を通って、電源基板からコードが上部に2本、下部に2本、計4本伸びてきているはずである。このうち、「36V」と書いてあるところから来ているコードを、「Vcc」と書いてある端子にハンダ付けする。

「GND」から来ているコードは、出力用のピンジャックのアース端子から来ているアースコードとまとめて、信号基板の「GND」端子にハンダ付けする。

これは、右用、左用の信号基板ともに、同じである。

なお、信号基板のアッテネータ基板寄りにある3つの端子のうち、1つだけ何もつながっていないのに気付かれたと思うが、ここには何もつながない。かつては、レコードに入っている音楽信号を扱う(その機能については前に書いた = たこ焼き先生II)イコライザー基板に電気を渡す役割を果たしていたが、レコードの時代は終わったという桝谷さんの認識(私もそう思う)でイコライザー基板がなくなった。しかし、当時作った信号基板が残っていたためそのまま使い回し、使わない端子ができた。もちろん、音質にはまったく関係がない。

これで、あなたが製作を続けてきたMark8-Dは、機能的には完成したはずである。

作業工程27:チェック

本当に機能的に完成したのか?

そんな疑問が湧くかもしれない。人間、自信を持つというのはなかなか難しいものである。

そこで、何より大切な信号基板に誤配線がないかどうかをチェックをする。必要なのはテスターだけである。

まず、ヒューズホルダーにヒューズを入れる。後に突き出たホルダーのふたをねじってはずし、そのふたにヒューズを差し込む。そのままふたを本体にねじ込めばこの作業は終了だ。

さて、テスターをDC30V程度のレンジにセットする。「程度」といっても、これより小さいと、ちと困る。DC30Vというレンジがないテスターは、それより大きくて一番近いレンジにセットする。理由は、作業を進めれば判る。

テスターのリード線にわに口クリップを取り付け、このクリップを使ってマイナス(通常は黒い線)をシャーシーのアースポイントに(普通は、アルミの仕切り板)、プラス(通常は赤い線)を、信号基板のT.P.(テスト・ポイント)の隣の8.2Kの抵抗の足に固定する。

この状態で、Mark8-Dの電源コードをコンセントに差し込み、電源スイッチを入れる。

その瞬間、パイロットランプが輝くはずである。そして、テスターは一度30Vあたりまで上がって、徐々に下がり始め、20~30秒たつと、17Vあたりで安定するはずである。いや、この値が正確に17Vであることはほとんどなく、いくらかの誤差が生じる。ご覧のように、今回私が製作したものも、17.37Vになっている。これはむしろ誤差が小さい方で、10%程度の誤差は無視していい。音質には何の関係もない。

さて、テスターの目盛りはどうなりましたかな? ちゃんと17Vあたりで安定しましたか?

安定したら、おめでとう!

機能的にはすべて完成しました。

作業工程28:入力調整

中身が完成したので、外側も完成させよう。

まず、電源部を覆う側板の取り付けである。

フロントパネル、リアパネルとは黒いビスだけで取り付けが完成するから、作業は簡単だ。

ちょっと苦労するのが、トランスが取り付けてあるアルミ板との締め付けである。ビスは外側から差し込めばいいが、これを受けるナットは内側の、しかも指の入らないところにセットしなければならない。

私は、ラジオペンチでナットをつまみ、何とかビスとの出会いを付けている。かなり難しい。何度かやり直しているうちに、何とかなる、というほど難しい。

簡単にしようと思えば、作業の前に、ナットをセロテープで所定の位置に貼り付けておいてビスとの出会いを測るという手もある。セロテープを長くしてはがしやすいようにしておけば、作業が終わってテープを取り去るのも簡単だ。

次は、底板の取り付けだ。これも黒いビスを使う。

まず10本すべてのビスを少しだけねじ込み、10箇所ともうまくねじ込めたら、10本を最後まで締める。これも、ネジ山を壊す恐れがあるので、必要以上に力を入れてはいけない。軽く締めれば十分である。

ついでに、4つの足も取り付けてしまおう。

ここで、つまみもすべて取り付ける。

プッシュスイッチのつまみは、スイッチの頭に付いている四角な突起が、つまみに食い込んで固定されるようになっている。方向に注意しながら、つまみを「えいっ」と押し込む。

ボリューム、バランス、入力切り替えのつまみは、小さなビスで固定する。ビスはつまみの横にある穴の中にある。細いマイナスドライバーを差し込んでビスをゆるめ、ボリュームなどに取り付けたあとで力一杯締め付ける。

この時、つまみに付いているマークと、化粧パネルにプリントしてある目盛りを合わせることはいうまでもない。

ボリュームは、まず絞りきった状態にしておいて、つまみのマークを目盛りの「MIN」に合わせてビスを締め付ける。

バランスは、中点のクリックするところに合わせておいて、つまみのマークを化粧パネルの中点を表す印に合わせる。

入力切り替えは、出荷時は「AUX.」に合わせてあるようである。だから、つまみのマークを「AUX.」に合わせてビスを締め付ける。もし違っていたら(回してみればすぐに判ることである)、ビスをゆるめて調整すればいい。

天板は、まだ取り付けてはいけない。最後に、アッテネータ基板に付いている半固定抵抗を調整する作業が残っているからだ。

半固定抵抗は、マイナスドライバーを頭の切れ込みに差し込むと左右に回すことができる。回すと抵抗値が変わり、一度適切な値にしてしまえばあとは動かすことはまずないので、半固定抵抗なのだろうと勝手に思っている。

で、半固定抵抗はとりあえず中点あたりに合わせておく。とりあえずだから、大雑把でいい。

これからの作業は、音を出しながらでないとできない。まず、音の出る環境を作ろう。
パワーアンプを持っている人は、Mark8-Dとオーディオケーブルで接続する。
プリメインアンプがある方は、プリメインアンプのAUX.入力とオーディオケーブルで結ぶ。

もちろん、パワーアンプ、あるいはプリメインアンプにはスピーカーが接続されている。
音源になるもの、CDプレーヤーやチューナーをすべてMark8-Dに接続する。これで準備は完了した。

電源を入れて音を出してみよう。

多分、これまでに聞いたことがなかったような澄み切った音楽が流れ出すはずである。が、その美しさに酔うのはもう少し待って欲しい。

音楽を聴きながら、その音楽信号が流れている半固定抵抗を回してみよう。右チャンネルのものを回すと、右チャンネルの音が大きくなったり小さくなったりするのが判ると思う。回すとき、少し雑音が出るかもしれないが、それは気にしなくていい。

これを理解したところで何をするかというと、ひとつは左右チャンネルの調整である。右のスピーカーと左のスピーカーから同じ大きさの音が出るように半固定抵抗を回して調整する。

といっても、今はモノラル録音の音源なんてほとんどないから、苦労するはずだ。モノラルがなければ、真ん中で歌手が歌っている音源を用意し、それを聞きながら調整することもできる。工夫して欲しい。

もう一つは、入力をCD→チューナー、チューナー→テープデッキ、などのように切り替えたとき、極端に音が大きくなったり小さくなったりしないよう、それぞれの入力レベルを調整することだ。

入力切り替えスイッチを切り替え、それぞれの半固定抵抗を調整していただきたい。

(余談)
桝谷さんに、 
「この抵抗は、理論的な最適値があるのではないか。であれば、固定抵抗の方がいいはずである」 
と申し上げたことがある。桝谷さんの答は、 
「それはそうですが、ファンクションを切り替えたときに音が大きうなったり小そうなったりしたら、そのたんびにボリュームを上げ下げせないけまへんやんか。それがいややから、ここは半固定抵抗にしてますのや」 
というものだった。ここまでこだわったアンプをを作っているメーカーがあるかどうか、寡聞にして私は知らない。

 作用工程29:完成

これまでの作業で、すべて完成した。ご苦労様でした。あとは、天板を黒いビスで取り付けるだけだ。

完成すると、写真のような立派なプリアンプが手に入る。

こだわりたかったら、木製の側板を買って取り付ける。高級感がグンと増す。いまクリスコーポレーションのホームページを覗いたら、3,900円だった。

どうです、無事に完成しましたか?
完成した? おめでとう!

音楽を聴いてみました?
どうです、これまでとまったく違う、混じりけのない美しい音が流れ出したでしょう?

私なんか、プリアンプ(レコードも聴けるMark8)を作り上げて音楽を初めて聞いたとき、目から鱗が34枚ほど落ちました。オーディの泥沼から完全に抜け出しました。

お金があれば、オーディ装置ではなく、音源であるCDにすべてを費やす体制ができました。

あなたはどうですか?

これだけでも、それまで聞いていたのとは次元の違う美しい音で音楽を楽しめるはずです。今日からは、すべてを自分の手で作り上げた逸品で、心いくまで音楽を楽しんでください。

いずれはパワーアンプもクリスキットでそろえたくなると思いますが、急ぐことはありません。私は、プリアンプを作って、それまで使っていたラックスの真空管を使ったパワーアンプにつなぎ、確か半年ほど楽しんでいました。

と最初は書いたのですが、急がないと手に入らなくなりますよねえ……。

あなたも、まずはじっくりこのアンプの音を味わってください。次を考えるのはそれからでも遅くはありませんから。

 ということで、そのうち、パワーアンプの製作記事も書こうと思っています。しばらくお待ちください。

 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。