2004
05.29

とことん合理主義 – 桝谷英哉さんと私  番外編 II :パワーアンプの製作 1

音らかす

さて、前回の番外編「プリアンプの製作」から3ヶ月足らず。もう、プリアンプ、Mark8-Dはお作りになりましたか? お作りになった方は、その素晴らしい音色に満足していらっしゃるはずだ。

そういう方々を、さらに深い満足に誘うため、「番外編II 」として、パワーアンプ、P35-III の作り方をご紹介しようと思う。ここまで手がければ、クリスキットによる増幅システムが完成する。

本論に入る前に、いくつか注意点がある。

P35-III は、非常に簡単に製作できる。信号基板が2枚と、あとは配線程度でできあがる。
私が作ると、3時間程度で完成する。Mark8-Dの製作にかかる時間のおおむね半分以下である。

だが、安易に考えてもらっては困る。これを何に例えたらいいだろう。

きれいなバラには刺がある……?
汝、狭き門より入れ……?

ぴったりこないなぁ。

要するに、簡単に入れそうなところには、深い落とし穴が仕掛けられていることが多いのである。

はっきり言って、私はあまり作りたくない。
調整のために電源を入れるとき、必ずドキドキする。緊張する。

「誤配線していないだろうな」

 「ハンダ付けは完璧だろうな」

毎回、ほとんど、祈るような気持ちで電源スイッチを入れる。

なぜか。
誤配線や、不完全なハンダ付けをしていると、ほぼ100%の確率で部品を壊してしまうからだ。

極めて小さな電流しか取り扱わないプリアンプ、Mark8-Dでは、誤配線や部品の取り付け間違い、ハンダ付けの不良など、多少のミスをしても部品が壊れることはまずない。最終的に音を出して、音が出なかったり、雑音が出たりしても、あわてずに点検し、正常に戻すことはほとんどの場合可能である。

 (余談) 
プリアンプの製作記でも書いたが、形が同じで中身が違う3本足のトランジスタを、勝手気ままに取り付け(当然、間違っていた)、 
「音が出ないんだけど」 
と私に相談してきた友人がいた。 
トランジスタを全て取り外し、正しく取り付けてやったら、何事もなかったかのごとく、正常に働き始めた。

 だが、パワーアンプ、P35-III は、かなり大きな電流を取り扱う。誤配線やハンダ付けの不良、部品の取り付け間違いなどがあった場合、まず間違いなく部品を壊してしまう。致命傷になる。

壊れた部品がどれなのか、自分で判断できるほどの知識を持っていれば、たぶん、最初からそんな事故を起こしはしない。従って、このような事故を起こす人は、どの部品が壊れているのか全く判断できないと見なければならない。その状態に陥って、ヘルパーさんなどに、

「何とかなりませんか」

と泣きついても、ほとんどの場合何ともならない。泣く泣く、もう1台買う羽目に陥る。
クリスコーポレーションの売り上げには貢献するだろうが、あまり意味のないお金の使い方である。

従って、

・ Mark8-Dを作ったことがない人は、P35-III には取り組まない方が無難である。

・ 自信がない人は、P35-III には取り組まない方が無難である。

要するに、アンプの製作にかなりの実績、自信がある人以外は、P35-III には取り組まない方がよい。

(余談) 
そういえば、私がP35-III までに作ったのは、ラックスの真空管アンプのプリとメイン、クリスキットのMark8だけだから、P35-III が4台目だった。 
前にも紹介したが、ラックスのキットは、自分ではまともな仕上がりにならなかった。 
そんな私に、実績と自信があったか? 
ない。 
では、なぜ自分で作った? 
ヘルパー料を惜しんだとしか考えられない。 
危険な賭けである。 
…… 結果良ければすべて良し、か。

 ま、それでも作るとおっしゃる方はお止めいたしませんが、ここから先は全て自己責任の世界になることを、よーくご認識いただきたい。

(余談) 
と偉そうなことをいっているが、実は、私も2回、部品を壊してしまったことがある。
1回目は、組み立てが終わり、電源を入れて最後の調整をしている最中だった。どうしてそんなことになったのか、今となってははっきりしない。だが、事故は次のように起きた。
左手で持ったハンダが、ちょうど信号基板の上にあった。そこに、右手に持っていたハンダごてが触れてしまった。5センチほどになったハンダが、信号基板の上にポトリと落ちた。落ちた場所が悪かった。四角い形をした2個のトランジスタの上だったのである。
パチッと音がしたような記憶がある。それっきり、パワーアンプは一方のチャンネルがうんともすんともいわなくなった。ショートしてしまったトランジスタが、2個とも飛んだのである。
2度目は、電源部の配線に間違いがないか点検作業を始めたときだった。
「ブスッ」 
という音がして、どう測っても正常な電圧が出ない。あれこれ調べてみると、6,800μFのアルミニウム電解コンデンサがお釈迦になっていた。ハンダ付けが1箇所だけ浮いていた。よくいう天ぷらハンダになっていた。
それだけのことである。それだけで、これだけ重大な結果をもたらす。

 ということで、さっそく(でもないか)P35-III 作りに取りかかることにする。

作業工程1:部品を出す

Mark8-D同様、まずは段ボール箱を開封することから作業は始まる。けがをしないように慎重に。

開封すると、さらにもう1回、段ボールでくるまれているので、これも取り去る。シャーシに段ボール箱がくくりつけられているので、この箱も開封すると、写真のようなパーツが現れる。

どうです? Mark8-Dと比べると、ずいぶん少ないでしょう?

これから、これを組み上げていくわけです。

作業工程2:抵抗のリード線を曲げる

これもMark8-Dと全く同じ。

Mark8-Dより数は少なく、全部で29本。

ちょっと注意してほしいのは、セメント抵抗(白くて四角い抵抗)に2種類あって、

2W 0.5Ωが4本

2W 20Ωが1本

入っていること。

本体にプリントされているので、間違えることはないだろう。20Ωの抵抗は最後の調整の際に使うもので、アンプには取り付けない。なくならないところに隔離しておく。アンプに取り付けるのは28本である。 ほかの抵抗は、例によって、リード線に何かをあてて、エポキシから離れた所を折り曲げていく。

作業工程3:抵抗を分類する

リード線を折り曲げた抵抗は、色の付いた帯(カラーコード)で写真のように分類しておく。右上がアンプには取り付けないセメント抵抗。

抵抗の入っている袋を開けると、実は抵抗ではないものまで一緒にはいっているので要注意。写真でいうと、左上は半固定抵抗だからまだいいとして、その右に見えるのは、5本足のトランジスタの2SA979、その右のやや上に位置しているのが、温度補償ダイオードのSV-03YS。

トランジスタとダイオードは、まだこの時点では使わないので、先ほどのセメント抵抗と一緒に隔離しておく。

作業工程4:信号基板にビスとナットを取り付ける

これは、Mark8-Dにはなかった作業である。

2SC2336と2SA1006というトランジスタは、一部をビスとナットで信号基板に締め付けることになる。そのためのビスとナットをまず取り付ける。

ビスとナットを取り付けて裏から見ると、このようになる。
とにかく、ナットは根本までキッチリ締めておかないといけない。

(余談)
どうです、このクリスキットの基板。どこにどの部品を配置するかが、ちゃんとプリントしてある。本来なら、部品の付け間違いはないはずだが、と私は考えてしまうのだが、桝谷さんがあれほど警告を発しているということは、いらっしゃったんでしょうねえ、きっと。

こうしてビスとナットを取り付けたら、信号基板の銅箔とナットをハンダ付けする。

この作業はちょっと時間がかかる。ビスとナットの体積が大きいので、ハンダごてからの熱が分散してしまい、なかなか温度が上がらないためと思われる。

この作業の実行中は、ナットと銅箔の両方にハンダごてを押しあて、ひたすら待つ。待ちながら、時々ハンダを、ハンダごてを押しあてている近くにくっつけてみる。最初は何の反応も起きないが、やがてぺたぺたくっつくようになり、その段階を越えるとハンダが溶けてナットと銅箔の境目に流れ出していく。こうなったらしめたもので、ナットの周り全部をハンダで銅箔にくっつけてしまう。

作業工程5:抵抗値を測る

これもMark8-Dで経験した作業だから、とまどう人はいないだろう。 やはり、誰も信用しない健全なる精神で、こつこつと実行する。

 

 

 

 

 

 

作業固定6:抵抗を基板に取り付ける

ここも、Mark8-Dを作った方にはおなじみの作業なので、くだくだしい説明はしない。まず写真のように、間違えないように抵抗を差し込み、

次の写真のようにハンダ付けしていく。ラグ端子と銅箔の間も、例によってハンダ付けする。

慎重に行こうという方は、抵抗を1本取り付けたら、そのたびに基板を裏返してハンダ付けする。ここでは、実績と自信のある方を対称にしているため、このような作業手順を採用した。

なお、左の写真では、先ほどの作業ですでにすんだはずの「銅箔とナットのハンダ付け」が、まだ行われていない。

無精をして、抵抗と一緒にハンダ付けしようとしたためである。

体験からいうと、やはり銅箔とナットは先にハンダ付けしておいた方が楽だ。抵抗と一緒に、なんて考えていると、抵抗のリード線がじゃまをして非常に作業がしにくい。

本当に作業に苦労した。

失敗は成功の元。

私の失敗を無駄にしないでほしい。

念のために、ハンダ付けの要領をMark8-Dの製作記からコピー、ペーストしておく。

・ ハンダごては40Wのものを使う。

・ ハンダはJISマークが付いたヤツか、60/40の表示が付いたものを選ぶ。

・ ハンダ付けの要領を紙に書くと、ハンダごて(40W)の先を部品の足の根元に、足と箔面との両方にくっつくようにあてて、ひとつ、ふたつ、みっつと数えてから、糸ハンダの先をあてると、吸いこまれるように、ハンダがのる。実に楽しい作業である。マージャンで徹夜をするより楽しい作業だと私は思う。
(「音を求めるオーディオリスナーのためのステレオ装置の合理的なまとめ方と作り方」より)

 また、初めてハンダごてを持たれる方、それに近い方は、すべての抵抗を基板にはめ込んでからハンダ付けするのではなく、抵抗を1本差し込んだら基板を裏返してそれをハンダ付けし、終わったら次の1本を、といった具合に、ひとつずつやった方が作業が楽で間違いが少ない。

写真のように、基板の銅箔と銅箔から出ている抵抗のリード線の根元の両方に、2、3秒間、ハンダごてを押しあてる。この3者の境目にハンダの先をくっつけると、あら不思議、音もなくハンダが溶け、必要なところに流れていく。そこでハンダごてを離せば、すぐに温度が下がり、ハンダは綺麗に盛り上がってピカリと光る。

このあとで、基板から飛び出した抵抗のリード線を切り取るのもMark8-Dの際と同じである。

作業工程7:トランジスタなのどの取り付け

基板に取り付けるパーツは背が低いものから、の原則に沿って、次はトランジスタを取り付ける。

ここで使うトランジスタは、まず、

下の写真の
2SC2336

2SA1006 
だ。それぞれ2個ずつある。

3本の足が出ているが、このうちの真ん中の足は、遠慮会釈なく根本から切り取ってしまう。ここで遠慮をしていると、残った足が飛び出し、あとでほかの部品と触れてショートしてしまうなどの事故の恐れがある。ここは普段は心優しい方も、鬼になっていただく。
カットしても、ご安心いただきたい。実は、カットした真ん中の足と、トランジスタの上にある平らな板は、同じ役割をする。これから先、カットされた足に代わって、平らな板が動くのである。

残った足は、90度に折り曲げる。折り曲げる方向は、型番が書いてある方を上にすると、下向きである。
どこから折り曲げるかは、基板に置いてみて判断する。つまり、後ほど、写真の上側に出ている平たい板にあいている穴に、いまは基板にくっついたようになっているビスを通す。生き残った2本の足が入る穴も、基板のプリントを見れば一目瞭然だ。それを前提にして折り曲げる位置を決めるのである。

もう一つ、次の写真のようなトランジスタが出てきたと思う。写真がぼけていて申し訳ないが、2SC1940というトランジスタである。

これは、型番がプリントしてある方が電解コンデンサの220μ(25V)の方を向くように基板に取り付けなければならない。これを逆にすると、必ずトランジスタを飛ばしてしまう、と枡谷さんも書いておられる。慎重の上にも慎重に。
トランジスタを壊さないようにするには、真ん中の足を型番がプリントしてある方に少し折り曲げ、残りの2本を反対側に少し折り曲げて、基板の穴とあわせておく。間違いがなくなるし、作業もしやすい。

もう一つのトランジスタは、抵抗と一緒の袋に入っていた5本足である。これはA979とプリントしてある方が2.4Kの抵抗の方を向くように取り付ける。といっても、このトランジスタは左右対称なので間違ってもいいが、ま、どちらでもいい。
これは、5本の足をそれぞれの穴に差し込まなければならないのでぎょっとするが、端の方から1本ずつ穴に差し込みながら足の間隔を広げていくと、何のことはなく定位置に収まってしまう。案ずるより産むが易し、の典型である。

ここで、ついでのパーツはみんな取り付けてしまおう。
まず、200Ω(脇に201とプリントしてある)の半固定抵抗と、50KΩ(同じように脇に503とプリントしてある)の半固定抵抗。
プリント基板の指示に従い、間違えないように取り付ける。念のために書いておくと、端っこに取り付けるのが503、真ん中あたりに取り付けるのが201である。
もう一つ、シリコンダイオードのDIN60。これには方向性がある。本体を取り巻くマーカーがある方を、基板にプリントされている絵のマーカーのある方に合わせる。
昔は丸っこい形をしたF-14というダイオードが使われていた。基板にプリントされている絵もF-14だが、ここは気にしない。形が円筒形になっているので、温度補償ダイオードSV-03YSと間違いやすいので注意がいる。
また、小さくなった分、マーカーを読みとるのも難しくなった。
「ん!?」
と思われた方は、老眼鏡のお世話になるか、ルーペを取り出すかで、衰えた視力を補ってほしい。

作業工程8:トランジスタなどのハンダ付け

さて、ここで最初の困難な作業にぶつかる。トランジスタのハンダ付けである。

「プリアンプで経験済みだから大丈夫」 

とおっしゃる方も、ここは気分を引き締めてほしい。問題は、5本足のトランジスタ2SA979である。

写真ではよく見えないかもしれないが、5本の足が基板の裏側につきだしている。問題は、足と足の間隔が極めて狭いことなのだ。この足と足をショートさせてしまったのでは元も子もない。それぞれの足を囲んでいる銅箔同士をショートさせるのももってのほかだ。

ここは、隣の足、隣の銅箔に、ハンダごてが絶対に触れないよう、慎重の上にも慎重にハンダ付け作業を進めてほしい。はんだごてが隣に触れない限り、ショートしてしまうようなハンダ付けにはならないので、この約束事さえ守っていれば、作業は無事に終わる。

かつては、トランジスタは極めて熱に弱かった。そのため、トランジスタをハンダづけする際は、トランジスタ本体に熱が伝わりにくいよう、いろいろな工夫をしたようだ。

最近のトランジスタは丈夫になったので、そんな配慮はいらないといわれる。枡谷さんもそうおっしゃっていた。

が、ここは気分の問題である。私は、5本足の1本をハンダ付けすると、次は3本足のうちの1本、次は四角いトランジスタの足1本という具合に、ハンダ付けをするトランジスタをくるくると変えている。

たぶん、気分の問題だけだと思うが、不要なトラブルはできるだけ避けたいと思ってのことだ。

ハンダ付けが終わったら、基板の裏側から飛び出している余分な足は綺麗さっぱりとカットしてしまう。

トランジスタ、半固定抵抗、ダイオードのハンダ付けが終わると、次の写真のようになる。

 

 

 

作業工程9:四角いトランジスタの締め付け

ここまで作業を続けてこられて、すでにお気付きのことともうが、四角いトランジスタの一部が基板から浮き、その下にビスの頭があって自分の存在を主張して下の写真のようになっている。この段階では、ちょっとした邪魔者である。

だが、ご安心いただきたい。これからの作業で、邪魔者が働き者に変わる。

まず、プラスドライバーでビスを回し、基板から取り外す。そうすると、基板の裏側には銅箔にハンダ付けされたナットが残る。

その上で、四角いトランジスタの上に出ている金属にあいている穴にビスを通し、基板の穴も通してナットに締め付ける。

このビスは、ビスの頭を壊さない範囲内で、力一杯締め付けること。そうすると、下の写真のように、四角いトランジスタは基板と密着することになる。

 

 

 

 

作業工程10:コンデンサ

コンデンサの袋を開けると、こんなものが出てくる。プリアンプをお作りになった方にはすでにおなじみだ。

オーディオグレードの電解コンデンサ、電源スイッチに取り付けるフィルムコンデンサ、セラミックコンデンサ、タンタルコンデンサ、基板につけるフィルムコンデンサ、である。

どれがどれだか分かります?

電源スイッチ用を除き、例によって基板にプリントしてある指示に従って取り付け、ハンダ付けしていく。

注意点

・ 電解コンデンサ、タンタルコンデンサには、プラスとマイナスがある。これを絶対に間違えないこと。間違えると、電源を入れてしばらくすると爆発するそうだ。これもプリアンプと同じ。 
 私は間違えないように気をつけながら基板に差し込んだあと、2枚の基板を比べてみる。2枚の基板は完全に同じなので、電解コンデンサ、タンタルコンデンサは全て同じ方向を向いているはずである。このように、念には念を入れる。

・ 基板につけるフィルムコンデンサは、全て104K。 全て取り付け終わると、104Kが2個、224Kが1個余る。これは後ほど使うので、なくさないように隔離しておく。

 以上

 もちろん、すべて基板の裏側でハンダ付けし、終わったら基板の裏から飛び出した足はカットする。

 ここまでの作業が終わると、基板は左の写真のようになる。

 

 

作業工程11:シャーシに部品を取り付ける

ここで作業は基板から離れる。部品のシャーシへの取り付けだ。袋を開けると、こんなものが出てくる。

上の左から、
・信号入力用に使うピンジャック
 ・その右がプラスチック製の足
2段目は、左から
・ゴムブッシュ
 ・ヒューズ(1Aが2本と、2Aが1本)
 ・ACアウトレット
 ・電源用のヒューズホルダー
3段目は
・スピーカー端子
 ・ラグ端子
 ・スピーカー保護用のヒューズホルダー
そのやや下にあるのが
・温度保障ダイオードを放熱板に取り付けるための3端子ターミナル

ヒューズホルダーの右が
・スぺーサー
最下列は
・パイロットランプ
 ・電源スイッチ

これらを一つ一つシャーシに取り付けていく。
ま、どれからしなければならないということはない。これから書くのは、単に私がそういう順番で作業を進めているというだけのことである。

まず、ゴムブッシュをシャーシの後ろにある穴(どの穴かは現物を見れば判断できるはず)に取り付ける。 次は、その隣、四角い穴にACアウトレットを短いビスを使って取り付ける。次の写真のように、プラグを差し込む側をシャーシの内側から表に突き出し、短いビスで止める。

 そして、スピーカー用のヒューズホルダー。プリアンプの時と同じように、プラスチックのナットを一度はずし、シャーシの内側から止める。ナットはグラグラしないように、きつく締め付ける。
といっても、プリアンプのときにも書いたように、簡単には締まってくれない。本当に手間のかかるパーツだ。

 

今度はスピーカー端子だ。どちらを上にしてもいいのだが、あとの使い勝手を考えて、私はスピーカーコードを差し込む穴がある方を上(ここでいう上下は、完成時のことと考えていただきたい)にする。短いビスとナットで止める。

信号入力用に使うピンジャックは、シャーシの内側から、ピンが外に出るようにあてがい、これも短いビスとナットで止める。あとの作業をしやすくするには、シャーシを上の写真のように置いたとき、ホットピンが下、アース用の端子が上に来るようにする。

2枚あったラグ端子の1枚を真ん中から45度程度に折り曲げ、下の写真でいうと、シャーシの真ん中上やや左よりの穴に、短いビスとナット、それにワッシャを使って取り付ける。あとで信号基板を取り付ける穴と間違えないこと。

4つのゴムワッシャをシャーシのあいた穴に取り付ける。この穴には後ほど、コードが通ることになる。

最後に、電源用ヒューズホルダーだ。この作業はちょっと面倒だ。
私は、ホルダーの真ん中にある穴の中にナットを入れておき、シャーシの上側からビスを通してビスとナットを締め付ける。そのままだとビスを回すとナットも回ってしまうので、小さいマイナスドライバーをナットにあてて回転するのを防ぐ。ビスを回すのに大きなドライバーを使うと、すぐ横にあるトランスに当たってしまって塗装に傷を付ける恐れがあるので、ビスの締め付けには小型のプラスドライバーを使っている。

全ての部品は、あとでぐらつかないよう、ビスとナットはきつく締め付けておく。

ここまでの作業が終了すると、下の写真のようになる。

 

作業工程12:アルミニウム電解コンデンサ

電解コンデンサのお化けのような、大きくて黒い奴だ。袋にまとめて入っている。

 

本体と、シャーシに取り付けるための金具がバラバラになっているので、まずこれを組み立てなければならない。といっても、金具についているビス・ナットをゆるめ、本体にくぐらせるだけだ。なかなかくぐってくれないときは、ビスとナットを完全に取り外し、くぐらせたあとで付け直せばよい。

金具の形状と、本体に取り付けたときのイメージを重ね合わせれば、組み立て間違いはないはずだ。

というわけで、組み立てると下の写真のようになる。つまり、輪っかでコンデンサ本体をくるみ、輪っかについているねじ止め用の出っ張り2枚が、コンデンサの最下部と同じレベルになるようにする。

ここで金具についているビス・ナットを締め付けたいところだが、ちょっと待ってほしい。

このコンデンサには、プラスとマイナスがある。コンデンサの下から出ている足(なんと呼ぶのか、私は知らない)の根本が黒く塗ってある方がマイナスだ。

なぜこんなことを、ここで書くのかというと、コンデンサはシャーシに取り付けたあと、極性に注意をしながら配線をしなければならないからだ。この配線の作業を簡単にし、しかも仕上がりを美しくするには、下の写真のように、ビス・ナットの取り付け部と、コンデンサの足が作り出す角度を調整しなければならない。

シャーシに取り付けると左の写真のように、プラスはプラスで横に並び、マイナスはマイナスで横に並ばなければならない。最終的には、シャーシのビス用の穴と、コンデンサの取り付け金具の穴を仮あわせしてコンデンサと取り付け用金具の角度を調整する。

輪っかを締め付けるためのビスとナットがはまっている出っ張り、コンデンサをシャーシに取り付けるための出っ張り、コンデンサの足のプラスとマイナスが、4つとも同じであることに注意していただきたい。調整が終わったら、ビスとナットを締め付ける。

次は、シャーシへの取り付けだ。取り付け金具の出っ張りの穴を通したビスを、シャーシの穴に通し、シャーシの裏側からナットで止める。
作業の手順は、写真で見る右下のコンデンサから始め、次に左下、右上、左上と進むのが合理的である。なぜ合理的かは、それぞれ作業をしてもらえれば分かっていただけるはずだ。

もう一つ忘れてはいけないのが、ラグ端子を取り付けることだ。写真では、右上のコンデンサを止める2本のビスのうち、左下のところに取り付けている。ここだけは、頭を出したビスにまずラグ端子の大きな方の穴をくぐらせ、その上からワッシャをかぶせてからナットをねじ込むことになる。
ラグ端子とシャーシの間で導通がとれればいいので、取り付け場所はどこでもいいはずだが、枡谷さんはここに取り付けるように指示されている。あえて逆らってみるメリットは何もないと思う。

コンデンサを取り付け終わると、次の写真のようになる。少し、パワーアンプらしくなってきた。