2010
09.23

2010年9月23日 雨

らかす日誌

の祭日、皆様はいかがお過ごしになられてであろうか。

私は、買い物と、プリントと、ギター、それに読書の休日であった。

【買い物】
妻女殿が、朝から騒ぎ出した。

「Asukaのクッキーを横浜に送る!」

Asukaとは、桐生市堤町にある洋菓子屋である。瑛汰、次女が気に入って、時折買い出しに行く。

「電話で注文しておくから、引き取りに行って」

私は間食はしない。甘いものは好まない。なのに、俺が引き取りに行くのか?

「私、まだ本調子じゃないからいけない。で、行くんだったら、ついでに買い物してきて。メモしておくから」

おいおい、今週3度目の買い出しだぞ。日曜日、火曜日に、それぞれ1万円ほどスーパーで買い物をしたではないか。まだ買うものがあるのか? いったい、我が家のどれほどの収入があると思ってるんだ?

「電話をしたら、いま焼いてるところで、できあがるのは午後なんだって。お昼すませてから行ってちょうだい」

まあ、啓樹と瑛汰が食べるのなら、行かないわけにはいかない。それにしても、またスーパーに行くのかね。やれやれ。

【買い物とギターとプリント】
というわけで、朝食後は暇になった。
雨が降ると、気になるのが庭の雑草である。雨が降ると成長する、というだけではない。ヤツらの領土侵略を阻むべく、抜き取るのも雨のあとの方が土が柔らかくなって具合がいいのだ。
小降りになったのを見て庭へ。伸び始めたヤツを引き抜く。

「そうか、雨というのは雑草にとっては恵みのはずだ。ところが、その恵みの雨が、ヤツらの最大の弱点を作る。雨で柔らかくなった土からは、根っこごと抜かれる危険が増す。最大の恵みが最大の弱点となる。これ、人間も同じではないか?」

雑草を抜きながら哲学をする。私は変な人である。

雨が強くなった。仕方なく作業中止。
といっても、買い出しは午後だし、さて何をしよう?
そうそう、電気屋に行く用事があった。音程を変えることなく、ピッチだけ変換できるCDプレーヤーをギターアンプにつなぐコードが必要なのだ。

これには訳がある。

これまで私は、ギターの練習場所は居間だった。ここにはテレビのほかにクリスキットのオーディオセットがあり、そのCDプレーヤーをクリスキットにつないで音を出していた。ソニーのCDプレーヤーに比べればちんけな音だが、それは仕方がない。イーグルスと一緒にホテル・カリフォルニアを演奏するのは、なかなか快感である。カラオケのホテル・カリフォルニアのCDもあるから、練習にも欠かせない。

なのに。

 「ボリューム下げて! 私は具合が悪いのよ!」

おいおい、人間、生きるということは音を出すということだ。同居するということは、相手の出す音に耐えることでもある。俺だって、お前が2階の部屋で出す音が1階の俺の寝室に響いても、文句なんか言わないだろう? どうして俺だけ文句を言われる?
ちょっと神経質すぎるんじゃないか?

といいたくなるのをグッとこらえた。旦那という字は、きっと女冠に男と書くのだろう。そう、旦那の第一の使命は、理不尽な妻女の要求に耐えることである。

で、練習場の引っ越しを考えた。行き先は、我が家の一角にある事務所しかない。ここは狭くて、オーディオのサブセットは納戸に入ったままである。である以上、CDの音は、ギターアンプから出すしかない。それで、コードが必要なのだ。

折から強くなった雨の中、国道50号線沿いのヤマダ電機に車を走らせた。コードを買う。そのとたん、ふと思いついた。

「そうだ、啓樹と瑛汰に、マイケルさんのTシャツを作ってやると約束していた」

アイロンプリントの用紙を買う。2枚入りで440円。高い!

自宅に戻り、台所にいた妻女に声をかけた。

「おい、アイロンプリントの紙って高いんだな」

こちらを見るだけで、お言葉はなかった。
何故かは知らないが、不機嫌らしい。

【まず、ギター】
ギターアンプと、CDプレーヤーとマルチ・エフェクター、エレキギター、ギタースタンド、テーブルタップ、ピック、楽譜を居間から事務室に移す。ちょっとした引っ越しである。
ファックス兼プリンターとソファの間にわずかなスペースにこいつらを押し込む。ああ、こんな狭いところで練習をするのか。
泣くではない。クラプトンだって、下積み時代はところかまわずギターをかき鳴らしたはずだ。下積みの努力があって初めて綺麗な花が咲くのだよ。

コードをつなぎ、CDの音を出す。汚い……。
泣くな。クラプトンだって……。

【そして買い物】
昼食はカレーであった。食べ終えて、再び車の人となった。雨は小降りである。
Asukaでクッキー。2000円少々。
ヤオコーで、ゴボウ、プチトマト、エリンギ、シメジ、豆腐、焼き豆腐、キュウリ、薩摩揚げ、かまぼこ、カボチャ、バナナ、梨、牛乳、料理酒、台所用洗剤……、あとは忘れた。5000円少々。

隣のユニクロで子供用Tシャツ。啓樹のサイズは130、瑛汰は120。今日から始まった秋のためか、半袖はない。長袖を4枚買う。2000円少々。

帰宅。

【いよいよプリント】
ネットでマイケルさんの画像を探す。Googleで探せば、いくらだって出てくる。
2枚をダウンロード。いよいよプリントにかかる。画像をフォトショップで開き、サイズを調整。キヤノンのプリンターでアイロンプリントように裏返しで印刷する。
新聞紙を重ね(アイロン台にはクッション性があり、適していないと説明書にあった)、上に白い紙を乗せる。そこにTシャツを置き、慎重にシワを伸ばしてプリントした紙を乗せる。これをアイロン(高温で)で何度も抑える。
冷えてから紙を剥がすと、立派なマイケルさんTシャツの完成だ。見事なものである。
クッキーと一緒に横浜に発送。明日朝には着くはずだ。

【再びギター】
これでやることがなくなったので、事務室にこもってギターの練習にかかる。
ホテル・カリフォルニア
 パイプライン
 ダイヤモンドヘッド
そして新曲の
プリティ・ガール
約2時間。夕食後、ギターをアコースティックに持ち替えて
Tears in Heaven
 Black Bird
 Over the Rainbow

今日はたっぷり練習した。左手の指先は、人差し指から小指までタコができ、皮がむけている。これで上手くならないから不思議なものだ。
もっとも、趣味でやるギターは、急速に上手くなってはおもしろみがない。なかなか上手くならないから続けようという意欲がわくのである。
というのは負け惜しみだが。

【読書】
筑摩現代文学大系の「小林秀雄集」を読んでいる。
不思議な本である。といっても、内容が不思議なのではない。この本、5ページ、長くても10ページ読むと頭がボーッとしてくるのである。目は確かに活字を追っているのだが、さて、前の行に何が書いてあったかとなると、ん? てなことになる。読み返す? いや、読み返したって何が書いてあるのか理解できそうにないから、まあ、いいか。てなことを考えていると、やがて眠くなる。
ひょっとしたら、人間の理解力には上限があるのではないか? 理解せねばならないことが短時間に上限に達すると、脳は

「オーバーヒートの危険があります」

とオノレの活動を低下させるのではないか?

 その過半が全く孤独な放浪に送られたランボオの生涯は、彼のみの秘密である幾多の暗面を残してゐる。又、彼がその脳漿(なうしやう)を斫断(しやくだん)しつつ、建築した眩暈(げんうん)定著の秘教は、少くとも私には晦渋(くわいじふ)なものである。(「ランボオ」の一節)

 私の脳は、こんな文章で緊急ブレーキをかける。活動を低下させる。
あなたの脳はいかが?

 

さて、検察である。
改ざんの実行犯が逮捕され、上司が取り調べを受けた。さて、検察は身内の犯罪に、どこまで毅然とした捜査ができるのか。

あまり期待できそうもないが……。