2013
12.02

2013年12月2日 かぐや姫

らかす日誌

高畑勲監督のアニメ、「かぐや姫の物語」が評判である。
かぐや姫はどのような罪を犯して地球などという異界に送り込まれたのか。新しい解釈で竹取物語を甦らせる試みに従来のアニメにはなかった作画法も手伝って、多くの評論家を唸らせたらしい。

私はまだ唸っていない。見ていないのだから、唸りようがない。多分、そのうち見ることになると思うが、さて、唸るかどうか。
だが、この監督が、あの

火垂るの墓

の監督であると来ては、多分唸るだろうといまから覚悟している。

そうそう、先日、「火垂るの墓」のアニメを啓樹、瑛汰の両人に送った。啓樹の母、つまり私の長女から報告があった。

「見たのよ、火垂るの墓。啓樹がさあ、大泣きしちゃってさあ。途中までは、何とか泣かないように我慢していたみたいだったの。でも、とうとうこらえきれなくなったらしくて、後半はもう、大泣きよ」

そうか、啓樹は「火垂るの墓」をみて大泣きしたか。
ボスも大泣きしたぞ。
啓樹が、心根の優しい、人の痛みが分かる少年として成長していることを、ボスは心から誇りに思う。


それはいい。
いま私は、かぐや姫に結婚を申し込み、無理難題を課された貴族の子弟のような気分である。

「えーっ、そんなん無理だろ! でも、それをクリアしないと俺と結婚してくれない? てことは、かぐやちゃんと○○できないってこと? だったら、やるっきゃないジャン」

我がネットオーデイオ構築は、一難去ってまた一難、二難に遭遇している。それでも、やらねばならぬ。

CDの読み込みは、昨夜で片がついた。あと数枚残っているが、それはおいおいやればよい、と、NAS(何度も書きますが、これ、ネットワークにぶら下がったデータ保管庫、って意味です)とネットワークプレーヤーをLANケーブルでつなぎ、無線LANの端末を介して、家庭内の無線LANに接続した。
つまり、これで我が家では、パソコン、NAS、ネットワークプレーヤーが、ネットワークにつながった。

「であれば、NASにため込んだ800枚もあろうかというCDの音を聞いてみるしかないではないか」

と、ネットワークプレーヤーに電源を入れ、ついでにクリスキットのアンプにも灯を入れて、ネットワークオーディオの音を聞こうとした。昨夜10時頃のことである。

我が家のネットワークプレーヤー、パイオニアN-50(東京のSさんのご推薦)の電源を入れる。何を再生するかの選択で、ミュージックサーバー(つまり、NASのこと)を選ぶ。
おうおう、出て来るではないか、ディスプレイに。我が家のNASはBUFFALOのLinkStation LS410Dである。その型番が、ディスプレイに表示された。

「順調やンけ」

と思えたのは、ここまでだった。

私は別に、ネットワークプレーヤーの小さなディスプレーで、私が音楽再生用に購入したNASの型番を見たいわけではない。そこに蓄積した音楽を再生したいのである。
通常、この状態でリモコンの決定ボタン(Enter、とリモコンに表示されているのがそれであろう)を押せば、NASの中にあるフォルダ、その中にある楽曲データにアクセスできるはずだ。
私はそう考え、決定ボタンを押した。何も起きない

「おかしいな。操作が違うのか?」

リモコンを眺めても、他に押すべきボタンは見つからない。それではとマニュアルに目を通したが、やっぱり私のやりかたは間違っていない。

「なんで、中に入れないんだよ」

こんな状態になったら誰でもそう思う。昨夜の私は、その「誰でも」の一員であった。


やむなく、一晩待った。待って今朝、パイオニアに問い合わせた。出てくれたのは、S君である。

「……、というわけで困ってるんですが」

丁寧に症状を伝えた。

「お待ちください。はい、その症状はデータベースに登録されておりません」

データベースに登録されていないからって、現に症状は現れてるんだから。これが第1号だとしても、それを解決するのがあんたの仕事だろう。

「少々お時間をいただいてよろしいでしょうか。お調べして、こちらから今日中にご連絡を差し上げますので」

うむ、わからんというヤツに、それは無責任だろうと深追いしても実りはない。

「じゃあ、分かったらこちらに」

と携帯電話の番号を教えた。
個人情報なんて、こうやっていくらでも出ていくものなのだ。

午後3時頃電話が来た。

「はい、同じような症状が他にもありました」

おいおい、さっきはデータベースにないといってたぜ。

「申し訳ありませんが、プレーヤーのソフトをアップデートしていただくと、症状が改善するという報告があります。で、アップデートの方法ですが……」

外出中だったので、後はメールで知らせてくれるよう頼んだ。


夕方、自宅に戻ってアップデートを試みた。
おうおう、出てきた、出てきた。
NASの中にフォルダが3つあって、その中のshareというフォルダに楽曲のすべてのデータが蓄積してある。

その中の1曲を選んで再生した。
うん、音楽が流れ出したではないか。ああ、やっと私もネットオーディオの世界に到達できた。かぐや姫は俺のもんだ!

と感激に浸ったのはつかの間である。

症状1:音楽が時折途切れる

症状2:では、他の曲、と探し始めたら、他の曲が見えなくなった。shareの中には600~700のCDが入っているは ずなのに、見えるのは2枚のCDだけ。しかも、その中の曲が選べない。

症状3:何ともならなくなって、プレーヤーの電源を落とした。そして、もう一度スイッチ・オンにすると、今度 は

「Please wait……」

の表示。よし、待ってやろうじゃないか、と待っても、何も起きない。「Please wait……」のままである。要する に、使えない。

症状4;瞬間聞いたのは、Carole Kingの曲だった。これがネットオーディオの音か、と耳をそばだてたが、何とな く線が細く、神経質な音であった。ネットオーディオって、こんな音しか出てこないのか?

一難去ってまた四難。明日は再び、パイオニアに電話をせねばならぬ。
日暮れて道通し。

加えていえば、iPadやiPhoneで使えるという、コントロールアプリの使い勝手がすこぶる悪い。
正常に近い形でプレーヤーが動いたのはホンの数分だから、その間の印象だが、再生したいアルバムの選択、曲の選択が極めてやりにくい。今のところ、アルバムのジャケット写真も表示されない。読み込むとき、忘れないようにくっつけたのだが。


さて、どれくらいたてば、私は

ネットオーディオを使いこなす、時代の最先端にいる1人

になれるのだろう?


そうそう、これまでにいたる間に、幾多の損害が発生している。

長らく使い続けたDVDドライブの調子が思わしくなく、新しく買い求めた。1万3000円を少し超える出費だった。
新しいドライブは、最初は調子が良かった。が、1枚ひっかかると、立て続けに労働拒否を始めた。
困って、壊れたはずのドライブを使ってみた。すると、何のこともなく、調子よく動くではないか!
何で新しいドライブを買ってしまったのだろう?

それでも、どうしても読み込めないCDが6枚あった。いずれも、CD-Rにコピーしたものである。その上、上面に紙製のラベルが貼り付けてあった。
他にも、CD-Rはあった。それは正常に読み込めた。では、なぜこの6枚だけが?
考えていて、結論が出た。貼り付けてあるラベルがいけない。ドライブの中でCDは高速回転する。だからわずかな重量バランスの狂いが、大きな回転の狂いをもたらす。これ、貼ってあるラベルが悪戯してるんではないか?

思い立ったら、私は速い。
貼り付けてある紙ラベルを取り除けないか、検討を始めた。目の前にシール剥がしのスプレーがあった。

「よし、これしかない」

1枚目を取り出すと、ラベル面にスプレーし、紙剥がしを始めた。
1枚目はうまく行った(はずだ)。
この勢いでと、2枚目に挑んだ。スプレーした上で物差しを使って紙を剥がしていたら、

ガバッ

と剥がれた。

「おう、うまく行った」

とその瞬間は喜んだ。しかし、剥がれたあとに残ったのが、単なる透明なプラスチックの円盤であることにすぐに気がついた。
何のことはない。私は、CD-Rの記録面が剥がれてしまったのだ。無論、記録面が剥がれてしまったCDが再生できるはずもない。
という次第で、私はCD6枚を廃品にした。

うち4枚は、仕方なく新しく買うことにした。中古で900円。まあ、これも、ネットオーディオへの投資と思えば自分では納得が出来る。

ところが、残りの2枚は、ネットで探しても存在しない。

Santana featurig Eric Clapton 2000

という2枚組のアルバムである。
これは困った。が、困っても後の祭りであると諦めるしかない。

この音源、誰かもってません? 持ってる人、コピーして譲ってくれません?


いまの私にとって、ネットオーディオは、恋い焦がれたかぐや姫である。どんな難行苦行を課されようと、かぐや姫を手に入れるために必要なら、一つ一つ克復するしかない。
それはいいのだが、克復して手に入れたかぐや姫がとんでもない女だったらどうする? 出っ歯のチチなし子で胴長短足、すがめの僻みっぽい女だったら?

そんな仮想未来に怯えながら、でも、進むんだよな、俺って。

まだ見ぬかぐや姫よ、美しくあってくれ!!