2013
12.04

2013年12月4日 最先端

らかす日誌

にとうとう出た、と自負していいのであろうか?

前回まで、ネットオーディオ導入に関するドタバタ劇を書き連ねてきた。
今回は、胸を張っていえる。

「俺、クリアしたもんね!」

そうなのである。我が家のネットオーディオが稼働し始めた。

さて、前回残っていた課題をどう解決したか。そこから始めよう。

症状1:音楽が時折途切れる

途切れなくなった。

症状2;では、他の曲、と探し始めたら、他の曲が見えなくなった。shareの中には600~700のCDが入っているは ずなのに、見えるのは2枚のCDだけ。しかも、その中の曲が選べない。

症状3:何ともならなくなって、プレーヤーの電源を落とした。そして、もう一度スイッチ・オンにすると、今度 は

「Please wait……」

の表示。よし、待ってやろうじゃないか、と待っても、何も起きない。「Please wait ……」のままである。要する に、使えない。

そう、この症状2も、症状3も出なくなった。All Clearである。 
もちろん、何もせずに症状が改善するはずはない。この間、1つだけ試みたことがある。

NASの再起動である。要するに、NASの電源を一度落とし、再び通電した。そしたら、不思議なことにすべての症状が消えた。まっとうに動き始めた。

そこで、まずは、ネットワークプレーヤーのリモコンでの操作を試みた。
小さなディスプレイには、まずNASの型番が出る。その段階でリモコンの決定ボタンを押すと、NASの中のフォルダが一覧表示さた。行き着きたいのは音楽をため込んだshareであることはいうまでもない。だが、出てきたのは、上から「フォルダ」「ミュージック」……。

不思議である。私は「ミュージック」などというフォルダを作った記憶はない。いつ、どこからこんなものが紛れ込んだのか。
それでも、私の音楽が蓄積されているのは、「share」というフォルダなのである。だから、これは、きっと「フォルダ」の中にあるに違いない。

あった。それを選択して決定すると、アルバム名がずらりと並ぶ。

「いや、そんなにアルバム名で並ばれても……」

なにしろ、700~800枚が入っているのだ。アルバム名だけでは、再生するアルバムを選ぶのも一苦労ではないか。

が、そのようにしか表示しないのが決まりなら、四の五の言っても仕方がない。とりあえず、「Abbey Road」を選択してみる。

ん? 難か違うぞ。え、1曲目が Beause? 2曲目は Carry That Weight? ……。

それって、アルファベット順ジャン!

他のアルバムも開いてみる。すべてのアルバムで、曲名がアルファベット順に並んでいる。

「えーっ、ネットオーディオって、アルバム通りには音楽が聴けないのかよ!」

ここまでたどり着いた歓びはある。しかし、これでは楽しみも半減だ。ライブアルバムなんてどうなるんだ?

「やっぱり、きちんと音楽を聴くのはCDでなければいけないのか?」

モヤモヤする気分で、でも、とりあえず音を出してみた……。


が、やっぱりモヤモヤする。こんな時は、きちんと尋ねた方がよろしい。パイオニアに電話をした。

「ということになってしまうんだけど、これじゃアルバムとしては聞けないよね。曲順を自分で変えられる機能もなさそうだし。ネットワークプレーヤーってこの程度のものなの?」

怒り半分、情けなさ半分の私に、電話の向こうでお兄ちゃんが答えてくれた。

「はい、それは、最初に『フォルダ』をお選びになったからです。『ミュージック』を選んでいただければ、そのようなことは起きません」

「いや、俺は『ミュージック』なんていうフォルダを作った記憶はないんだよ。何でそんなものを選ばなくっちゃいけないわけ?」

よくわからなかったが、それはNASのなせるワザなのだという。最初に「フォルダ」を選んでしまうと、NASは自分ですべてに仕事をやろうとする。つまり、自分で決めたルールで音楽を送り出し、プレーヤーはそれを受け取って再生するだけになる。

「従って、アルバムも曲も、すべてアルファベット順に並べられてしまうのです」

だけど、曲の頭には必ず洋数字で曲順が入っているぜ。普通、パソコンはその順に並べるよな。

「どうも、NASは頭にある数字は無視するようでして」

コンピューターの世界にも、ローカルルールがあるのか。

いわれるがまま、「ミュージック」を選んだ。なるほど、今度は私が登録した順にアルバムが並び、その中の曲はきちんと収録順に並んでいる。
よくわからんが1つ解決した。
ついでに、スイッチを入れてから働き始めるまでに1分前後かかるプレーヤーに苦情を述べると、

「多少電気代が上がるのですが」

と、節電機能をオフにするよういわれた。なるほど、これで立ち上がりは速くなった。


次は、iPadでの操作である。
前日までは、きちんとプレーヤーを認識していたのに、プレーヤーをバージョンアップして以降、プレーヤーとつながらなくなった。何度試みても同じである。

「これは明日問い合わせるか」

と諦めかけて、天才的にひらめいた。

「バージョンアップしちゃったから、IPアドレスが変わったのか?」

IPアドレスとは、ネットワーク上の住所のようなものであろう。プレーヤにはかつて、きちんとした住所があり、それをiPadに記憶させていた。だからiPadは、私に命じられると、その住所に尋ねていく。ひょっとしたら、リニューアルを機に、ネットワークプレーヤーは引っ越ししてしまったか?

プレーヤーでIPアドレスを表示させると、ああ、やっぱりそうか、住所が変わってる!

iPadに新しいIPアドレスを入力し、これでiPad問題も解決である。さあ、音楽に浸ろう!

平日のこと故、長時間浸るわけにはいかない。が、30分ほど聞いた印象では、情報量が増えた。例えば、エレキベース。プレーヤーが意図的に音を消すまで、きちんと音が出続ける。ギターも、ボーカルにマスキングされることなく、きちんと伴奏を奏でている。それに、これまで聞こえていなかった音まで聞こえてくるような気がする。

「いいじゃん、これ」

手元のiPadで次々と曲を変えながら、聞き続ける。ああ、そうだ、音楽が生き生きしてる。音にメリハリがあるから、躍動感がある。

「いい、いい、これ、いい!」

が、しばらくして、1つだけ気になりだした。

「高域が出過ぎてないか?」

かつて、クリスキットをマルチアンプにする前、ウーファー(低音部を受け持つスピーカー)とスコーカー(中高音担当のスピーカー)をネットワークでつないでいた。そのネットワークを作るとき、ウーファーとスコーカーの音圧を合わせるため、桝谷さん(ご存じない方は、「音らかす」を)にアッティネーターをお借りし、スコーカーの音圧を何処まで押さえればウーファーと合うのかを調べた。それを決めないと、ネットワークに取り付ける抵抗の値が決められない。

「ん、いいやん、これ」

その時出していたのは、多分、岡林信康である。彼の声に張りがあり、音楽全体が前に張り出してくる。躍動感もある。
アッティネーターをみた。絞りゼロ。つまり、スコーカーの音を全く押さえずにそのまま出していた。

「ということは、スコーカーはそのまま使った方がいいのか?」

しばらく聞き続けた。何となく疲れてきた。疲れてくると、音がシャリシャリして聞こえるようになった。全身をラメで飾った女のよう、といえば分かりやすいか? いや、分からないよなあ……。
とにかく、聞き疲れするのである。長く聞いていると、耳が痛くなりそうなのである。岡林の喉がつぶれそうなのである。

「ああ、高域が出過ぎると、こんな音になるのか」

その時の音を思い出した。

「ネットオーディオ、高域が出過ぎてない?」

アンプの設定は昔のままである。CDを聞けば、至上の音を出してくれる。それが、同じ0と1のデジタル信号を再生するのにもかかわらず、ネットワークプレーヤーの音だと、なぜこうなるのか?

理屈は分からない。唯一思いつくのは、デジタル信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバーターの癖である。
これまで、私は何の迷いもなく、Sonyの安いCDプレーヤーを使い続けてきた、それが一番いい音を再生してくれたからである。そして当時、桝谷さんによると、世界で最も優れたD/Aコンバーターを作っていたのがSonyであった。CDプレーヤーの音を決めるのはD/Aコンバーターである以上、当然の選択であったのだ。

かつて、Sonyが初めて世に出したデジタル再生装置の音を聞いたことがある。迫力のある音ではあったが、耳につく音でもあった。あとで知人に、

「初期のデジタル再生装置は、アナログ再生装置と違うぞ、ということを強調するため、高域を持ち上げた音sづくりをしていた」

と聞いたことがある。
ふむ、従来の音と違う、新しさをアピールするには高域を強調するのか。

ひょっとして、パイオニア、かつてのSony路線を踏襲していないか? ネットワークオーディオの優位性をアピールするために、高域を持ち上げるようD/Aコンバーターを調整していないか?

とはいえ、私はまだ、パイオニア以外のネットワークプレーヤーの音を聞いたことがない。したがって、ここに書いたのは1つの仮説でしかないことをお断りしておく。
といってもなあ。評判の高いLINNのプレーヤーは80万円もするし、最近出たSony製も20万円だ。おいそれと手が出せる価格帯ではない。

ふむ、我が家にはチャンネルデバイダーがある。これで、ウーファーとスコーカーの音圧を調整できる。今週末、もう少し高域のボリュームを絞ってネットワークプレーヤーの音を聞いてみよう。印象が変わるかも知れない。


ついでに、パイオニアの悪口を。

iPad用のコントロールアプリ、これ、使えた代物ではない。
NASに音楽を読み込むとき、同時にジャケット写真も覚え込ませた。それが表示されず、味気ないフォルダのアイコンがずらりと並ぶだけである。味気ないし、再生するアルバムを選ぶのに苦労する。

画面表示が少なすぎる。一度に表示されるアルバムは10枚強。スクロールして次をみるが、20枚ぐらいになるとスクロールできない。新たに読み込まねば表示しないのである。しかも、次を読み込むと、それまでのアルバムは消える。
これも、再生アルバムを選ぶときのストレスである。
1画面にすべてのアルバムを表示できないのは仕方がない。しかし、せめて最初から最後まで切れ目なくスクロールできるよう、すべてのアルバムタイトルを読み込んでおくべきではないか。

機能が少なすぎる。
何しろ、アルバム単位でしか再生できないのだ。まあ、CDと同じといえば同じである。でも、せっかくNASにすべてを記憶させているのである。一気に再生したいアルバムを10枚でも20枚でも先に選んでおけるとか、スクランブルですべての曲を再生できるとか、そんな機能は必須である。それが出来れば、一日中音楽が流れる家に出来るではないか。


余りに使いにくいので、ネットで調べると、DENNONのコントロールアプリは、パイオニアのプレーヤーも何の問題もなく操作でき、しかもパイオニア製より遥かに使いやすいとあった。
そのアプリ、とりあえずダウンロードした。今週末にiPadに入れ、使ってみる。
結果はまたお知らせする。

と様々書いたが、確かに、ネットワークプレーヤーの情報量は豊かである。音のマスキングも、CD再生に比れば遥かに少ない。CDの時代は終わりつつあるのではないか、という気がしてくるのを止めることは出来なかった。

慣れたら、ハイレゾ音源にも挑んでみようか、と野心を燃やす私である。