03.28
6CA7PPパワーアンプの製作 製作/調整編 2
調整を行なう
配線が全部終れば、DS1Kが電源トランスから外れているのをもう一度確かめ、バイアス調整用の半固定抵抗B10kΩ(VR-4)を左へいっぱいまわし、 VR-1(B250kΩ)はテスタを使って、その抵抗値が最大になるように仮にセットしておきます。これで準備は全部OKですので、真空管を挿し、切換スイッチを3結の方にまわしてから、 電源を入れます。しばらくすると、各真空管のヒータが赤くなります。6267のシールドは外しておきますが、低雑音管の為、中にもう一重シールドがありますので、明るいところでは、ヒータはほとんど見えません。ヒータを確かめたら、6CA7のP5に40V前後のパイアス(マイナス)電圧が出ているか、よく確かめて、VR-4を右ぺ少しまわせば、このマイナス電圧が少くなる事を確認します。もちろん、V3とV4の両方を点検します。
出来れば、第8図のように、テスタのリードの先端にワニ口クリップを取り付けておけば、このテストの時に、P5とアースポイントの両方にテスタのリード線を固定しておく事が出来ますので、両手があきますから便利です。普通のテータ・リード線も入用ですので、別にもう一組リード端子を入手して、ワニ口を付けます。
テスタをつないだまま、C電源回路の抵抗、コンデンサ等各部品を手で動かして見て、テスタの針が大きく振れるところがあったら、そのあたりのハンダ付けをもう一度確かめます。−50Vまでですので、感電する事はないと思いますが、炊事用ゴム手袋をはめておいた方が安全です。2~3分そのままにしておいて、針がふれないようでしたら、C電源回路は完全ですので、電源を切って、DS1Kを2つともトランスにつないでから、入カピンに短絡用ピンを挿し込む事により、6267のグリッドをアースして、もう一度電源を入れて、すばやく、各部の電圧を読みます。回路図の電圧は,ソリッドステート電圧計(Heathkit IM-25)で測ったものですから、テスタで測ると少し位少なく出るかも知れません。V3とV4のP3・P4は, 出力管のパイアスが深くかかっている為に、電流値が非常に少なくなっているので、かなり高く出ていますが、後で述べるパイアス調整を終れば、同回路図の通りになります。
B250kΩ(VR-1)を少しづつ、静かにまわして、6267側になっているAポイント(C-10のところ)が190Vになったところで、ベイントロックします。これで、回路編で詳しく述べましたようにV2のグリッドバイアスが適正値になったわけです。
そこでアンプを起こして、メータを見ると、20mA位を指していると思いますので、パイアス調整用ボリュームを静かに右にまわし、メータが80mAを示すところで止めます。DCバランスチェック端子にテスタのリードを当て、最初250mAレンジ位でゼロにしてから、5mAレンジでゼロに合せます。出力管はもちろんペアーチュープを使用しますが、残念ながら、大分不揃いです。この事は、DCバランスをとった後で、第3グリッドのバイアス電圧を測ればわかります。4本のうち、なるべく揃ったものを2組に分けて使用すると良いと思います。
このDCバランスを、敢てシャシにメータを取り付けて、そのメータを見ながらバランスを取るようにしなかった理由を少し説明してみます。このウリアムソン法によるパランスは、あくまで大体の目安で、回路図でおわかりのように、特にウルトラリニアにした場合、B+からプレー卜、スクリーン・グリッドに流れる電流は、いろいろな通りみちを経て来るわけです。従って、両プレート間の電位差が同じでも、プレート及びスクリーン・グリッドに流れる電流が、完全にバランスされているはずがありません。トランスのアンバランス、R-18とR-19との誤差、真空管の不揃い等は当然あると考えられます。
しかも、シャシに付けるミリアンペアメータが、センターゼロであっても、感度が良いものだと、少しパランスが崩れただけで、どちらかに振りきってしまって、すぐにこわれるでしょうし、丈夫なものは鈍感で、あてになりません。従って、テスタで250mA、50mA、5mAとだんだんにバランスの誤差を小刻みにして行く事により、最終的に、1mAの何分の一かの精度で測る方法が一番良いと思ったからです。この位のアンプを作るのに、テスタを使わずには出来ないのは当然で、どうせテスタは必要なのですから。
なお、このDCバランスを取る為に、陸軍端子にテスタのリードをつっ込むと、ここは信号が通る回路ですから、テスタのリード線があたると、かなり大きなクリック音が出ますので、スピーカの線ははずしておいた方が良いでしょう。入力をゼロにするのはもちろんです。
プレート電流を80mAに合せたのは、エイジング中に、大分この電流値が変わる為で、後でもう一度、数時間してから100mAにセットし直します。プレート電流の適正値は1本当り50mAで、2本で100mAですが、スクリーン・グリッドに1本当り7.5mA位の電流が流れますので、この方法ではカソード電流を測っているのですから、本当は115mAでなければならないのですが、いろいろテストをしてみた結果、この値は少し位違っても大差はないようですので、あまり厳密に考える必要はありません。
ダイナキットには、この15Ωの抵抗のかわりに13.5Ωの抵抗を入れて、メータを入れるかわりに第9図のようにアンプの側面にテストポイントがあって、そのポイントの電圧が1.56Vになった時に、
E=I・Rより1.56V=0.115Ax15Ω
例のオームの法則に従って、カソード電流が115mAになるように設計され、特許になっています。測定電圧が1.56Vだと、どんな安物のテスタでも、新しい乾電池の電圧が1.56である為に、そのテスタの校正が乾電池によって、簡単に、正確に出来るからです。立派な測定器を持たなくても、出力管の規定電流がいつでも測定出来るようにしてあるのです。やはり、アンプは生物に例える事が出来る位だからでしょぅ。マランツ8Bは、プレート電流を一本一本測定出来るように、メータが付けてあります。
出力管の電流値が決まり、DCバランスがとれたらC-6とC-7をそれぞれ,実体図のように、V3とV4のP6のピンにつなぎます。V2-1をV4に,V2-2をV3につなぐわけです。それから、オンボロのスピーカを、スピーカ・ターミナルにつないで、先に外してあるNFBのリード線を、VR-5につなぎます。(16kΩの固定を使った場合は、それがVR-5のかわりですから、それにつなげば、NFB回路がつながって、NFBがかかります)。そんな事はありませんが、もしスピーカが、ギヤーと鳴ったら、正帰還ですから、先に述べた要領でこのカップリング・コンデンサを入れ替えてつなぎます。
スピーカに耳を近づけても、何も聞えないはずです。ためしに、NFB回路のリードを外して見て下さい。今度は少しですが雑音が聞きとれるでしょぅ。スピーカがあまり小さすぎると、この雑音が聞きとれないかも知れませんので、そんな時には、もう一度NFBをつないで、6267の球を指ではさんで見て、スピーカがブーンと鳴ったら回路はOKです。もし、それでも何も聞こえなかったらスピーカの断線か,誤配線です。もう一度調べて見ましょう。
このテストが終ったら、30分位そのまま、電気を通したまま置いておいてから、入カピンをショートさせて、もう一度バイアス調整をやり直します。80mAに合わせたのが少しくるってくるはずです。今度はもう少しまわして、100mAを指すところでセットし、 DCバランスをとり直して、出来れば、半固定抵抗の軸にキャップをかぶせておきます。不用意にまわさないためです。
オシロのある方は、このままで波形を見てみましょう。
このバイアス再調整は数力月毎に行なうと良いわけですが、メータの読みが10%以上落ちた時だけに行なうわけで5%以内のくるいは良く出るはずです。それは、私共の家庭に来ている商用電源が、時間によつて5%近く上下するからです。固定バイアスですので、100Vの入力電源電圧が、5%下った時には、トランスの2次側から出ているバイアス電圧も、それに応じて少なくなっているわけです。バイアスが少くなれば、それだけプレート電流が多くなりますが、プレート電圧の方も低くなりますので、その分だけプレート電流が少くなり、その差だけがメータに示される事になります。従って、5%以内の上下を気にして調整しなおしていれば、電圧変動のある所では、のべつバイアス調整をまわしていなければならない事になります。
第10図は、NFBをかけないで、方形波をオシロに写したところです。NFBがかかっていませんので、ゲインが250倍(48 dB)位ありますので、ミリバルの針をこわさないように、サインウェーブ発振器よリアンプヘの入力は出来るだけひかえて下さい。低域は大分落ちていますが、中高域はずい分素直に伸びているようです、トランスが良いからでしよう。