08.20
ヒースキットIG-18を参考にしてオーディオジェネレータを考える 2
キットIG-18
キットとはある物を作るための材料が全部揃っていて、素人にも専門的知識がまったくなくてもでき上がるようになっているもののことを言います。アメリカ、ヨーロッパにはプレハブの家が、日曜大工で、さして器用さなどなくても、説明書にしたがって作り上げて行けば、専門家の作ったものに比べて、全然劣らないものができるようになっているものです。
このキットにも、75頁もの組立て説明が付いていて、中学3年生位の英語の力で十分理解できるように非常に平易な説明が、実に克明な実体図と合わせて、誤配線にならないように配慮されています。
組立てはプロックごとに分類されており、部品もそれぞれ別々のパケットに入っていて、混同じないようになっており、その部品の形状まで一つ一つ説明してあるのは、すこし親切過ぎる位なのです。
左写真はそのウェーブ・ジェネレータ部プリント基板のでき上がり図です。本項は製作記事ではありませんので、製作に関する説明はその75頁のマニュアルにまかすとして、ここでは、測定器をキットから作って、果たし信頼できるかどうかと言うことについて考えて見たいと思います。
まず第1に考えられることは、発振回路のトランジスタのバイアスが正確にとれているかどうかと言うことが考えられます。と言って、測定器を使ってバイアスを取らなければならないとなると、キットとは言えません。測定器を作るための測定器が必要とすればミイラ取りがミイラになったような話で、面白くありません。
これらの点について、一つ一つここで説明することは本項の目的に反しますので省略しますが、本機についているパネル・メータを利用して、非常に正確に調整できるようになっていて、後で測定器を使って調べて見たら、ドンピシャリ。その上、メーカー製のものと違って、キットから自分で組立てたものですので、折にふれて校正し直しがすこぶる簡単で、いつでも正確な測定器が使えることになります。
回路構成と、その仕組みがわかったところで、オーディオ・ジェネレータを使ってアンプの測定についてすこし考えて見ましよう。
用途について
アンプを測定するのに、ジェネレータはあくまで信号を出すだけの装置ですので、これだけでは、アンプの測定ができないのは言うまでもありません。
まず一番最初に測定するのが周波数測定と言うことで、それには、交流信号電圧計が必要になります。サービス・ステーションなどのプロはそれ以外にアテネータを使うのですが、かなり高価なものですので、アマチュアには揃える必要がないと思います。
第4図のようにフラット・アンプの代表的なものであるパワー・アンプとジエネレータと交流信号電圧計をつなぎます。図のように、オシロスコープを並用して波形を見ながら測定すればなお良ろしい。もちろん、サイン・ウェーブだけを使います。この場合は、波形を主にした測定でもなく、ひずみ率を見るためでもありませんので、割合安物のジェネレータでも一応用は足せそうですが、それでも周波数特性の良いものを使用しなければならないのはもちろんで、ジェネレータにパネル・メータのないものは別にアンプヘの入力電圧監視用のミリバルが要ります。一連の周波数で、左から一定電圧の入力を入れて、出て来た電圧をdB目盛で読んで行き、対数目盛のグラフに記入して行きます。
以上が比較的フラットなアンプの測定ですが、RIAAのイコライザ段のような場合、1,000Hzを0dBとすれば、30Hzで+18.61dB、15,000Hzで17.15dBと言った具合にその特性がカーブしているので、普通は中間にアテネータを入れて、交流信号電圧計は常に0dBを指すように、中間のアテネータで加減して、そこで各周波数におけるプラスおよびマイナスのデシベル値を読み取るわけですが、私共アマチュアにはアテネータは少々贅沢ですので、電圧計のdB目盛で直接読んで、グラフに取れば、そのアンプがRIAAにどの位合っているかがわかるわけです。
オシロスコープもアンプの測定には不可欠と言えるもので、電圧計の代わりにオシロをつないで、その波形を観察します。サインウェーブで、その波形を観察するのには、かなり熟練を要しますが、その目安として第6図にその代表的な波形とその症状を示します。すこしオーバーに示してあるので実際にはこんなにはっきりとは見えませんので念のため。
方形波を使えば、アンプの周波数特性を見るのに非常にすみやかに行なえます。方形波は一般にチューニングした周波数の上下10倍づつ位までがオシロスコープに出るわけですから、第6図のような具合に判定をします。
未知の周波数が何Hzかと言うことを知るのにも、ジェネレータは非常に便利の良い測定器です。その公式は
で示され、Thは水平タンジェント・ラインに対するループのことで、Tv垂直タンジェント・ラインに接するループを表わします。Fはもちろんジェネレータより取り出した周波数です。第7図にその代表的な例を示します。
位相のずれを知るのも、ジェネレータの応用のうちで、利用度の高い用途の一つです。方法は比較的簡単で、アンプまたはその各増幅段の位目のずれの角度を計る方法で、その判定法は第9図(「第8図」の誤り)のリサージュ波形を見ればわかります。アンプとの接続は非常に簡単でジェネレータの出力をアンプの入力側に入れると同時にその出力をオシロスコープの垂直入力に入れ、アンプの出力側からオシロスコープの水平入力に入れるだけで、オシロスコープの各ゲインを調節して、リサージュ波形を描きます。
(以上)
以上、ラジオ技術 1971年12月号