これから連載するのは2017年に書いた原稿である。沼田屋タクシーのHPで公開するために書いたものなので文体は「です・ます」調になっています。また、事実関係も現在と当時では変わっているので適宜「注」を入れました。ご了承下さい。
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自動運転なんて夢さ。そりゃあ、いつかは実現するかもしれない。でも、ずっと先のことだろ?
あなたはそう思ってはいませんか? それは間違いです。だって、運転席などない自動運転車は、もう使われているのです。
論より証拠。こちらをご覧ください。
運転席のない巨大なダンプトラックが自在に仕事をこなしています。日本の建機メーカー、コマツが作りました。2008年、世界で初めての無人ダンプトラック運行システムを実用化し、いまも性能向上を目指して研究・開発を続けています。
このダンプトラックはGPS受信装置や障害物を検知するセンサー、それに様々な制御装置を備えています。無線で中央管制室が送ってくる走行コース、速度に従い、前に障害物があれば自力で避けます。また4輪駆動で運転席がないため前後がありません。つまり、車の進行方向を180°変える切り返しの必要がなく、狭い場所でも作業ができます。
【注1】
この無人ダンプシステム(AHS)はその後さらに進化し、2020年代半ばには世界中の鉱場で数百台規模の無人ダンプが24時間体制で稼働するまでに成長した。人間が立ち入れない「限定された閉鎖空間」における自動運転は、この原稿を書いた当時以上に完成された技術となっている。
司令室をそっくり車に積み込んだら? あなたは車の中で目的地や走行条件を入力することができますね。そう、あなたが乗っているのは自動運転車です!
もちろん、対向車や歩行者、自転車、バイクなど様々なものがある一般道路で走るには、まだまだ力不足です。だからオーストラリアやチリの鉱山など特殊な環境での利用に限られていますが、自動運転を支える技術のほとんどはもう実用化されています。ハンドルを握らなくても目的地まで送り届けてくれる自動運転車が私たちの日常の暮らしに欠かせなくなる日は、もう目前なのです。
何も、遠くのオーストラリアやチリまで視線を伸ばさなくても、自動運転を支える技術はあなたの車にも利用されています。タイヤがロックして車がスリップするのを防ぐアンチ・ロック・ブレーキシステムや滑りやすい道路でスリップを防ぐトラクション・コントロールは多くの車に採用されています。
スバルのアイサイトはステレオカメラで障害物との距離を測り、ぶつかりそうになると自動的にアクセルを緩め、ブレーキをかけてくれます。それだけでなく、前を行く車との距離を測って一定に保ち(アクセルとブレーキの操作)、白線を読み取って車線からはみ出さない運転(ハンドルの操作)をしてくれます。また日産のプロパイロットは高性能カメラを使い、渋滞時の運転を車任せにできるようになりました。
【注2】
ここで紹介したアイサイトやプロパイロット(高度運転支援システム:レベル2)は、現在では軽自動車にまで標準装備されるほど一般化した。高速道路など特定条件化での「手放し運転(ハンズオフ)」も実用化されたが、ドライバーが常に監視責任を負うという点においては、2017年当時から本質的な枠組みは変わっていない。
少し前なら、すべてドライバーがすることばかりです。それを今はセンサーやコンピューターが自動的にやってくれ、車はずっと安全になりました。
あなたはもう、部分的に「自動運転車」になった車に乗っています。これらに、「もう少し」、「何か」が加われば、あなたが運転しなくても安全、快適に目的地まで送り届けてくれる自動運転車ができあがります。
とはいえ、人間の能力とは大変なものです。機械は人間よりはるかに大きな力を出します。コンピューターは人間よりはるかに早く、正確に計算します。人に見えないもの、聞けない音を見たり聞いたりする機械もあります。でも、まだ人間なしでは車は動きません。総合力で人間に並ぶ機械やコンピューターはありません。
つまり、車の自動運転に欠かせない「もう少し」、「何か」は、これまで人間しかできないことでした。しかし、ここ数年の間に研究が飛躍的に進み、機械やコンピューターが人間に取って代わる可能性が現実になってきたのです。
その「もう少し」、「何か」の研究、開発は世界中で行われています。群馬大学理工学部の小木津武樹准教授が開発した技術は、世界のトップレベルにあります。2020年には桐生市内を、運転手がいない完全自動運転車が走るはずです。私たち沼田屋タクシーはそのお手伝いをします。
【注3】
当時小木津准教授は「2020年には桐生市内で完全自動運転車を走らせる」といい、地元の沼田屋タクシーも巻き込まれたプロジェクトだったが、沼田屋との共同開発は実現せず、現在に至るまで、桐生市の公道を自動運転車は走っていない。
その後、中心人物であった小木津氏は大学を離職した。
最後に1つだけ。車の運転で機械やコンピューターが人間と並んだとしても、ひょっとしたら人間を超えたとしても、人間は車の運転をするだけの生き物ではありません。いつになっても、人間は総合力で機械やコンピューターに負けるはずはないと思っています。

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