2004
05.22

とことん合理主義 – 桝谷英哉さんと私 番外編III :マルチセルラーホーンの製作2

音らかす

結論から書くのが、文章をわかりやすくするコツである。

そこで、マルチセルラーホーン製作に関する結論。

1,確かにカットの精度は相当程度上がった。ずいぶん、作りやすくなった。が、過信は禁物である。

2,マルチセルラーホーンの製作は、筋肉痛との戦いである。

3,マルチセルラーホーンの製作は、粉塵との戦いである。

4,マルチセルラーホーンの製作は、製作途中で発生する細かな不具合を、いかに力業と知恵で抑え込むかの作業である。

5,マルチセルラーホーンの製作は、接着剤の機能、性能を考えさせる切っ掛けになる。

6,………………………………

 もうよろしいですね。結論が多岐にわたると、何のことか分からなくなりますよね。

まとめは3項目以下にする、というのが原則なのだそうです。かつて帝国海軍は、すべての報告を3項目以下にまとめさせたと聞きました。本当かどうか確認はしていませんが、人間の理解力、記憶力の限界からすると、なるほど合理的な手法に思えます。

なんてことを、いつもだらだらした文章をお目にかけている私が書くのは、筋違いかもしれませんが……。

というわけで、さっそく(でもないか)、製作に取りかかりましょう。

なお、特種な作業をしながら、ほとんど自分で写真を撮ったため、部分的に私の肉体が皆様の目に触れるところがあります。

伏してお許しを乞いたい!

なお、私の肉体の一部を目にして、私に関心を持ち、私に会いたいという方は、その旨を明記したメールをいただきたい。
ただし、美しい女性に限らせていただく。できればご本人の、少なくとも3年以内に撮った写真を貼付していただければ、選択の目安になるのでありがたい。
私にも、趣味嗜好はありますので。

製作工程2:荷物が届く

2003年のゴールデンウイークのちょっと前、いつものようにたらふく酒を飲んで深夜に帰宅すると、我が家の玄関に段ボール箱が届いていた。そう、私は何度も見たことがあるが、これがマルチセルラーホーンのキットなのである。

酔眼朦朧としたその夜は、放っておいた。酔った勢いで何かを始めても、どうせろくなことにはならない。その程度の社会的真実をわきまえるほどには、私は年輪を重ねている。

それに、まあ、できれば先延ばしにしたい作業である。

連休に入ってもしばらく放っておいた。君子危うきに近寄らず、というヤツだ。

が、近寄らなければ、こいつはいつまでたってもここに居座る。居座られると、狭い我が家がいっそう狭くなる。

連休が半ば過ぎ、酔いも充分にさめたところで開封した。

なにやら、シュレッダーで刻んだような紙が沢山見えてきた。木製品なので、搬送途中に傷がつかないようにという配慮なのだろう。

でも、こいつは散らかる。もう少し取り扱いが楽な緩衝材はないものか?

作業工程3:パーツの確認

左の写真が、段ボールに入っていたすべてである。
右側にあるのが、例の三味線のバチ型の板(これから先は、この板を「バチ板」と呼ぶことにする)。真ん中にあるビニール袋には、ホーンを組み立てるときに使う治具が入っている。
左は、上が天板、底板を切り出す板4枚。下の左は、ホーンとアルミ製のスロートをつなぐのに使う板2枚、その右が側板を切り出す板4枚。
アルミ製のスロートは品切れだそうで、「近いうちに送る」ということで、この段ボール箱には入っていなかった。

この板きれの集合が、作業を進めるとマルチセルラーホーンになる。
人生には不思議なことが多い。

作業工程4:ホーン製作の下準備

まず、バチ板を点検する。

バチ板は下の写真のように8枚ずつまとめられ、それぞれセロテープで固定してある。写真で分かるように、喉の部分(つまり一番狭くなった部分)が広いものと狭いものがある。広い方が、ホーンの左右になり、狭い方が上下になる。

セロテープをはずし、左右用の板と、上下用の板を分けてまとめる。そのうえで、開口口(つまり一番広くなった部分)と喉の部分が、左右用のバチ板、上下用のバチ板それぞれで同じになっているかどうかを確認する。

ここは、仕上がりに大きく関係するので、手抜きは許されない。これがバラバラだと、ホーンが歪んだり、開口口があわなくなったりで、あとで大変苦労することになる。苦労するだけならいいが、何とも修正がきかない状況に陥ることもある、と思われる。

慎重に!

で、カットがずいぶん正確になったが、それでも左の2枚の写真のように、いくらかのばらつきがある。コンピュータ制御されたマシンでカットしているのでなく、人間が電気ミシン鋸でカットしたものである以上、避けられないことだ。

これをカットしてくれたおじさん(だと思う)への感謝と思いやりが、仕上がりの立派なマルチセルラーホーンを作るための秘訣である。

ね、わずかだけどばらつきがあるでしょ!?

これを放っておくと、後ほどどのような災厄があなたを襲うのか。

それは、該当個所で詳述するので、ここではばらつきがあることを確認するにとどめ、それ以上は触れないことにする。

作業工程5:開口口と喉口を揃える

開口部と喉部は、上下用のバチ板、左右のバチ板それぞれで、すべて同じでなければならない。送られてきたバチ板にばらつきがあれば、これを微修正するのは、このホーンを作る者の仕事である。

ということで、私は電動サンダーを取り出すのである。確か、1万円も出さずに買った記憶がある。これで家具を修理したり、家具を作ったり、結構重宝して使っている。

電動サンダーで削る、これから始まる、削って、削って、削って、削って………………………………、という戦いの幕が開く。

なお、次の写真では左足でバチ板を押さえているが、これは写真を撮るためにこうしただけで、実際の作業は左手でバチ板を押さえ、右手で電動サンダーを操作する、という形で進めた。

理想的なのは、上下用、左右用のバチ板がそれぞれ、開口部、喉部だけでなく、すべての箇所で同じ形になっていることである。が、通常の生活者にそこまでの作業は無理だ。それに、今回我が家に届いたバチ板は、従来に比べてカットが格段に良くなっていて、そこまで気を使わなくても済むようである。
 ここでは、開口部、喉部を揃えることに全力を挙げる。

 

 

 

 

 

作業工程6:ホーンを組み立てるための当て木の製作

桝谷さんは、この当て木を作るために、3mm×15mm×900mmの板切れをわざわざ購入されたようである。

が、私に言わせれば、それは無駄だ。割り箸で充分である。この当て木は最終的にはすべて廃棄する。それなのに、わざわざそのようなものを買う必要はない。割り箸で充分であることは、私が証明する。

 

 

 

 

 

 

 

この割り箸を、ペンチで切る。ま、長いのと短いのが必要だから、そのようになるように切る。長さは、バチ板にあてて見当をつける。感じとしては、3対2ぐらいに切れば充分である。

 

 

 

 

左の写真のように、合計64本の当て木ができる。左が長いヤツ、右が短いヤツだ。

 

 

 

 

 

作業工程7:バチ板に当て木を接着する

実は、その前にやることがある。
バチ板の裏と表を決めることだ。
バチ板はベニア板なので、両面が微妙に違う。1枚1枚手にとって、美しい方を表と決める。
間違ってはいけないのは、表は完成したときに人目に触れる方、つまりホーンの内側になる方である。反対側は、いずれにしても石膏に埋まってしまって人目にはつかない。

表と裏を写真に撮ったのだが、パソコンに取り込んでみたら表裏が余りよく分からなかったので、ここに掲載するのはやめた。しかし、実物を見れば分かる。ご自分で製作されるときは、各自判断していただきたい。

もう一つある。
バチ板の組合せを決めることだ。
前にも書いたことだが、バチ板の形は、それぞれ微妙に違うものだ。しかし、ホーンを組み立てるには、右と左、上と下のバチ板は、同じ形であることが望ましい。

作業は簡単である。
バチ板の表面を内側にして、2枚のバチ板を重ねてみる。こうして、できるだけぴったり合うものをペアと決める。
合計32組のペアができたら、当て木をバチ板の裏側に接着していく。

左の写真をご覧いただきたい。2枚ペアにした上下用のバチ板に、当て木を接着したところである。桝谷さんの「合理的なまとめ方と作り方」によると、当て木を接着する位置は、端から35mmぐらい、とある。ま、これはだいたいの目安だから、あまり神経質になる必要はない。

左右用の板にも、同じように当て木を接着していく。これは端から55mmぐらいというのが桝谷さんの指示だ。

人間は、先の見通しに基づいて行動する生き物である。だから、ここは我々も先の見通しを持とう。
バチ板4枚でホーンを作る時、輪ゴムの弾力を利用してバチ板を締めつけて形を整えるのだが、いま貼り付けた当て木は、その際に輪ゴムをひっかける突起になる。ということは、ペアになった2枚のバチ板に貼り付けられた当て木が、2枚で位置がずれていると、そう、ゴムで締めつけるときに困ったことになる。
だから、先に2枚ペアを作り、重ね合わせた上で当て木を接着するのだ。
写真のように、接着する場所には充分気を使ってもらいたい。
ま、気を使わずに困るのは、実際に製作に取りかかっているあなただから、私が困ることはないのだが。

2枚ペアにしたバチ板に当て木を接着し終えると、左の写真のようになる。

 

 

 

 

 

作業工程8:ホーンを作る

まずは、接着面に木工用ボンドを塗る。
接着面は、左右用のバチ板の木端(こば)である。幅3mm。ここに均一にボンドを塗るのはなかなかの作業である。

このボンドを塗った面に、上下用のバチ板が押し当てられることで接着が完成するのだが、バチ板を押し当てられると、余ったボンドは逃げ場を求めて何処かに出てくる。出てくる場所がホーンの外側なら問題はないが、内側に逃げられると、あとの処理がやや面倒だ。なにしろ、ボンドがついたところは、塗料をはじいてしまうからである。
もちろん、拭き取ればいいのだが、ホーンの中は拭き取りにくい。できることなら、内側には逃げ出して欲しくない。

ということで、ボンドを少量しか使わないと、逆の困った問題が生じかねない。
この4枚のバチ板は、ボンドの接着力だけでホーン状の形になる。ボンドをケチったが故に接着力が弱いところがあると、作業を進めているうちに、そこが剥がれかねない。剥がれてしまえば、もとのただの板の集まりに戻ってしまう。
実際、私はいつもこの問題に苦しめられる。

もちろん、ボンドは大量に使えば接着力が強くなるというものではない。接着する2枚の板の接着面に、薄く均一に、しかも余すところなく行き渡っていればいいのである。しかし、手作業で塗布作業をする以上、なかなか理想的には行かない。だから、多少多めにつけて、押し当てる圧力を利用して接着面全体に、均一に広がることを期待する。

というわけで、我々は2者択一を強いられる。が、我々が選択できるのは、多少内側にはみ出しても、ちゃんと接着される方しかない。内側にはみ出したボンドは、後ほど何とか取り除くことにする。

したがって、ボンドは、ややたっぷりめにつけることをお勧めする。

 

 

2枚の左右板の木端にボンドを塗り終わったら、上下用の板との接着に入る。

まず、左の写真のように、左右用の板の喉部に、送られてきたセットに入っていた治具をはさむ。

はさんだら、この組合せに上下板を加える。
と書くと簡単だが、具体的には次のような作業になる。

 

1,治具をはさんだ部分を左手の親指と人差し指でつまみ、つまんだ部分を上にして全体をぶら下げる。

2,上下板の1枚を右手でつかむ。同じように喉部を持つのだが、喉部の木端の方を、親指と人差し指ではさみ、同じようにぶら下げる。

3,喉部の先端をあわせて3枚目を組み合わせたいのだが、先端部分を先に合わせてしまうと作業が難しくなる。左手で下げているバチ板に接着してある当て木が邪魔をするのである。

4,そこで、工夫がいる。といっても、たいしたことではない。右手に持っているバチ板をよく見て欲しい。あなたの手は一番細いところをつかんでおり、板は下に行くに従って広くなっている。ある程度広くなっているところを、邪魔をしている当て木の間にいれようとするから入らないのだ。そう、まず、細いところを当て木の間に入れる。入ったら、右手に持っているバチ板を上に引き上げ、喉部の先端同士を合わせればいい。

ということで、無事4枚のバチ板の喉部を組み合わせることができると、左の写真のようになる。

ここまで来たら、とりあえずはしめたもの。輪ゴムで喉部をぐるぐる巻きにしてしまおう。次の写真を見ていただきたい。

ここの作業は夕食後になったので、私のパジャマまで映り込んでいる。

我がナイトファッションも、ついでにじっくりご鑑賞を願いたい。

   

喉部を輪ゴムでぐるぐる巻きにしたら、次は開口口だ。

当て木は、それぞれ2本ずつ向かい合っているはずだ。
まず、一番開口口に近い当て木2本の向かい合っている部分を、輪ゴムでぐるぐる巻きにする。開口口は、このゴムの力だけで、上下の板と左右の板がくっつく位置を決める。できるだけ強く巻き付ける。
一方に巻き付け終えたら、もう一方にも巻き付けるのだが、このとき、ホーンを支えている手を安易に離すと、ホーンは滅茶苦茶になる。
それはそうだろう。片一方は輪ゴムでしっかりと上と下のバチ板が引かれ合っているのに、もう一方はフリーである。手を離した瞬間に、すでにゴムで引かれ合っている方はさらに引かれ合おうとし、もう一方はそれに抵抗しないのだから。
これをアンバランスという。

   

アンバランスにならないよう、開口口のまだ輪ゴム処理をしていない方を手で押さえながらホーンを回転させ、もう一方にも輪ゴムをきつく巻き付ける。

開口部に近いところが終わったら、次は開口部から遠い当て木である。このゴムの圧力で、これまで平らだったバチ板が、木端のカーブに従って曲がることになる。不思議な瞬間である。

輪ゴムを巻き終わると、次の写真のようになる。

これでホーンが1本出来上がったと喜んではいけない。まだ、微調整が残っている。

まずは、開口口で4枚のバチ板を合わせなければならない。

多分、それぞれのバチ板の木端で描かれているカーブが、少しずつ違うからだろう。4枚の板を喉部で合わせると開口口でずれが生じ、開口口で合わせると、喉口でずれる、ということが起きることがある。どちらかを合わせなければならない。

どちらを合わせるか?

あとの作業が楽な方を選ぶ。それが賢い選択である。

先を見る賢い頭脳は、次のように考える。

いずれにしろ、ずれている部分はあとで切ったり削ったりして合わせなければならない。どちらが楽か?

当然、幅の狭い喉部にずれを集中した方が、あとの作業が少ない。つまり、楽である。

ところが、この作業は喉部を合わせることから始まった。目の前にあるホーンは、喉部はぴったり合っているが、開口口にずれがある。開口口で出過ぎたバチ板は引っ込めなければならないし、引っ込んでいるバチ板は出さなければならない。

左の写真は、このように、4枚のバチ板を開口口でぴったり合うように調整したホーンである。

この調整をするとき、喉部に巻き付けたゴムをゆるめてやると作業が楽である。もちろん、調整作業が終わったら、喉部の輪ゴムはもういちどしっかり巻き付ける。

 

 

まだホーンは出来上がっていない。接着部をじっと眺めていただきたい。輪ゴムでキッチリ締め上げても、ものによっては、接着部に隙間が出るものもある。上の写真でわずかな隙間を確認していただくことができるだろうか?

いずれ、このホーンは、水で溶いた石膏に包まれる。包まれるとき、隙間があると石膏がその隙間から流れ込む。従って、隙間は塞がなければならない。

どうするか?

布製のガムテープを使う。

布製でなければならない。紙製は使えない。

左の写真のように、一方を上のバチ板(あるいは下のバチ板)にくっつけ、ガムテープを力一杯引っ張る。引っ張って、下のバチ板(あるいは上のバチ板)に貼る。布には、ほんの少しだが弾性がある。それを利用して接着部をぴったりくっつけようというのだ。

紙製が使えない理由が、もうお判りいただけただろう。紙製は、強く引っ張ると破けてしまう。全く頼りにならない軟弱ものである。

作業工程9:補正

私だって、これでホーンが1本できたと書きたいところだ。ところが、なかなかそうは問屋が卸さない。次の写真を見て欲しい。

あれほど力任せに、輪ゴムで固定したはずの開口口が、無惨にもずれている。もとの平らな状態に戻りたいという、左右のバチ板の本能が、木工ボンドの接着力に打ち勝った結果である。

すべてのホーンでこのようなことが起きるとは限らない。全体の3~4割、つまり、合計16本のホーンを作るわけだから、4本から7本というところが平均だろう。

といって、放っておくわけにはいかない。補正が必要だ。

輪ゴムの力だけで同じ場所にとどめることができないのなら、左右のバチ板に自由な行動を許さないバリケードを作ればよろしい。
あなたは学生時代、バリケード作りに参加されたかな?

上の写真のように、ちょうどいい長さに切った割り箸を用意する。ちょうどいい長さは、実物にあたって自分で決める。長すぎるバリケードは使えないが、多少短くても、少し奥に押し込めば、開口口は理想的な幅になる。

バリケード用の割り箸が用意できたら、接着がはずれている部分に再びボンドを塗る。次に、このバリケードを開口口に押し込み、開口口を形成するバチ板の4隅がきちっと合うように調節する。

ここで手を離すと、バリケード自体が逃亡しようとする。高まる民衆の力から一刻も早く逃れたいのである。
ん、バリケードを築いたのは民衆か? それとも権力側か?

いずれにしても、ここでバリケードに逃亡されたのでは、いったい何をやっていたのか分からない。バリケードを逃がさないためのバリケードがいる。

布製のガムテープである。こいつで、割り箸製のバリケードを固定してしまう。

 

 

 

 

こうして補正が終わったホーンは、左のようになる。

これを16本作るのが、今晩の目標だ。

喉部に使う治具は、2個入っている。2本目のホーンが完成し、3本目の製作に取りかかる前に、1本目のホーンから治具を抜き取る。そのころには、ボンドが半乾きになってかなりの強度が出ているから、抜き取っても大丈夫だ。
内側にはみ出たボンドで、治具がなかなか抜き取れないこともある。その際は、金槌など硬いものを使って上から叩くと、下に抜ける。

1本あたりの作業時間は、15分から20分。順調にいけば、16本で4時間から5時間半程度である。

 

ところが、中にはとんでもないことをしでかしてくれるヤツがいる。

左の写真を、じっくりご覧あれ。どこか変でしょう?

左右のバチ板の逃亡は防いである。4隅はきちっと合っている。でも、どこか変。

そうです、開口部の正方形が歪み、菱形になっている! 歪んでるんですね。

多分、左右用のバチ板の形が少しだけ違っていて、こんな結果が生まれているのだと思うのだが、ここまで来てはそんなことを言っても仕方がない。でも、このままで放ってはおけない。何とかしなければ!

そこで、力任せの業に出る。力任せに歪みを修正するのである。
道具は、再びガムテープ。次の写真のように、ガムテープを使って長くなった対角線を、正常な長さの対角線に戻してやるのである。このようにテープを貼って数時間すると、ちゃんとした正方形に戻ってくれる。

今回は、このような不心得者のホーンが2本出た。残念だが、ま、修正はできるので、あまり気にすることもないだろう。

こうして、16本のホーンを作り上げると、手のひらはボンドだらけになる。次の写真が、作業終了後の我が左手だ。

長い生命線、くっきりした知能線、豊かな感情線をご確認いただけただろうか?
シワの本数が少なく、

「単純な性格なんだね」

といわれたこともある。
いずれにしろ、これが私である。
いや、本筋とは関係ないが。

こうして完成した16本のホーンは、一晩お休みいただく。この間に、ボンドが完全に乾くことになる。

作業工程10:念のために

幸い今回はなかったが、喉部をゴムで止め、開口口に近い当て木に輪ゴムを巻いていると、突然全体が斜めにグシャリとつぶれ、もとの状態に戻っててしまうことがある。

それは、喉部に巻いた輪ゴムが緩いためだと思われる。喉部では、治具を中心にして、輪ゴムが4枚のバチ板を固定している。これが緩い場合、斜めからの力には極めて弱く、せっかくできていた美しい長方形が一瞬のうちに壊れ、長方形→平行四辺形→単なる板の集まり、という変化が瞬時に起きる。

それを防ぐには輪ゴムを強く巻けばいいのだが、強すぎると、開口口をぴったり合わせようとバチ板を前後に動かす作業が、ほとんど実行不可能である。

従って、喉部の輪ゴムは、

ある程度強く巻く→開口口の調整が終わったら、もう1本の輪ゴムで喉部を強く巻く

という手順を推奨したい。