2010
11.25

2010年11月25日 資質

らかす日誌

人の上に立つ者には多くの資質がいる。
できるだけ広範な知識は必須だし、即座の判断力も欠かせない。偏らず、最大の利益を追求する眼力、多くの人を束ねる胆力、危機を恐れない勇気。まだまだあるだろう。

だが、きわめて単純な力も必要なのだと多くの人がいう。それは、、である。運に恵まれない人が上に立った組織は悲惨だという。

なるほど。私なんぞは懸賞に当たったことがない。宝くじに当選したこともない。棚からぼた餅など落ちてきたことがない。
ひと言で言えば、運がない。私が、私の属する企業で栄達しなかったのはそのためか。
もっとも、栄達したと思っている連中も、どこまで運に恵まれているのかどうか。いまや我が社は、生き残りに必死である。

いや、私のことを書きたいのではない。ことは、我が国の首相である。

菅さんはいま、己が宰相の器でないことに歯ぎしりをしているのではないか。

何しろ、運に見放されている。

尖閣諸島の日本領海に、中国の漁船が侵入してきた。

「おいおい、何で俺が首相の時に」

と嘆いてすんだのなら、まだ運がいい。ところが、逮捕した中国船の船長の勾留延長を決めたところ、中国が猛烈に反発した。おかげで処分保留のまま釈放し、弱腰外交で批判の矢面に立たされ、支持率を大幅に引き下げた。

「おいおい、何で俺が首相の時に」

菅首相ならずとも、そう嘆きたくなるところである。

だが、運に見放された首相はとことん追い詰められる。
尖閣諸島問題が沈静するいとまもなく、今度は北朝鮮が韓国の領土に砲撃を加えた。民間人を合わせて4人が死に、18人が怪我をした。

何の責任もない私は、

 「後継者に決まった金正恩(ジョンウン)って、確かスイスかどこかに留学してたんだよな。在学中は他国からの学生立ちと交流して意見交換もしたはずで、北朝鮮も3代目になれば国際常識をわきまえた国になると期待したけど、やっぱりダメか。こりゃあ、自滅を待つしかないんだな」

と1人考えていればすむ。しかし、首相はそうも行くまい。

「おい、日本は大丈夫か?」

と責めたてられて、またしても嘆いているに違いない。

「おいおい、何で俺が首相の時に」

って。

ああ、ここまで運に見放された首相をいただく日本って、さて、いかがなりますことやら。

 

このところ、珍しく仕事に追い回され、今月に入って満足に休みも取っていない。
さらに悲惨なのはギターで、ギターに触る時間がなく、時間があっても疲れていればギターに触る気がせず、仕事で頭が占領されていれば、ギターを触っても気分が乗らない。

今日はギター教室の日であった。

「というわけで、この1週間、ギターに触ったのは2,3時間でして」

と断って演奏を始めたら、まあ、とちる、とちる。

「御免なさい。そろそろ仕事も一区切りつくはずなので、今週の土日はみっちりやってきますから」

とほうほうのていで引き上げてきた。

しかし、金を払っている私が、たかが練習時間が取れなかったことでこれほど恐縮するのはなぜだろう?
教える立場に立ってみれば、教え子がみるみる上達して、もう指導など必要ない、という状態になるのが一番困るはずではないか。だって、そうなったら自分ももっと上達しなければ教えられなくなるし、悪くすれば教え子は、これ以上学ぶことはないと卒業して授業料が入らなくなる。
できることなら、毎週ちっとも上達せず、せっせと授業料を納めて通ってくるのが一番ありがたいはずである。
つまり、私は最上の教え子であるはずである。胸を張れ!

と分かりながら、なぜか恐縮してしまう私。ここには、師と弟子の関係の美しい伝統がある。

でも、通い始めて1年を過ぎたのに、上達しない。菅首相ならずとも嘆きたくなる。
やっぱり才能がないのかなあ。