2013
09.08

2013年9月8日 あ~あ

らかす日誌

決まっちゃったね、オリンピック。
私の批判が遅すぎた?

とまでは思い上がっていない私である。
ま、冷静に分析すれば、ライバルが弱すぎた。
財政に問題を抱えるマドリード、住民の暴動を力で押さえ込むイスタンブール。

「そんなところで出来るのかよ」

とは、誰だって懸念する。東京は福島から250km? だったらいいんじゃない? というところか。

政治的なかけひきをほじくる報道もあった。アラブ圏初のオリンピックをトルコで開かせてなるものか、とアラブ諸国がそっぽを向いたとか、マドリード? さて、これは何だったかな? つまり、東京は自力で勝ったのではないという指摘も目にした。そんなこともあるだろう。

いやいや、詰まるところ接待合戦で勝ったのよ、という見方だって出来る。なにしろ、ニッポン、フジヤマ、ゲイシャガールのお国柄なのである。何があっても不思議じゃない。政府の機密費だって使われたかも……。

というのは、東京開催を心から憎む私の妄想か?
ああ、2020年、五輪期間は、どこか海外に旅行に出ようか……。あ、桐生にいればいいのか。しかし、7年後。私、もう71だぞ。そんな歳で、桐生でまだ仕事してる?

何とか前向きに考えよう。
世界は、福島原発事故の放射性物質漏れより金がない方を怖がったし、市民の暴動を怖がった。つまり、日本の放射線被曝はたいして怖くない、ってか。

というわけで、今日はテレビのニュースは見ずに過ごした。いつもは必ずNHKのニュースを見る午後7時からは、高校野球の世界一を決める日本ーアメリカ戦を観戦である。
だって、石原慎太郎と猪瀬直樹の薄気味悪いニタニタ笑いを見たくないではないか。

「やったぜ!」

と、テレビカメラの前ではしゃぎ回るバカどもの姿も見たくない……。

 

昨日は、金3000円也を払って勉強会に行ってきた。テーマは

「地球を救う夢のテクノロジー これが脱原発の切り札だ」

いや、自主的に行ったのではない。桐生市の元有力者O氏の誘いである。

「超小型原発って知ってる? これがすごいんだって。話、聞いてみない?」

余り聞きたくはなかったが、O氏との友情で出かけた。

演者は、

元電力中央研究所名誉特別顧問

という仰々しい肩書きを持つ、服部禎男、というオッちゃんであった。午前中の演題は

「DNAは放射能が大好き、放射能が怖いはウソ」

なかなか勇ましいタイトルである。
が、話が始まる前にゾッとした。主催者、来賓がひどい

群馬県選出の自民党国会議員、その代理の秘書、自民党の県議会議員。ま、そこまではこのご時世である。我慢するしかない。が、そのほかがひどすぎる。
鶴見式酵素総代理店代表取締役、温熱療法経営者。記憶にあるのはその程度だが、紹介を聞くたびに

 「はあ?」

と思っていた記憶だけはある。要は、人の弱みにつけ込んで金儲けするインチキ商法で金を稼いでいる奴らばかりである。それと、自民党の国会議員、その代理、県会議員。これはいかん。見てはならないものを見る場所に紛れ込んでしまった……。

講演が始まった。
いや、私も、放射線は無闇に怖がるものではないと思っている。そもそも、地球上に生命が誕生したとき、地球環境は放射線で満ちあふれていたはずだ。生命には放射線への耐性は、必ずあるはずでる。

が、である。服部先生のご講演は、私の遥か先にいた。
何でも、放射線は体にいいらしい。それも、放射線量が多ければ多いほどいいらしい。世界中の様々な学者の論文を引きながら、放射線を全身に大量に浴びると、いまの医学では取り扱いが難しい難病も

「治るんです、皆さん。アメリカの○○大学の△△教授の論文によると……」

という話が延々と続いた。
福島原発から漏れ出した放射能物質など、屁でもないらしい。海に流れ込む汚染水は健康にいいらしい。

まあね。年間の被曝上限量が1mシーベルトなど、日本の基準は、ひょっとしたら厳しすぎるかも知れないと、私も思う。だけどね、服部さん……。

聞きながら思った。
トンでも学説って、こんな人が書くんだろうな、って。
服部さんは、次々と世界中の学者の論文を引いて、自らの主張を繰り広げた。だが、引用された論文、紹介された学者に、一つとして、一人として、放射線の危険性を説くものがなかった。

世界は広い。学者は多い。その数に比例して、トンでも学説も目白押しだ。化学でノーベル賞を受賞したポーリング博士は、極度のビタミンCおたくであった。風邪にビタミンC、ガンにビタミンC。何にでもビタミンCを勧めた。
私なんぞは、

「ノーベル賞学者がいってるんだから」

と名古屋での単身暮らし時代、風邪をひいてビタミンCを飲み続けた。1時間に1g。8回飲み続けると下痢をする。その瞬間に風邪は治っちゃうのである!

少し便が緩くはなった。が、風邪はしつこく生き残った。私は、不思議な体質の持ち主らしい。

いや、それはどうでもいい。
いいたいのは、世界中の学者の論文を恣意的集めれば、どんな主張だって出来るということだ。その学者がどの大学に奉職するかは問題ではない。
我々は、霊の実在を念写の実験を通じて証明しようとした東大教授を持つ民族なのである。その程度の認識は、国民の共通理解であると思いたい。

「あ、これ、トンでも学説」

午前10時15分から始まった勉強会だったが、昼近くにはふけたくなった。だが、入場時に3000円払った以上、入場者に用意されている弁当を食べない手はない。
食べた。食べたついでに、仕方なく午後の部も付き合った。

何でも、服部のおじさん、「超小型原子炉」の提唱者らしい。
出力2万kw。大変に小さく、100坪あれば1基設置できるそうだ。だから、全国にこれを設置すれば発電所から延々と配電線を引く必要がない。
服部さんによると、特徴はそれだけではない。

原発に必要な制御棒が必要ない。原発コストのかなりの部分をこの制御棒が占めるから、これがなくなればコストが大幅に下がる。
いや、制御棒がなくなれば、そもそも制御要員が要らなくなる。人件費をカットできるから、コストはさらに下がる。
さらに。
燃料に、セラミックで固めたウランではなく、金属で固めたウランを使う。セラミックは温度の変化でひびが入るが、金属ならそんな心配はない。かくて、原発がメンテフリーになる。
しかも、である。この原発、需要追随性があるという。つまり、電気を沢山使うときは、沢山発電する。電気を使う量が少なくなると、発電量も少なくなる。何故か、は説明が面倒になるので(加えて、記憶があいまいなので)書かないが、これは、出力の調整が難しく、いつでも出力を一定にするしかないいまの原発の泣き所を克復する夢の原発ではないか!

服部さん、かつては中部電力の社員であったという。
その方が、これほど素晴らしい発電設備を考案された。それなのに、何故実用化されない?

「良すぎるんです。電力コストが下がりすぎるんです。人にこの話をすると、『やめとけ。命がなくなるぞ』っていわれるんです」

つまり、いまのコスト体系で利益を得ている既得権益者が殺しに来るらしい。産油国、オイルメジャー、ひょっとしたらウラン鉱山の持ち主、んーっと、他にどんな既得権益者がいるのかな?

「だから、誰も採用しようとしない」

おいおい、資本主義をバカにしちゃ困る。だって、劇的にコストが下がるんでしょ? どうして日本の電力会社が採用しない? コストが下がった分、電力料金を下げなくたって、文句は出まい? いずれは電気料金を下げることになるだろうが、それまでに利益をため込めばいい。経営者なら、誰だって考えることである。

東電をはじめとした電力会社は官僚の巣で、変化を好まない?
よろしい。我々は、世界に掘る孫正義を持っている。服部さん、あんた、ソフトバンクに駆け込みなよ。孫なら、スナイパーなんか恐れもせず、大金をポンと出して実用化してくれるぜ。

トンでも学説陰謀史観

その程度の話であった。
午後の部の最後に、質疑応答の時間が設けてあった。
以上に述べた理由で、私は質問する気力を失っていた。が、集まった連中は、大半がバカであったらしい。すっかり感銘を受けた様子で、地元選出の県議さんを始め、愚にもつかない質問を繰り出していた……。

 

いやあ、いい体験をした。
ははあ、世の中、この程度の話で大部分が出来上がっているのか。そんなことが、初めて実感できた。

さて、この世の中とどう付き合ったら良かろう?
東京五輪然り、超小型原発然り、である。