2015
06.17

2015年6月17日 中古品

らかす日誌

すったもんだはしたが、ヤフオクで落札したナビが昨日届いた。
さっそく故障したヤツと取り替えたいところだが、さて、ナビ本体は車体にどのようにして固定されているのか? それが分からねば作業はできぬ。
このナビを取り付けたディーラーに聞いてみた。

「まあ、普通はボルトで固定するか、両面テープで取り付けるんですが、さて、大道さんの車にどのように取り付けたかはちょっと分かりません」

ああ、さようであるか。
で、車を覗いてみた。ボルトで取り付けられている様子はない。だとすれば両面テープである。しかし、手持ちの両面テープなないなあ。
あれこれ考えて、近くの車修理工場で取り替えてもらうことにし、今日、車と、届いた中古のナビを持ち込んだ。

30分ほどの作業だったろうか。

「はい、できました」

料金は2808円。

「なるほど、8円ね」

といってみると、

「8円は結構です」

2800円ちょうどになった。ま、8円助かったからといってどうということはないが、しかし、言ってはみるものである。

乗り込んでエンジンをかけると、おお、ナビはきちんと作動して運転席横のディスプレイに地図が表示された。約1週間ぶりの快挙である。
だがこのナビ、新参者だから、横浜の我が家も、いま住む桐生の家もご存じない。

「ん? どうやって登録したんだっけ?」

あれこれいじって、この2つだけは登録した。これでナビ全快である。

と思って、次の目的地に車を進め、用件を終えて再び車中の人となった。車を発進させてナビを見る。

「ん?」

これはどういうことだ? 再びディスプレーが青一色になっているではないか。せっかくヤフオクで落札しにもかかわらず、またしてもDVDを読み込まない? だとすれば、他の部分を疑わなければならないのか?
念のため、信号停止で一旦エンジンを切り、再びエンジンをかけた。私の車は、エンジンをかけなければナビが立ち上がらない。
この緊急措置で、ナビは復活した。まあ、2007年には製造が終了したナビである。ということは、中古で買ったこのナビにしても、少なくとも8年は使われているのだ。疲れ気味なのは仕方ないであろう。要は、疲れていても構わないから、少なくとも車が現役であるうちは、ヨタヨタしながらでも働いてくれることだ。

動作が確認できたので、この中古ナビの出品者にメールを送った。

動作確ができました。とりあえず正常です。
とりあえずというのは、3回稼働させて、うち1回でDVDを読み込まなかったからです。一度エンジンを止め、かけ直したら正常に読み込みました。
念のためですが、これはクレームではありません。この機械は私のものとして付き合おうと思っています。ダメな場合は、手元に残った古い機械を修理に出すこともできますし。
色々とお手数をかけてありがとうございました。

間もなく返事が来た。

ご連絡ありがとうございます。
中古品のご理解、誠にありがとうございます
当方、仕事柄 大坂~関東まで行き来しておりますのでその間1200km以上 3日間動作確認。発送前には、読み込みの確認をしてから発送しております。読み込みが、調子の悪い時は、ピックアップレンズクリーナー等で清浄してください。
それでは宜しくお願い致します。
この度は誠にありがとうございました。

やや不確かな日本語だが、言わんとしていることはよくわかる。
まあ、中古品を取引するわけだから、お互い、この程度の許容幅は持っていなければならないのである。
しかし、レンズクリーナー? パイオニアの電話相談は

「推奨しておりません」

と言っていたけどな。


絶倫の人 小説H.G.ウェルズ」(デイヴィッド・ロッジ著、白水社)

を読了した。全ページ2段組、504ページの大著である。

タイム・マシン」「宇宙戦争」など、古典的なSFの著者としてしか知らなかったH.G.ウェルズの生涯を、一部想像も交えてたどった伝記だ。

しかし、SF作家を、何故に「絶倫の人」と呼ぶ?
おかげで私、

「大道さん、凄い本を読んでますね」

と知り合いにからかわれたぞ!

ま、それはそれとして、読み進めば誰しも納得するだろうが、ウェルズの生涯は、確かに「絶倫」と呼ぶに相応しい、凄まじいものである。

彼は単なるSF作家ではない。貧困な階層に生まれ、天性の才能で流行作家となったウェルズは、SF作品を書く一方で、世の中を変えることに夢を持ち続けた革命家でもあった。
フェビアン協会員となり、英国の社会主義社会化を望むウェルズはロシア革命を心から喜び、ジャーナリストとしてレーニン、スターリンのインタビューもして記事を書き、本にまとめた文筆家であった。

が、その人が何故、絶倫、なのか。

ウェルズの社会改革志向は、経済や政治の世界に留まらず、男女関係にも及んだ。

「恋愛は結婚などという制度に縛られてはならない」

ウェルズは、結婚などという制度に縛られない自由な恋愛を主張し、実践したのである。ベッドを共にした女性は生涯で100人以上。それも、ほとんどが本気で恋愛にのめり込んでの性愛であったというから、まことに凄まじいではないか。

友人の、処女の娘と恋愛関係に入ったことも複数回ある。
それだけなら、よくいる破廉恥漢の一員ともいえないこともないが、それがすべて相思相愛の恋愛の結果だったというところが常人離れしている。
しかも、ウェルズの妻は、そのような夫の振る舞いをすべて認めていた。認めていただけではなく、アドバイザーも務めていたというから、私なんぞは、羨ましさで口アングリ、である。

「あの人は、夢中になると周りが見えなくなるからやめておいた方がいい」

と妻のアドバイスを受けながら、でも、やっぱりその女とできちゃったのも2回や3回ではない。スキャンダルになったことも数多いのだが、ウェルズはそれでも懲りずに、次々に美女に恋情を抱き、ものにするのである。

というだけなら、

「羨ましい。俺の人生の、何と空しいことよ」

と嘆くばかりなのだが、しかし、ウェルズとは、私にいわせれば人非人である。
ウェルズは、自分の恋愛の自由は声高々に叫び、実践する。
しかし、女性にはその自由を認めない。自分と恋愛中の女が、他の男とチョメチョメするのはぜったに許さないのだ。彼は激しく嫉妬して女性を縛ろうとする。

おいおい、自分はかってにあっちこっちで子種を振りまいておいて、女性には貞潔を求める。それって、正真正銘のエゴイズムじゃねえか? 理論が首尾一貫しないんじゃないの?

と私は読んでしまった。

しかしながら、小説や評論で財をなし、その財を惜しげもなく注ぎ込んで次々と恋愛を成就させる。誠に羨ましい一生を送った男ではある。
爪のアカが残っていれば、私なんぞは煎じて飲んでみたい!

全ページ2段組の500ページに怖じ気づかなければ、ご一読をお薦めしたい。
こんないい加減な男が書いて残した本を、でも読んでみたくなることを請け合う。