2021
03.15

音を求めるオーディオ・リスナーのためのステレオ・プリアンプの製作 製作・調整編 1

らかす日誌, 音らかす

“音楽を聞くための最高級プリアンプ”を目標に、12月号では回路構成、使用部品の選び方を述べ、1月号にシャシと、プリント基板の製作、それに真空管部の配線まで述べました。回路図からも判りますように、世界の名器といわれるものに比べ、決して遜色ありません。しかも、シャシ構造に工夫をしましたので、はじめての人でも、きれいに作業をすすめることが可能です。何度も申し上げますように、“最高級のプリアンプを作るのだ”ということを、頭に入れて丁寧に作って行きましょう。(図面番号は前号の続きと致します)。

今回はスイッチとVRの配線からはじめます。すでに、プリント基板とE板の配線は完成して、抽出に入れてあることでしょう。

【D板の配線】
D板は、スイッチが混み合っていますので、少々面倒な作業になります。といっても、これも本体から離した状態での、ハンダ付けですから、それほど難しいことはないと思います。

スイッチ類は、D板に取り付ける前に配線を済ませたほうが、やり易いかもしれません。半固定、および2連ボリュームは、前にも述べましたように、密閉型ですから、裏蓋と中仕切りがシャフトと電気的につながっていませんので、アースをとる必要があります。いままで、いろいろな方法が、専門家によって発表されていますが、私の経験では、第12図のように、菊型ワッシャーを使って、シャシにアースを落とす方法が一番有効で、ハムは全然出ませんでした。2連ボリュームだけでなく、半固定抵抗も同じ方法でケースにアースします。

もちろん、シャシに取り付けるだけで、ケースがアース出来るようになっている“ラジオ用の安物”は、本機のような高級プリアンプには不適当です。

折角、特殊な構造のシャシで、クロストークを防いでいるのに、スイッチ類から隣のチャンネルに音が漏れて行ったのでは、何にもなりません。特に、S-2とS-3はアルプスのM  型で、小型に出来ていますから、交流信号が移い(り?)易いですから、左右両チャンネルの配線は、別々に束ねておいたほうがよろしい。(表紙のカラー写真を見れば、その要領がわかると思います)(表紙の写真はありません=大道の注)

D板の配線は混み合っていますので、実体配線図にもとずいて、一本一本、ハンダを付ける前に点検しながら、作業を進めて下さい。

実体図でおわかりのように、ほとんどシールド線は使っておりません。これは、シールド線の良いものをみつけるのが大変だからです。シールド線は、大きな容量を持ったものが、ずい分ありますので、ボリューム、バランスのまわりは、インピーダンスが低く、しかも、ツマミを動かすたびに変わるわけですから、シールド線を使用しますと、大きく“ハイ”が落ちます。バランス(VR6)から、V5のグリッドへ行く線など、必ず高域が大きく落ちますから、絶対に使用しないで、0.6mm位の単線でつなぎます。

しかし、TUNER、TAPEおよびAUXの入力線には、シールド線を使っております。これは、ハムをさけることではなく、切り換えスイッチを切り換えたときに、チューナの音が、テープに漏れて来たりしないようにしたわけです。これらの信号は交流ですから、平行にしてあまり長く、2本以上並べて配線すると、隣の線に移る性質を持っているからです。しかも、どうせチューナやデッキから、プリアンプへつなぐのに、シールド線を使用しますので、たいした害にはなりません。

そのかわり、アースはそれぞれのレベル用ボリュームVR1、VR2およびVR3のアースピンを経て、ボリューム、バランスを通って、プリント基板のアースピンに落とします。これは、入力ピンで合わせて、一点アースポイントに落とす方法より、このほうが合理的だからです。だから、入力側のアースピンは、4つとも独立しています(A—B—Cの本体にD板、E板を組立てるときに、もう少し詳しく述べます)。

モニタ・スイッチから、TAPE OUTへの線はシールド線です。これは、テープデッキに録音中に録音を止めて、モニタ・スイッチをメイアンプ(MAIN OUT)(「メイアンプ」は原文のまま)に切り換えた時、デッキ側に音が漏れて行くのを防ぐためです。

FM放送のコマーシャルなどが、不用意にデッキに漏れては、後で消すのは面倒だからです。その代わり、“ハイ”の落ちない2C2V(テレビアンテナ用の同軸ケーブル)を使っています(ハイが落ちない非常によいシールド線です)。

製作記事を頼りに、アンプを作る時、実体図に頼りすぎて、なかには回路図を全然みない方がよくありますが、これはいけない事だと思いで(ま?)す。回路の持つ意味をよく考えて、その部品の一つ一つが、いったい何のために入れてあるのかについて、よく理解することが、一番大切です。キットからアンプを作るのとは違って、自作ですから、めいめい部品などの取り付け具合が、一台一台多少は違ってくるものです。実体図の絵画的表現(電気的表現ではない)に従って、長く引っぱりまわしてはいけない線を長くしたり、アースのとり方が違ったりすることがよくあります。そんな場合に、回路について十分理解しながら、作業を進めて行ったのなら、いろいろ工夫もあるわけですが、ただ、真似をしただけで、肝心なところをなおざりにしたとすれば、良いものが出来ないのが当然です。

このモニタ・スイッチにしても、ただ無意味に実体図だけを頼って、配線して行っただけでは、その後にくる2つのボリュームのあたりで、前にも述べたように高域減衰などを起こすことがあります。

そこで、このモニタ・スイッチの働きを、もう一度、ここで目を通してみることにします。第13図は、その動作図です。Aは、第1図の回路図のままで、Phonoの入力がつながって、それが次段のボリュームに入り、その他の配線は全部死んでいます。ここで、信号がどこで行き止まりになっているかを、1本1本確かめて下さい。Bは、そのままモニタ・スイッチをテープ側に倒すと、ボリュームに入っている線が切れて、TEPE OUTへ出て行きます。そのかわり、録音済みのテープをモニタするために、TAPE入力からの信号が、ボリュームに入ります。

モニタスイッチの動作

回路図pdf

そこで、ファンクションスイッチ(S1)をTAPEにしますと、cのように、テープの信号がボリュームにつながりTAPE PUTへは、行かないようになっていますが、dのように、ファンクション・スイッチはそのままで、セニタ・スイッチ(S2)(モニタ・スイッチ?)を入れると、ボリュームへ行く配線が切れ、一度に両方に行くことがないように、設計してある点をよく確かめて下さい。

同様に、トーンコントロール、バイパス・スイッチについても、回路図と実体図の両方で、よく理解してから配線しますと、後でのトラブルをさけることが出来ます。そうすれば、このあたりに、理屈を考えないで、シールド線を使うと、前に述べたように、ツマミを回したときに、インピーダンスが下がって、高域が落ちてしまうことが、おわかりだと思います。

一番大切なS-1のPhonoの配線の説明が、後まわしになりました。実体図でおわかりのように、シールド線を使います。“ハイ”の落ちないシールド線は、なかなかみつかりませんので、私は2C2Vを使いました。シールド線と違って線が固く、ハンダ付けのやりにくい線なので、気をつけて下さい(芯線にエナメルを塗ってあるようです)。スイッチへは十分に巻きつけてから、ハンダをのせませんと、ハンダが付いているようにみえても、ひっぱるとはずれてしまう事があります。このシールド線のアースのとり方を間違えると、必ずハムが出ます。入力ピンのアースにシールドをつなぎ、そのままシャシからアースを浮かせておき、S-1のところで、2ほんのシールドのほうをつなぎ合わせ、芯線が基板の47kΩと50pFとの中点のラグにつながったところのシールドを伸ばして、すぐその手前にあるアース・ポイントに落とします。これ以外の方法ですと、必ずハムが出ます。

トーンコントロール、バイパス・スイッチのほうも、回路図をよくみて、その動作を理解した上で配線します。このように、それぞれ配線を済ませたS-1、S-2、S-3を、D板に取り付け、先に付けておいたボリューム類と結線を行います。線が大分混み合っていますので要領よく線を合わせて束ねて行きます(表紙写真がその束ね方の参考になると思います)(表紙写真はありません=大道注)。

S-4のスイッチは、その切り換えに各自の好みもあることですし、非常に簡単ですから、説明は省きます。