03.17
音を求めるオーディオ・リスナーのためのステレオ・プリアンプの製作 製作・調整編 3=完
【ヒャリングテスト】
ハイファイとは、確かに不思議なものです。測定器で計っただけでは、その性能を完全につかむことは、なかなか難しいものです。本機の場合でも、その周波数特性は30〜50,000Hzまでフラットにすることは、それほど難しいことはないと思いますが、そこまでの高域を生すためには、その途中でピークが出たり、いろいろとトラブルが出てきたり、計器では素直なはずの特性が、スピーカにつないでみたときに、何となくツィータが気になったり、あるいは音が繊細すぎて、音楽性が足りなかったりすることがよくあります。
従って、測定器のテストを全部すませてしまった後でやはりヒャリングテストは行ったほうが良いのは、言うまでもないことです。ヒャリングテストといっても、各人各様の意見が出たのでは、美人の評価と同じで、ある人は“美人だ”と言い、また、他の人は“あんなの、いただけないね”てなことになるわけです。
そうなると、2人以上並べて、何人かで票を入れる式の美人コンテストみたいに、何か比べるものがあれば、選ぶ方も楽く(この「く」は不要)なわけです。最後に甲乙つけがたいときには“バストいくら、ヒップが……”ということで、実測することが決め手になるようです。
そこで、本機はマッキントッシュC-22と比べてみたわけですが、今回はもう1台の世界的に有名なプリアンプ、グラフィック・コントローラSG520と比較してみました。使用したメインアンプは、マッキントッシュ275、スピーカがランサー101、カートリッジがデンオン103、アームがSME3011/Ⅱ、テープデッキはティアック313です。8人で試聴しましたが、しまいには、どちらがどちらか、わからなくなった位です。最初、耳のなれないときには、グラフィックコントローラのほうが、何となく音が硬いという意見が、3人から出たのは、石の音だったのかも知れません。別の機会にマランツ#7とも比較しましたが、聴き劣りする点はなかったようです。
近いうちに、一緒に製作した5人のアンプを比較してみるつもりですが、私のところで、計器によるテストの結果そうかけ離れた数値は出て来ませんでしたので、恐らく音を出して比べれば、同じ位のものが出来上っていると思います。初段管への入力オーバーによるクリップ電圧が210〜280mVと、大分違いが出たのは、球のバラツキかも知れません。平均すると230mVでした。最低でも210mVでしたので問題ありません。
おかげで、皆さんからお礼の意味でレコード(岩崎洗のベートーベン・チェロソナタ全集と、ヨハン・クリスチャン・バッハのオーボエ協奏曲)をいただきました。私事を書いて恐縮ですが、いままで、その方々が使っておられた舶来、国産のプリアンプのときより。バツグンに音が良くなったからということです。喜びは2人で分けると、倍になるといいますが、5人ですから5倍になったわけです。
読者の方々には、直接お手伝いするわけではありませんので、レコードなんていただくつもりは毛頭ありませんが、良いアンプが出来ましたら、お葉書だけでも期待しています。喜びを何10倍、何100倍にしたいと思いますので……。アフターサービスのつもりはありませんが、不明の点がありましたら、遠慮なく、編集部気付か、直接お問い合わせ下さい。わかる範囲で、出来るかぎりお答えしたいと思います。