04.26
オーディオリスナーのための全段直結OCL式 純コンパワーアンプ 2
調整について
以上のように、組み立ては、スラスラと行くと思いますので、これ以上、馬鹿丁寧な説明は省いて、調整の仕方について述べる事にしますが、この段階ではまだプリント基板は、左右それぞれ別々にして置き、アセンブルしないで置きます。パワートランジスタはもちろんまだ基板につながないでおきます。
まず、電源部から当って行きます。テスタを30~50VレンジのDC電圧計にセットして、電源部のフィルタ・コンデンサの出口のところと、アース間にそれぞれ+25V、−25V出ているかどうか確めます。万一うまく行かないときは、パワートランスの17.5V端子とセンタータップの間にA C17.5Vあるかどうか当ってみます。家庭電源電圧まの動で(の変動で?)、10%程度の違いは問題ありい(ま)せん。トランスの出口がうまく行っ変(不要?)てるのに、電源部のアウトプットがうまくないとすれば、ブリッジ型ダイオードのフィルタコンデンサの極性誤配線です。
うまく行ったところで、25cm位の赤、青、自のヨリ線をプラス、マイナス、センタータップ(アースにつながっている)に仮りにハンダづけしてシャシから引っぱり出しておきます。実体図にある電源部のアースポィントを確かめないと、 トラブルを出すおそれがあります。シャシから引っぱり出してあるリード線を、基板の+25V、−25V及びアースラグ端子にハンダづけで仮り止めします。
5~10VDCレンジにしたテスタのリード線を、ワニ口で、基板のスピーカ端子と、アースラグにつないでからアンプのスイッチを入れます。スイッチオンで、メータの針が大きく触れてすぐに0Vあたりにもどります。この時は完全に0Vでなくてもかまいません。
説明が前後しましたが、VR-1(B10kΩ)はほぼ中点に、VR-2(B500Ω)は左いっぱいになるように)(不要)にまわしておきます。VR-3(B10kΩ)はゲイン調整用ですので、好みのところにセットします。左いっぱいでゲインが電圧比で20倍、右にまわせば30倍、中点で25倍になるように設計してあります。
私のヒアリングテストでは、右いっぱい、つまり30倍の時がもっともやわらかい音でした。NFB量が少なくなるからだと思います。最近より取りざたされる低帰還アンプの理屈によるものだと思います。
このようにして、スピーカ・ターミナルが、アースに対して0Vに近ければ、配線は全部うまく行っていますので、安心して次の工程に移って下さい。
ただし、この時には、温度補償用シリコントランジスタは未配線ですのでその代りにプリント基板の裏側で短いリード線を使って、トランジスタが入るところへジャンパーワイヤーを入れて置きます。有り合わせのシリコンダイオードでジャンパーすると、なお良いと思います。
もしメータが、ふり切ってしまうようでしたら、明らかにどこかがうまく行っていない証拠です。すぐにスィッチを切って、Q4とQ5を基板から外ずして下さい。そして基板のQ4とQ5のコレクタ—エミッタ間に1%5kΩのペアーの抵抗を取り付けます。トランジスタの内部抵抗の代りになるものです。基板の裏にハンダづけした方が、外ずす時に楽です。それでもう一度電源を入れます。この時に、0V近くになったらQ4とQ5のどちらかが飛んでいるわけで、止むを得ませんので、コンプリメンタリーペアーを入手して新しいのとつけ変えますが、まずそん(な)事はなくて、この時すでに0Vになっていない筈で、そのためにQ4、Q5のどちらかが飛んでしまったのかも知れません。というのは、 Q3のコレクタ電圧がアースに対して0V附近、つまりその石のエミッターコレクタ間が1/2Vcc(=25V)になっていないわけです。Q1のエミッタにつながっているダイオードが断線していませんか? Q3のコレクタにつながっている抵抗をもう一度調べ見て下さい。それでも異常がなければ、その石のベースバイアスが狂っている事になります。エミッタ—ペース間の電圧を当って見ます。0.8~1V位の筈です。でなければ、原因は差動アンプ部にあります。回路図にしたがってQ1、Q2の各々の電圧を調べます。大きく(30%以上)狂っていたら、石を取り換るより方法はあません。石を取り換えてもうまくない時は、基板につける二本のジャンパー線(Jumper wire)を忘れているかも知れません。
くどくどと述べましたのは、このあたりのところがうまく行っていないうちは絶対にパワートランジスタの配線をしてはいけないからです。こんな状態でパワーの石をつなぐと、アッという間にアンプをお釈迦にしてしまいます。
うまく0V附近に出たところで、パワートランジスタの配線をします。放熱板アセンブリーを組立ててからパワートランジスタのそれぞれの足から出ているリード線をプリント基板につないでから、Q6のコレクタについているリード線を外ずして、もう一台のテスタを友人から借りるなりして、500mA~1AレンジにしたものをVccとコレクタの間に第8図のようにつなぎます。コレクタ電源(アイドリング)を調整するためです。
VR-2 は左いっぱいになったままスイッチを入れて、スピーカ・ターミナルの電圧値を読みます。テスタにもっと低いDCボルトレンジ(例えば0.25Vフルスケール)があればそこに合わせてスイッチを入れて下さい。今度はほとんど0Vになっている筈です。大きく違っても20mVまでだと思います。
そこでVR-2 を静かに右にまわして行くと50、100mAと電流値が上って来ますので、150mAになるところまでまわして約10分程そのままにしておきます。Q6、Q7パワ~トランジスタが大分暖まつている筈です。Q6、Q7の両方の石に同時に触れると、50Vでビリッと来ますので御注意下さい。
この時に0Vにならないとすれば、明らかにパワートランジスタが不良品です。取り換える前にハンダの具合をも一度確かめて見る必要があります。あるいはパワーの石のコレクタがヒートシンクにショートしてぃるかも知れません。10分ばかりしたところで、VR-2 をもう一度回わして、メータが150mAを指したところで、VR-1を左右に少しずつまわすとスピーカ・ターミナルが0Vバッチリと合います。どうしても合わない時は、Q3を取り換えるのが一番手っ取り早い方法です。これは、この石のhfeが大きすぎるからで、不良品ではないのですがソリッドステートでは仕方のない事です。もっとも0Vバッチリにならなくっても、10~20mV位なら上等ですので、気にならない方は大して弊害もありませんので、そのままにしていても良いと思います。市販品のOCLアンプをあれこれ当って見たら、どれもこれも数10ミリボルト、プラス、マイナスに出ているようです。
私の手がけたものは今までのところ数10台で、どれも0Vバッチリあいました。これで調整は全部終りで、この通リスラスラと行く筈で、行っていたらそのアンプの特性は設計通りに必ずなっていますので、安心して石とは思えぬ、ウァームトーンで、 しかも歯切れの良い音を楽しんで下さい。つまり発振その他のトラブルがあれば、必ずこのようにスラスラとは行かないからです。
よくお手紙で、私の記事によってアンプを作ったのだが、自信がないので測定して欲しいといって来られます。そんな必要は全く不用で、私の記事の通りに、指定の材料を使用しておられるかぎり、必ずうまく行っている筈です。
もし、誤配線などがあって、発振しているかもしれないアンプは、次の方法で測定器なしで簡単に出来ます。
道具は、ヒースキットIN-47と呼ばれるコンデンサボックス(¥5,400)とテスタだけでこと足ります。
まず、出来上ったパワーアンプの入カピンをオープンにして、スピーカターミナルにダミーロードをつなぎそれとパラレルにコンデンサボックスをつなぎます。コンデンサの容量を最低値、つまり0.0001μFに合わせます。
そして、テスタをACボルトレンジの最少レンジに合わせたもので、スピーカ・ターミナルの電圧を計ります。オープンですので、残留ノイズは多少ありますが、 とてもテスタの針を動かす程の電圧は出ない筈です。これでテスタの針がふれたら、明らかに発振です。針が目で見える程ゆっくりふれたら低域発振です。高域で発振していると、テスタの針が大きく、あるいは振り切ってしまいます。針が全然振れなかったら、0.0001μF‐では0.K.。コンデンサボックスの見盛りを上げて0.22μFまでまわしてもテスタの針が全然動かなければ、発振はしていない証拠です。
今度は同じテストを、ダミーロードを外して同じようにコンデンサボックスをまわして見ます。これはかなり苛酷なテストですが、これでも0.001~0.22μFまで何事も起らなければ、アンプは絶対に発振していません。この方法だと、ジェネレータやオシロスコープがなくても、アンプの安定度はピタリと見分けることが出来ますので、お手持ちのアンプを当てて下さい。今までに、いろんな方に頼まれて、この方法で、アンプが発振しているのを見つけた事があります。
このテストを本式にジェネレータ及びオシロスコープを使ったのが、第9図にあるアンプ安定度テストのオシロスコープ観察写真です。
これは一般に言える事ですが、自分の作ったアンプを測定するのに、とかくひいき目に測定器の目盛りを読みがちです。したがって本機は、第9図にその負荷、無負荷でのコンデンサによる安定度を調べただけで、後の諸項目については、井草音響研究所に依頼して、第二者の厳しい目で瀬」定してもらいました。(次号発表)
(御注意)
本機をクリスキットマークVにつないで使用する場合には次の点に注意する必要があります。この管球式プリアンプは、管球式パワーアンプにつなぐように設計してあり、パワーアンプの入カインピーダンス150k~500kΩに合ったカップリングコンデンサを出口に使っております。記事に、C-22は0.02~0.05μFとぁったのを記憶されていると思います。本機の入カインピーダンスは47kΩですので、当然これにつなぐプリアンプの出口はそれ(に)合わせて置かなければなりません。仮に、プリアンプの出口に、0.047μFのカップリングコンデンサがつないであったとします。クリスキトモデル8(6CA7pp.)の入カイピーダンスは330kΩですので、
(この後に「=が抜けているようです)
(に)なります。このままパワーアンプに入力インピーダンス47k Ωにつなぎかえますと
でfoが72H2(Hz?)となって、さっぱり低音が出なくなってしまいます。
したがって、クリスキットマークVに本機をつないで使用する場合は、第10図のように切り換えてスイッチを入れて、カップリングコンデンサの容量を大きく出来るようにしなければなりません。そぅして置けば、どちらにでも使用出来るので、便利だと思います。
参考までに、その実体図を第11図に示しておきます。
以上で説明が終りますが、なお不明の点がございましたら、お尋ね下さい。出来るだけお答えします。
〔訂正〕8月号の安定度テストの波形は原稿が間違っておりましたのでお詑びします。クリスキットSS-1の安定度テスト波形も第9図とほとんど同じような波形ですので、謹んで訂正させていただきます。