2021
12.29

年末はなぜ家事に追われるのでしょう?

らかす日誌

いよいよ年末である。恐らくほとんどの方は24日、ないしは27日で今年の仕事に区切りをつけ、あとは正月を待つだけ、という日々だろうと想像する。

すでに年金生活者となった私にはそのような区切りはない。多少仕事を請け負ってはいるものの、締め切りまでにこなせばいいものがほとんどなので、暮らしにリズムがない。毎日が日曜日であり、毎日がワークデイなのだ。
29日になっても、

「さて、年明けから始める予定の連載を、年内に投稿予約しておこうか」

と思いつつ、仕事をやる気が出るのを待つばかり。今日も気力がみつるに至らず、

「明日に回そう」

つまり、私は明日12月30日、仕事をする予定である。

では、仕事に取りかかる基がミチルの待ちながらの年末の日々をどう過ごしているか。

不思議なことに、今年は何かと家事に追われている。

例えば今日。
朝はまず、洗濯物を干すことから始まる。今日のように風もなく空が澄み割ったっている日は洗濯日和である。妻女殿が洗濯機から取り出された洗濯物は、私が外に干す。夏場なら屋根付きの駐車場に設置した物干しにかけるだけなのだが、この季節はそれでは日当たりがなく乾いてくれない。ために、スチールでできた物干しを日当たりの良い玄関前まで運び、そこに洗濯物をかける。
風もない快晴の日和とはいえ、空気は冷え切っている。洗濯物を干し終わると、手先が冷えて痺れる。

終えてパイプタバコ。さらに喫煙を終えると

「これ、お風呂場のカビを取るヤツだから、やって」

と妻女殿から、新たに購入されたと思われる薬液を突きつけられた。

「タイルの目地に生えたカビは取れないんだって」

と一応は抗議をしてみるが、長いものに巻かれるのは私の習い性である。しばらくすると腰のあたりがムズムズしてきて風呂場に向かう。薬剤を見る。

「混ぜるな、危険!」

いや、安心召されよ。あなたを何かとミックスする予定はない。

「使用時は手袋着用のこと」

あ、そんなに危険な薬剤なのね。キッチンにビニール製の使い捨て手袋をとりに行く。これ、女性用なのか? 全体が小さくて途中までしか手が入らず、使いにくい。

「これ、小さいぞ」

と妻女殿に申し上げるが

「だったら軍手を使う?」

馬鹿な! 軍手では薬剤を防ぎきれず、軍手に付いた薬剤はやがて中に染みてくるではないか。皮膚につけてはいけない薬剤だから軍手では意味がないのである。やむなく、途中まで手が入った手袋での作業を始める。

スプレー式である。人差し指でハンドルを弾くと霧状になった薬液が噴霧される。それをタイルで貼られた風呂場の壁に吹き付ける。ああ、目地の部分が随分黒くなってるな。こんな薬液で取れるのかしらん?
ん? なんだか異様な臭いだぞ。うむ、これは毒ガスに近い臭いではないか?

「おい、これ、臭いぞ!」

妻女殿に向かって声を揚げる。

「あ、そう。窓を開けてね。換気扇もまわした方がいい。一度に全部やらなくていいから、少しずつ」

全体の4分の1程に吹き付けた。臭い。たまらぬ。1つしかない窓を全開しに、風呂場のドアを閉じ、換気扇を回す。何でも、吹き付けた後は1時間ほど放置するのだそうだ。そして水で徹底的に洗い流せとある。

水をかけにいったのは昼食後である。風呂場にはまだ臭いが漂う。長居は体にどくであろう。シャワーを全開にし、薬液を振りかけた壁に吹き付ける。落ちろ、流れろ、薬液ども!
あれ、なんだかつ腰ばかりカビが取れたような気もするなあ。効果あったのかな?

終えて昼のパイプタバコ。午後3時過ぎ、洗濯物を取り込み、物干しを駐車場に移動する。風呂場の臭いが薄らいでいることを確認して、湯船の掃除。最近はこれも私の仕事となった。

ということで今日は一段落だが、この年末、結構家事にいそしんだ。
数年使わなかった高圧洗浄機を取り出し、

「まだ動くかなあ」

と心配しながら使って玄関のアプローチを掃除したのは数日前である。以前から、アプローチのタイルがカビでも生えたかのように黒ずみ、

「汚い!」

と気になっていた。まあ、いずれにしても他人の家だからどうでもいいだろうと思い続けたが、どういうわけか、住み始めて間もなく6年になる今年になって

「綺麗にしてやろう」

と思ったのは、多分、私の気まぐれである。
外に出しっぱなしだった高圧洗浄機は泥まみれになっていた。そのまま使ったのでは目詰まりする恐れがある。できるだけ綺麗に洗い、電源につないで水を出してみた。出ない。モーターは大きな音をたてて回っているのに、ノズルからは水が出て来ない。

「放りっぱなしだったから壊れたか?」

しかし、壊れるほど複雑な機構を持った機械ではない。モーターが回っているということは、その部分は正常であるわけで、パイプのどこかが目詰まりしているのだろう。
点検する。ホースを本体から外す。ここにはごみを止める金網がある。ここにごみが詰まっているのではないかというのが私の推理だったのだが、ごみらしいものは見当たらない。念の為、金網を水洗いしてホースに息を吹き込んで導通を確認し、繋ぎ直す。ここではないとすれば何処だ?
もう一度スイッチを入れてみる。モーターは動く。水は出ない。なぜ水が出ない?
あちこちに目をやっていたら、不思議な現象に気が付いた。本体と水タンクの繋ぎ目から、細かな泡が出ている。ん? 何故だ?
タンクの水を捨て、接続部分を点検する。タンクを本体に接続すると水を止める金属棒が押し上げられ、水が流れる仕組みになっている。この金属棒を動かす。動く。ここも壊れてはいない。では、何故水が出ない? そして、モーターを動かすとなぜここから泡が出る?

あ、そうか! タンクと本体が十分密着していないんじゃないか? 間にごみが挟まっているんじゃないか?
目で見えるごみを取り除き、再び稼働。お、出た!

というわけで、玄関のドア前、後から玄関に至るアプローチに高圧水を吹き付ける。

高圧洗浄機を使ったことがある方はおわかりだと思うが、噴き出す水はノズルを絞って細くした方が水圧が高まって汚れが落ちる。しかし、細くした分、洗浄できる部分は限られるわけで、いってみれば、鉛筆で画用紙を塗りつぶすような作業に似てくる。2Bの鉛筆で画用紙を塗りつぶすのにどれくらいの時間がかかると思います? しかも、綺麗にしたいのは画用紙数十枚分の面積なのだ。これは大変な作業量である。
1時間以上かけてできるだけ汚れを落とした。しかし、高圧洗浄機でも取れない黒ずみが残った。ふむ、この家は築40年近い。恐らく、このアプローチが人力で手入れされるのはこれが初めてではないか? 40年分に近い汚れが染みついているのではないか?
部屋に戻り、温風ヒーターで冷え切った指先を温めながらそう思った。

が、手がけた仕事が中途半端に終わるのは何とも気分の悪いものである。あのタイル、何とか綺麗にならないか?

翌日、私はDIYのカインズに出かけた。デッキブラシを買うためである。高圧洗浄機で駄目なら、デッキブラシで磨いてやろうではないか。
売り場にいくと、ガラス用の水切り器なるものも目にとまった。あ、これがあったら窓ガラスを綺麗にできる? なぜこんな気まぐれが続いたのかよく分からないが、私はデッキブラシにガラス用水切りまで買い込んで自宅に戻った。

まず、ホースで水を出しながら、デッキブラシでタイルをこする。何度も何度も往復してこする。
だめだった。こびりついた汚れはデッキブラシ適度のものでははがれ落ちではくれなかった。次はどうする? サンダーに紙やすりを取り付けて磨いてみる?

窓ガラスには水を拭きかけ、水切りで水を切った。作業中は窓ガラスの透明度が増したような気がした。

「アプローチはムダだったが、窓ガラスが綺麗になっただけでもいいじゃないか」

自分を慰めながら部屋に戻り、水仕事で冷えてかじかんだ指先を温風ヒーターで温めながら窓を見やった。

「あれ、なんか曇ってるぞ!」

窓ガラスにへばりついた油のような汚れは、相変わらず居座っていた。水をかけて水切りをした程度では落ちてはくれないらしい。これも40年近い年期の入った汚れなのか……。

そういえば、リクライニングチェアとソファーの掃除を命じられたのは昨日のことである。レザーを洗浄する薬液を吹き付け、布で磨く。終われば、革の保護材を吹きつけ、やはり布でまんべんなく伸ばす。
ふっ、これだけはなんだか革のつやが増したような気もするが、気のせいかなあ……。

私は家事にいそしむ年末である。明日は買い物、郵貯口座への振り込みが言い渡された。貧乏暇無し。
皆様は、どのような年末をお過ごしでしょうか?