1. 魂を揺さぶる、人間の矜持
極限状態に置かれたとき、人は何を信じ、どう振る舞うのか。
セント・オブ・ウーマン / 夢の香り- 人としての高潔さ
魂の叫びが、腐った世界を震わせる。男の誇りとは何かを問う名作。
自ら死を選ぼうとする孤独な盲目の退役軍人スレイドが、1人の実直な青年との交流を通じて「生きる価値」を再発見していく。伝説のタンゴシーンやフェラーリの激走を経て、クライマックスの大学講堂での演説へ。「魂を潰された者に義足は付かない」――。人間の尊厳と勇気を真っ向から描いた映画です。
自ら死を選ぼうとする孤独な盲目の退役軍人スレイドが、1人の実直な青年との交流を通じて「生きる価値」を再発見していく。伝説のタンゴシーンやフェラーリの激走を経て、クライマックスの大学講堂での演説へ。「魂を潰された者に義足は付かない」――。人間の尊厳と勇気を真っ向から描いた映画です。
憎しみが獄に入れ、愛が解き放つ。19年の冤罪を晴らした奇跡の実話。
殺人犯として19年間投獄されたボクサー、ルービン・カーター。彼の絶望を救ったのは1人の少年の愛だった。ノーマン・ジュイソン監督の巧みな構成と、デンゼル・ワシントンのベルリン映画祭主演男優賞に輝く名演が、実話の重みを鮮やかに描き出す。正義とは何か、人間の格調とは何かを問いかける。
殺人犯として19年間投獄されたボクサー、ルービン・カーター。彼の絶望を救ったのは1人の少年の愛だった。ノーマン・ジュイソン監督の巧みな構成と、デンゼル・ワシントンのベルリン映画祭主演男優賞に輝く名演が、実話の重みを鮮やかに描き出す。正義とは何か、人間の格調とは何かを問いかける。
フィラデルフィア - 友愛
米国の良心と「友愛」の真価。差別を憎み、共に戦う人間たちの記録。
有能な弁護士を襲ったエイズという宣告と解雇。「ホモもエイズも苦手だ」と語る筆者が本作に強く惹かれるのは、そこに「不正義を見過ごさない」という人間の矜持があるからだ。黒人弁護士ジョーが、自分と同じ「差別の視線」にさらされるアンディを見て立ち上がる場面。理想化されすぎた家族愛や裁判の展開に冷静なツッコミを入れつつも、結末に漂う深い感動を余さず伝える。
有能な弁護士を襲ったエイズという宣告と解雇。「ホモもエイズも苦手だ」と語る筆者が本作に強く惹かれるのは、そこに「不正義を見過ごさない」という人間の矜持があるからだ。黒人弁護士ジョーが、自分と同じ「差別の視線」にさらされるアンディを見て立ち上がる場面。理想化されすぎた家族愛や裁判の展開に冷静なツッコミを入れつつも、結末に漂う深い感動を余さず伝える。
アラバマ物語 - 糖衣錠
「物まね鳥」を殺す罪。法と人情の狭間で揺れる、アメリカの良心と欺瞞。
白人女性への暴行容疑をかけられた黒人。絶望的な裁判に挑む弁護士アティカスの姿は、一見、感動的な「正義の勝利」に見える。しかし筆者はその甘い糖衣を剥ぎ取り、結末に隠された劇薬——「司法の機能停止と私刑の黙認」という重いテーマを引っ張り出す。法を超えた「大岡裁き」は許していいのか。心温まる父娘の絆の向こう側に、社会の危ういバランスを読み解く。
白人女性への暴行容疑をかけられた黒人。絶望的な裁判に挑む弁護士アティカスの姿は、一見、感動的な「正義の勝利」に見える。しかし筆者はその甘い糖衣を剥ぎ取り、結末に隠された劇薬——「司法の機能停止と私刑の黙認」という重いテーマを引っ張り出す。法を超えた「大岡裁き」は許していいのか。心温まる父娘の絆の向こう側に、社会の危ういバランスを読み解く。
壬生義士伝 - 中井貴一に惚れちゃった!
「お主らも石を割って咲け」。守銭奴と呼ばれた男の、あまりに美しい「義」。
落語の極致に涙する心優しい「アナログ男」の筆者が、新撰組最強にして最も優しい男、吉村貫一郎に出会う。中井貴一が体現する、盛岡弁の響きと家族への無私の愛。卑屈さの裏に隠された、南部藩士としての揺るぎない誇り。斎藤一をも畏怖させたその「高貴な魂」の物語を、自らの学生結婚時の覚悟を交えて綴る。
落語の極致に涙する心優しい「アナログ男」の筆者が、新撰組最強にして最も優しい男、吉村貫一郎に出会う。中井貴一が体現する、盛岡弁の響きと家族への無私の愛。卑屈さの裏に隠された、南部藩士としての揺るぎない誇り。斎藤一をも畏怖させたその「高貴な魂」の物語を、自らの学生結婚時の覚悟を交えて綴る。
いまを生きる - 期待という名の抑圧
机の上に立ち、世界を見渡せ。魂を揺さぶる「教育」の真実。
名門進学校に赴任した風変わりな教師が説く「自立」と「自由」。教科書を破り捨て、自分の頭で考えることを促すキーティングの教育は、生徒たちの魂を揺さぶり始める。しかし、自由への憧れは厳格な学風や親の期待と衝突し、思わぬ悲劇へ。理想と現実の狭間で葛藤し、最後に自らの足で机の上に立った少年たちの瞳。魂の背骨を正す一作。
名門進学校に赴任した風変わりな教師が説く「自立」と「自由」。教科書を破り捨て、自分の頭で考えることを促すキーティングの教育は、生徒たちの魂を揺さぶり始める。しかし、自由への憧れは厳格な学風や親の期待と衝突し、思わぬ悲劇へ。理想と現実の狭間で葛藤し、最後に自らの足で机の上に立った少年たちの瞳。魂の背骨を正す一作。
グッド・ウィル・ハンティング ― フリチンの効用
「君は悪くない」。魂を縛る鎧を脱ぎ捨てた時、世界は色鮮やかに動き出す。
天才的な頭脳を持ちながら、スラムで心を閉ざして生きる青年ウィル。筆者は、知性を武器に戦うウィルの姿に、自分を虚飾で塗り固めていた「最高学府の学生」時代の記憶を重ねる。恩師、恋人、そして「お前がここからいなくなること」を願う親友の友情。彼らとの魂の激突を経て、ウィルはついに自分の脆さをさらけ出す「フリチン」の境地へ。筆者流のユーモア溢れる自己分析が、本作の持つ「再生」のテーマをより身近で、愛おしいものへと変える。
天才的な頭脳を持ちながら、スラムで心を閉ざして生きる青年ウィル。筆者は、知性を武器に戦うウィルの姿に、自分を虚飾で塗り固めていた「最高学府の学生」時代の記憶を重ねる。恩師、恋人、そして「お前がここからいなくなること」を願う親友の友情。彼らとの魂の激突を経て、ウィルはついに自分の脆さをさらけ出す「フリチン」の境地へ。筆者流のユーモア溢れる自己分析が、本作の持つ「再生」のテーマをより身近で、愛おしいものへと変える。
小説家を見つけたら - BMWが開く世界
相手の土俵で投げ飛ばす快感!知性のバトンが繋ぐ、最高に熱い人間ドラマ。
黒人少年と伝説の作家の交流。BMWの起源を語り、言葉の誤用を正すジャマールの知的な逆襲劇に、筆者のペンはかつてない熱を帯びる。三島由紀夫を読み耽る16歳の読書傾向に「サドやキェルケゴールまで?」と驚きつつも、漱石の名がないことに憤慨する姿はまさに文芸愛。映画の山場を飾る作文に「私に依頼すれば名作になったのに」と豪語する、筆者流の一遍。
黒人少年と伝説の作家の交流。BMWの起源を語り、言葉の誤用を正すジャマールの知的な逆襲劇に、筆者のペンはかつてない熱を帯びる。三島由紀夫を読み耽る16歳の読書傾向に「サドやキェルケゴールまで?」と驚きつつも、漱石の名がないことに憤慨する姿はまさに文芸愛。映画の山場を飾る作文に「私に依頼すれば名作になったのに」と豪語する、筆者流の一遍。
グッドナイト&グッドラック ― 違和感
ジャーナリズムの勝利か、それとも独りよがりの敗北か。メディアの罪を問う。
マッカーシズムに敢然と立ち向かったキャスター、エド・マロー。その雄姿を描いた本作を入り口に、筆者は日本の「ニュースステーション」がもたらした報道の変質を分析する。正論を振りかざす者が陥る「思い上がり」と、それを見透かす大衆の冷徹さ。ジョージ・クルーニー監督がモノクロの映像に込めたジャーナリズムへの真の問いかけとは。違和感の正体を突き止める思考の旅。
マッカーシズムに敢然と立ち向かったキャスター、エド・マロー。その雄姿を描いた本作を入り口に、筆者は日本の「ニュースステーション」がもたらした報道の変質を分析する。正論を振りかざす者が陥る「思い上がり」と、それを見透かす大衆の冷徹さ。ジョージ・クルーニー監督がモノクロの映像に込めたジャーナリズムへの真の問いかけとは。違和感の正体を突き止める思考の旅。
2. 日常を飛び越える、興奮とカタルシス
手に汗握るスリル。理屈抜きで心が躍る、最高のエンターテインメント。
レイダース - 47.875秒に1回の興奮
47.875秒に1回の興奮。知性が娯楽にひれ伏した夜。
伊豆の旅館、午前2時。酔眼をぱっちりと開かせたのは、スピルバーグが仕掛ける徹底したサービス精神だった。整合性などどこへやら、圧倒的な「面白さ」の連射に、かつての価値観は音を立てて崩れ去る。家族全員を魔法にかけた、冒険映画の金字塔を讃える興奮の一編。
伊豆の旅館、午前2時。酔眼をぱっちりと開かせたのは、スピルバーグが仕掛ける徹底したサービス精神だった。整合性などどこへやら、圧倒的な「面白さ」の連射に、かつての価値観は音を立てて崩れ去る。家族全員を魔法にかけた、冒険映画の金字塔を讃える興奮の一編。
ダイ・ハード - 万歳!アナログ男
近代ビルの要塞に挑む、1人の「ダメ亭主」。80年代の空気を凝縮した傑作。
ハイテク、女性進出、日本経済の隆盛……激動の1980年代を背景に誕生した、全く新しいヒーロー、ジョン・マクレーン。教科書通りのエリートが使い物にならない窮地で、最後の一線を守るのは現場の勘と肉体。泥臭いアナログの底力を、自身の転勤続きのサラリーマン生活や「3階建てのマイホーム」の思い出と共に振り返る筆者。アクションの爽快感とともに、時代と共に「なかなか死なない」人間の本質を抉る。
ハイテク、女性進出、日本経済の隆盛……激動の1980年代を背景に誕生した、全く新しいヒーロー、ジョン・マクレーン。教科書通りのエリートが使い物にならない窮地で、最後の一線を守るのは現場の勘と肉体。泥臭いアナログの底力を、自身の転勤続きのサラリーマン生活や「3階建てのマイホーム」の思い出と共に振り返る筆者。アクションの爽快感とともに、時代と共に「なかなか死なない」人間の本質を抉る。
バック・トゥ・ザ・フューチャー - Calvin Klein
パンツの銘柄が名前になる? 30年前の「若き日の両親」は、とんでもない連中だった!
1985年から1955年へ、デロリアンで時空を超えたマーティを待っていたのは、想像を絶する「若き日の両親」の姿だった。カルバン・クラインのパンツにまつわる爆笑の誤解から、親子の間に横たわる情報ギャップの恐怖まで。不朽の名作を、筆者ならではのユーモア溢れる視点で分析。タイムマシンが普及する前に、すべての親が読んでおくべき(?)警世のレビュー。
1985年から1955年へ、デロリアンで時空を超えたマーティを待っていたのは、想像を絶する「若き日の両親」の姿だった。カルバン・クラインのパンツにまつわる爆笑の誤解から、親子の間に横たわる情報ギャップの恐怖まで。不朽の名作を、筆者ならではのユーモア溢れる視点で分析。タイムマシンが普及する前に、すべての親が読んでおくべき(?)警世のレビュー。
スピード - じゃあセックスしなきゃ
「ない」からこそ面白い。極限状態を駆け抜ける、ノンストップ・アクションの最高峰。
深いメッセージ性や高潔な魂の救済……は一切「ない」。だが、手に汗握るスリルと、粋な台詞回しが詰まっている! 時速50マイル(80km)を維持しなければ爆発するバス。爆発物処理班の裏を知り尽くした犯人とジャックの知恵比べを軽快なテンポで綴る。免停中のアニーが握るハンドル、途切れた高速道路、そして「強烈な経験」の果てのアニーからの大胆な一言。理屈抜きに楽しめる、115分間のジェットコースター体験。
深いメッセージ性や高潔な魂の救済……は一切「ない」。だが、手に汗握るスリルと、粋な台詞回しが詰まっている! 時速50マイル(80km)を維持しなければ爆発するバス。爆発物処理班の裏を知り尽くした犯人とジャックの知恵比べを軽快なテンポで綴る。免停中のアニーが握るハンドル、途切れた高速道路、そして「強烈な経験」の果てのアニーからの大胆な一言。理屈抜きに楽しめる、115分間のジェットコースター体験。
引き裂かれたカーテン - 逃走の醍醐味
巨匠ヒッチコックが放つ、静寂と焦燥のサスペンス。
東独の軍事機密を「盗んだ」学者が挑む、命がけのベルリン脱出。ポール・ニューマンとジュリー・アンドリュースのコンビを襲うのは、派手な爆発ではなく、石床に響く靴音や、なかなか開かない郵便局のドア。幼い日の「がめぐっちょ」の教訓(?)を胸に、筆者が本作を「逃走の最高傑作」と断じるその理由とは。かつての共産圏の非能率的な恐怖までをも小道具に変えた、巨匠の冴えわたる演出を堪能する。
東独の軍事機密を「盗んだ」学者が挑む、命がけのベルリン脱出。ポール・ニューマンとジュリー・アンドリュースのコンビを襲うのは、派手な爆発ではなく、石床に響く靴音や、なかなか開かない郵便局のドア。幼い日の「がめぐっちょ」の教訓(?)を胸に、筆者が本作を「逃走の最高傑作」と断じるその理由とは。かつての共産圏の非能率的な恐怖までをも小道具に変えた、巨匠の冴えわたる演出を堪能する。
リーサル・ウェポン - 男って、いいなあ!
「殺人兵器」と呼ばれた男の、魂の再生。男たちの熱き友情に胸打たれる一篇。
死を恐れぬ狂気を纏うリッグスと、家族を愛するベテランのマートフ。相反する二人が「相棒」となり、暗闇から抜け出していく。派手な銃撃戦やカーチェイスの奥底に流れる、男同士の言葉にできない信頼と優しさ。一休さんの「正月の歌」に人生の無常を重ねつつ、メル・ギブソンの迫真の演技に「男の美学」を見出した筆者が、死の淵から生還する男のドラマを解説する。
死を恐れぬ狂気を纏うリッグスと、家族を愛するベテランのマートフ。相反する二人が「相棒」となり、暗闇から抜け出していく。派手な銃撃戦やカーチェイスの奥底に流れる、男同士の言葉にできない信頼と優しさ。一休さんの「正月の歌」に人生の無常を重ねつつ、メル・ギブソンの迫真の演技に「男の美学」を見出した筆者が、死の淵から生還する男のドラマを解説する。
TAXi - 愛国心
「トラクター」を追いつめろ! 爆速タクシーが運ぶのはフランスの誇り。
世界初の映画と自動車を生んだフランスの、プライドをかけたカー・アクション。真っ白なプジョーが赤いベンツを挑発し、マルセイユの街を縦横無尽に駆け抜ける。歴史的な敗戦、経済格差、そして隣国への奇妙な対抗意識……。リュック・ベッソンが脚本に込めた「ドイツよ、これを見ろ!」という叫びを、筆者が軽快に読み解く。破壊願望を突き抜ける爽快感と、ヒロインを演じるマリオン・コティヤールの抗いがたい魅力に酔いしれるのもいい。
世界初の映画と自動車を生んだフランスの、プライドをかけたカー・アクション。真っ白なプジョーが赤いベンツを挑発し、マルセイユの街を縦横無尽に駆け抜ける。歴史的な敗戦、経済格差、そして隣国への奇妙な対抗意識……。リュック・ベッソンが脚本に込めた「ドイツよ、これを見ろ!」という叫びを、筆者が軽快に読み解く。破壊願望を突き抜ける爽快感と、ヒロインを演じるマリオン・コティヤールの抗いがたい魅力に酔いしれるのもいい。
ポセイドン・アドベンチャー - 神は存在するか?
上下逆転した世界で「神」に抗う。パニック映画を超えた究極の自立の物語。
単なる「天と地がひっくり返る映画」ではない。本作の真髄は、ジーン・ハックマン演じる破天荒な牧師が突きつける「自ら助ける者を助ける神」への問いかけにある。筆者が、秀逸な映像アイデアの裏に隠された「信仰と生存」のドラマを鮮やかに描き出す。元潜水女王のベルが命を賭して道を切り拓き、弱虫のマーチンが愛のために強くなる。過酷な試練を与える神を罵倒し、自らの足で脱出を試みる人間たちの姿は、公開から半世紀を経てもなお色褪せぬ力強さを放っている。
単なる「天と地がひっくり返る映画」ではない。本作の真髄は、ジーン・ハックマン演じる破天荒な牧師が突きつける「自ら助ける者を助ける神」への問いかけにある。筆者が、秀逸な映像アイデアの裏に隠された「信仰と生存」のドラマを鮮やかに描き出す。元潜水女王のベルが命を賭して道を切り拓き、弱虫のマーチンが愛のために強くなる。過酷な試練を与える神を罵倒し、自らの足で脱出を試みる人間たちの姿は、公開から半世紀を経てもなお色褪せぬ力強さを放っている。
シュリ - いま、すごく逢いたい。逢いたい
「いま、すごく逢いたい」。その単純な言葉が、銃弾よりも重く胸を貫く。
南北分断の悲劇を描いた韓国映画の金字塔。筆者は、この作品が放つ凄まじい危機感に触れ、平和に慣れきった日本の創作状況を鋭く批判する。秘密工作員の女と、彼女を追う秘密情報部員の男。水槽を隔てて愛を誓い合った2人が、最後には至近距離で銃を向け合う。自らの手で愛を葬らねばならなかった男の絶望と、女が遺した最期のメッセージ。激しい感情の渦を鮮やかに描き出した、重厚な人間ドラマへのオマージュ。
南北分断の悲劇を描いた韓国映画の金字塔。筆者は、この作品が放つ凄まじい危機感に触れ、平和に慣れきった日本の創作状況を鋭く批判する。秘密工作員の女と、彼女を追う秘密情報部員の男。水槽を隔てて愛を誓い合った2人が、最後には至近距離で銃を向け合う。自らの手で愛を葬らねばならなかった男の絶望と、女が遺した最期のメッセージ。激しい感情の渦を鮮やかに描き出した、重厚な人間ドラマへのオマージュ。
タイムリミット - 危機管理
完璧なはずの不倫だったのに…。警察署長を襲う、自分=犯人を示す怒涛の証拠品。
不倫相手の殺害容疑、消えた証拠金、そして自分を追い詰めるのは愛想を尽かされた妻刑事。絶体絶命の警察署長ウィトロックが、自らの容疑を晴らすために時間と戦う極上サスペンス。筆者は、映画の「文書偽造」シーンにツッコミを入れつつ、女性たちの圧倒的な強さと、それに翻弄される「情けない男」の滑稽さを鋭く突く。不倫という名の火遊びが、取り返しのつかない破滅へと加速していく恐怖。危機管理のテクニックと、男の悲哀が同居する刺激的な一篇。
不倫相手の殺害容疑、消えた証拠金、そして自分を追い詰めるのは愛想を尽かされた妻刑事。絶体絶命の警察署長ウィトロックが、自らの容疑を晴らすために時間と戦う極上サスペンス。筆者は、映画の「文書偽造」シーンにツッコミを入れつつ、女性たちの圧倒的な強さと、それに翻弄される「情けない男」の滑稽さを鋭く突く。不倫という名の火遊びが、取り返しのつかない破滅へと加速していく恐怖。危機管理のテクニックと、男の悲哀が同居する刺激的な一篇。
スクール・オブ・ロック - 頭は使うな!
「ロックしたきゃ決まりを破れ!」 偽教師が教え込んだ、人生で一番大切な「休憩時間」。
クラシック一辺倒の優等生たちが、汚いおっさんの手でロック・スターに覚醒する。筆者が「近年のめっけもの」と太鼓判を押す本作は、理屈抜きの高揚感に満ちた学園コメディ。Eric Claptonのビートに乗り、筆者は自らの「ギター挫折史」を笑い飛ばしながら、子供たちが枠を飛び出す瞬間のカタルシスを鮮やかに綴ります。教育の不毛を論じるつもりが、いつしか中年男の懐古趣味とロックへの情熱が入り混じる、あまりに人間臭いレビュー。
クラシック一辺倒の優等生たちが、汚いおっさんの手でロック・スターに覚醒する。筆者が「近年のめっけもの」と太鼓判を押す本作は、理屈抜きの高揚感に満ちた学園コメディ。Eric Claptonのビートに乗り、筆者は自らの「ギター挫折史」を笑い飛ばしながら、子供たちが枠を飛び出す瞬間のカタルシスを鮮やかに綴ります。教育の不毛を論じるつもりが、いつしか中年男の懐古趣味とロックへの情熱が入り混じる、あまりに人間臭いレビュー。
ホワイトナイツ/白夜 - 男の体も美しい
九州男児、絶句。その肉体が描く「自由」という名の極上の曲線。
「男の体は美しくない」という長年の価値観が、一人のダンサーによって崩れ去る。ミハイル・バリシニコフ演じる亡命ダンサーが、冷戦下のソ連で再び自由を求めて舞う姿。重力を拒絶するような跳躍と、魂から噴き上がる怒りのステップ。政治サスペンスの醍醐味に加え、初めて「男性の肉体美」に魅せられた筆者の戸惑いを綴る。
「男の体は美しくない」という長年の価値観が、一人のダンサーによって崩れ去る。ミハイル・バリシニコフ演じる亡命ダンサーが、冷戦下のソ連で再び自由を求めて舞う姿。重力を拒絶するような跳躍と、魂から噴き上がる怒りのステップ。政治サスペンスの醍醐味に加え、初めて「男性の肉体美」に魅せられた筆者の戸惑いを綴る。
クール・ランニング - 負けっぷり爽やか
「100m10秒の俊足」がボブスレーを押す? 奇跡に挑んだ男たちの、抱腹絶倒の実話物語。
カリブの熱風をカルガリーの氷河へ。前代未聞のミスマッチから始まった挑戦は、いつしか観客の魂を揺さぶる「自立と誇り」のドラマへ。筆者はコメディとしての面白さを存分に楽しみつつも、コーチの過去を通じた「勝利の本質」を問うセリフに共鳴。優勝を逃したラストに宿る、人生への肯定感。もし彼らが勝っていたら映画はどうなっていたか?という辛口な思考実験も必見。
カリブの熱風をカルガリーの氷河へ。前代未聞のミスマッチから始まった挑戦は、いつしか観客の魂を揺さぶる「自立と誇り」のドラマへ。筆者はコメディとしての面白さを存分に楽しみつつも、コーチの過去を通じた「勝利の本質」を問うセリフに共鳴。優勝を逃したラストに宿る、人生への肯定感。もし彼らが勝っていたら映画はどうなっていたか?という辛口な思考実験も必見。
ジャッカルの日 - 読んでから?
「読んでから見る」派の苦悩。映画はなぜ原作に及ばないのか?
超一流の殺し屋が挑む、緻密極まる暗殺計画。原作の「130m先のメロンを射抜くリアリティ」が、映画ではなぜ物足りなく感じてしまうのか。官僚主義、大統領の矜持、そしてキャラの造形。そして、原作とは違うあっけない幕切れ、原作を読み返して文句を言いながらもDVDまで買ってしまう、不可思議なファン心理を紐解く鋭い比較論。
超一流の殺し屋が挑む、緻密極まる暗殺計画。原作の「130m先のメロンを射抜くリアリティ」が、映画ではなぜ物足りなく感じてしまうのか。官僚主義、大統領の矜持、そしてキャラの造形。そして、原作とは違うあっけない幕切れ、原作を読み返して文句を言いながらもDVDまで買ってしまう、不可思議なファン心理を紐解く鋭い比較論。
世界最速のインディアン - 7歳児の心
常識という鎧を脱ぎ捨て、ポンコツバイクで夢の塩平原へ。これぞ「男の生涯現役」。
60歳を過ぎてなお、時速300km超の世界に挑む男バート・マンロー。アンソニー・ホプキンスが演じる愛すべき「不良じい様」の生き様を通じ、筆者は自身の老いを見つめ直し、「7歳児の心」で生きることの尊さを確信する。偏見を持たず、ただ純粋に夢へと突き進む魂が、周囲の心を溶かしていく。勇気と希望、そして人間の純粋な輝きに満ちた映画。
60歳を過ぎてなお、時速300km超の世界に挑む男バート・マンロー。アンソニー・ホプキンスが演じる愛すべき「不良じい様」の生き様を通じ、筆者は自身の老いを見つめ直し、「7歳児の心」で生きることの尊さを確信する。偏見を持たず、ただ純粋に夢へと突き進む魂が、周囲の心を溶かしていく。勇気と希望、そして人間の純粋な輝きに満ちた映画。
ウォルター少年と、夏の休日 - 格好いいジジイたち
ライフル片手に文明を拒絶する、老いたライオンたちの誇り高き生き様。
テキサスの頑固ジジイ二人と少年のひと夏。筆者は一風変わった老人たちの暮らしの中に、名誉や勇気、無償の愛といった「男として信じるに足る価値」を鮮やかに描き出す。老ライオンのジャスミンと2人の老人が見せる、命をかけた優しさと強さ。文明の利器に頼らずとも、魂が震える恋と遊び心を忘れぬ彼らの姿は、効率を優先しすぎる現代人に「それでいいのか」と問いかける。清々しい涙と活力が湧いてくる珠玉の人間賛歌。
テキサスの頑固ジジイ二人と少年のひと夏。筆者は一風変わった老人たちの暮らしの中に、名誉や勇気、無償の愛といった「男として信じるに足る価値」を鮮やかに描き出す。老ライオンのジャスミンと2人の老人が見せる、命をかけた優しさと強さ。文明の利器に頼らずとも、魂が震える恋と遊び心を忘れぬ彼らの姿は、効率を優先しすぎる現代人に「それでいいのか」と問いかける。清々しい涙と活力が湧いてくる珠玉の人間賛歌。
天使にラブ・ソングを - 160kmの速球に三振
剛速球の音楽と、粋な変化球に酔いしれる。これぞ娯楽映画の真骨頂!
殺人現場を目撃した歌手・ドロレスが修道院で巻き起こす、笑いと笑いの音楽奇跡。160kmの剛速球でミットを叩くような圧倒的なコーラスと、絶妙な「変化球」として散りばめられた軽妙な台詞の数々。規律を越えて心が繋がる瞬間のカタルシスは、何度観ても色褪せることがない。ラストの法王をも巻き込む大合唱に、ああなたも心地よく三振しよう!
殺人現場を目撃した歌手・ドロレスが修道院で巻き起こす、笑いと笑いの音楽奇跡。160kmの剛速球でミットを叩くような圧倒的なコーラスと、絶妙な「変化球」として散りばめられた軽妙な台詞の数々。規律を越えて心が繋がる瞬間のカタルシスは、何度観ても色褪せることがない。ラストの法王をも巻き込む大合唱に、ああなたも心地よく三振しよう!
3. 社会を見つめる、冷徹な眼差し
構造的な歪みや歴史の真実。映画が映し出す、私たちが生きる世界の影。
チャイナ・シンドローム ― 巨大システムの暴走
計器の針が引っかかった――ただそれだけで、文明は崩壊の淵に立つ。
現実の原発事故を「予言」したことで知られる社会派サスペンス。筆者は、悪徳企業の陰謀以上に、複雑化した現代システムが抱える「避けがたい脆弱さ」に着目。数万点の部品の中の、たった1つの不備。それが多重の安全装置をすり抜け、制御不能の暴走を招く恐怖。福島原発事故後の2017年の追記を加え、私たちの「安全神話」を鋭く突き崩す。
現実の原発事故を「予言」したことで知られる社会派サスペンス。筆者は、悪徳企業の陰謀以上に、複雑化した現代システムが抱える「避けがたい脆弱さ」に着目。数万点の部品の中の、たった1つの不備。それが多重の安全装置をすり抜け、制御不能の暴走を招く恐怖。福島原発事故後の2017年の追記を加え、私たちの「安全神話」を鋭く突き崩す。
インサイダー - ああ、ジャーナリズム
巨大資本に屈するメディアへの告発。ジャーナリズムの死と再生を描く。
実在のたばこ会社による内部告発事件を基に、報道の裏側と、真実を語ろうとした男たちの葛藤を鮮烈に描く。ラッセル・クロウ演じる「ごく普通の研究者」が抱く恐怖と、アル・パチーノ演じるプロデューサーの不屈の闘志。2005年当時の日本の報道界の混迷に筆を重ね、ジャーナリズムの危うさとそれを支える「個人の勇気」に迫る。
実在のたばこ会社による内部告発事件を基に、報道の裏側と、真実を語ろうとした男たちの葛藤を鮮烈に描く。ラッセル・クロウ演じる「ごく普通の研究者」が抱く恐怖と、アル・パチーノ演じるプロデューサーの不屈の闘志。2005年当時の日本の報道界の混迷に筆を重ね、ジャーナリズムの危うさとそれを支える「個人の勇気」に迫る。
チャップリンの独裁者 - 失敗作?
喜劇王が映画の「禁じ手」を冒してまで、世界に叩きつけた肉声。
ナチスが猛威を振るう中、リアルタイムでヒトラーに闘いを挑んだ衝撃作。物語の整合性をあえて放棄し、3分30秒の「演説」にすべてを託したチャップリン。その焦燥か、あるいは計算された演出か。民主主義の危うさまでも見通した天才の慧眼を、自身の深い洞察と共に紐解く。
ナチスが猛威を振るう中、リアルタイムでヒトラーに闘いを挑んだ衝撃作。物語の整合性をあえて放棄し、3分30秒の「演説」にすべてを託したチャップリン。その焦燥か、あるいは計算された演出か。民主主義の危うさまでも見通した天才の慧眼を、自身の深い洞察と共に紐解く。
華氏911 - ないものねだり?
痛快な告発か、それとも緻密さを欠いた「ないものねだり」か。
現職大統領への宣戦布告。マイケル・ムーアが仕掛けた「旬」のドキュメンタリーに、映画館を出た後も拭えない違和感が残る。巧妙な映像術に圧倒されつつも、「脇の甘さ」を突く。時代を揺るがした一作を、人間味あふれる筆致で解剖した。
現職大統領への宣戦布告。マイケル・ムーアが仕掛けた「旬」のドキュメンタリーに、映画館を出た後も拭えない違和感が残る。巧妙な映像術に圧倒されつつも、「脇の甘さ」を突く。時代を揺るがした一作を、人間味あふれる筆致で解剖した。
スタンドアップ ― 母性本能
法廷で明かされた残酷な真実。母と子の「絶望」から始まる再生の物語。
鉄鉱山で働く女性への不当な差別とセクハラに立ち向かった実話を映画化。筆者は、物語の核心を「出生の秘密を乗り越えようとする母子の絆」に見出す。望まぬ妊娠、呪われた過去、そして崩れかける息子との関係。名優たちの重厚な演技を通じて語られる「母性」の真価。大人が若者に語るべき言葉とは何かを問い直す。
鉄鉱山で働く女性への不当な差別とセクハラに立ち向かった実話を映画化。筆者は、物語の核心を「出生の秘密を乗り越えようとする母子の絆」に見出す。望まぬ妊娠、呪われた過去、そして崩れかける息子との関係。名優たちの重厚な演技を通じて語られる「母性」の真価。大人が若者に語るべき言葉とは何かを問い直す。
ガタカ - 格差社会の超克
「心臓疾患率97%、寿命30.2歳」。生まれた瞬間に宣告された絶望を、彼は意志で塗り替えた。
DNAによって人生が予約される近未来。筆者はこの物語を「現代の田中角栄物語」と喝破する。清掃夫から宇宙飛行士へ。エリート社会へ潜り込むヴィンセントの執念。そこにあるのは、血統や学歴、経済力で人生が決まる現代社会の歪みへの、強烈なカウンターだ。医師ラマーとの静かな結末に、「1人で管理社会に穴をあける勇気」を見出す。差別と戦い、自分の力だけで宇宙を掴み取ろうとした男の魂の記録。
DNAによって人生が予約される近未来。筆者はこの物語を「現代の田中角栄物語」と喝破する。清掃夫から宇宙飛行士へ。エリート社会へ潜り込むヴィンセントの執念。そこにあるのは、血統や学歴、経済力で人生が決まる現代社会の歪みへの、強烈なカウンターだ。医師ラマーとの静かな結末に、「1人で管理社会に穴をあける勇気」を見出す。差別と戦い、自分の力だけで宇宙を掴み取ろうとした男の魂の記録。
皇帝のいない八月 - 底なしの穴
国家を揺るがす大博打のはずが、そこにあったのは驚くべき「手抜き工事」だった。
豪華キャストで描く自衛隊クーデター。筆者は本作を「愛国精神の発露」として、敢えてそのダメさ加減を徹底追求する。交通ルールすら守れない反乱軍、リアリティを欠く演出、そして何より命を懸けるに値しない空虚な思想。筆者は三島由紀夫や幕末の歴史観を引き合いに、映画が捉え損ねた「政治の深淵」を突きつける。「君たち、勉強が足りないのではないか?」——巨匠の看板を畏れず、日本映画界の知性喪失という「底なしの穴」を撃つ。
豪華キャストで描く自衛隊クーデター。筆者は本作を「愛国精神の発露」として、敢えてそのダメさ加減を徹底追求する。交通ルールすら守れない反乱軍、リアリティを欠く演出、そして何より命を懸けるに値しない空虚な思想。筆者は三島由紀夫や幕末の歴史観を引き合いに、映画が捉え損ねた「政治の深淵」を突きつける。「君たち、勉強が足りないのではないか?」——巨匠の看板を畏れず、日本映画界の知性喪失という「底なしの穴」を撃つ。
ウォール街 ―ゲッコーを乗り越えよ!
「貪欲は善だ」——バブルと不祥事に揺れる日本へ放つ真実の言葉。
欲望渦巻くウォール街。筆者はマイケル・ダグラス演じる相場師ゲッコーの「悪の論理」を、2006年のホリエモン・村上ファンド事件に重ね合わせる。メディアがもてはやした「改革者」の正体とは? 20年経ってもゲッコーの掌の上で踊る私たちに、オリバー・ストーン監督が突きつけた「額に汗する労働」という答えは通用するのか。資本主義の深淵と人間の矜持を綴った鋭利な時評。
欲望渦巻くウォール街。筆者はマイケル・ダグラス演じる相場師ゲッコーの「悪の論理」を、2006年のホリエモン・村上ファンド事件に重ね合わせる。メディアがもてはやした「改革者」の正体とは? 20年経ってもゲッコーの掌の上で踊る私たちに、オリバー・ストーン監督が突きつけた「額に汗する労働」という答えは通用するのか。資本主義の深淵と人間の矜持を綴った鋭利な時評。
猿の惑星 ― 愚かなる者、汝の名は……
「この野郎、地獄に行っちまえ!」……その叫びは、未来の自分たちに向けられたものだった。
あまりにも有名な結末の裏側に隠された、真のメッセージとは。筆者は悪役とされるゼイウス博士を「文明の監視者」と見る。人類の知性が生んだ核の炎と、それを封印しようとする猿の聖典。冷戦下で描かれたこの寓話は、核の拡散が止まらない現代、より切実な警告として響く。「考える葦」である人間が、それゆえに滅びへと向かう矛盾。映画史に残る名作を、現代社会への鋭い問いかけとして読み解く。
あまりにも有名な結末の裏側に隠された、真のメッセージとは。筆者は悪役とされるゼイウス博士を「文明の監視者」と見る。人類の知性が生んだ核の炎と、それを封印しようとする猿の聖典。冷戦下で描かれたこの寓話は、核の拡散が止まらない現代、より切実な警告として響く。「考える葦」である人間が、それゆえに滅びへと向かう矛盾。映画史に残る名作を、現代社会への鋭い問いかけとして読み解く。
生きる - ああ、戦後民主主義
命短し、恋せよ乙女。ブランコに揺れる渡辺が、私たちに遺したもの。
死を宣告された平凡な公務員が、最後に見出した「生」の証。筆者は志村喬の怪演が光るこの名作を、戦後民主主義の輝きと虚脱を映し出す鏡として鮮やかに切り出した。通夜の席で「明日から変わる」と誓いながら、何ひとつ変わらぬ日常に戻る役人たちの姿。黒澤明が1952年に抱いた、民主主義への切実な希望と苦い絶望。筆者の筆は、50年以上経った今なお解決されない「個の変革」と「組織の壁」の深淵に鋭く切り込む。
死を宣告された平凡な公務員が、最後に見出した「生」の証。筆者は志村喬の怪演が光るこの名作を、戦後民主主義の輝きと虚脱を映し出す鏡として鮮やかに切り出した。通夜の席で「明日から変わる」と誓いながら、何ひとつ変わらぬ日常に戻る役人たちの姿。黒澤明が1952年に抱いた、民主主義への切実な希望と苦い絶望。筆者の筆は、50年以上経った今なお解決されない「個の変革」と「組織の壁」の深淵に鋭く切り込む。
カンバセーション…盗聴… ― 想像力の枯渇
「我々はあんたに聞き耳を立てている」。暴かれたプライバシーと失われた想像力。
凄腕の盗聴屋ハリーが、ノイズの向こうに拾い上げた殺人の予感。筆者はこのハリーの苦悩を「仕事がもたらす結果」を見ようとしない現代社会の病理として喝破する。企業の不祥事から身勝手な電話勧誘まで、想像力の欠如が招く「裏街道」の悲劇。完璧な防御を誇った自室さえも破壊し、狂気と正気の狭間でサックスを吹くハリー。私たちが無意識に目を逸らしている「仕事の責任」の深淵を暴き出す。
凄腕の盗聴屋ハリーが、ノイズの向こうに拾い上げた殺人の予感。筆者はこのハリーの苦悩を「仕事がもたらす結果」を見ようとしない現代社会の病理として喝破する。企業の不祥事から身勝手な電話勧誘まで、想像力の欠如が招く「裏街道」の悲劇。完璧な防御を誇った自室さえも破壊し、狂気と正気の狭間でサックスを吹くハリー。私たちが無意識に目を逸らしている「仕事の責任」の深淵を暴き出す。
ブラディ・サンデー - テロルの土壌
恐怖と憎しみが火を噴く瞬間。1972年、アイルランドの悲劇を追体験する。
ロンドンから足を伸ばしたダブリンでの退屈な日曜日。その16年前に起きた凄惨な事件を、筆者は「無知」への反省とともに克明に辿る。非暴力のデモが、なぜ英軍による虐殺を招き、IRAへの志願者を増やす「テロの温床」となったのか。揺れる画面に刻まれた戦慄のリアリズムを、日本の機動隊や竹槍訓練といった記憶と接続させ、紛争の本質を解剖。平和への願いが踏みにじられた「血の日曜日」の衝撃を、敬愛するジョン・レノンの過激な歌詞とともに読み解く。
ロンドンから足を伸ばしたダブリンでの退屈な日曜日。その16年前に起きた凄惨な事件を、筆者は「無知」への反省とともに克明に辿る。非暴力のデモが、なぜ英軍による虐殺を招き、IRAへの志願者を増やす「テロの温床」となったのか。揺れる画面に刻まれた戦慄のリアリズムを、日本の機動隊や竹槍訓練といった記憶と接続させ、紛争の本質を解剖。平和への願いが踏みにじられた「血の日曜日」の衝撃を、敬愛するジョン・レノンの過激な歌詞とともに読み解く。
コンスピラシー - 優秀な官僚たちの犯罪
「最終的解決」という名の事務処理。最高知性が歴史を汚した瞬間。
ベルリン郊外の邸宅で交わされた、1100万人の運命を決める「会議」の再現劇。最優秀な官僚たちがワインを嗜みジョークを飛ばしながら虐殺のフローチャートを完成させる。職場で上司の無能を嘆く筆者が、あえて問う「有能な官僚こそが最悪の犯罪を可能にする」という逆説。基本方針を疑わない知性が、いかに容易に人道を踏み外すか。現代の組織社会に生きるすべての人へ贈る、震撼のドキュメンタリー・ドラマ。
ベルリン郊外の邸宅で交わされた、1100万人の運命を決める「会議」の再現劇。最優秀な官僚たちがワインを嗜みジョークを飛ばしながら虐殺のフローチャートを完成させる。職場で上司の無能を嘆く筆者が、あえて問う「有能な官僚こそが最悪の犯罪を可能にする」という逆説。基本方針を疑わない知性が、いかに容易に人道を踏み外すか。現代の組織社会に生きるすべての人へ贈る、震撼のドキュメンタリー・ドラマ。
サルバドル - 絶望
「この映画、2度と見たくない」。そう呟かせた、あまりに深い絶望。
オリバー・ストーンが抉り出す中米の狂気。信じた正義が裏切られ、最後のアメリカへの希望さえもが国境で断ち切られる。実話に基づくこの物語は、観る者の「無知」を打ち砕き、腹の底からの無力感を突きつける。
オリバー・ストーンが抉り出す中米の狂気。信じた正義が裏切られ、最後のアメリカへの希望さえもが国境で断ち切られる。実話に基づくこの物語は、観る者の「無知」を打ち砕き、腹の底からの無力感を突きつける。
オール・ザ・キングスメン- ニヒリズムの極地
民主主義は人を幸せにできるのか? 権力の魔性に魅入られた男の栄光と没落。
清廉な弁護士から、裏工作と扇動で州を支配する怪物へ。主人公ウィリー・スタークの変節を、ローマ帝国のキリスト教利用から現代の政治情勢にまで繋げて読み解く。理想を掲げたはずの指導者が、なぜ「悪」を源泉として政治を回し始めるのか。赤狩り時代の監督の葛藤までをも射程に入れたこのレビューは、単なる映画評を超え、私たちが生きる「システム」の脆さを浮き彫りにする。
清廉な弁護士から、裏工作と扇動で州を支配する怪物へ。主人公ウィリー・スタークの変節を、ローマ帝国のキリスト教利用から現代の政治情勢にまで繋げて読み解く。理想を掲げたはずの指導者が、なぜ「悪」を源泉として政治を回し始めるのか。赤狩り時代の監督の葛藤までをも射程に入れたこのレビューは、単なる映画評を超え、私たちが生きる「システム」の脆さを浮き彫りにする。
死刑執行人もまた死す - 図式通りのプロパガンダ
「死刑執行人」ハイドリッヒ暗殺。その劇的なサスペンスに潜む「人間」の不在。
ナチス高官暗殺の影で、誇り高く死んでいくチェコの民衆。サスペンスとしての興奮は認めつつも、筆者は本作が描く「単純二元論」の世界に鋭いメスを入れる。迷いのない英雄、良心を持たぬ悪党——図式化された人物像に抱く違和感の正体とは。歴史の皮肉を噛みしめながら、ナチス映画の傑作とされる一作を独自の視点で切り刻む。
ナチス高官暗殺の影で、誇り高く死んでいくチェコの民衆。サスペンスとしての興奮は認めつつも、筆者は本作が描く「単純二元論」の世界に鋭いメスを入れる。迷いのない英雄、良心を持たぬ悪党——図式化された人物像に抱く違和感の正体とは。歴史の皮肉を噛みしめながら、ナチス映画の傑作とされる一作を独自の視点で切り刻む。
スミス都へ行く - 絶望の笑い
その熱狂は正義か、それともただの偶然か。民主主義の「正体」を暴く傑作。
純朴な青年議員が挑む、巨大権力との絶望的な闘い。不朽の名作を「民主主義への絶望とマスコミへの冷笑」という独自の視点で斬る。24時間に及ぶ演説の裏にある無知と知名度優先の選挙制度など、現代社会にも通じる8つの「絶望の笑い」を指摘。キャプラ監督がヒューマニズムの影に隠した真のメッセージを、毒気たっぷりに解き明かす。
純朴な青年議員が挑む、巨大権力との絶望的な闘い。不朽の名作を「民主主義への絶望とマスコミへの冷笑」という独自の視点で斬る。24時間に及ぶ演説の裏にある無知と知名度優先の選挙制度など、現代社会にも通じる8つの「絶望の笑い」を指摘。キャプラ監督がヒューマニズムの影に隠した真のメッセージを、毒気たっぷりに解き明かす。
シモーヌ - 虚と実のいま
メディアが作り出す「シモーヌ」という幻想。私たちは何を信じているのか?
絶世の美女、完璧な演技、スキャンダル……。だが彼女はコンピュータが生成したシミュレーションだった。主演女優に逃げられた監督(アル・パチーノ)の苦肉の策が、世界を揺るがす大騒動へ。テレビで見たタレントを「知り合い」と錯覚した筆者の体験をフックに、メディアに踊らされる現代人の危うさを軽妙かつ辛辣に突く一篇。ウィノナ・ライダーの凄絶な演技にも注目。笑いの後に、「今あなたが見ているものは本物か?」という問いが静かに突き刺ささる。
絶世の美女、完璧な演技、スキャンダル……。だが彼女はコンピュータが生成したシミュレーションだった。主演女優に逃げられた監督(アル・パチーノ)の苦肉の策が、世界を揺るがす大騒動へ。テレビで見たタレントを「知り合い」と錯覚した筆者の体験をフックに、メディアに踊らされる現代人の危うさを軽妙かつ辛辣に突く一篇。ウィノナ・ライダーの凄絶な演技にも注目。笑いの後に、「今あなたが見ているものは本物か?」という問いが静かに突き刺ささる。
4. 愛と哀しみ、人生の機微
寄り添う温もりと、避けられぬ別れ。心の一番深い場所に触れる物語。
初恋のきた道 - 美しい、美しい、ほんとうに美しい!
その純粋さは、凶器か、それとも狂気か。初恋という名の暴走に涙する。
村に赴任した若き教師を追い続ける可憐な少女の情熱。チャン・ツィイーの衝撃的なデビュー作を、恋愛における「1.5mの法則」と「ストーカー一歩手前の狂気」という独自の視点で読み解く。雪原に立ち尽くし、熱を出してまで愛を貫こうとする彼女の姿は、果たしていじらしいのか、それとも……。美しい映像の裏側に潜む「怖いほどの一途さ」を。
村に赴任した若き教師を追い続ける可憐な少女の情熱。チャン・ツィイーの衝撃的なデビュー作を、恋愛における「1.5mの法則」と「ストーカー一歩手前の狂気」という独自の視点で読み解く。雪原に立ち尽くし、熱を出してまで愛を貫こうとする彼女の姿は、果たしていじらしいのか、それとも……。美しい映像の裏側に潜む「怖いほどの一途さ」を。
スモーク - 無駄こそ人生!
人生を彩るのは「無駄」という名の潤い。ブルックリンの煙草屋が語る、真実の嘘。
「無駄のない人生なんて、それこそが無駄」。ビートルズと紫煙を愛する筆者が、映画『スモーク』を肴に、合理主義に背を向けた「無駄の効用」を説く。14年間、店の前を撮り続ける無意味な写真が、ある男の救いとなる。偽りの孫を演じて過ごしたクリスマスの1日が、1人の老婦人の孤独を埋める。筆者は効率社会から追放された「無理・ムラ・無駄」こそが文化の正体であると喝破する。
「無駄のない人生なんて、それこそが無駄」。ビートルズと紫煙を愛する筆者が、映画『スモーク』を肴に、合理主義に背を向けた「無駄の効用」を説く。14年間、店の前を撮り続ける無意味な写真が、ある男の救いとなる。偽りの孫を演じて過ごしたクリスマスの1日が、1人の老婦人の孤独を埋める。筆者は効率社会から追放された「無理・ムラ・無駄」こそが文化の正体であると喝破する。
ひまわり - エンディングから始まる物語
美しき名曲の裏側に潜む、残酷なまでの「純愛」のその後。
ソフィア・ローレンの圧倒的な存在感と、ヘンリー・マンシーニの調べに乗り、戦争が引き裂いた夫婦の悲劇を辿る。「イヤリング」という小道具に込められた執着、そして再会が生んだ更なる絶望。映画がハッピーエンドでもバッドエンドでもなく幕を閉じた後、互いを求めて止まない二人が歩む「灼熱の余生」を独自の視点で見事に描き出し、観終わった後、ただの感動では終わらせない。人間の情念と時間の非情さを突きつけた。
ソフィア・ローレンの圧倒的な存在感と、ヘンリー・マンシーニの調べに乗り、戦争が引き裂いた夫婦の悲劇を辿る。「イヤリング」という小道具に込められた執着、そして再会が生んだ更なる絶望。映画がハッピーエンドでもバッドエンドでもなく幕を閉じた後、互いを求めて止まない二人が歩む「灼熱の余生」を独自の視点で見事に描き出し、観終わった後、ただの感動では終わらせない。人間の情念と時間の非情さを突きつけた。
街の灯 - You?
たった3文字が伝える愛の奇跡。映画史が誇る最高峰のラストシーン。
音楽の勘違いで「犬」になれなかった筆者をも、最後には暖かな涙で包み込んだチャップリンの至宝。大恐慌下の格差を背景に、盲目の乙女にすべてを捧げる浮浪者の献身を描く。サイレントゆえに際立つ、ボクシングのドタバタと、静謐な別れの美しさ。そして、再会した乙女が彼の手に触れ、魂で問いかける「You?(あなたでしたの?)」。貧困を笑い飛ばし、人間の尊厳を信じ抜く優しさを描く。
音楽の勘違いで「犬」になれなかった筆者をも、最後には暖かな涙で包み込んだチャップリンの至宝。大恐慌下の格差を背景に、盲目の乙女にすべてを捧げる浮浪者の献身を描く。サイレントゆえに際立つ、ボクシングのドタバタと、静謐な別れの美しさ。そして、再会した乙女が彼の手に触れ、魂で問いかける「You?(あなたでしたの?)」。貧困を笑い飛ばし、人間の尊厳を信じ抜く優しさを描く。
ライムライト - パブロフの犬
10年間の勘違いを解いた真実のメトロノーム。チャップリンが描く「老い」の真髄。
「いつ聴いても、同じ反応が起きる」。筆者を条件反射の涙へといざなう主題歌。老いたコメディアンと、再起をかけるバレリーナが織りなす、悲しくも美しいすれ違いのドラマ。自らの衰えを自覚したチャップリンが、2人の主役をを通して見せるのは、愛するがゆえに身を引く老人の覚悟と、若さゆえの残酷なストレートさ。アカデミー作曲賞に輝く名曲をバックに、愛する人の踊る姿を夢見ながら幕を閉じるラストシーン。娯楽の域を超え、人生の本質を突きつける不朽の人間賛歌。
「いつ聴いても、同じ反応が起きる」。筆者を条件反射の涙へといざなう主題歌。老いたコメディアンと、再起をかけるバレリーナが織りなす、悲しくも美しいすれ違いのドラマ。自らの衰えを自覚したチャップリンが、2人の主役をを通して見せるのは、愛するがゆえに身を引く老人の覚悟と、若さゆえの残酷なストレートさ。アカデミー作曲賞に輝く名曲をバックに、愛する人の踊る姿を夢見ながら幕を閉じるラストシーン。娯楽の域を超え、人生の本質を突きつける不朽の人間賛歌。
カルテット - となりのトトロ
「音を楽しむ」原点への回帰。久石譲監督が放つ、混迷の音楽シーンへの回答。
「あなた、楽器は何をやられます?」——そんな問いから始まる、筆者の軽妙な音楽遍歴。挫折し、失業者となった4人の若き演奏家が、地方巡業を経て辿り着いたのは「音楽は聴く人を楽しくさせるもの」という真理だった。圧巻は、花火会場で流れる『となりのトトロ』。技巧に溺れていた彼らが、聴衆の子供たちと心を一つにした瞬間、真の音楽が産声を上げる。現代の音楽シーンへの深い洞察が光る、爽快な青春人間ドラマ。
「あなた、楽器は何をやられます?」——そんな問いから始まる、筆者の軽妙な音楽遍歴。挫折し、失業者となった4人の若き演奏家が、地方巡業を経て辿り着いたのは「音楽は聴く人を楽しくさせるもの」という真理だった。圧巻は、花火会場で流れる『となりのトトロ』。技巧に溺れていた彼らが、聴衆の子供たちと心を一つにした瞬間、真の音楽が産声を上げる。現代の音楽シーンへの深い洞察が光る、爽快な青春人間ドラマ。
おばあちゃんの家 - クソガキの変身
言葉はいらない。ただ、無償の愛が都会に汚れた少年の心を溶かしていく。
都会のワガママを絵に描いたような少年・サンウ。腰が曲がり、口のきけない祖母との山奥での生活は、激しい反発から始まった。しかし、どんなに虐げられても慈しみ続ける祖母の愛が、少年の頑なな心を少しずつ溶かしていく。別れの前夜、少年が涙を堪えながら針穴に糸を通し続けるシーン。理屈を超えて胸を打つ、人間愛に満ちた傑作の全貌。
都会のワガママを絵に描いたような少年・サンウ。腰が曲がり、口のきけない祖母との山奥での生活は、激しい反発から始まった。しかし、どんなに虐げられても慈しみ続ける祖母の愛が、少年の頑なな心を少しずつ溶かしていく。別れの前夜、少年が涙を堪えながら針穴に糸を通し続けるシーン。理屈を超えて胸を打つ、人間愛に満ちた傑作の全貌。
愛情物語 - ちょっと薄味
ショパンからジャズへ。流麗な調べに酔い、男の生き様に喝を入れる。
筆者がジャズに目覚めた若き日の思い出と共に振り返る、天才ピアニストの半生。名曲「To Love Again」が流れる中、タイロン・パワーとキム・ノヴァクが見せる大人の恋。しかし、愛妻の死を息子のせいにして逃避する主人公に対し、自らも1人の父である筆者の筆は厳しい。「画竜点睛を欠く」と言わしめた愛の説得力とは? 素晴らしい音楽と蠱惑的な映像を堪能しつつも、人間としての「筋」を問い直す。
筆者がジャズに目覚めた若き日の思い出と共に振り返る、天才ピアニストの半生。名曲「To Love Again」が流れる中、タイロン・パワーとキム・ノヴァクが見せる大人の恋。しかし、愛妻の死を息子のせいにして逃避する主人公に対し、自らも1人の父である筆者の筆は厳しい。「画竜点睛を欠く」と言わしめた愛の説得力とは? 素晴らしい音楽と蠱惑的な映像を堪能しつつも、人間としての「筋」を問い直す。
わが街セントルイス - 悲しい嘘
嘘とユーモアで逆境を生き抜く。少年の「健康な精神」に学ぶサバイバル術。
大恐慌下、1人ぼっちの少年アーロンが、飢えと追い立てを切り抜ける武器は、豊かな想像力が生み出す「嘘」。リンドバーグに携行食のアドバイスをしたという極上の作文、そして両親は考古学者という嘘。筆者はどん底を笑い飛ばす精神の気高さを描き出す。料理の写真をフォークで食べる籠城戦に、かつての日本人が詠んだ風刺歌を対比させ、泣くよりも嘆くよりも、まずは笑おう! と。
大恐慌下、1人ぼっちの少年アーロンが、飢えと追い立てを切り抜ける武器は、豊かな想像力が生み出す「嘘」。リンドバーグに携行食のアドバイスをしたという極上の作文、そして両親は考古学者という嘘。筆者はどん底を笑い飛ばす精神の気高さを描き出す。料理の写真をフォークで食べる籠城戦に、かつての日本人が詠んだ風刺歌を対比させ、泣くよりも嘆くよりも、まずは笑おう! と。
藍色夏恋 - できれば日本で続編を
飾らない「目」が教えてくれる、大人への門を叩く豊かな時間。
台湾の高校生たちが織りなす、淡く瑞々しいひと夏の物語。化粧や携帯電話で「ミニ大人」を急ぐ日本の現状とは対照的な、モン・クーロウの凛とした「目」。2度と帰らない夏を一歩ずつ踏みしめて歩く彼女たちの姿に、自らの記憶の琴線を震わせながら、本当の「豊かさ」とは何かを問いかける。
台湾の高校生たちが織りなす、淡く瑞々しいひと夏の物語。化粧や携帯電話で「ミニ大人」を急ぐ日本の現状とは対照的な、モン・クーロウの凛とした「目」。2度と帰らない夏を一歩ずつ踏みしめて歩く彼女たちの姿に、自らの記憶の琴線を震わせながら、本当の「豊かさ」とは何かを問いかける。
ライフ・イズ・ビューティフル - 軽薄の勧め
嘘は、時として限りなく美しい。父が息子に贈った最高のゲーム。
ナチスの強制収容所という地獄を、知恵とユーモアで「ゲーム」に塗り替えた父子の物語。絶望を軽薄な明るさで跳ね除け、息子の心を守り抜こうとしたグイドの気高い嘘。ベニーニ監督が描く、真の「強さ」と「愛」の形。イタリア男の美学に共感し、その「軽薄さ」の中にこそ他者を救うサービス精神があると説く筆者の言葉が、物語の感動をより一層深く際立たせる。
ナチスの強制収容所という地獄を、知恵とユーモアで「ゲーム」に塗り替えた父子の物語。絶望を軽薄な明るさで跳ね除け、息子の心を守り抜こうとしたグイドの気高い嘘。ベニーニ監督が描く、真の「強さ」と「愛」の形。イタリア男の美学に共感し、その「軽薄さ」の中にこそ他者を救うサービス精神があると説く筆者の言葉が、物語の感動をより一層深く際立たせる。
火垂るの墓 - 原作を越えた?
「何でホタル、すぐ死んでしまうん?」魂を刺し貫く、兄妹の鎮魂歌。
野坂昭如の直木賞小説を高畑勲が映像化した、アニメ史に残る傑作。戦争の悲惨さを、一組の兄妹の視点から淡々と、かつ残酷に描き出す。若き日に原作に号泣し、以来「読み返す勇気」を封印してきた筆者が、改めて向き合う2人の最期。記憶の中で増幅された独自のストーリーと、現実の「業」の深さを照らし合わせながら、人間の原罪と愛の形を静かに考察します。
野坂昭如の直木賞小説を高畑勲が映像化した、アニメ史に残る傑作。戦争の悲惨さを、一組の兄妹の視点から淡々と、かつ残酷に描き出す。若き日に原作に号泣し、以来「読み返す勇気」を封印してきた筆者が、改めて向き合う2人の最期。記憶の中で増幅された独自のストーリーと、現実の「業」の深さを照らし合わせながら、人間の原罪と愛の形を静かに考察します。
屋根 - 安ワインの味
たった2.7坪の城に懸ける夢。巨匠デ・シーカが描く、貧しくも気高い奮闘記。
新婚早々、別居を強いられたナターレとルイーザ。2人が手にしたのは、夜明けまでに建てれば「合法」となる、あまりに小さく危うい家作りへの挑戦だった。400年前の秀吉の「一夜城」を彷彿とさせるこの大作戦に、自らも若くして世帯を持った筆者が熱い声援を送る。秩序よりも大切な「生きていくための切実さ」。そして、わだかまりを溶かした一杯の安ワインの至福。素人俳優たちの瑞々しい演技が、戦後ローマの光と影を優しく照らし出す。
新婚早々、別居を強いられたナターレとルイーザ。2人が手にしたのは、夜明けまでに建てれば「合法」となる、あまりに小さく危うい家作りへの挑戦だった。400年前の秀吉の「一夜城」を彷彿とさせるこの大作戦に、自らも若くして世帯を持った筆者が熱い声援を送る。秩序よりも大切な「生きていくための切実さ」。そして、わだかまりを溶かした一杯の安ワインの至福。素人俳優たちの瑞々しい演技が、戦後ローマの光と影を優しく照らし出す。
酔っぱらった馬の時間 - どうにもならないもどかしさ
アヨブの短い一生とは何だったのか。クルドの雪原に刻まれた、あまりに過酷な「日常」。
密輸基地で働く子供たちの淡々とした歌声から始まる、バフマン・ゴバディ監督の衝撃作。病の兄を手術させるため、酔ったラバを弾丸飛び交う国境へと進める少年の姿に、筆者は「人生のあまりの過酷さ」を見る。筆者の思春期と比較して綴られる、アヨブの「家族への限りない愛」。妹アーメネの回想形式に隠された残酷な真実と、何もできない私たちの「もどかしさ」をどうしたらいいのか。
密輸基地で働く子供たちの淡々とした歌声から始まる、バフマン・ゴバディ監督の衝撃作。病の兄を手術させるため、酔ったラバを弾丸飛び交う国境へと進める少年の姿に、筆者は「人生のあまりの過酷さ」を見る。筆者の思春期と比較して綴られる、アヨブの「家族への限りない愛」。妹アーメネの回想形式に隠された残酷な真実と、何もできない私たちの「もどかしさ」をどうしたらいいのか。
誓いの休暇- 戦時下の青春譚?
戦火の中を走り抜けた19歳の6日間が描き出す眩しいロシアの光景。
敵戦車を撃破した英雄への褒美は、実家の屋根を直すための「休暇」だった。筆者は「反戦映画」の皮を一枚むいて少年が大人へと成長する純粋な青春見る。貨車に潜り込んだ見知らぬ少女との、豚の脂身を分かち合う素朴で愛おしい交流。そして、再会を誓いながらも戦場に消えたアリョーシャ。大冷戦下のソ連で作られた本作の「政治的したたかさ」、映像の裏に隠された監督の覚悟まで炙り出す。
敵戦車を撃破した英雄への褒美は、実家の屋根を直すための「休暇」だった。筆者は「反戦映画」の皮を一枚むいて少年が大人へと成長する純粋な青春見る。貨車に潜り込んだ見知らぬ少女との、豚の脂身を分かち合う素朴で愛おしい交流。そして、再会を誓いながらも戦場に消えたアリョーシャ。大冷戦下のソ連で作られた本作の「政治的したたかさ」、映像の裏に隠された監督の覚悟まで炙り出す。
熱いトタン屋根の猫 ― セックスレス夫婦
「飛び降りろよ、マギー」。熱く灼けた屋根から、彼らはどこへ向かうのか。
エリザベス・テイラーの美貌と、ポール・ニューマンの苦悩。このセックスレス夫婦の奇妙な緊張感から、人間の「自己欺瞞」という深い沼が現れる。大富豪の父の死を前に, 剥き出しになる家族の本音と遺産への欲望。登場人物たちが自ら作り上げた「ワナ」が解き明かされ、地下室での父子対決で「愛は買えない」という痛切な真理が。虚飾を捨て、本音でぶつかり合う家族の再生を描いた、濃密な心理劇。
エリザベス・テイラーの美貌と、ポール・ニューマンの苦悩。このセックスレス夫婦の奇妙な緊張感から、人間の「自己欺瞞」という深い沼が現れる。大富豪の父の死を前に, 剥き出しになる家族の本音と遺産への欲望。登場人物たちが自ら作り上げた「ワナ」が解き明かされ、地下室での父子対決で「愛は買えない」という痛切な真理が。虚飾を捨て、本音でぶつかり合う家族の再生を描いた、濃密な心理劇。
恋人までの距離 ― 言葉は嘘の道具
言葉が奏でる、一夜限りの濃密な愛の調べ。その距離を測る「嘘」と「真実」。
他人の恋愛は退屈だが、この2人の「会話」はあまりに刺激的だ。列車で出会った男女がウィーンで過ごす、翌朝までの限定された時間。筆者は、2人が交わす言葉の裏に潜む駆け引きや、おずおずと差し出される本音を鋭く読み解く。傑作「電話ごっこ」のシーンに見る、遊戯を装った真実の告告。言葉は嘘をつく道具でありながら、これほどまでに人間を惹きつける。半年後の再会という約束に、「自分に対しても嘘をつく」人間の性を重ねて問いかける、大人のための恋愛論。
他人の恋愛は退屈だが、この2人の「会話」はあまりに刺激的だ。列車で出会った男女がウィーンで過ごす、翌朝までの限定された時間。筆者は、2人が交わす言葉の裏に潜む駆け引きや、おずおずと差し出される本音を鋭く読み解く。傑作「電話ごっこ」のシーンに見る、遊戯を装った真実の告告。言葉は嘘をつく道具でありながら、これほどまでに人間を惹きつける。半年後の再会という約束に、「自分に対しても嘘をつく」人間の性を重ねて問いかける、大人のための恋愛論。
チャンプ ― 自分のズボンを脱げなくなったら
男の矜持、父の愛。ボロボロの元王者が、最愛の息子のために見せた最後の奇跡。
「自分で自分のズボンを脱げなくなったら、もう男じゃねえ」。酒に溺れ、自分に絶望しながらも、息子T.J.の前では「チャンプ」であり続けようとした男の物語。筆者は、1931年のオリジナル版と見比べ、リメイク版を高く評価。なぜ息子は、自堕落な父をこれほどまでに敬愛したのか。絶望の中で命を燃やし、リングに立つ父の姿に、真の「男の誇り」とは何かを問う。ラストシーンは時を超えて観る者の魂を揺さぶり続ける。
「自分で自分のズボンを脱げなくなったら、もう男じゃねえ」。酒に溺れ、自分に絶望しながらも、息子T.J.の前では「チャンプ」であり続けようとした男の物語。筆者は、1931年のオリジナル版と見比べ、リメイク版を高く評価。なぜ息子は、自堕落な父をこれほどまでに敬愛したのか。絶望の中で命を燃やし、リングに立つ父の姿に、真の「男の誇り」とは何かを問う。ラストシーンは時を超えて観る者の魂を揺さぶり続ける。
フラガール ― 時代は変わる
炭都に生きた人々の「魂」と、再生への祈り。筆者の原体験が映画に命を吹き込む。
エネルギー革命の荒波の中、斜陽の炭鉱町を救ったのは娘たちのダンスだった。大牟田・三井三池の記憶を胸に持つ筆者は、成功物語の陰にある「時代の犠牲者」たちの悲哀を浮き彫りにする。労働者同士の分断、親子の確執、反映される都会と田舎の対立。激動の1965年を切り取ったこのコラムは、単なる作品解説に留まらず、日本が歩んできた道のりを問い直す。
エネルギー革命の荒波の中、斜陽の炭鉱町を救ったのは娘たちのダンスだった。大牟田・三井三池の記憶を胸に持つ筆者は、成功物語の陰にある「時代の犠牲者」たちの悲哀を浮き彫りにする。労働者同士の分断、親子の確執、反映される都会と田舎の対立。激動の1965年を切り取ったこのコラムは、単なる作品解説に留まらず、日本が歩んできた道のりを問い直す。
裸の島 - 生きるって、生きていくって?
「生きる」という剥き出しの営みに、九州男児の涙が溢れた。
セリフを排し、小島で水を運び続ける家族の日常。言葉による虚飾を削ぎ落とした先に見えてくるのは、絶望的な貧しさと、それを超えた生命の荘厳さだった。「生きることを掴み損ねるな」と現代に問いかける、魂のレビュー。
セリフを排し、小島で水を運び続ける家族の日常。言葉による虚飾を削ぎ落とした先に見えてくるのは、絶望的な貧しさと、それを超えた生命の荘厳さだった。「生きることを掴み損ねるな」と現代に問いかける、魂のレビュー。
理由なき反抗 - 地震、雷、火事、親父
「チキン(臆病者)」と呼ばれたくない。崖っぷちを走る少年が、本当にぶつけたかった怒りの矛先。
J・ディーンの瑞々しい演技の裏に、筆者は「家庭崩壊の病理」を読み取る。物分かりの良い「友達親子」が良しとされる現代に、あえて「怖い親父」の意義を問う。岡林信康の歌に涙し、自らの子育てで「尻を叩く」ことを厭わなかった筆者の人生観が、崖っぷちのチキン・レースと激しく交差する。若者の反抗には理由がある。それは、自分を厳しく導き、時にはね返してくれる「大黒柱」への渇望だった。
J・ディーンの瑞々しい演技の裏に、筆者は「家庭崩壊の病理」を読み取る。物分かりの良い「友達親子」が良しとされる現代に、あえて「怖い親父」の意義を問う。岡林信康の歌に涙し、自らの子育てで「尻を叩く」ことを厭わなかった筆者の人生観が、崖っぷちのチキン・レースと激しく交差する。若者の反抗には理由がある。それは、自分を厳しく導き、時にはね返してくれる「大黒柱」への渇望だった。
エデンの東 ― 赤狩りの余波
理念か、現実か。裏切りの歴史を背負った、美しき反逆者の咆哮。
J・ディーンを永遠のスターにした不朽の名作。筆者は、物語の根底に流れるエリア・カザン監督の政治的意図——「赤狩り」というドグマへの反抗と自己弁護を見る。信条を重んじ息子を拒む父と、自らの足で立つために足掻くキャル。戦争を利用した投機をも肯定する物語の矛盾を突きながらも、大道さんはグラスを飲み干すキャルの仕草に心奪われます。一人の俳優が放つ圧倒的な「格好良さ」が、監督の打算さえも超えて観る者の魂を震わせる一篇。
J・ディーンを永遠のスターにした不朽の名作。筆者は、物語の根底に流れるエリア・カザン監督の政治的意図——「赤狩り」というドグマへの反抗と自己弁護を見る。信条を重んじ息子を拒む父と、自らの足で立つために足掻くキャル。戦争を利用した投機をも肯定する物語の矛盾を突きながらも、大道さんはグラスを飲み干すキャルの仕草に心奪われます。一人の俳優が放つ圧倒的な「格好良さ」が、監督の打算さえも超えて観る者の魂を震わせる一篇。
失われた週末 ― 今日も飲むぞ……?
万能感という名の毒。リヤカーに運ばれた父の記憶と重なる、アル中の深淵。
アカデミー賞作品賞に輝く「アルコール依存症」の衝撃作。筆者は、酒に溺れプライドを失っていく主人公ドンの姿に、中学教師でありながら酔いつぶれてリヤカーで運ばれて来た自身の父親の面影を重ねる。飲むとミケランジェロやシェイクスピアになれると語るドンの「浅ましさ」。それは理想の自分と現実の落差を埋めようとする悲しい抵抗。自身の壮絶な実体験をベースに、酒が持つ「敵(かたき)」としての側面を浮き彫りにした。
アカデミー賞作品賞に輝く「アルコール依存症」の衝撃作。筆者は、酒に溺れプライドを失っていく主人公ドンの姿に、中学教師でありながら酔いつぶれてリヤカーで運ばれて来た自身の父親の面影を重ねる。飲むとミケランジェロやシェイクスピアになれると語るドンの「浅ましさ」。それは理想の自分と現実の落差を埋めようとする悲しい抵抗。自身の壮絶な実体験をベースに、酒が持つ「敵(かたき)」としての側面を浮き彫りにした。
ラン・ローラ・ラン - 必然の契機
走る、走る、走る! 20分間の人生を賭けたギャンブル。その先にあるのは救いか、絶望か.
ベルリンを駆ける赤髪の少女と、吉本隆明が説く「親鸞」の思想。筆者はこの一見奇妙な組み合わせから、人生の不確かさと必然を鮮やかに描き出す。たった数秒の狂いで、誰かが億万長者になり、誰かが命を落とす。実験的映像の中で繰り返される3つの運命。筆者は自身の交通事故の体験をifのパターンで振り返りながら、我々が「自分の意志」と信じているものが、実はいかに脆い「縁」の集積であるかを問いかける。
ベルリンを駆ける赤髪の少女と、吉本隆明が説く「親鸞」の思想。筆者はこの一見奇妙な組み合わせから、人生の不確かさと必然を鮮やかに描き出す。たった数秒の狂いで、誰かが億万長者になり、誰かが命を落とす。実験的映像の中で繰り返される3つの運命。筆者は自身の交通事故の体験をifのパターンで振り返りながら、我々が「自分の意志」と信じているものが、実はいかに脆い「縁」の集積であるかを問いかける。
5. 映画の魔法、忘れがたき名作たち
スクリーンの向こう側に広がる無限の世界。記憶に刻まれた永遠の輝き。
つばさ ― 映画人の根性
智に働けば角が立つ。だが、映画への情熱に手抜きはない。
第1回アカデミー賞作品賞。筆者は本作を、娯楽映画の「原型」と見る。CGのない時代、命がけで空を舞い、激突シーンを撮り上げたスタッフの根性。単純明快なヒーロー像、三角関係、そして圧倒的なスペクタクル。筆は漱石の文体論から始まり、サイレント映画が内包する純粋な「動的な魅力」へと読者を誘う。
第1回アカデミー賞作品賞。筆者は本作を、娯楽映画の「原型」と見る。CGのない時代、命がけで空を舞い、激突シーンを撮り上げたスタッフの根性。単純明快なヒーロー像、三角関係、そして圧倒的なスペクタクル。筆は漱石の文体論から始まり、サイレント映画が内包する純粋な「動的な魅力」へと読者を誘う。
アマデウス - プロモーション映画
モーツァルト音楽の、これ以上ない「プロモーション映画」。
かつてクラシックを嫌った九州男児が、なぜこの映画に家族全員で10回以上も「はまった」のか。サリエリの凄まじい嫉妬、天才の冷酷なまでの純真。映画を「3.5層」の深みで解剖し、死後200年を経てなお世界を魅了し続ける天才の正体に迫る。
かつてクラシックを嫌った九州男児が、なぜこの映画に家族全員で10回以上も「はまった」のか。サリエリの凄まじい嫉妬、天才の冷酷なまでの純真。映画を「3.5層」の深みで解剖し、死後200年を経てなお世界を魅了し続ける天才の正体に迫る。
素晴らしき哉、人生! ― 私の人生も素晴らしいか?
「友人がいる人は、決して失敗作ではない」。天使が告げる真実の豊かさ。
夢破れ、絶望に沈む男に贈られた、最高のクリスマス・プレゼント。筆者は主人公ジョージの人生を味噌汁における「ダシ」に例え、目立たぬ存在が持つ重みを描き出す。自分が存在しない世界で繰り広げられる悲劇。それを目撃した時、男は再び「生きたい」と叫ぶ。
夢破れ、絶望に沈む男に贈られた、最高のクリスマス・プレゼント。筆者は主人公ジョージの人生を味噌汁における「ダシ」に例え、目立たぬ存在が持つ重みを描き出す。自分が存在しない世界で繰り広げられる悲劇。それを目撃した時、男は再び「生きたい」と叫ぶ。
暗くなるまで待って - 安上がり?
闇こそが最大の武器。盲目のヒロインが仕掛ける、鮮やかなる「逆転劇」。
冷酷な犯罪者たちを相手に、盲目のヒロインが電球を叩き割り、自らの戦場を作り出す。視力を奪われた者が、光の世界の住人をねじ伏せるカタルシス。映画の本質は制作費ではなく「閃き」にあることを証明する名作。
冷酷な犯罪者たちを相手に、盲目のヒロインが電球を叩き割り、自らの戦場を作り出す。視力を奪われた者が、光の世界の住人をねじ伏せるカタルシス。映画の本質は制作費ではなく「閃き」にあることを証明する名作。
或る夜の出来事 - 17の Know How
恋の教科書は、この一本。スクープを追う記者が教える「逆玉」への最短距離。
資産家のドラ娘と、クビになった新聞記者が織りなすラブコメディの金字塔。最悪の出会いから愛の告白に至るまで、主人公ウォーンが駆使した「17のノウハウ」を徹底分析。笑いの中に潜む、女心を掴むための「詩的才能」を紐解く。
資産家のドラ娘と、クビになった新聞記者が織りなすラブコメディの金字塔。最悪の出会いから愛の告白に至るまで、主人公ウォーンが駆使した「17のノウハウ」を徹底分析。笑いの中に潜む、女心を掴むための「詩的才能」を紐解く。
シカゴ - 日本は人材不足
「本物の芸」に飢えたあなたへ。スキャンダルさえも芸に変える狂騒の街。
人殺しさえも使いようでは喝采を浴びる、1920年代シカゴ。欲望とスキャンダルが渦巻くショービジネス界を、圧巻の歌とダンスで描き出す。キャサリン・ゼタ=ジョーンズの妖艶なステップと、リチャード・ギアの隠れた多才ぶり。
人殺しさえも使いようでは喝采を浴びる、1920年代シカゴ。欲望とスキャンダルが渦巻くショービジネス界を、圧巻の歌とダンスで描き出す。キャサリン・ゼタ=ジョーンズの妖艶なステップと、リチャード・ギアの隠れた多才ぶり。
情婦 - リーガルサスペンス
嘘をつく唯一の動物、人間。その本性がぶつかり合う「検察側の証人」。
アガサ・クリスティの原作をビリー・ワイルダーが映画化した、法廷ドラマの金字塔。二転三転するどんでん返しと、名優チャールズ・ロートン演じる老弁護士の鮮やかな舌鋒。リーガルサスペンスへの深い愛着を込めて。
アガサ・クリスティの原作をビリー・ワイルダーが映画化した、法廷ドラマの金字塔。二転三転するどんでん返しと、名優チャールズ・ロートン演じる老弁護士の鮮やかな舌鋒。リーガルサスペンスへの深い愛着を込めて。
オズの魔法使 - 脳みそ・心・勇気
脳みそがなくてもお喋りはできる? 痛烈な風刺を秘めた永遠の傑作。
黄色い煉瓦道を辿るドロシーたち。彼らが求めた「脳みそ、心、勇気」は、実は旅の過程ですでに手に入れていたものだった。1939年の色彩美を堪能しつつ、安易に金で解決しようとする現代社会への「一本の矢」を放つ。
黄色い煉瓦道を辿るドロシーたち。彼らが求めた「脳みそ、心、勇気」は、実は旅の過程ですでに手に入れていたものだった。1939年の色彩美を堪能しつつ、安易に金で解決しようとする現代社会への「一本の矢」を放つ。
理由 - 約束違反
それは「どんでん返し」か、それとも「禁じ手」か。映画のルールを問う問題作。
死刑囚の無実を晴らすための孤独な闘いが、やがて戦慄の迷宮へと変貌する。ショーン・コネリーの枯れた魅力と、善悪の境界線が溶けていく不気味な後味。ミステリーの醍醐味と、フェアプレイの是非を巡る論考。
死刑囚の無実を晴らすための孤独な闘いが、やがて戦慄の迷宮へと変貌する。ショーン・コネリーの枯れた魅力と、善悪の境界線が溶けていく不気味な後味。ミステリーの醍醐味と、フェアプレイの是非を巡る論考。
偽りの花園 - 魑魅魍魎の勝利
「どうして、ママ? 恐いの?」——娘の告発が、血塗られた欲望の館に響き渡る。
心臓を病んだ夫を静かに見殺しにする妻、レジーナ。ベティ・デイヴィスの凍りつくような視線。大道さんは、ハッピーエンドの嘘を拒絶するウィリアム・ワイラーの非情な最高傑作を、冷徹に切り刻む。
心臓を病んだ夫を静かに見殺しにする妻、レジーナ。ベティ・デイヴィスの凍りつくような視線。大道さんは、ハッピーエンドの嘘を拒絶するウィリアム・ワイラーの非情な最高傑作を、冷徹に切り刻む。
俺たちに明日はない ― いまを先取り
100発の銃弾が切り裂いた、虚構の自由と希薄な現実感。
筆者は、1930年代の不況が生んだ徒花を、21世紀の私たちが直面する「空虚な日常」と二重写しにする。逃走の果てに待ち受ける衝撃のラストが、今なお私たちを震撼させる理由。
筆者は、1930年代の不況が生んだ徒花を、21世紀の私たちが直面する「空虚な日常」と二重写しにする。逃走の果てに待ち受ける衝撃のラストが、今なお私たちを震撼させる理由。
トゥルー・クライム ― 男の知性
コンプラ無視、身持ちは最悪。だが「鼻」は超一流。絶滅寸前の「雄」が真実を暴く。
筆者は、下品な言葉の裏に流れる「プロ同士の信頼」を絶賛。時代が忘れた「男の知性と美学」を描き出す。Mac OS9への愛着も微笑ましい。
筆者は、下品な言葉の裏に流れる「プロ同士の信頼」を絶賛。時代が忘れた「男の知性と美学」を描き出す。Mac OS9への愛着も微笑ましい。
激突! – 日常にある恐怖
バックミラーに映る死の予感。天才スピルバーグの衝撃のデビュー作。
1台のタンクローリーを追い越したことから始まる、終わりなき逃走劇。顔の見えない運転手、意思疎通の拒絶。日常のすぐ隣に潜む「恐怖」の本質と、家庭の平和を巡る意外な哲学とは?
1台のタンクローリーを追い越したことから始まる、終わりなき逃走劇。顔の見えない運転手、意思疎通の拒絶。日常のすぐ隣に潜む「恐怖」の本質と、家庭の平和を巡る意外な哲学とは?
青い戦慄 - こんな台詞で!
「男は誰でも君と会ってるさ。夢の中でね」――至高の名台詞に酔いしれる。
レイモンド・チャンドラーが脚本を担当し、戦後アメリカの虚無感を鮮烈に描いた。加齢による切なさを噛み締めながら、失われゆく「格好良さ」の本質を鋭く考察した一編。
レイモンド・チャンドラーが脚本を担当し、戦後アメリカの虚無感を鮮烈に描いた。加齢による切なさを噛み締めながら、失われゆく「格好良さ」の本質を鋭く考察した一編。
LET IT BE - 5人目になりきった
「5人目のビートルズ」として過ごした、狂おしいほどに輝く時間。
高校時代の放送室ジャック、そして博多の映画館で10数回も繰り返した鑑賞。解散間際の4人が放つ緊張感の向こう側に、自らの青春を重ね合わせた、魂の映画評。
高校時代の放送室ジャック、そして博多の映画館で10数回も繰り返した鑑賞。解散間際の4人が放つ緊張感の向こう側に、自らの青春を重ね合わせた、魂の映画評。
鞍馬天狗 - 男の中の男なり
「男の美学」を体現する、銀幕の快男児・アラカンの真髄。
生涯300人斬りの豪放磊落さと、女のために裸一貫で家を出る人情味。古き良き時代のスターが持つ「魂」と、自身の憧憬を重ね合わせた一編。
生涯300人斬りの豪放磊落さと、女のために裸一貫で家を出る人情味。古き良き時代のスターが持つ「魂」と、自身の憧憬を重ね合わせた一編。
忍びの者 - 信長は太っていたか
時代が求めた「悪」の権力者。忍者への憧憬と、戦後思想が交錯する歴史レビュー。
麻の種を探し、水蜘蛛で池に沈んだ「忍者志望」の少年だった筆者が、大人になって再会した市川雷蔵版・五右衛門。特撮に頼らない忍者の身のこなしに「これなら俺もなれたかも」と昔日の夢を馳せる。
麻の種を探し、水蜘蛛で池に沈んだ「忍者志望」の少年だった筆者が、大人になって再会した市川雷蔵版・五右衛門。特撮に頼らない忍者の身のこなしに「これなら俺もなれたかも」と昔日の夢を馳せる。