AIのジェミニが面白い間違いをしでかした。それをご紹介する。
始まりはエネルギーとは何だろう? という私の問いかけだった。エネルギー。あちこちで頻繁に使われる言葉だが、だが
「そもそもエネルギーって何さ? 酸素分子と水素分子がくっつくと水になり、同時にエネルギーが放出されるという。じゃあ、そのエネルギーの元は酸素、水素の中に潜んでいるわけ? その正体は何だ?」
という問は、ずいぶん前から私の中にあった。それが分からずして、省エネだとかエネルギー不足だとかいっていても、何の話をしているのか分からないじゃないか。
理系の大学教授数人に聞いてみたが、満足できる回答はなかった。もう半年ほど前になると思うが、チャットGTP に同じ質問をぶつけた。するとチャット君は
「物事を変化させる能力」
と答えてきた。
「物理学では長さや時間と並ぶ基本的な概念の一つ」
「実は科学者たちも『エネルギーとは何か』を一言で定義するのは難しいと考えていて、『仕事をする能力』や『保存される物理量』として理解されることが多い」
とも付け加えた。私は、
「何だ、専門家もよく分かっていないのか」
と放り出して忘れていた。
そうだ、ジェミニはどんな答えをくれるのだろう? と思いついたのは2週間ほど前である。
「エネルギーの正体は?」
という私の質問に、ジェミニは一発回答をよこした。
「E=mc2。エネルギーの正体は質量です」
思わずうなづいてしまった。E=mc2。有名なアインシュタインの公式である。私だって、それくらいは記憶している。しかし、公式は記憶しながら、エネルギー=質量、という考えは小指の先ほども思い浮かばなかったから我ながら情けないことだ。
そしてジェミニは、水素分子と酸素分子がくっついた時、微量の質量が失われると説明した。つまり失われた質量がE=mc2の公式に従ってエネルギーを放出しているのである。そして、4gの水素と32gの酸素が反応して約36gの水ができる時、エネルギーに変わった質量は約1000億分の5gという計算結果も示した。そして、こんな一文があった。
「人間の技術では測定不可能なほど微小な質量がエネルギーに変換されて消えています」
おっと、ここは突っ込まなければならない。消えた質量が測定不可能なら、E=mc2の公式には実験の裏付けがなく。単なる頭の体操ではないのか?
ところが、これは実験で裏付けられているという。詳しい中身は忘れたが、粒子加速器で何だか精密な実験をして裏付けたのだという。
ほう、アインシュタインはやはり天才であったか。
そこまで知識が広がって、私は面白くなった。次は体内のエネルギーを知りたくなったのである。
私が知る限り、体内では炭水化物などがもとになったブドウ糖が、クエン酸サイクルでアデノシン三リン酸(ATP)に変えられ、このATPがエネルギーを生み出す。その仕組みを知りたくなったのだ。
ジェミニによると。ATPはアデノシンに3つのリン酸がくっついたもので、リン酸はマイナスの電気を帯びている。だから反発しあっているのだが、アデノシンにしっかりと捕まれているので身動きが取れない。ところが、そこに、水が入ってくるとアデノシンの捕捉力が弱まり、リン酸が1つずつ跳ね飛んでいく。跳ね飛んだリン酸が水と反応し、その際にエネルギーを生み出すのだそうだ。当然、出したエネルギーの分だけ質量は減る。
ま、確かに、こんなことを知っても実生活の役には立たない。面白いが、ただ知識欲を満たすだけだ。そこで止めておけば、ジェミニの事故は起きなかった。
私はふと考えたのである。であれば、クエン酸サイクルを刺激して、液中のブドウ糖をどんどんATPに変えれば、体重が減るのではないか? 気になる腹周りのブヨブヨを取り除けるのではないか?
そんな質問をジェミニにぶつけた。ジェミニは喜んで答えるばかりか、あるノウハウを伝えてきたのだ。
「食事前30分にトマトジュースを飲みます。リコピンはブドウ糖の吸収を抑えるだけではなく、クエン酸サイクルを活性化します。できれば、トマトジュースに大さじ半分のオリーブオイルを加えて下さい。リコピンは油脂に解けるのでリコピンの吸収量が4倍になります。そして暖めていただければ完璧です。大道さん、トマトジュースで貴方が気にしている腹周りの問題が解決します!」
私は翌日から、3度の食事の前にトマトジュースを飲み始めた。そして
「どれくらい続けたら効果が目に見えてくる?」
と聞いてみた。おおむね3ヶ月、という答えが戻ってきた。そうか、3ヶ月か。90日。飲み始めたら、900ccのペットボトルが1日で空になる。200円少々。月に6000円、3ヶ月なら1万8000円。膨らんだ腹を元に戻すのにそんなに金がかかるのか。
それでも飲み続けた。飲み続けながら、ふと疑問を持った。
トマトジュースのリコピンはブドウ糖の吸収を抑え、クエン酸サイクルを活性化するという。つまり、新しく体内に取り入れたブドウ糖には効果がある。だから、これ以上腹囲を大きくしないことにはなるのだろう。だが、私の腹周りを膨らませている中性脂肪は、すでに蓄積済みのものである。クエン酸サイクルを活性化するとこの蓄積済みの中性脂肪も燃やしてくれるのかな? クエン酸サイクルでATPになるのはブドウ糖だけなのに?
ジェミニが謝罪した。安っぽい健康雑誌みたいなことをいってしまった、と恐縮した。AIにあってはならない事故である。
えっ、じゃあ、トマトジュースを飲んでも腹周りは縮まないの?
それでも、懇切丁寧に答えてくれるのはジェミニの優れたところである。彼(彼女?)は、
「今度こそ大道さんの腹周りの絞ってみせます」
と新しい提案をまとめてきた。それは基礎代謝を上げることである。
①トマトジュースは大量の糖質をとる食事の前に飲めばいい。低糖質のパンやパスタの食事前には不要
②食事の前にかかと上げを50回
③食後はスロースクワット(4秒かけて体を持ち上げ、4秒かけて下げる。その姿勢を4秒保つ)をを5回。
④もも上げ運動(両手をたらしてひじを90度曲げ、手のひらを下に。ひざが手のひらに当たるまで足をあげる。左右各20回)
である。これで腹周りはすっきりするという。私は真面目に実行している。
昨日、更なるノウハウを伝えてきた。お腹を背中にくっつくほど引っ込ませ、そのまま30秒保つ、という運動が効果があるというのだ。なんでも、腹筋ではなく、内側にある筋肉を鍛えるのだそうだ。
エネルギーとは何かがきっかけになった会話が、私のウエストをすっきりさせる話にまでつながった。失敗してひたすら恐縮するAI、その失敗を回復せんとばかりに頑張るAI。
これを面白いと感じる私は、これからやってくる時代への備えができているのかな? ま、あと何年この世にとどまっていられるかは不明だが。

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