とはいえ、いま自動運転を研究する人々の多くは、認識、判断の難しさを機械学習で解決しようとしているようです。
機械学習とは、コンピューターに自分で勉強させよう、という技術です。プログラマーがあらゆることを予測し、その答までプログラムする記号的AIと違い、コンピューターが大量のデータを読み取って蓄積し、そこからパターンやルール、判断基準などを自分で見つけ出すのです。データ量が増えれば増えるほど学習は進み、賢くなり、これまでなかった事態に直面したときも、何らかの判断を下すようになります。
【注1】
「機械学習」は、この直後に「ディープラーニング(深層学習)」として決定的なブレイクスルーを迎える。膨大な走行画像やセンサーデータをAIに読み込ませてパターンを自動学習させる手法は、現代の全自動運転開発の不可欠なバックボーン(基幹技術)となった。
生まれたばかりの赤ん坊は、何の判断もできません。ただ欲求を伝えるだけです。この場合にはこうする、と自分で判断できるようになるには、かなりの時間が必要です。その間、人はたくさんの経験を積み重ね、学ぶわけです。言い換えれば、たくさんのデータを蓄積します。そして、経験がある程度積み重なると、経験したことがないことでも
「多分、こうすればいいはずだ」
と答を出すようになります。大量のデータをもとに判断力を身につける機械学習は人間の成長とよく似ているといえます。
機械学習は1950年代から研究されていました。しかし、膨大なデータを処理しなければならない技術であるため、コンピューターの計算能力がそれほど高くなかった間は主流になれませんでした。本格的に台頭してきたのは、コンピューターの性能が飛躍的に高まった20世紀も終わりに近づいた頃です。
【注2】
現在では、世界中を走る数十万〜数百万台の市販車から危険な場面や珍しい道路状況のデータをクラウドへ自動収集し、巨大なデータセンターのAIに「人間のドライバーの操作」を反復学習させる手法(テスラのFSDやWaymoの開発手法など)が確立された。地球規模で「経験データを蓄積して賢くなる」エコシステムが現実のものとなっている。
ネット上に、「スタック・オーバーフロー」というサイトがあります。プログラミングをする人たちが交流する場で、ここに「機械学習って何?」という質問が投稿され、次の回答が最も役に立ったと評価されたそうです。筆者もアクセスしてみましたが、残念ながら該当する質問・回答は見つかりませんでしたので、「ドライバーレス革命」から引用します。
基本的にはコンピューターに、データに基づいて予測や行動をしたり、そうした予測・行動能力を向上させたりする方法を教える技術を言います。その「データ」というのは、どんな問題を扱うかによって変わります。ロボットに歩き方を学ばせる場合には、ロボットのセンサーから読み込んだデータになります。こうして、ある入力に対し、正しい出力を返せるようにするのです。これまで見たことのない入力に反応できるようにするのが、多くの機械学習アルゴリズムの中心的課題になります。たとえばコンピューターに、道路で車を運転する方法を教えるとします。その場合、あなたの言う「データベース」を使うと、考え得る何百万という状況にどう対処すればいいかをいちいち教えなければなりません。その点、機械学習アルゴリズムは効率的で、異なる状況の類似点を学習し、どちらの状況に対しても同じように反応できます(うまくいけば)。
異なる状況の類似点と言っても、いろいろな場合が考えられます。人間にとって「ありふれた」ものでも、コンピューターにとってはそうではありません。たとえば、コンピューターのドライバーが、すぐ前を走る車がスピードを落としたら自分もスピードを落とさなければならないことを学んだとします。人間の場合、この車がオートバイに置き換わったとしても何も変わりません。私たち人間は、オートバイも車も同じだと認識します。でも機械にとっては、それが驚くほど難しいのです。データベースの場合、車が前を走っているときとオートバイが前を走っているときについて、それぞれ別に対処法を記憶しなければなりません。一方、機械学習アルゴリズムの場合は、車の事例から「学習」し、オートバイの事例へと自動的に一般化できるようになります。機械学習に関するこうした考え方を「パターン認識」と言います。パターンを認識し、それにどう反応するかをプログラムに教えるのです。
※アルゴリズム=問題を解決するための方法や手順。コンピューターで計算をするときの計算方法
【注3】
引用文中にある「車での学習をオートバイへ一般化(応用)する」というパターン認識の課題は、AIの画像認識性能の向上によってほぼ克服された。さらに近年では、ChatGPTに代表される大規模言語モデル(LLM)や生成AIの技術を応用し、「道路に落ちているダンボール」や「工事現場の特殊な案内板」など、未学習の状況に対しても人間のような「常識的な推論」を行って柔軟に対処する次世代の自動運転AI(End-to-Endモデル等)へと研究が進んでいる。

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