自動運転入門第9回
自動運転を支える技術⑧—車を操作する

何故か、私のパソコンに第8回の原稿がありません。第7回から突然第9回に飛びます。何らかの事故で消えてしまったのか、それとも私の番号の書き間違いか。いまとなっては分かりません。申し訳ありませんが、残っている原稿だけしかアップでできないため、今回は第9回としました。

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車が高度な知能を手に入れました。あとは、手足を使って車を操作するだけです。

あなたの車にはクルーズ・コントロール(CC)という機能がついているかもしれません。オートクルーズともいいますが、これを80kmにセットすると、あなたがアクセルを操作しなくても、車は上り坂でも下り坂でも時速80kmで走ります。車に積んだコンピューターがアクセル操作をするのです。長距離運転の負担を軽くしようと1958年、クライスラー社が実用化しました。日本ではトヨタ自動車が1964年、オートドライブという名前で使い始めました。

しかし、高速道路で80㎞に設定して走っていても、前の車が100㎞に加速したため車間が大きく開いてしまうことがあります。逆に、100㎞に設定していたら前の車が速度を落としたために車間距離が縮まってしまうこともあります。そうなれば、ハンドルを持つあなたがアクセルを踏んだり、ブレーキをかけたり、あるいは速度設定をやり直すなどの手間が必要です。

こうした欠点をなくそうと、CCは前の車との車間距離を一定に保つ機能を持ったアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)に成長しました。前の車との距離を測るレーダーやカメラが車に設置されており、車間距離が開けばアクセルを開き、車間距離が縮まればブレーキをかけて、前の車と同じ車間距離を保ちます。1995年、三菱自動車のディアマンテで採用したのが始まりといわれています。
車とは、走って、曲がって、止まるものです。ACCが実用化され、車は人間がいなくても、走って止まることができる能力を手に入れました。

さらに、レーン・キープ・アシスト・システム(LKAS)という機能が生まれました。道路に描かれた白線をカメラで読み取り、車が白線から離れようとすると自動的にハンドルが動かして、車が白線に沿って走るようにします。まだ未熟な技術で、あらゆる白線を認識するところまでは達していません。また白線が引かれていない道路もありますから、あくまで補助手段にとどまっているのが現状です。

しかし、ACCとLKASを組み合わせれば、初歩的な自動運転車が出来上がります。まだ白線が必要だったり、追い越しができなかったり、さらには複雑な交差点で、自分が守るべき信号はどれか、遠くの赤信号と前を行く車のストップランプをどう見分けるのかなど課題はたくさんあります。でも、この2つの装置で走ることができるように条件が整えられた限定的な場所なら、自動運転はすでにできるのです。

【注1】
ここでいう「ACCとLKASの組み合わせ」は、現在では「運転支援システム(レベル2)」として軽自動車を含むほぼ全ての新型車に普及した。高速道路や自動車専用道路では、車線変更や分岐・合流の自動化、手放し運転(ハンズオフ)まで可能となったが、責任主体がドライバーにある点や、一般公道(白線の不鮮明な道路や複雑な交差点)での限界については当時の指摘通りの課題が残されている。

 コンピューターの指令でアクセルやハンドル、ブレーキ、トランスミッションを動かすものをアクチュエーターといいます。走っている車は時々刻々と変わる状況に応じて、すぐに最適の操作をしなければなりません。だから車内のアクチュエーターには、常に大量の命令がコンピューターから送られてきます。
別の面から見れば、自動運転車にはコンピューターの命令を運ぶ回線が網の目のように張り巡らされます。網の目が複雑になればなるほど、ネットワークノイズ、つまり本来はあってはならない間違ったデータができてしまう危険性が増えます。コンピューターは

「ブレーキを踏め」

という指令を送ったのに、途中でネットワークノイズが加わり、指令が

「アクセルを踏め」

に変わってしまったら大事故につながりかねません。だから、回線の容量はできるだけゆとりを持たせることが大切になります。また、コンピューターネットワークでは常識になっているエラー修正機能も欠かせません。

【注2】
車内ネットワークの複雑化とノイズ対策、サイバーセキュリティの確保は、その後の自動車開発で最重要課題となった。従来のCAN(Controller Area Network)バスから、より大容量・高速な車載Ethernet(イーサネット)への移行や、二重系(リダンダンシー)設計、外部からのハッキングを防ぐセキュリティ規格の義務化が進められ、信頼性の向上が図られている。

 これまで9回にわたって、自動運転の研究がどこまで来ているのかを見てきました。自動運転の時代がもう目の前まで来ていることを実感していただけたとしたら嬉しい限りです。

群馬大学理工学部はすでに桐生市内の公道で実験を始めています。2020年には桐生市内を自動運転で走ることができることを目指しています。実現すれば、世界で初めて、自動運転ができる都市になります。その技術が世界中の技術者から注目を集めるのはもちろんですが、自動運転ができる世界唯一の都市には、自動運転を自分のビジネスに活用できないかと考える企業家、利用して新しいビジネスを立ち上げることができないかと意気込む起業家がたくさんおみえになるはずです。

私たち沼田屋タクシーは、桐生の経済を再興するきっかけづくりとしても、群馬大学理工学部の自動運転の研究に期待しています。

【注3】
当時、大きな期待を集めた「2020年桐生市での世界初の自動運転都市構想」だったが、沼田屋タクシーと群馬大学による共同開発や実用化は実現せず、中心人物であった小木津准教授も後に大学を離職している。
その後、日本の自動運転実証の舞台は福井県永平寺町(レベル4の移動サービス)や全国の限定区域でのグリーンスローモビリティ実験等へと移っていった。

 

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