06.06
2007年6月6日 新譜
ポール・マッカートニーという人は、ずいぶん素直に老いる人である。
彼の新作、 「追憶の彼方に Memory Almost Full」が今日発売された。が、CDの発売日とは不思議なものだ。その日に初めて売り出されるはずのCDが、前日の夕方にはCDショップの店頭に並ぶ。この業界では、発売日とは、売り出し日の翌日を意味する。
そんなことは、事情通の私は先刻ご承知である。で、昨日、帰宅途上でこいつを手に入れ、自宅に着くやいなや、聴いてみた。日付変更線の位置を考えると、世界で最も早くこのアルバムを聴いた100人に入るかも知れない。
記念すべきアルバムである。ロック史を変えたといわれる名作「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band 」で、彼は「When I’m 64」を歌った。1942年6月18日生まれでちょうど64歳のの彼が出したのが、このアルバムなのだ。期待した。
なのに、 その感想が1行目の文章である。
このアルバムで聴くポールは、
・声に艶と張りがなくなった
・音程が不安定になった
いや、それだけなら、老いてなお盛ん、と感服したかも知れない。こちとら、いまだに彼のファンであることには変わりないのだ。だが、実はもう1つだけ見過ごせない特徴があった。
・曲がつまらなくなった
思い起こせば、The Beatles解散後のポールには、たいしたアルバムがない。特にここ数作は、お義理にも褒められない作品ばかりだ。我が家でも、ほんの数回CDプレーヤーにセットされただけある。
ビートルズ時代のポールは、限りなく輝いていた。ビートルズ後半のリーダーは、ジョン・レノンではなく、実はポールであったともいえる。
その彼が、どうして?
彼が光り輝くには、 強烈な個性と才能を持ったライバルが身内にいる必要があるのか?
単に加齢で才能が枯渇してきただけなのか……。
私はこれからも、1ファンとして、
「今度こそ」
と期待してアルバムを買い続けるはずだ。それが、彼の老化を繰り返し確認することにならないよう願うばかりである。