2009
02.25

2009年2月25日 私と暮らした車たち・その31=最終回 BMW320iツーリングの3

らかす日誌

一昨夜、人生の大先輩2人と食事をした。もう10年来のお付き合いで、年に2回ほど定期的にお誘い頂く。ありがたいことに、うち1人は「らかす」の読者だ。
その読者が、席に着くなり宣うた。

 「いや、久しぶりに大道さんと会うので、念のために家を出る前に『らかす』を見てきたんだけど、最近あまり更新されてないね。それに、なんかヨーロッパの車ばかり出てくるのが続いて、正直面白くない。まだ続くの?」

まあ、最近私の身辺が落ち着かず、日誌の更新が滞っているのは事実である。それは謝罪せざるを得ないとしても、そうか、車の話は面白くないか。そうだろうなあ、別に車についての専門知識がある訳じゃなし、単なる印象記の羅列だもんなあ……。
よし、わかった。「私と暮らした車たち」は今回で終わりにする!

 

BMW320iツーリングにはオプションで木目調のパネル、フロントヒートシーター、UVカットフィルム、それに初めてカーナビを取り付けた。レザーシートは端から考えもしなかった。
我が家にBMW320iツーリングが到着したのは2006年5月末であった。初めて日本国土に陸揚げされたBMW320iツーリングの1台で、まだ新車発表会の前だった。ひょっとしたら私は、現行のBMW320iツーリングを日本で初めて所有した1人かも知れない。

以来3年近く乗り続けている。走行距離は1万8000km弱。1年間に6000kmほど走ったことになる。週末に妻が出かける買い物の運転手を務めたり、4kmほど離れたところに住んでいる次女と瑛汰の送り迎えをさせて頂くのが主な使い道の割には、結構走っているものである。

いい車だ。
ランフラットタイヤの乗り心地を心配したが、心配するほどのことはなかった。やがてやってくるタイヤ交換時の金銭負担は相変わらず心配だが。
木目調のパネルにして正解だった。最初の設定であるアルミ調のパネルに比べて車内に高級感と落ち着きがある。
シートヒーターは、温度が3段階に切り替えられるようになった。318iツーリングではONとOFFしかなかったから、ONとOFFをしょっちゅう切り替えていないとお尻が火傷しそうに熱くなった。新しい車ではそんな心配はない。
初めて取り付けたカーナビは、確かに便利である。できれば、もう少し頭がよくなって欲しいと思うが。
キーから、金属の突起が消えた。見た目は、プラスチックの薄い箱である。おかげでポケットに入れて持ち運ぶのが楽になった。
心持ち、燃費もよくなったような気がする。目分量だが、高速道路で1リットルあたり13km前後、買い物や瑛汰親子の送り迎えだけだと6km強、少し遠くまで出かけると8km程度というところである。

購入時、長男は

「えーっ、出始めの車を買うの? 初期ロットは不具合が多いんだぜ」

と警鐘を鳴らした。私にもその程度の知識はあったが、購入時期は他律的に決まってしまって、私にはいかんともする術がなかった。

「故障するのなら、保証が付いていいる3年以内に」

と願い続けたが、今のところ不具合はない。あたりがよかったのか。
もっとも、まもなく3年の保証期間が切れる。その後のことは心配だが……。

そして、318iツーリングに比べて確実によくなった点が2つある。
バックミラーが自動防眩ミラーになった(オプションだったかな?)。外が暗くなってもバックミラーを調整する必要がない。これはありがたい。
シート形状が改良されたように思う。メジャーで測ったわけではないが、座面が少し長くなったのではないか。膝に近いところまで支えてくれるようになったので、座っていて楽である。318iツーリングで唯一不満だった点が、解消された。

と、決しておかしな車ではない。充分に満足しているのだが、2台の車を比べれば、318iツーリングの方が、運転して楽しい車だった。だから、私の318iツーリングへの愛は相変わらず消え去らない。

走りの味付けが変わってしまったためだ
318iツーリングは、軽快な走りが何よりの魅力だった。アクセルをほんの少し踏めば、車は脱兎の如く飛び出した。高速道路での加速も充分満足できた。1.5トンほどある車両重量が嘘ではないかと思えるほど、キビキビと走った。

比べて、320iツーリングは、良くいえば走りが重厚になった。いかにも高級車という感じさえする。だが、裏を返せば、鈍重な車になった。もちろん、凡百の車に比べれば出足も加速もはるかにいいのだが、318iツーリングにも乗った私には、アクセルを踏むたびに、車が

「ヨッコラショ」

とかけ声を掛けながら、ノッソリと動き始めている感じがする。

「これは、どこかで乗ったことがある車と同じ味だ」

と考え始めてすぐに思いついた。318iツーリングに乗っていたころ、定期点検でドック入りした愛車の代車としてやってきた525iにそっくりだったのである。
その525iは製造から10年以上たっている古い車だった。重い車体を大きなエンジンで駆動しているような重厚感があった。軽快に走る318iツーリングとは、明らかに世界の違う車だった。
320iツーリングの走り方が、この525iと同じ味だった。

「同じメーカーが作るんだから、似通うのは当たり前ではないか」

とおっしゃる方もいらっしゃるかも知れない。
だが、かつてBMWの3、5,7の各シリーズは、まったく性格が違う車だったと読んだことがある。この中で3シリーズは、走りの楽しさをとことん追求した車だといわれていた。その魅力のため、5出も7でも買える資力のある人が、あえて3を選ぶことがあるとも書いてあった。なるほど、318iツーリングは楽しい車だった。
だが、走りが重厚になった現在の3シリーズは? 悪くいえば、小型の7シリーズ、5シリーズになってしまったのではないか?

かつてトヨタ自動車は、「いつかはクラウン」のキャッチコピーで車を売った。最初はカローラでいい。次はコロナにしましょう。ゆとりが出たらマークllに買い換えて、エグゼクティブになったと自覚したら、やっぱりクラウンに乗りましょうよ。
価格が安い、従って利幅が小さい大衆車を買った客を、いずれは価格が高く利幅も大きいクラウンに誘導する戦略である。そのためには、それぞれの車の性格が違ってはいけない。乗り換えた客が戸惑うからである。マークllは少し小さなクラウンでなくてはならないし、コロナは少し小さなマークllであり、カローラは一番小さなクラウン……。

まあ、そんな戦略もあるだろう。カローラに乗って、クラウンを最終目標に頑張る客がいる限り、間違った戦略であるとも思わない。
ただ、私は嫌いである。サイズと装備の豪華さが違うだけの車がたくさんあったってちっとも面白くない。それぞれ個性の違う車がたくさんあった方が、車選びも楽しいではないか。どの車を選ぶかが、財布の中身だけで決められてしまう世の中は、味気ない。

で、である。いまの320iツーリングに乗りながら、私はついつい考えてしまう。

「BMWもトヨタ自動車になりたいのか? 3シリーズは入門編で、もう少しお金が貯まったら5シリーズに載り、やがては1000万円を超える7シリーズを売りつけたいと考えているのか? 冗談じゃないぞ!」

と悪態をつきながら、私はこの先10年以上、320iツーリングを乗り回すはずである。