2021
08.05

モノシリックICによる前段直結差動プリアンプの2 2

音らかす

ネオンランプが点灯しているのを確かめて、電源から外し、プリント基板の取りつけにかかる。これもわけはない。50mmのボルトを、シャーシの底から突っ込んでロックワッシャーシナットを使って固定する。2本の電柱が建った格好になる。

まず、20mmのプラスチックスリーブ(茶色)をそれぞれの電柱にすべり込ませて、その上にフラットアンプ基板(1974-8379)を入れる。ナットを使って仮り止めしておいて、電源用プラスマイナスアースの線及び入力(シ―ルド線)、出力(リード線)用の配線を済ます。この時には、ローブーストスイッチが取りつけられているので、そこからのリード線を、それぞれNFB用フックにひっかけてハンダづけすれば終わり。

仮り留めしたナットを外して、もう2本のプラスチックスリープを入れて、その上にイコライザ用基板(1974-7375)をはめ込み、ナットを使って固定する。三階建のベランダみたいな格好になる。

まず、フラットアンプのプラス、マイナス、アース線とつなぐ。これを忘れると、イコライザ段に、電源が入らないから、PHONOが働かない事、請け合いである。

こちらの方はNFB回路が組み込まれているので、入出用結線を、左右チャンネル配線するだけで終わりである。

これで作業は全部オシマイ。電子プラモデルと云っても良い位作り易い。プリント基板なんてものは、全く便利良く出来たもので、誰が発明したのか知らないが、 トンネルダイオードより先にノーベル賞をもらえなかったのが不思議な位である。

集積回路であり、しかもプリアンプである。調整する箇所は一つもない。

次のように各半固定抵抗をセットするだけで、いきなり音を出す事が出来る。

①入力用レベルセット(VR-1、VR-2及びVR-3)を全部左いっぱいに回しておく。この時には、キャビネッ卜の底にあたる蓋を外しておくのは言うまでもない。

②出力用レベルセット(VR-6)も左一杯にまわしておく。

③ボリューム・バランスは中点。

④モニター及びローブーストスイッチは左へ倒す。

⑤当りまえの事であるが、 ファンクションは、PHONOにする。そして装置につなぐ。聴き慣れたレコードを鳴らしてみる。勿論、音は出て来ない。出て来たら誤配線である。
VR-6を、ごく静かに左右共少しづつ上げて行く。本機のゲインがびっくりする程大きいので、いきなり回すと、スピーカがフッ飛ぶ位の音が出るので、くれぐれも静かに回す事に注意したい。
普段華いている大きさの音になり、左石が揃ったところで、ベイントロックする。

測定器—と言っても、オーディオジェネレータとミリバルだけであるが—を持っている人は、こんな原始的なレベルセットをしなくてもPHONOの入力からプリアンプの出口迄のゲインが、ボリューム、バランスを中点にした状態で、24〜26dB(1,000Hz)になるようにセットしておけば、大低のスピーカを、普通の大きさで鳴らす事が出来る。但し、これは、本線(〔本機」の誤り?)とペアーになっているクリスキットミニP-1及び、クリスキットP-35のゲインが30dB(33倍)とつないだ時の話で、能率のあまり良くないパフーアンプの場合は、話は別である。

これとても、測定器も持たないで、実体図だけを頼りに、あれこれ真空管を買って来る、いわゆるマニアになる前に、せめてジェネレータとミリバルだけでも持っておれば、あまり鈍感な(能率の悪い)パワーアンプを作ったり、逆に無意味に敏感な、無帰還アンプなどを自作する以前に、記事を読んだ時点で見当がつくようになるのだが……。

雑誌の製作記事に、そのゲインがいくら、と書いてあっても、測定器を使った事がない者は、見ようともしない場合が多い。その上、あまリアテにならない製作記事も良くあるようなのであえて注意をしておく。

こんな方々の為に、あまり費用をかけないで、かなり性能の良い測定器の作り方を本項にひき続き、取りあえずオーディオジェネレータと、 ミリバルについて、原稿をまとめているので、大方の読者の役に立つと思っている。

PHONOが終わったら、チューナ、テープデッキにつないで、それぞれ用の入力レベルセット、VR-1、VR-2、VR-3をまわして、(こちらの方は、あまりこわごわ回さなくても良い)適当な音量になった所で底ぶたをすると、全部の工程が終わりである。

アースラインのまとめ方

前回の回路編の記事をまとめている折りには、本機の試作品を測定したり、鳴らしたりするのに、作業の都合上、電源部を外付けの状態で行っていた為に、ノイズが殆どゼロであったので、考えつかなかったトラブルにぶつかった。何分、出来るだけコンパクトにという事で、世界最少といっても良い位の小型のキャビネットにコントロールアンプの全回路をほうり込んだ上に、電源トランスまで同居させるのである。今になって考えれば至難のわぎである。

予期していたように、トランスを乗っけた途端に誘導ハムが出た。そこで、そのハムを取り去る為に、アースラインの取り方を一部変更したので、その点について説明を述べる。尚、この為に、実体回路図を書き直したのでそれを見ながら、次の項目を読むと解り易い(第4図参照)。

第4図

実体図

①プリント基板(フラットアンプ、1974-8379)の入出力端子にアースターナルを設けたので、バランスボリュームから、この基板へつなぐシールド線は、入力側でシールドの方も、ラグ端子ヘハンダ付けする。

②この基板の出力側とレベルアッテネータ(VR-6)とは、単線で配線すると書いたが、これもシールド線を使つ(「って」の誤り)両端共、アース結線を行う。

③電源基板からのアース線は、アウトプットターミナルのアースラインを通って、一点アースポイントにつなぐように述べたが、それを直接一点アースポイントにつなぐ。(この線は単線で良いのだが、アンプ作りに慣れてない方々は、30芯位のヨリ線の方が無難である。)

④RECORDING OUTPUT と TAPE入力とをつないであったアース線は切り取って、入力側と出力側のアースラインは、それぞれに独立させる。

このように配線すると、電源部外付けの時と同じ状態まで誘導ハムを取り除く事が出来る。

組み立て作業には、関係のない事であるが、以上の改良を行うと同時に、トランスの材質にも手を加えてもらって、新しく作り直した。お気付きのように、パーツセットの売価を決めてしまった後で、 このようにコストアップになった事を、真面目に引き受けてくれたトランスメーカーや、ユナイトの方々の御好意に紙面を借りて感謝したい。

何分、非常に小型のシャーシに通常コントロールアンプが備えている主な回路の全てを、ほうり込んで、しかも電源同居というむずかしさをやってのけようと言うのである。並のトランスでは、透導ハムを除く事は、テスタ一丁で作り上げるアマチュアには無理である。

どなたが作っても、同じ特性の物が得られるというクリスキットの今迄の実績をこわしたくなかったので、かなり割高にはついたが、 カットコアーの電源トランスを誂えた。写真5のように、今迄に見られない格好の物であるが、お陰でハムノイズは、ほとんど殺してしまうことが出来た。