2021
09.17

みんなそんなに遊びたいか?

らかす日誌

本日、床屋で聞いた話である。

コロナの影響で、群馬県も緊急事態宣言下にある。不要不急の外出は控えよ、というが、不要不急の外出をしようにも、飲み屋はやっていない。カラオケも閉店中。

「これじゃ、不要不急で出かける先なんてないじゃないか!」

というのが実体となった社会での出来事である。私の髪を刈ってくれた彼女は

お客さんの話

として私に伝えた。

さて、緊急事態宣言下でも、遊びの虫は蠢くものらしい。
ここに4人の男女がいた。男性2人、女性2人である。彼らは、体内で蠢く遊びの虫に脳髄まで犯されたらしい。何とも我慢がならず、とうとう夜外出し、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎをしようということで話が纏まった。
だが、飲み屋もスナックもカラオケもやっていない中、何処でどんちゃん騒ぎをする?
ひとり、知恵者がいたらしい。

「おい、ラブホに行こうぜ。ラブホにはカラオケもあるし、食いもの、飲み物だってとれる」

この知恵者の性別は聞き逃したが、ここではとりあえず男性であった、と仮定している。別に男の方が知恵が回るものだなんていう男女差別をするつもりはないが、このような悪知恵は男性に宿りやすいものだと、何となく思ってしまったからである。ん、これは先験的な差別か?

ま、それはそれとして、彼ら4人は遊び心に追い立てられるように、一路ラブホを目指した。ラブホお受け付けが言った。

「えっ、4人様で一部屋ですか? それは……。当ホテルは一部屋の上限を3人と決めておりますので、4人様はお断りするしかないのですが……」

話がここまで進んだ瞬間、私は衝撃を受けた。

「えっ! ということは、3人でラブホを利用する連中が結構いるのか?」

3人って、男ひとりに女ふたり? それとも男ふたりに女ふたり。いずれにしても、どのような痴態が繰り広げられるのか?
この衝撃を、私は話の最後まで引きずることになる。
だが、話を続ける彼女は、この衝撃的な事実には全く心を動かされた風がなく、淡々と話は続いた。

「それでねえ、折角ここまで来たのに、このまま帰れるか、ってなっちゃったんだって……」

その4人は、すぐ近くのラブホに転戦した。ラブホとはおおむね密集するものである。転戦先では4人様でも大丈夫だという。ふむ、2組の男女が一つの部屋で、か。これもなあ……。
部屋に入った4人は、酒を注文し、おつまみを頼み、飲みまくって、歌いまくった。

「ちょっと待って」

とここで声をかけたのは私である。

「ラブホだよね。カラオケ屋じゃないよね。ラブホで酒とか食いものとか用意してくれるの?」

ラブホとは、特殊な目的のために使う施設である。酒を飲みたくてラブホに行く人、腹が減ったのでラブホに行く人、そんな人がいるか?
しかも、である。ホテル側が

「はい、解りました」

と注文を受け付けたということは、そのような目的でのラブホを訪れる客がかなりいることを示している。月に数回、そんな「目的外」の注文をする客がいても、ホテル側が酒や食いものを常備するとは思えないではないか。俺、時代に取りのこされたか?

いや、私の髪を切りつつある彼女の驚きは、そこにもなかった。

「それでね、大道さん」

ここからが彼女が驚いた事実である。

「4時間ぐらい遊んだんだって。それで、さあ帰ろうか、と支払いをしようとしたのよ。いくらだったと思います?」

さて、私はラブホ評論家でもない私は、ラブホの料金体系には詳しくはない。国道などを走っていると、時折

2時間:3800円
お泊まり:7800円〜

などという看板を目にして

「そんなものか」

と利用する当てもないまま知識だけを仕舞い込んでいるのが私のデータベースである。

「だから、まあ、酒代、食いもの代含めて、1万5000円? せいぜい2万円だろう。部屋は一つしか使ってないんだもんね」

と答えた。

「そう思うでしょ。ところがね、6万いくら請求されたんだって」

「えっ、4時間で6万円?」

「そうなのよ。6万何千円よ。私、びっくりしちゃって」

これが彼女のびっくりポイントである。

何でそこに最大の驚きを示すの?
とも思う。
だが、あっけらかんとした驚きの表情を見ていると、3人連れの客を受け入れるラブホに腰を抜かしそうになり、酒や食いものを準備して客を待ち受けるラブホに口をあんぐり開けそうになった私の感性が、なんだか凄く貧弱に思えてきたのも事実である。ひょっとしたら、彼女の方がまっとうな判断力を持ってる?

にしても、である。3人でラブホに行って何をするんだろう? どんな風にするんだろう? どんな3人がするんだろう?
そんなことが気になってならない私は、やっぱり時代に取りのこされてしまったのか??

なお、以上の出来事の現場は高崎市らしい。私の住む桐生でなかったことに胸を撫で下ろしつつ、でも、なんだかモヤモヤしたものを抱えながら、念の為に書き加えておく。