01.23
がんと闘う食事とは。
放っておけ。
といわれても、私の前立腺にはガンが巣くっているのである。確かに、前立腺がんは進行が遅く、75歳を過ぎると治療を見合わせるとも聞く。つまり、がんが死をもたらす前に、全身の器官が次々と寿命を迎え、いわゆる老衰死にいたることが多いのというのだろう。
が、である。全くお呼びでないがんに居座られるのは気分が悪い。何とかなるものなら何とかしたいと思うのは人情である。
先生、あなた、本当に放っているの?
「よろしい。そこまでおっしゃるのなら私の研究成果をご披露しようではないか!」
とはS院長はいわなかったが、彼のがんとの戦い方を開陳していただいた。
まずは、食事である。
「まず、甘いものは絶対に取ってはいけません。砂糖はがんの食事なのですから」
ほう、そうなのか。がんは甘党か。幸い、私は甘いものを好みません。菓子類はほとんど口にしないし、料理に砂糖が使ってあるのも嫌いです。
「そうですか。それは良かった。次に小麦を排除します。つまり、パンや麺類は一切口にしない。私は10年前からラーメンを食べていません」
私はパン類は好みません。麺類はよく食べますが。でも、何故?
「小麦粉は消化されるとブドウ糖になります。これもがんの餌です」
じゃあ、ご飯は?
「小麦に比べれば、まだましです。でも、私は一切食べません」
私も、食べる量は随分減りました。若い頃は2杯。3杯は当たり前でしたが、いまはご飯茶碗に軽く8分目ほどです。
「その程度なら、まあいいでしょう」
だけど、ブドウ糖は脳が唯一使える栄養素でしょう。それを絶ったら脳はどうなりますか?
「あ、ブドウ糖が足りなくなると、体は蓄えた脂肪からケトン体を作ります。脳はこれを栄養素にするので心配いりません。それにケトン体には抗がん作用があります。がんの糧道を断ち、がんと闘う部隊を作る。二重の意味でいいのです。私は2周に1度(だったと記憶するが不確か)絶食しています。はい、2日間、水だけしかとりません。体にケトン体を作れ、と促すわけです」
絶食! 私にはできそうにないなあ……。
食事に関してはその程度でよろしいですか?
「乳製品は一切ダメです。牛乳もヨーグルトもチーズもバターも止めて下さい。そもそも乳製品は前立腺がんの原因といってもいい危険な食材です。女性ホルモン、成長ホルモンがたっぷり入っていますからね。女性には乳がんと卵巣がんを引き起こします」
えっ、戦後日本人の体格が良くなったのは乳製品を豊富に採るようになったからともいわれますが。
「これに関しては論文も出ています。2021年に日本で出た論文では、11万人を対象にした検査では、前立腺がんを発症した412人の乳製品消費量を調べたところ、明らかな相関関係があったと結論づけています」
ふむ、乳製品を断とう。これまでもあまり口にしてはいなかったが。
食べ物に関するS院長の指摘は、その程度だった。