04.02
6CA7PPパワーアンプの製作 改良編 3
試運転
新品である限り真空管のヒータが断線している事は、まずありませんが、大した手間でもないので、一応テストしてみます。
まず、最初はC電源のテストです。真空管はまだ差し込みません。B電源のダイオ~ドは、トランス側を浮かせておきます。テスタのリード線にクリップを使って、出力管の5Pとアースの間のマイナス電圧を計ります。バイアス用半固定抵抗B10kΩ(VR4)は左へいっぱいまわしておきます。B5kΩは大体中間位までまわしておきます。アンプのスイッチを入れます。すぐに、100V前後のDCボルトレンジにセットしたテスタが、−40V位まで振ります。もし振らなかったり、大きく値が違って出たら誤配線。すぐにスイッチを切って下さい。うまく振りましたら、オナグサミ。このあたりに、誤配線のない証拠です。しばらくそのままにしておいて、炊事用のゴム手袋をはめて、そのあたりの部品を少し強い目に動かして下さい。もしテスタが大きく動いたら、ハンダ付け不良。そんなアンプは音楽を聴いている最中に、いつか出力管がとんでしまって、音が出なくなり、 ヒューズもとんで、またやり直し、てな事になります。
C電源のテストが終ったら、電源を切って球を差し込みます。DS1Kだけを片側はずしてあるのを確かめて、スイッチオン。多少無駄なテストですが、球が四本とも灯が入っている事を確認します。
これで,テストに全部オシマイ。いよいよ本番テストです。もし、出力管切り換えスイッチが間違っていると、発振して、スピーカからものすごい音が出る事になりますので、¥200位の安物のスピーカをつないで、本番テストを行います。
- B250kΩ(VR1)は全開にします。
- B5kΩ(VR2)はドライバーの先で、大体中点、に合わせます。(ACバランスは, オーディオ・ジェネレータと、バルボルのある方はやはり合わせた方が良いのですが、 どうせ、家庭では150~300mW位しか、鳴らせませんので、ACバランスが少し位くずれていても、全然音質には影響ありません)
- B10kΩ(VR4)はとりかじいっぱい
- B5kΩ(VR3)はほぼ中点に
- B30kΩ(VR5)はテスタで、8kΩにセットします。精密級固定抵抗を代入したほうが、測定器なしで作る時には、安全だと思います。
- DS1Kをハンダ付けします。
これで準備完了ですので、シャシをおこしてからスイッチを入れます。1分位で出力管のプレート電流は完全動作に入ります。スピーカからサーと言うさわやかな音が出て来たら、完成です。このサーと言う音は抵抗ノイズで、本機をプリアンプにつなぐか、入力ピンをショートさせるとびたりと止まりますので……(しかし、電源を切るか、スピーカをはずして置いて、このめくらピンを差し込まないと、スピーカがバリッと、びっくりするような音を出しますので、御注意。)
このようにして、入力をショートさせると、こわれているのではないか、と思う程、スピーカから何の音も出て来ません。試みに初段管のシールドケースを外して、球を指ではさんで見て下さい。今度は、プーン。
調整と測定
パワーアンプの場合は、素人が組み立てた場合、その調整が大変だと言う事ですが、新しく設計したり、アウトプットトランスなどを違うものを使ったりした場合は別ですが、本機は現在までに6台同じものを、友人たちと生上げましたので、位相補正などは本機の通りに仕上げれば、オシロスコープなんか全く不用です。
従って、調整といってもすこぶる簡単で、テスタで充分です。まず、カソード電圧用メータを見ながら、B10kΩ(R4)を静かに右へまわします。メータが100mAを差したらストップ。トランスの間にある陸軍端子を使って、DCバランスを取ります。
次に、 テスタを120-150V DCレンジにして、6267のプレート電圧を計ります。100Vより大分下っているはずです。テスタを当てたまま、B250kΩ(VR1)を、きわめてゆっくりまわして行きます。遅れ気味に電圧が上がって行きますから、 100Vになるまで合わせます。そしてV2のカソードを計れば106Vになっていますので、これテストは全部終りました。
ステレオアンプは、音楽を聴くための、つまり表題に書きましたように、ォーディオリスナーのためのものなのですが、なかには,測定器を通して、目で見なければ落ちつかない方も大分おられるようです。『私は,耳の方は不確かですが、日の方は自信がありますから…』てな事をおっしゃる方々が、私の知り合いのなかにもおられます。つまり、“ステレオアンプなんてものは、目で見るもので、音楽なんぞ聴いている暇がありません”というわけです。もっとも、雑誌に発表する限り、データは不可欠です。
まず、波形を眺めます。第11図がそれです。まことに結構。文句のつけようがありません。オシロスコープ(Heathkit I O-18)をつないだついでに、16Ω負荷及び無負荷の状態での安定度を調べたのが、同図の下にならべてあります。
ついでに述べておきますが、無負荷で0.5μF発振しなければ良いと考えるのは間違いで、 0,01μFから一段ごとに0.47μFまで全部のコンデンサによるテストが必要です。少しでも安定度が足りないと、例えば、0.067μFだけが発振するという事があります。私の使ったコンデンサ・ボックス(Heathkit IN-47)及びコンデンサディッケ―ド(Hcathkit IN-27)は、このテストに非常に便利です。本誌4月号の183頁に出ています。御参考までに。
周波数特性は、グラフに書いたのでは明細がわかりません。重箱の隅をほじくりたい方のために、5 Hzから500,00oHzまで測定したデーターが、第3表です。グラフに取っていただければ、その傾向が良くおわかりになると思います。13Hzから58,000Hzまでプラス・マイナス1dBに入っていますので、プリアンプで20Hz~30Hzあたりより上下を切らなければならないほどの広帯域です。ピークは高い方にも、低い方にも見られません。
SN比は、私共の持っているミリバル(トリオ106F)位の品物では一寸読みにくいのですが、0.4mV(16Ω及び0.2mV(8Ω)以下です。夜半に、ウーハのついているサランネットに耳をびったり当てても、何も聴こえてきません。友人のうちで一人だけ、片側から、パワートランスのウナリがごくわずか聴こえましたが、トランスのボルトをしめ直して止りました。
最後がダンピング・ファクタです。4月号にダンピングファクタは10位を目標にと書きました。誤解があるといけませんので、少しこの事についてふれてみます。ダンピングファクターは多ければ多い程良いというものではありません。大体10位が、普通のスピーカのために良いという事で、 トランジスタ・アンプなど、45なんて数値はザラです。こんなアンプで、例えばJBLのLE8Tなどを鳴らすと、音がかたくてどうもいただけません。そのスピーカの使用説明書には、DFの高過ぎるアンプには、負荷抵抗を入れて調節するように示してあります。マランツの8Bの取り説にも、ダンピング・ファクタをいろいろに変える方法が書いてあります。話が横道にそれましたが、本誌(機?)のダンピング・ファクタは6.7と出ましたので、ついでに示しておきます。
耳のうるさい連中に集ってもらって、ヒアリングテストをしてみました。ラインアップは、第12図です。
前回のアンプとの音質の差はまずわかりません。出力管とアウトブット・トランスで音質の大半がきまるという証拠だと思います。12AU7に変えたせいかも知れませんが、前回のより金管楽器の歯切れが良くなっているのに気付きました。トランジエントが良くなったのかも知れません。
cd
前にも書きましたように、私はアンプ屋ではありませんので、自分の家で聴く音楽の音を少しでも良くする事がその目的で、現在、このアンプが決定版として6月10日に出来上がってからかれこれ1カ月,毎日1時間半位づつ聴いていますが,大いに満足しています。例によって、本機に関して何でも御質問下さい。かならず解答します。