わが家は今年、よく西瓜を食べた

これほど長く西瓜を食べ続けたのは、今年が初めてである。

記憶によれば、西瓜は3月中ごろから店頭に並ぶ。最初は小玉西瓜で、桐生の隣、太田市薮塚町は小玉西瓜の名産地だ。だが、いくら店頭に置かれているからといって、まだ冷気が残る3月に冷たくした西瓜にかぶりつく気にはならない。

購入を始めたのは確か5月の連休が明けた頃である。小玉西瓜一玉、確か2000円少々。これを持ち帰り、半分に割って切り口をサランラップで押さえ、冷蔵庫に入れる。これを毎日の昼食のデザートとして、妻女殿と2人で4分の1ずつ消費する。毎日のデザート費が5、600円になる。
確か7月になると大玉が出回り始める。九州は熊本県植木町も西瓜の名産地で、ここの大玉は確か5月から市場に出る。行きつけの果物店で

「植木の西瓜が欲しいんだけど」

と声をかけたが、

「仕入れたいんですが、いまの卸価格からすると一玉5000円ぐらいになってしまいます。いくら何でも高すぎでしょう」

と仕入れてくれなかった。ま、仕入れてくれたとしても5000円の西瓜に財布を開いたかどうか。声をかけた義理で1回ぐらいは買ったかも知れないが、一玉5000円は年金生活者にはつらい。

大玉西瓜がわが家に来たのは確か7月である。最初は3500円ほどしたが、やがて3000円前後に落ち着いた。
大玉の西瓜も、持ち帰ってまず半分に切り、サランラップで切り口を押さえる。昼食後に食べるのは大玉の場合8分の1である。3000円として計算すると。毎日のデザート費は375円になる。小玉西瓜より安くつく。しかも食べる量は小玉西瓜より多い。

こうして5月の連休明けから、西瓜を毎日食べ続けた。いま冷蔵庫には、おそらく今年最後になるであろう西瓜が8分の1入っている。これを明日のデザートとして食べる。

「おいおい、あんたそんなに西瓜が好きなのか?」

と突っ込みを入れたくなる方もいらっしゃるだろう。

「いくら好きでも、毎日西瓜とはね。飽きないか?」

ともおっしゃるかも知れない。

そう、私は西瓜が嫌いではない。だが、毎日西瓜を食卓にのぼせたのはそのためではない。妻女殿に食べさせるためである。
最近の妻女殿はきわめて食が細い。私の半分でも食べてくれれば安心するのだが、5分の1も口に入れれば御の字である。それでいて

「痩せちゃった」

などという。だから、わが家では食事時は喧嘩の時間でもある。

「もっと食え」

「食べられないんだから仕方ないでしょ」

「食わなきゃ死ぬぞ」

「血液検査では足りない栄養素なんてない」

「バカヤロー」

その妻女殿が出したものはすべて食べるのが西瓜なのである。もちろん、西瓜で摂取できる栄養素は限られている。ジェミニによると

水分:約90〜92%
炭水化物(糖質・食物繊維):約8%
タンパク質:約0.5%
脂質:約0.1%
灰分(ミネラル等):約0.4%

といったところである。西瓜をどれほどだべようと、必須栄養素が賄えるわけではない。
それでも、

「少しでも多くの食料を食べさせなければ」

というのが私の思いである。西瓜は、たまたま妻女殿が残さずに食べる食品であったに過ぎない。

というわけで西瓜の絶える日はわが家にはなかったが、トラブルはあった。

「なんで西瓜ばかり買ってくるのよ。もったいないじゃない!」

と妻女殿の怒りが私に向かったのは、確か7月末だったような気がする。西瓜を食べ続けて3ヶ月ほど経っていた。そういえば、私は西瓜を買い続ける理由を妻女殿に話していなかった。いや、話す必要はないと思っていた。必要なことは黙って実行するものである。わざわざ口に出して説明するものではない。
しかし、この時ばかりはいわざるを得なかった。

「出したものをお前が残さず食べる唯一のものが西瓜だからだ。少しでも多く食べないといけないと思ってな」

その西瓜も、多分明日で終わりである。まあ、明日の午後、果物屋に行って西瓜があればまた買ってしまうとは思うが、9月も中旬の後半である。もうないだろうなあ…。

コメント