04.21
オーディオリスナーのための高性能プリメインアンプ メインアンプ部製作調整編 1
前回で全段直結差動OCL、純コンプリメンタリー回路採用のメインアンプの回路を紹介しましたので、いよいよ製作にとりかかることにいたしましょう。ケースなどはすでに完成しているわけですからプリント基板が出来上れば、八分どうりは完成です。今回は製作のポイントと調整テクニックを一気にお話いたしましょう。なおメインアンプ部の回路図は7月号95ページを参照下さい。
メインアンプの製作
プリアンプと違って、パワーアンプの組立ては、比べものにならない位簡単です。プリント基板にしても、部品の数もはるかに少なく、両チャンネルの部品を基板に取りつけるのに、 2~3時間もあれば充分ですので、夕食後一晩か、二晩で仕上ってしまいます。第28図が、そのプリント基板のパターンと部品配置図です。
使用部品も、ほとんどが基板上についてしまいますので、あらためて示す必要もないかも知れませんが、第4表にその一覧表をのせておきます。
回路編で述べましたように、スピーカ・ターミナルを完全に0ボルトに合せるためには、精密級の抵抗体を使った方が無難です。ヨタな部品を使って、後でトラブルを出すよりは、かえって安上りだと思います。手間の方もさる事ながら、トラブルにぶつかるのは全く不愉快ですし、精神衛生上あまりよろしくありません。
ダイオードは、1D-10には、時々不良品があるように聞きましたので、NECのF14Aを選びました。試作機が4台、本機の分と合わせて、30個ばかり使用しましたが、不良品はありませんでした。もし、どれかが不良品だと、原因不明のトラブルが出たり、ドライバーの石のベースにつながっているダイオードが断線していたら、Q4の石を飛ばしてしまいますので、取りつける前に、テスタで当って見る位の注意は無駄ではないと思います。
抵抗も、G級(2%)だと、メーカーで一本づつ検査してありますので、不良品は絶体にといつて良い位ないと思いますが、1.2kΩと2.2kΩとの勘違いがよくありますので、コード表で読みとるのとは別に一本づつ、テスタで当るのが一番確実で、 しかも、カラーコードをついでに覚えられるので、この方法をおすすめします。
カラーコードの覚え方について、或る人にきいたので、あまりうまいえい方(やり方?)ではないと思いますが、
0:黒いレイ服
1:茶を一杯
2:赤いにんじん
3:燈(第)三の男
4:黄四(岸)恵子(きじめんの方が少しはまし)
5:緑(みどり)五(子)
6:青二才、六(祿)でなし
7:紫(むらさき)七(式)部
8:灰(ハイ)八(ヤー)
9:九白(くしろ=釧路)
何とも、あまり語呂も良くない文句ですが、 富士山麓にオーム鳴く、2.23620679=√5みたいに、頭が良くて語呂の良い口調を御存じの方は教えて下さい。
第5表がその読み方です。第3番目のバンドは、10の何乗と読んだ方がわかり良いと思います。例えば、黄色が4ですから、10の4乗で、0四つ。黄紫黄で470,000、つまり470kΩという見合です。今後は全部の抵抗にカラーコードがつくようになると思いますの(で)、エレキに興味を持っておられる方はいづれ必要になりますので、覚えておいた方が便利だと思います。
第29図でおわかりのように、0.5Ωはセメント抵抗を使いました。本来はメーカー製アンプなどで、万一焼けた時などに、巻線抵抗だと、エナメルが焦げて、お客様に嫌な思いをさせないで切れるように、と言う理由でセメント抵抗が考えられたという事ですか(が?)、私は巻線抵抗がチョークコィルのような働きをするのを防ぎたかったからです。チョークコイルは、たとえ何マイクロヘンリーでも、周波数の影響があるからです。
半固定抵抗は例によって満足出来ないのですが、金属皮膜製のものはアマチュアには入手困難です。私の場合、知り合いのメーカーに頼めば入手出来ると思うのですが、読者の方々に入手出来ないものを使って製作記事を書くわけにもゆきませんので、止むを得ず、コスモス社のTV P121型を使いました。組立て後、ヘアードライヤーで暖めてテストして見ましたら、0点が数ミリボルト上りました。その内に、この変化が出来るだけ少ない金属皮膜半固定抵抗を手にいれたいと思っています。
半固定抵抗には三本の足が出ていますので、そのうちの二本をショートさせなければ、半固定になりません。それぞれつまみを右へまわした時に抵抗値が最大になるようにつなぎます。判りきった事ですがよく尋ねられますので、第30図にそのつなぎ方を示して置きます。
チョークコイルは、回路編で述べました。電源用フイルタ・コンデンサは、最初、日本ケミコンを使うつもりで、4月号の表紙写真にも写っていましたが、その後いろいろ調べているうちに、マルコンの4700μF(35V)を選びました。おかげで経費は半分になりました。
ブリッジ型整流素子も、配線の楽な5B3の方が良いと思います。耐圧、容量も充分に余裕のあるものを使った方が安心です。メーカーと違って何百円の節約をする必要がないからです。
配線の要領は、5球スーパよりはるかに簡単ですので、何も説明するところはありません。ハンダはしっかりと、タップリつけて下さい。今までにいろいろな方のお手伝いをして、いつも気が付くのですが、 トラブルの80%まではハンダづけの不良によるものです。
あまり重大に考える必要はないかもしれませんが、基板の電源用ターミナルから出力の石のコレクタにつながるプリント線は、ハンダメッキをたっぷりかけて置いた方が良いと思います。100mA以上、最大700mA迄流れる線ですので、プリント基板の薄い箔だけだと容量不足になるかも知れません(第31図参照)。
各ラグ端子も、基板にハンダづけするのを忘れないように。くどいようですが、トラブルでお便りを頂く方の大半の原因を作っている事実を、私は何度も経験しおりますので……。
始めモードスイッチを付けるつもりでいましたが、実験して見ると、クリック音が出ますし、配線も面倒ですので中止しました。その代り、38FDみたいに出入力用ピンジャックをつなぐジヤンパー線で、プリアンプとメイアンプをつながなければなりません。
プリント基板、放熱板のシャーシの取り付けは実体図でおわかりと思います。放熱板はスペースの関係で、2mm厚の鋼板にメッキをかけたものを使用しました。アルミニウム板より効果的なのは言うまでもありません。
とにかく非常に簡単ですので、 自信をもって、すらすらと作業を行う事が成功の秘訣です。おっかなびっくりでやっていると、かえってハンダミスをやったり、勘違いをしたりでトラブルの出るものです。
電源部に間違いがないかどうかを調べるためと、出力の石を誤まって飛ばさないために、組立て作業では、フィルタ・コンデンサとプリント基板はまだつながないで置き、出力の石(2SD188、 2 SA627)は配線しないで、リード線を先にトランジスタの足にハンダづけして置き後からそのリードをそれぞれプリント基板の穴に差し込んで、箔面にハンダづけします(第29図のように基板に先きに取り付けると後でトランジスタの足に付けにくくなります)。
次に調整に移ります。