2021
07.12

最高級管球式プリアンプの製作 Chriskit MARK Ⅵ Castom 回路編の2

音らかす

ファンクションスイッチ、モニタースイッチ

入カピン数が多い程高級品(高価品ではあるが)と考えられているのは大きな間違いで、 この切り換えは、少ない程、音質のためには良いものである。

と言って、オーディオリスナーとしては、レコード、FM放送、テープ等のプログラムソースを一応ひと通りは必要なので、 4回路だけもうけてある。切り換えスイッチの接点数さえ増やせれば、わけなく増設出来るが、回路を複雑にして音質上マイナスの面が多いので注意を要する。

マニアならともかく、オーディオリスナーには、ターンテープルに二本以上のトーンアームは無駄なだけであるので、 Phono入力を一個にしてあるが、 もうすでにマニアの仲間入りをして二本つけておられる方は、第5図のように配線しなおして、 Auxの端子をもう一本のトーンアームのために使用すると良い。本機のPhono入力側に、R-1(47kΩ)によって47kΩに設定してあるが、デンオンの103を、ステップアップトランスを省いて直接つなぎたいときには、その入カピンのホット側とアース側にまたがって100Ωなり600Ωなりの抵抗を入れると、47kΩとパラレルになるので、所定のインピーダンスに合わせる事が出来る。カートリッジの説明書を読めば、その最適負荷抵抗値が示してある。

第5図

その計算方法は、

但し、 xは希望合成抵抗値の公式から計算することが出来る。例えば、 もし、入カインピーダンスを300Ωにしたいときには、

と、300Ωを使えば良い事が解る。

いつも述べているように、良いものを作るのには、最大の注意と、事前に於ける綿密な計画が非常に大切なものである。実体図と首っ引きで、この線を何処へつないで、この抵抗をどこへ入れる、てな具合に、理届も考えないで作り上げたのでは、ロクなものは出来ない。そしてどうしてもうまく行かないと言うので、或るオーディォ研究所へ持ち込んだら、かなりのミス配線があったので、と言う事で二万数千円の手直し料をとられた、と言う話を聴いた。

そこで細かい点については、製作で詳細に述べるが、 このあたりで、そのファンクションスイッチの仕組みと、その配線要領について、頭の中で事前の計画を立ててみる。

楽譜が読めないでも演歌のように聴きなれた曲なら、ギターは弾ける。国路図が解らなくても、出来上ったアンプは鳴ることがある。キットは一般に回路図を全然見ないでも、そして回路の仕組みが解らなくても出来上るようになっている。ヒースキットがその良い例である。それではいつまでたっても回路は解らないし、理論はのみ込めない。そして盲滅法に、真空管パワーアンプを二、三台組んで、歪みっぱなしの音に気が付かず、球(たま)なら解るのだが、石の方はどうも、 という事になる。誠に見上げた精神である。

と言って、馴れないうちは、回路図を見ても、特にプリアンプだと、さっぱり解らない、と言う事は解る。だからと言って、そのまま放って通るわけにも行かない。

先程述べたイコライザ段の働きを、もう一度、ブロックダイアグラムで見直して見る。出来れば、コピーサービス屋へ行って、三枚位コピーを作る事をすすめたい。そして、そのコピーに色鉛筆で信号の流れ具合いをたどって見る。そして、今から作ろうと思っているアンプ製作の事前計画を練る。

第6図(実体回路図=Schematic Pictorial)がその計画を立てるのに役立つ筈である。実体回路図なんて言葉は、字引にはない。私が作った言葉である。知り合いの方々で、今までにハンダゴテを持ったことのない方々にはそのコピーを二三枚づつ差上げて、それをいつもポケットに入れておいて、電車の中などで、くり返し、くり返し見るようにすすめている。そのためか、それらの方々が全部失敗なしにうまく行って、お礼を言われるのはこの上ない喜びである。原稿の書き甲斐と言うものだ。

第6図

限られたスペースに、文字で説明する事はむづかしいが、実体回路図の読み方を説明する。

左下にFUNCTIONがある。これとプロックダイアグラムと照し合わせて見る。(この時点で全回路を見ると、よけいこんがらがるので、後で述べる)第7図がそのスイッチのまわりだけの実体図である。三枚のウエーハー(Wafers)の一番上がⅠで、ⅢとⅡが一つのシャフトを中心に切り換って行くようになっている。(図はPhonoにまわしたときの様子である)Phonoの入カピンから入った信号が、Ⅰの1番ピンに入って、それにつながっている0番ピンのシールド線を通ってV1のグリッド(G)へ行く。その信号がイコライザ段で増幅されて、V3のカソードからC8(0.47μF)を通って信号基板(1973-10 370)の26番ピンに出て来て、 リード線を経てウエーハーⅡの1番ピンに入り、 0番ピンからTape MonitorスィッチのI-1に入る。何の事はない、 こみ合っているように見えても、こういう風に分析して考えれば、非常に解り易いものである。この方が、ギッシリ部品のつまった実体図より、よっぽど解り易いものである。

第7図

図の下側にウエーハーⅡは、本機独特のもので、一般のプリアンプのように、ファンクションスイッチの位置の如何にかかわらず、テープモニタースイッチを倒せば、モニター中及び、 レコーデッドテープが聴こえてくる不自然さをなくすためのものである。テープ以外の入力、つまり各ウエーハーの1、 2及び4番ビンが、モニターとつながっているので、 Phono、Tuner及びAuxの入力を録音中に、そのテープ化された音をモニター出来る仕組みである。右側チャンネルは、実体図で対角線にあるピンがそれぞれの配線位置である。これはシャフトをまわして見れば解る。参考までに、モニタースイッチの実体図を第8図に示しておいた。お役に立てば幸いである。

第8図

ボリューム、バランス及びモードスイッチ

C-22の原回路にならって、A500kΩ及びB500k Ωの二連ボリュームを使ってある。これはそれぞれ250kΩでも一向にかまわない。かえって少ない方が、インピーダンスが低くなるのでベターかも知れない。

ただ、通常の場合と少し違って、ボリュームの方が、バランスより手前に置いてある。これは本機があくまで音質重視ということのために設計されたものであるが、問題は、第9図で示したように、ボリュームを一ぱいにしぼった時にでも、バランスコントロールの中点につながっているV4のグリッドが接地しない事である。バランスコントロールの中点で1/2に減衰されてはいるが、入カインピーダンス500kΩでオープンの状態になっているので、ボリュームを一ぱいにしぼった状態で、一応そこまで増幅されて送られて来た入力信号はボリュームコントロールの二次側でアースされるが、ボリュームコントロールの前にあるカップリングコンデンサC8(0.47μF)までは生きている事になる。したがってボリュームを一ぱいにしぼっても、ごくわずかではあるが、スピーカから音がもれて来る。

第9図

今までに愛用者からいただいた御感想の中で、 どなたの御意見でも同じだった事は、そのクリヤーな音と言う事で、これは本機では、段間の飛びつきを出来るだけおさえてあるためであり、段間の飛びつきがいかに大きな問題であり、市販アンプの音のにごりはすべてこの飛びつき(Cross Talk)及びチャンネルセパレーション(Channel Separation)によるものである事がお解りいただけた事と思う。

この対策としては、ボリュームとバランスを入れ換えれば良いわけだが、そうすれば他の問題が出て来る。回路から解るように、バランスコントロールの二次側は、V4のグリッドリーク(Grid Leak)抵抗を兼ねている。リークと言う限り、電流がグリッドからもれてくるわけで、このリーク電流は、スイッチオンから20秒位までが一番大きい。だからスイッチを入れてすぐにバランスコントロールを動かすと、スピーカからチャリチャリとノイズが出る。したがって、バランスよりも頻繁に動かす必要のあるボリュームを前段に持って来たわけである。ガリオームになるのを防ぐためである。この問題の方が大きいからだ。レコードをまわしながら、ボリュームをしぼって音が出て困るとすれば、 どうせ音楽は聴かないのだから、 スイッチを切ればよろしい。

どうしても、 もれては困ると言う方々のために、その対策については製作編で述べる。

一般に、市販品には、 このモードスイッチが幾通りもあるようである。複雑なものの方が高級品であるという錯覚を利用した商法である。こんなスイッチは、音楽を聴くのになくても良いが、 もし左のスコーカがビリついたりしたときなど、それが、カートリッジのせいなのか、スピーカコードの接点不良から来るものかを見わけるのに、左右入れかえられると、そのトラブルの原因がつかみ易いので、そのためだけに取りつけてある。場所も、配線上と音質のために一番具合いの良いところを選んである。

バランスにAC型ボリュームまたは、特殊なボリュームを使わなければ、B型だと−6dBだけゲインを損するという記事が良くある。それはプリアンプの設計が悪いためと、商策によるもので、本機を組み上げて見ると解るように、ゲインは充分すぎる位高いので、 B型で一向に差し支えない。かえって、イコライザ段からのSN比を良くするためと、プリアンプには不要な、35,000Hz以上の高域を自然にカットする事に、このB型が大いに役立っている事をつけ加えておく。