2021
08.09

ソリッドステート回路用 ユニバーサルパワーサプライの2

音らかす

使い方

本機は、いわゆるパワーサプライであるから、その使い方には何百通りとあるが、従来の市販品とは違っているところもあるので簡単に説明を加える事にする。

一番大きく違っているところは、本機が二電源、一電源の両方に使えるというところであろう。スタンバイスイッチ(S-1)の隣にあるDUAL/SINGLEのスイッチ(S-3)がそれである。下に倒してDUALにすると、トランスのセンタータップから、黒色出カソケットにつながる線がアースされるので赤色にプラス電圧が、そして青色にマイナス電圧が、それぞれ±6V、±12V、±18V、±24V及び±30Vと取り出す事が出来る。

最近の回路に二電源のものが多くなって、パワーアンプのみならず、プリアンプにも二電源の製作記事が目立つようになった。

しかもトランジスタの耐圧がだんだん高くなって来て、±30Vで働かせるものも少なくない。ダイナミックレンジを大きくとるためにも都合が良いからであろう。こんな時に、例えばイコライザ段だけをプリント基板に組み込んで、本機を使ってスイッチオンテストが出来ると非常に便利が良い。全部出来上がってから、アンプのスイッチを入れて見たら、トランジスタが飛んでいたり、RIAAが大きく狂っていたり、誤配線があったり、抵抗のカラーコードを読みまちがえていたり、良くある事である。

そんな場合、本機を使って、部分ごとにチェックする事が出来れば、せっかく綺麗に配線したものを、またハンダごてで外してのやり直しをするような無駄を省く事が出来る。

付属のワニ口クリップ(赤色がプラス、青色がマイナス、黒がアース)を使ってそれぞれのターミナルにつないでから、スタンドバイスイッチを入れる。この時にアウトプットスイッチ(S-4)が切れている事を確かめておけば、ターミナルに電圧が掛からないで、メーターの針だけが所定の電圧を指すので、適当なプッシュスイッチ(レンジ切り換え用、S-2)を押して電圧を合わせる。

今行なっているテストは二電源であるからDUAL/SINGLEスィッチ(S-3)もDUALになっていなければならない事は勿論である。

もし試作品に誤配線があって、うまく行かないようなときでもこのアウトプットスイッチを切れば瞬時に、電流が切れるから、トランジスタなどを飛ばさなくても済む。100V(AC)電源スイッチを切っても、フイルタコンデンサにたまっている分がいつまでも切れないので、しまったと思って、電源スイッチを切っても時すでに遅し。トランジスタが飛んでしまって、ペアーの分をそっくり買い換える。よくやる失敗である。

一電源として使用する場合にも、6V、12V、18V、24V及び30Vの場合は、二電源(DUAL)のまま、青色リードを外して、赤黒をプラスマイナスとして使えば良い。したがって、それ以上、60Vまで必要な折にのみ、SINGLEにして、今度は黒色リードを外し、赤青をプラスマイナスとして使用出来る。この時、青がアースされる。

これで準備OKで文字通リスタンバイである。後はOUTPUTスイッチを押し込むだけである.

手持ちに2~3A位のスライダックストランス東京理工舎RSA-3 ¥6,500などがあれば、それを一次側に挿入すれば6V刻みでなくとも、その間のこまかい電圧調整が出来るので便利であるが、6、12、18、24及び30Vレンジがあるのでそれぞれ大体所定の電圧が出ていれば良い。実際にそうやって作り上げたアンプを、馬鹿でっかくて、ハムの原因になる定電圧装置でも使わないかぎり、家庭に入っている商用電源は一般に5%以上変動があるからである。

一般のオペアンプは±15Vで使用する事が多いが、技術資料にもあるように、±9~15Vの間だと、最大出力電圧は変わるが、その他の特性は殆ど同じなので、わざわぎスライダックストランスを使って±15Vに合わせなくても、±12Vで殆どのオペアンプのテス卜が出来る。

回路が正常に働くと、当然そこに電流が流れる。その時のアンペア数を監視するためにアンペアメーターがつけてある。回路が異状発振を起こしている時など、倍近い電流が流れるものであるから、事故を未然に防ぐ事が出来る。

2Aのメーターだと、数十ミリアンペアが読み取れないが、そのために複雑な回路を組み込む事もないと思う。

どうしても必要な時には、本機と被測定回路の間にシリーズにテスターを入れれば読み取る事が出来る。(第4図参照)

第4図

製作上の注意

本項には実体図もついている事だし、回路も比較的簡単なので、特に注意する事もないと思われるが、私が2台の試作をやって見た上で気が付いた事を二、三述べる事にする。

実体図

トランスの二次側とレンジスイッチの間の配線が一番こみ入っているので、フィルタコンデンサのうち、リヤーパネルに近い方の2本は、このあたりの配線が終ってからとりつけた方が仕事がやり易い。

レンジスイッチは、フロントパネルに取りつける前に配線をすましておいた方が、作業が楽である。

この2本は、後の2本とパラレルに入るものなので、作動的には、2本だけでも同じ事なので、次に述べるテストが終ってから、取りつけて、配線した方がうまく。

レンジスイッチの配線が終ったら、プリッジ型ダイオードの直流側は配線しないで、交流側にテスターのACボルトレンジを入れてから通電し、それぞれのレンジでダイオ―ドの交流側に4.5V×2、9V×2、14V×2、18.5V×2及び23V x2の交流電圧が正しく出ているか確認する。間違っていたら今のうちに直しておかないと、出来上がってからだと、ことが面倒である。終ったら、ダイオードの直流側とフィルタコンデンサをつないで、30Vレンジにしてスイッチを入れる。メーターが30Vを越えたら、AC電源が100V以上ある証拠なので、トランスの一次側を105Vに移す。逆の場合は95Vにする。

レンジを24V、18V、12V、6Vと落として行くと、その都度メーターの針がゆっくり下がって行って、それぞれの値を指す筈である。これで誤配線がない事が確かめられたわけなので、残りの二本のコンデンサを取りつけて、配線すれば出来上がりである。

各家庭に入っている商用電源は意外と変動が多いものなので、各レンジで数パーセントの誤差は止むを得ない。

念のために、パネルメーターを数個デジタルテスターを使って当たって見たところ、かなり正確だったので、それこそオンボロテスターよりは信頼度が高いものだと思う。

バナナプラグであるが、一般にアマチュア用として売っているものの殆どが、非常にチャチィイもので、一流メーカー製の測定器などに付属しているようなのは、なかなか手に入りにくい。あっちこっちのパーツメーカーと交渉してやっと手に入れたのが、西ドイツ、HIRSCHMANN社製のVQ-20である。

コードを取りつけるのに、押しねじを使用するようになっているが、本機の性質上、50芯程度の太さのリード線を使用する場合に、この押しねじは使えない。したがって、押しねじを外してしまって、穴の中にハンダを流し込んで、リード線の尖端を直接ハンダづけした方がうまくとまる。

本項に引きつづき発表するジェネレータ、ミリパル等の測定器類の試作に本機が非常に役に立った事をあらためて述べておく。オペアンプなど、何十種類もあるので、そのどれを使うかという事を決めたり、決めた後、実際に回路を試作するのにいちいち電源部から作っていったのでは、おそらく、良い加減なものしか出来なかったろう。電子機器メーカーの専門家に尋ねたら自分で(プラス、マイナス15Vで働く)オペアンプなどを使って何かをこしらえるのに、9Vの電池を何個も使って試作をするのだという事であった。本機には±12Vのレンジがあるので:殆どのアペアンプ(±15V用)回路の試作にも使う事が出来るので、本機を見せたら、これは便利だという事で、一台分パーツをそろえて差し上げた位である。その方も、十万円以上もする電源装置は、勤務先ならともかくお小遣いては買う気にならなからたのも、当然の事であろう。

フロントパネルの組立

(1)サブパネルにレバースイッチ2個をそれぞれ四角の穴に、表側より差し込み、カチッと音がする迄押し込む。この状態でスイッチは固定される。

(2)(1)でレバースイッチを取付けたサブパネルに化粧パネルをのせ、メータ、パイロットランプ、バナナチップ受日を取付ける。

(3)サブパネル裏面についている金具(6個の丸穴がある4×10.5cmのアルミ板)のナットをゆるめてはずす。次に6連プッシュスイッチのツマミを引きぬき、この状態で丸穴にスイッチをさしこみ、金具にビスで固定する。

(4)金具に取付けたブッシュスイッチに先にはずしておいたツマミを差し込む。この際スイッチの上下の向きと、フロントの表示OUTPUTの位置にクリーム色のツマミが出るように注意する。

(5)金具に取付けたスイッチを、サブパネル固定する。このとき、フロント表面からスイッチのツマミが穴に接触しないようにする。

以上、電波技術 1975年4月号