群馬大学の自動運転
第2回 一挙にレベル5を

自動運転といっても、様々なレベルがあります。日本政府や米国運輸省道路交通安全局は自動化のレベルを6つの段階に分けています。

レベル0 人が全ての操作をします。レーザーで前の車との距離を測り、近づきすぎると警告を出す前方衝突警告装置を備えた車もここに入ります。
レベル1
(運転支援)
加速する、ハンドルを操る、ブレーキを踏む、の3つの操作のうち、どれか一つを車が支援します。自動ブレーキなどが入ります。
レベル2
(部分自動運転)
3つの操作のうち、複数の操作を車がします。加速しながらブレーキを踏むことはないので、加速・減速のどちらかをしながらハンドルを切ることになります。アダプティブ・クルーズ・コントロールと車線維持支援システムが同時に働くことになります。
レベル3
(条件付き自動運転)
限られた道路、状況で、車が全ての操作をします。でも、車が処理できない事態が起きれば車が警告を出し、一定時間以内に人が運転を代わらなければなりません。
レベル4
(高度自動運転)
レベル3がより高度化した自動運転です。限られた条件下では車に運転を任せることができます。例えば高速道路なら運転の全てを車に任せることができます。しかし、高速道路を出るなど条件が変われば人が運転します。
レベル5
(完全自動運転)
人が運転する必要がない完全自動運転です。ハンドルもブレーキもなくなります。

レベル2の自動運転車はすでに、スバル・アイサイト、日産・プロパイロット、トヨタ・セーフティセンス、ホンダ・センシングなどで実用化されています。また、Audiが2018年に日本でも発売するA8に搭載した自動運転システム「プレセンスプラス」はレベル3を実現しているといわれます。もっとも、「プレセンスプラス」が自動運転する条件は

「中央分離帯のある比較的混雑した高速道路を60km/時以下で走行しているとき」

ですので、実用性はあまりないかも知れません。それでも、自動運転の技術が日々進歩していることは伝わってきます。

【注1】
アウディが「世界初のレベル3搭載市販車」として鳴り物入りで発表したA8の自動運転機能(トラフィックジャムパイロット)だったが、結局各国での法整備や事故時の責任所在をめぐるハードルを越えられず、市販車への機能搭載・有効化は市販化延期の末に断念された。市販車でのレベル3実用化は、2021年のホンダ「レジェンド(限定100台のリース販売)」やメルセデス・ベンツの「ドライブパイロット」まで持ち越されることとなる。

 技術とはこのように、段階を追って高まるのが常識です。まずレベル1を実現し、レベル2に進んでレベル3を実用化する。さらに研究・開発を続けて、やがてレベル4に達し、最後に完全自動運転のレベル5に至る。
例えば日本政府は、東京オリンピックが開かれる2020年までにレベル4を実用化することを目指しており、その先のレベル5は2025年に実現するとしています。

【注2】
日本政府が掲げたこのロードマップも、大幅な遅れを余儀なくされた。2020年の東京オリンピックでのレベル4実用化は見送られ、2023年に道路交通法が改正されてようやく「特定条件下でのレベル4(過疎地などでの低速自動運転バス等)」の公道走行が制度上許可されたのみである。一般自家用車における「2025年レベル5(完全自動運転)」など、現在(2026年)においても夢のまた夢である。

 おそらく、世界のほとんどの研究・開発チームは同じような開発プランを作っているはずです。ところが、大学の研究者3人で構成する群馬大学の開発チームは、

「自動運転は、一挙に完全な自動運転を実現しなければ危険だ」

と考えています。レベル3やレベル4での自動運転車は危険な乗り物になりかねない。だから市販するのは控えた方が良いというのです。

【注3】
「レベル3は危険である」という群馬大チームの指摘自体は、人間工学的・安全論的にきわめて正当なものであった。システムから急に「人間へ運転を交代しろ(オーバーライド)」と要求されても、居眠りやわき見などをしていたドライバーが即座に適切な危険回避行動をとるのは極めて困難だからだ(これを「過信と権限移譲のジレンマ」と呼ぶ)。Waymo(グーグル)なども同様の理由でレベル3を飛び越えてレベル4/5を目指した。
しかし、「だから一挙にレベル5を目指す」という群馬大の戦略は、理論的には正しくとも、技術的難易度(あらゆる天候・道路状況への対処)を著しく過小評価していたのかもしれない。

 もちろん、開発段階ではレベル2やレベル3の機能を持った車を走らせました。しかし、それはあくまで、レベル5の完全自動運転車に必要な機能を検証するためで、単なる準備段階にすぎないのです。

何故なのでしょうか?

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