2021
04.12

オーディオリスナーのための高性能プリメインアンプ プリアンプ部組立編 1

音らかす

前回では“石はどうも”と思っている方のために、むづかしい理屈を抜きにして、回路の説明をしました。今回は、いよいよ使用部品の説明につづき、製作上の注意点を述べます。指定どうりの部品と誤配線のないかぎりそのままで立派に動作するプリアンプが完成します。なお、地方の方で部品入手困難の方は星電パーツにお問合わせ下さい。

構成部品について

4月号で回路の働きがわかったところで、いょいよ製作に掛る事にします。

まず、第1表にその部品の一覧表を示しておきます。説明中製造業者の名前まで書きましたのは、私が本機を作るに当って、あれこれ使ってみて、この部品なら、とお勧め出来るものなどを示すためのものです。したがって、同じ品質のものであれば他社のものでも良いわけです。

第1表

シャシ

アマチュアの自作品とは言え、出来上がったものは一応民生機器です。何年も愛用するアンプです。外観も大いに大切だと思います。ラックスのCL-35のデザインが良いからと言うので、選んだ方々を私は四、五人知っております。また逆に、自分で曲げたアルミの板をむき出した、その上にマジックインクでVOL、BALなど下手な文字を入れて得意になっている人々もいます。アマチュアリズムのシンボルと言う事かも知れません。

私にとって、ステレオアンプは部屋のアクセサリーの一つだと言う考えから、やはり外観も、そこそこのものでないといけないと思います。

となると、シャシは自作以外に方法はありません。その上、先月号に書いたように、配線のし易さと特性の良さを考えると、どうしてもシャシは複雑にならざるを得ません。クリスキットマークV(私のアメリカンメソジストチャーチでの洗礼命ChristopherのChrisを取ってChriskitと名前をつけただけで、ラジオ技術1969年8月号にもおことわりしましたように、キットのつもりは全くありませんので、もう一度おことわりしておきます)が、ハムゼロに近い程S/Nが良く、チャンネル・セパレーションが非常に良かったのも、あの少々複雑なシャシの御陰です。

私は板金加工が苦手で、その上ハンダによる作業に比べて、あまり好きではありませんので、専門の板金屋に特注しましたが、器用な方が自作されるのに参考までに第9図にその構造図と前面の寸法を載せておきます。詳細図は紙面の関係で省きますが、A4版リコピー8枚分として送料共郵便切手200円分送ってもらえば、会社の女の子にコピーを写らせて送らせます。

第9図

いつも申し上げておりますように、アルミニウムは白っぼく錆び易いもので、特に電気を通すとなお錆びるものです。だから私はいつでも塗装する事にしていまする。もし、自動車や冷蔵庫に塗装がしてなくて、赤錆びの鉄板のままだったら、と考えて見て下さい。自動車は走れば良い、冷蔵庫は冷えれば良いというだけのものでもありますまい。

以前は自動車の塗装屋に頼んでいたのですが、アルミニウムだとはげ易いので、特別な下塗り(ウオッシュプライマー)などが必要で、人手不足の折、面倒な事をお願いするのも、億却で、しかもかなり高価なものになります。幸い本職の方で大阪エアゾール工業と取り引きがありますので、無理を言ってエポキシ系のエナメルをスプレーカンにつめてもらいました。余分に作ったものを、アマチュアの方には便利かと思って、星電パーツにはらい下げました。

例によって、配線を楽にするために全部ボルト止めになっています。組立て面にはラッカーテープを使って、塗料がのらないようにしないと、シャシが、電気的につながりませんので注意を要します。

上蓋、及び底板は強度のために1.2mmを使いましたが、それ以外は1mmです。

上蓋及び下蓋は、シャシのフレームが内部に折り曲げてあり、アルミニウムにタップを切ると、すぐに馬鹿穴になりますので、スピードナットを使って止めます。どう言うわけか、市販品のアンプには良く使ってあるのに、ネジ屋さんには見当りませんでしたので、特注しました。

プリント基板

普通のベーク板だと、表からプリン卜基線が見えず、部品を取り付けるのにまごつきますので、エポキシグラスフアイバーにしました。これだと、透き通って見えますので、回路図と対照しながら部品を取り付ける事が出来、回路を理解しながらの作業は勉強にもなります。

アースラインは、両チャンネルを両側に別けるかわりに、中央に太く入れます。第10図はその実寸パターンです。自作される方の参考になれば幸いです。

トーンコントロール段のパターン図

第10図

イコライザ段のパターン図

イコライザ

ハムを出来るだけおさえる為には、基板001、100の両方のアースラインに、0.65mm位の裸線を6本づつ、第11図のようにハンダ付けをして、少しでも、アース電流が流れ易いようにします。セロテープで両端を止めておくとハンダ付けが楽になります。実験してみましたら、明らかに効果がありましたので、 S/Nを良くするのにお勧めします。

第11図

プリント基板に部品を取り付けるのに、組立て講習会などで、良く見かけますが、トランジスタなどにハンダゴテの熱が伝わるのを恐れて、こわごわハンダ付けをする人がいます。第12図のように、まず、基板に箔の付いていない方から部品の足を入れて、抜けないように少し曲げてから、ハンダゴテの先を、プリント箔と、部品のリードに当てて数秒暖めて、そこヘハンダを持って行くと、吸い込まれるようにうまくのります。箔だけにこてを当てると、図のように噴火口のようにハンダがのり、80%までが接触不良で、後で大騒ぎ。

(R305)3.9kΩは、イコライザ段及びトーンコントロール部への供給電源を62Vから44Vに落すための抵抗です。後日、イコライザ段を3石直結などに変更した折には、当然それだけ余計に電流が流れますので、この抵抗を取り換える必要が生じます。

1.5mmφ位のハトメを使っておきますと、後ではずしたり、付け換えたりが、やり易いと思います。

抵抗器

パーツ屋で入手出来るノイズレス級は、あまり当てになりません。東洋電具で、以前は市販していたのですが、ソロバンが合わないと見えて、入手出来なくなりました。

実験の結果、 リケノームのRM—1/2が最適だと思います。少々割り高でもG級(2%)の方が、左右の特性がピッタリ合いますので、 良いと思います。特にイコライザ段は、最大許容入力を、少しでも大きくとるために、バイアス点を最適に選んでありますので、例えば(R-108)160kΩが10%少くなりますと、Q18のベースバイアスがそれだけ深くなり過ぎますので、正絃波の上側が、最大出力時に欠ける事になります。

NFB用ネットワークに使用される部品は、正確なもの程良い事は、今さら説明の必要もありますまい。

手間の事を思うと、安いものです。ノイズは全然出ません。管球式より電圧が低いので、電源部の出口以外は1/2W級で充分です。

コンデンサ

NFB用のネットワークには、ゼウスからスチロールコンデンサ2%級の耐圧50Vのものが入手出来ました。数値の割に形が少く(小さく?)、非常に良いものだと思います。良く質問があるのですが、スチロールコンデンサには極性はありません。

フィルムコンデンサにもポリプロピレン、ポリエステル等いろいろありますが、市販品の内で、本機に使用したものの半値くらいのメーカー不明の緑色のを試してみたら、スイッチオンでスピーカからボコンと音が出ました。直流もれのせいです。結局、日本ケミカルコンデンサから、マイラー(ポリエステルフィルム)コンデンサを入手しました。コバルト色の奇麗ものです。誤差も非常に少(な)いようです。

アルミユウム電解コンデンサ(ケミコン)も同じメーカーのものです。ただし、イコライザと出力段の入力にだけは、ソラールと呼ばれるアルミニウム固体コンデンサを使います。ノイズ止めに良いと言う事ですので、タンタルより安価ですが、普通のケミコンの倍くらいします。どっちにしても一台につき4本だけですので大した事はありません。